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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

石井輝男監督「霧と影」(1961年、83分)

2024-04-15 23:26:18 | 日本・1960年~

原作は水上勉による同名小説です。展開が複雑です。

冒頭、能登半島の青蛾小学校の教員、笠原が観音崖の上から遂落死を遂げます。猿谷郷に住む長期欠席児童、宇田清の家庭訪問に行ったまま消息を断ったのです。自殺?
毎朝新聞地方版を読んだ記者の小宮(丹波哲郎)は能登へ。小宮は笠原、そして彼の妻と親交がありました。極端な高所恐怖症だった笠原がなぜ危険な断崖の上を歩いていたのか?

笠原とは学校友達で、妻、雪子の妹、良子とも面識があった小宮。地方通信員、坂根(梅宮達夫)と連携し、笠原の足取りを追います。

その結果、笠原はその日、富山の薬売りと一緒に猿谷郷から山を下っていたという情報を得ます。その薬売りは松本貞次郎(手形詐欺の野見山の偽名)という名で、もう一人の連れの男と東京へ発ったことが分ります。

また、宇田清の叔父、甚平(安井昌二)の身元調査をしている興信所の井関と名乗る得たいの知れない男の動きを知ります。

小宮は東京へ帰りデスクと連絡をとりながら、井関、宇田甚平の身辺調査にあたります。

井関の住所はでたらめで、その名刺に記載のあったビルでは直近に6000万円の手形詐欺事件があり、その取引を仲介したのが宇田甚平とわかります。

発端の事件は迷宮に入って、わかりにくくなりますが・・・。

小林正樹監督「上意討ち-拝領妻始末-」(1967年、128分)

2024-04-14 23:31:03 | 日本・1960年~
滝口康彦による原作を橋本忍が脚色。

封建社会の理不尽な家族制度(人間関係、夫婦)を暴いた作品です。

舞台は1725年(享保10年)の会津松平家。

江戸時代の武士にとって、上からの命令(上意)は絶対命令。馬廻り役300石・笹原伊三郎(三船敏郎)は、藩の御側用人から長子・与五郎(加藤剛)に「藩主のお手付きの女性を貰い受けろ」と縁談を持ち込まれました。

気乗りしない伊三郎と与五郎。伊三郎の妻、すが(大塚道子)によれば、嫁候補・いち(司葉子)はもともと藩主のお気に入りで寵愛を受けていましたが、藩主が若い側室に乗り換えたところを逆上し、この側室に殴りかかったので、藩主にも平手打ちを食らわし不興を買い、このためいちを下げ渡そうとしているのだ、と言うのです。(事実はすがの言辞と異なり、いちには婚約者がいたにもかかわらず藩命一つで藩主の側室とならざるを得なかった不条理に対する怒りが原因でした。)

藩命には逆らえず伊三郎と与五郎は、しぶしぶ彼女を嫁に迎えます。 いちは気丈にふるまう良妻でした。与五郎といちは仲睦まじく、娘も生まれ幸せな時を過ごしていました。

幸せな結婚生活は江戸からの知らせによりぶち壊されます。藩主の嫡子が急病により他界、いちの子が新たな世継ぎの候補にあがったのです。いちは世継ぎの生母となったため、藩の上役から与五郎にいちを奥に戻せとの上意が下されます。

あまりに理不尽な藩命に伊三郎、与五郎は怒り心頭。いちも与五郎もこの藩命を断固拒絶しますが・・・。

五社英雄監督「御用金」(1969年、123分)

2024-04-14 23:27:56 | 日本・1960年~
「御用金」とは、江戸幕府・藩などが財政が困窮したときにこれを補うため、農民、商人などに緊急に課した金です。

主要舞台は天保年間の越前国鯖井藩(鯖江藩を想起させる架空の藩)。

天保2年(1831年)10月。「神隠し」のために許嫁と父親を失い、身を落とした女つぼふり師、おりは(浅丘ルリ子)が鯖井の漁村・黒崎村にやってきます。彼女を待ち

受けていたのは、漁民30数名全員が一夜のうちに姿を消す事件でした。

それから3年後の天保5年(1834年)。鯖井藩士・流一学(西村晃)たちに命を狙われた江戸の浪人・脇坂孫兵衛(仲代達矢)。

刺客たちを倒したものの、この事件は義兄の鯖井藩家老・六郷帯刀(丹波哲郎)が再び「神隠し」を行なうため、その秘密を知っている孫兵衛の口塞ぎでした。

3年前の「神隠し」の真相は、六郷帯刀らによる村人虐殺。佐渡島からの御用金の横領を知る漁民全員を皆殺しにしたのです。孫兵衛は、この時の村人虐殺を許せません。

孫兵衛は、妻(司葉子)の兄であり親友の帯刀を責め、二度と「神隠し」を行なわないことを約束させます。しかし、彼はこの時、武士であることに嫌気がさし、妻と藩を捨て、浪人となります。

帯刀が再び「神隠し」を行なおうとしていることを知った孫兵衛は、これを阻止するために鯖井藩に向かいます。

孫兵衛の行動を察知した帯刀の部下・高力九内(夏八木勲)たちが孫兵衛を待ち伏せし、襲いますが・・・。

内出好吉監督「さいころ奉行」(1961年、90分)

2024-04-13 23:32:48 | 日本・1960年~


町人に身をやつした江戸奉行、遠山金四郎が、将軍暗殺を企む老中一派の世直し党の陰謀を暴くという作品。

春の陽気が原因で突発性放浪病にかかった遠山の金さん(片岡千恵蔵)は伊勢路で花嫁(丘さとみ)を強奪した鬼金(進藤栄太郎)の身柄あずかり、桑名の三十石船にのって浜松に向かいます。

船中での二人の噂話は、江戸で不穏の動きを見せている世直し党のこと。

浪人風の男から素っ飛び小僧の安(東千代之介)がスリとった財布から、金さんは秘密の臭いをさぐります。

江戸に着いた金さんらは浪人の懐にあった紙切のあて先、料理屋八百松に下男として潜り込みます。

紙切を世直し党の連絡文とにらんだ金さん。世直し党は西丸老中駒木築後守が黒幕と目される将軍家慶を暗殺する隠謀を持っていました。

八百松の女将お蘭(青山京子)を恋しているスリの安ともども、これらのことをさぐり出した金さん。

金さんは駒木築後守の別邸にしのび込みますが、安が見張りに見つけられ窮地。一味の銃の狙い撃ちにあい、大川の暗闇に消えていったかのようにみえましたが?

将軍の上覧をあおいだ世直し党の資金源の一人、森田屋の華やかな舞台。そこで将軍を暗殺する計画がねられていました。そこへ現われた金さんは・・・。

沢島忠監督「富士に立つ若武者」(1962年、93分)

2024-04-09 11:01:02 | 日本・1960年~
わたしは小学校低学年の頃から、大川橋蔵(1929-84)の名前は知っていました。メンコ(パッチ)で、です。東千代之介、中村錦之助しかり。当時、彼らの俳優としての演技は観たことがありません。

それを今になって観ています。今回は大川橋蔵。後半のチャンバラなど、運動能力が凄いです。

平治の乱(平治元年12月)で敗れた源氏は追跡を逃れて都落ち。大将義朝(月形竜之介)の次男朝長は戦死、三男頼朝(大川橋蔵)は猛吹雪の中、父の一行を見失います。凍死寸前。狩人鬼頭次(田中春男)、志乃(池町弘子)の兄姉妹に救われます。
しかし、父義朝が追手に捕まり殺されたことを知り、観念した頼朝は平家に捕らえられます。都に送られた頼朝、鬼頭次、志乃は三条河原で処刑寸前のところで、清盛の母禅尼の命乞いで救われ、伊豆の配所に流されました。

それから10年。頼朝は忠臣佐々木定綱(沢村宗之助)、盛鋼(平幹二朗)、鬼頭次兄妹に守られ読経三昧の日。

ある夜、頼朝は探題配下に追われる友、文覚(大河内傳次郎)を救った北条時政(三島雅夫)の娘、政姫(三田佳子)の姿をみとめます。このころから源氏再興を図る草の実党が勃興。

伊豆、小田原のあたりにいた北条氏は平氏の系列化。新しい伊豆探題として平兼清が赴任してきました。兼清は政姫を見染めます。

しかし、政姫の心は頼朝に傾いていました。頼朝と伊豆の豪族北条の政姫が結ばれれば、源氏再興になると草の実党の面々は喜びますが、・・・・。

マキノ雅弘監督「千姫と秀頼」(1962年、86分)

2024-04-08 11:03:02 | 日本・1960年~

元和元年五月、大阪夏の陣、大坂城最後の日。豊臣秀頼(中村錦之助)は落城と運命をともにします。

秀頼の妻千姫[家康の孫、秀忠の娘](美空ひばり)は、坂崎出羽守(平幹二朗)によって大阪城から救出されました。「千姫を救ったものに千姫を与える」との家康(東野英治郎)の言葉を信じて。

顔面に大火傷を負いながら千姫を救出した出羽守でしたが、家康の懐ろ刀、本多佐渡守(北竜二)は、千姫を出羽守でなく本多平八郎(管貫太郎)の妻にするよう家康に進言します。本多一族の安寧をはかり、武名高い出羽守一族を貶めるのが狙いでした。

約束を反古にされ、誇りを傷つけられた出羽守は、屋敷にこもり酒びたりの生活。
出羽一門の取り潰しを狙う佐渡守は千姫の輿入れの日、花嫁行列を出羽守門前に進め、その成果をみせびらかします。

沽券を傷つけられた出羽守は家臣の制止を聞かず行列に斬りかかりますが、護衛の鉄砲隊に撃たれます。この事実知った千姫は、本多家への輿入れ後も秀頼と出羽守の位牌を寝室に祀り、平八郎に肌を許しませんでした。

互いに相手を傷つけあう生活、平八郎は酒におぼれ、病に冒され悲惨な最後を遂げます。

秀頼、出羽守、平八郎と不幸な死をみた千姫は、徳川の政略をのろい、徳川の名を恥かしめるためる狂気の振舞に出ます。この振舞は、武士と町人とを問わず行われました。

狂乱の千姫に身を挺して諫言したのが片桐且元の身寄りで豊臣家の忠臣片桐隼人(高倉健)。この諌言に千姫は最後の決心を固めて江戸城へ乗りみますが・・・。

五所平之助監督「猟銃」(1961年、98分)

2024-03-22 23:27:37 | 日本・1960年~


原作は井上靖による同名小説。この小説は高校時代に読んだ記憶がありますが、内容は覚えていません(当時、井上靖は好きな作家でした。作品では「氷壁」「天平の甍」「闘牛」など)。調べてみると、この小説の内容は「一人の男性への三人の女性(不倫相手、男性の妻、不倫相手の娘)からの手紙」を通して、四人の男女の複雑な心理模様を描いているとのこと。

「猟銃」のタイトルは、主人公のひとり三杉の趣味が狩りで、コレクションの猟銃の手入れをしていたおり、そこに現われた妻みどりに猟銃を向け、彼女も猟銃をとりあげて彼に狙いを定めるシーンの象徴です。

主要舞台は阪神間と呼ばれる兵庫県芦屋市、西宮市、神戸市のあたり。

映画作品の内容は?

芦屋に住む彩子(山本富士子)の家に女(乙羽信子)が現れ、夫・門田礼一郎(佐田啓二)の娘だという少女・薔子[しょうこ](鰐淵晴子)を置いていきます。医師の礼一郎は学位を取るために大学の内科で研究中でしたが、その娘は礼一郎との間にできた子だと言うのです。少女を引き取り、離婚を決意する彩子。

その彩子は従妹のみどり(岡田茉莉子)の夫・三杉(佐分利信)と不倫関係に陥ります。

三杉とみどりとは見合い結婚で年齢が離れていて、夫婦関係は冷え切っていました。三杉と彩子との不倫関係に気づいたみどりでしたが、知らぬふりをして日々を過ごします。

彩子と三杉の情事も8年に及び、薔子も年頃の娘に成長し、三杉家とも家族ぐるみで付き合いが続きますが・・・。

堀川弘通監督「白と黒」(1963年、113分)

2024-03-20 23:29:45 | 日本・1960年~


サスペンスです。橋本忍によるオリジナル脚本。

恩師・宗方弁護士(千田是也)の年若い妻・靖江(淡島千景)と内通関係にあった若き弁護士・浜野(仲代達矢)は、村松由紀(大空真弓)との結婚に支障をくわだてた靖江を絞殺します。

ところが宗方邸の近くをうろついていた前科4犯の男・脇田(井川比佐志)が宗方邸に押し入り、寝室で倒れていた靖江が身につけていた首飾り、指輪、などの宝石類を、そして側にあったバッグから現金を盗みだし、逃亡しようとしたところ、かけつけた警官に逮捕されます。

検察庁で、脇田は盗みを認めたものの、殺人ついては否認。担当検事・落合は靖江絞殺についても、脇田を数日間にわたって執拗に尋問。脇田は自暴自棄になって殺人の自供をします。検察側はこれをもって死刑求刑。結果、裁判は決着したかのようにみえました。

このあたりから話しが複雑になってきます。妻を殺された宗方弁護士はかねてから死刑廃止論者でしたが、その信念のもとあろうことか脇田の弁護をかってでます。その助手を務めることになった浜野は良心の呵責にさいなまれ、脇田を殺人犯として求刑することに難色を示す行動にでます。その浜野の言動に不審を抱いた落合は、秘密裏に補充捜査を開始しますが・・・。

展開は二転三転。そして衝撃の結末。

𠮷田喜重監督「炎と女」(1967年、101分)

2023-12-22 23:39:28 | 日本・1960年~


人工授精で生まれた子どもをめぐり、子どもの両親の確執を基軸に、精子提供者とその妻、施術の医師との関わり、それぞれの複雑な心理状況を描いた作品です。

造船技師、伊吹真五(木村功)と立子(岡田茉莉子)の間には一歳七ヵ月の息子、鷹士がひとり。家庭は一見したところ幸福そうにみえましたが、鷹士は人工受精で生れた子どもで、このことが夫婦の間の気持ちのしこり、あるいは葛藤になっていました。

この伊吹家と関わっていたのは、真五の友人の医師で人工授精の施術者だった藤木田(北村和夫)、その弟子だった坂口(日下武史)とその妻のシナ(小川真由美)。
真五と坂口の関係は微妙です。真五は、精子の提供者がかつて貧しい医学生であった頃からの友人であった坂口だったと知っていました。それでもずっと交友関係(?)を結んでいたのです。

ある日、鷹士がいなくなります。帰宅した真五は立子を責めます。立子はシナが鷹士を連れて出て行ってしまった、と語ります。真五は黙りこくり、後から居合わせた坂口と藤木田は複雑な思いで沈黙。立子は鷹士の父が坂口であることを知っていたうえ、シナが鷹士を立子と坂口の姦通で生れた子と思い込んでいることに、感づいていました。

どちらにしても、鷹士が自分の子どもであると確信するために、坂口との関係を明確にしなければならないと思った立子は・・・。

渡辺裕介監督「がんこ親父と江戸っ子社員」(1962年、87分)

2023-12-18 23:47:36 | 日本・1960年~


爆笑コメディです。

割烹「浪花」を経営する磯村勝五郎(進藤英太郎)は、跡継ぎに期待していた長男の勝男(中村賀津男)が味元株式会社に就職。その裏にあったのは、「世間をもっと広くみるべき」という勝男の彼女、悦子(佐久間良子)の口添え。

意気消沈していた勝五郎でしたが、小料理屋の主人、庄作(多々良純)とのつきあいで、なんとか意気軒昂に振る舞っていました。幼馴みの二人は、バー・エルテナの景子(藤間紫)の気をひこうと張り合っています。

その景子は、勝男の恋人CMガールの悦子と同じアパートの隣同士。

念願のサラリーマン生活に張切っていた勝男でしたが、悦子との結婚について、父親を納得させなければならないというハードルがあり、頭を悩ませていました。あの手この手を使って納得させようとしますが、店の跡継ぎを拒否した勝男の要求を、勝五郎は頑としてききいれません。

そんな折、今度は勝五郎に再婚話が持ち上がり・・・。

一方、勝男は秘書課に転任します。といっても事実上の宴会係です。来日中のバイヤー、ラミー氏が「浪花」の料理を食べたいと言いだします。会社としてはこの要求を無視できません。ところが、勝五郎は景子と熱海に旅行しているらしくお店に不在です。急遽、白羽の矢が勝男に・・・。
 

伊藤大輔監督「この首一万石」(1963年、93分)

2023-12-17 23:49:43 | 日本・1960年~
 


自ら武士になりたいと願った日雇い人足の男が、武士社会の理不尽さにまきこまれる悲劇です。

大名の参勤交代行列を請け負う稼業「井筒屋」が江戸にあり、そこに九州の小大名・小此木藩から国許へ戻るための人足を雇いたいとの依頼が舞い込みます。

井筒屋の日雇い人足・権三(大川橋蔵)は、槍持ちを命ぜられ大名行列に加わります。浪人・凡河内典膳(東野英治郎)の一人娘・千鶴(江利チエミ)に心を寄せていた権三は一介の人足にすぎなかったため、典膳に頭ごなしに娘とつき合うこと禁じられます。以来、権三は下っ端のはしくれでもいいからいつか武士になりたいと念じていました。

旅を続けるうち、権三は足の爪が剥がれる怪我を負います。行列から離れて独り三島の宿に到着。そこで彼は千鶴と瓜二つの女郎・ちづる(江利チエミ[二役])に惚れ込み、すっかり舞い上がった権三は小此木藩の宿泊する本陣に合流すると、もっていた槍を宿の前に立て、ちづるのいる遊女屋へ向かいました。

ここで一悶着がおきます。小此木藩が宿泊場所とした本陣に、大大名の渡会藩の行列が到来し本陣を明け渡すよう要求してきたのです。1万石の小此木藩に対して渡会藩は49万石、しかし武士の面子にかけても譲れない小此木藩は、権三が預かる槍が東照神君由来の名槍・阿茶羅丸であると偽り退けようとしますが・・・。

内田吐夢監督「妖刀物語 花の吉原百人斬り」(1960年、109分)

2023-12-15 23:03:36 | 日本・1960年~
歌舞伎の演目「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべ さとのえいざめ)」がベース。堂々たる時代劇作品です。

武州佐野の次郎左衛門(片岡千恵蔵)は律儀で真面目な呉服店の商人でしたが、拾われて育った過去がありました。生れながら右の頬全体に大きな痣がありました。

この痣が原因で良縁にめぐまれません。ある日、幾度目かの見合いの帰り、誘われて吉原の門をくぐります。

一夜、遊女玉鶴(水谷良重)の情けを受けます。「心の中まで、痣があるわけはないでしょ」この言葉が、次郎左衛門の胸に深く刻まれました。

しかし、栄之丞(木村功)という情夫がいた玉鶴は身分の低い遊女。それでも、いつかは「太夫」の位を得ようと、したたかな憧れを抱いていました。

次郎左衛門は吉原にかよい、引手茶屋の女将(沢村貞子)に50両預け、玉鶴の身請けをはかります。玉鶴に太夫の位をねだられ、夫婦約束の上、これを承知。

折から、信州一円に雹が降り、桑の木が潰滅。商いがたちゆかなくなり、下請け業者の生死にかかわる事態となります。身請けの金策も当然できなきなります。

武州に帰った次郎左衛門は、思案のあげく、捨て児時代の守り刀を手離すことを決心。その金で玉鶴を妻に迎え、故郷に帰って仕事に精を出すつもりでした。しかし、この算段が失敗に終わり、兵庫屋に駈けつけると、すでに二代目八つ橋太夫の襲名披露が内定していて、次郎左衛門は追い詰められ・・・。

篠田正浩監督「美しさと哀しみと」(1965年、106分)

2023-12-13 23:06:48 | 日本・1960年~
原作は川端康成。

主な出演は作家の大木年雄(山村聡)とその妻、文子(渡辺美佐子)、ふたりの息子、太一郎(山本圭)、画家の上野音子(八千草薫)とその弟子、坂見けい子(加賀まり子)。女性の葛藤、嫉妬が前面にでている作品です。

舞台は北鎌倉、そして京都。

暮がおしせまった一日、55歳の小説家・大木年雄は新幹線で、24年前に恋人だった上野音子に会いたいと想いたち、京都に赴きます。音子は近年、名の知れた日本画家となっていましたが、現在も独身でした。

音子は当時16歳で妻子ある大木と関係し、17歳の時に大木の子を早産。女児は生まれてすぐ死んでしまい、音子は自殺をはかるも、一命は取りとめました。その後、母親(杉村春子)に連れられて京都へ逃れ、大木とは疎遠になっていました。大木は、激しい気性の持ち主だった音子を思い出し、大晦日に京都で一緒に除夜の鐘を聞こうと、音子に電話をします。

翌日の夜9時に大木をホテルに迎えに来たのは若い女性で、音子の女弟子の坂見けい子でした。音子は大木と2人きりになるのを避けるためにけい子を差し向けたのですが、このことが後の女同士の葛藤と嫉妬の切掛になります。

けい子はその後、自らの画をもって大木宅を訪れ、大木と関係をもちつつ、学生の太一郎にも接近します。嫉妬に狂い始めた音子は、けい子に、「大木の家には行くな」と忠告しますが・・・。

マキノ雅弘監督「色ごと師春団治」(1965年、89分)

2023-11-04 23:35:35 | 日本・1960年~


舞台は大正から昭和にかけての大坂、法善寺横丁界隈(二度行きました)。桂春団治の破天荒な半生が描かれています。幼ななじみの車夫、耐え続ける妻、腐れ縁の後家、彼の子を産む京都の娘が、不甲斐ない春団治を人情で包みます。

大阪ミナミの寄席「花月」で前座を勤める桂春団治(藤山寛美)。型破りの落語と独特の話術で人気を博します。

生来の女好きと酒好きがたたり、その日暮しの毎日。この春団治には、真打ち小文枝の十八番を横取りして前座で演ってしまう無軌道さがある反面、人情にもろく世話好きで、人力車夫・力松(長門裕之)や小料理屋の女中・おたま(南田洋子)の面倒をみています。

客の好みを知り、流行を巧みにとり入れた春団治の落語。人気は上々。しかし、女道楽は募る一方で、夫婦気どりのおたまから足が遠のいています。

とくに御ひいき筋、古着屋岩井辰の若後家・お千代(丘さとみ)を口説きおとし、春団治はお千代の家に入りびたりです。

そんなとき、京都の宿屋の娘おとき(富司純子)が身重の身体で春団治を訪れます。やがて、春子(藤山直子)という娘が生れます。

春団治の放蕩はいっこうにやみません。お千代と別れてくれと泣いて懇願するおときに愛想をつかし、一人家を出ていきます。

それから六年後、ある日、レコード会社との契約違反で差し押えを喰らいます。これを知ったおたまは何と・・・。その矢先、力松が危篤に・・・。

田坂具隆監督「湖(うみ)の琴」(1966年、130分)☆☆☆☆☆

2023-08-30 23:09:37 | 日本・1960年~
 
原作は水上勉による同名小説。

無体は大正末期、滋賀県余呉湖の賤ヶ岳山麓の村、そして京都。

主演は栂尾(とがのお)さく役の佐久間良子、松宮宇吉役の中村賀津男。他に千秋実、中村鴈治郎、小暮実千代、悠木千帆(後の樹木希林)、田中邦衛。

若狭の山奥の貧農の家で育った栂尾さく(佐久間良子)。糸とり女として親許を離れ賤ケ岳の西山集落にやってきました。ここは三味線糸や琴糸の名産地。
ここで生産される糸は人間の悲しみや喜びの涙で出来たと伝えられる余呉湖の水で洗われるので、いい音色を出すと言われていました。

さくが働く家の主人、喜太夫(千秋実)もその妻、鈴子(小暮実千代)も親切で、なかでも同郷の男衆、松宮宇吉(中村賀津雄)はさくに難しい仕事を優しく教えてくれました。

宇吉が兵役のために金沢へ。この間に京都の有名な長唄師匠、桐屋紋左衛門(中村鴈治郎)が糸とりの見学に来たおり、さくの美しさに眼をとめ、京都で三味線の弟子にする、と半ば強引に決めます。

さくは、後日、西山に戻ってくる宇吉のことを考え躊躇しますが、成り行きで京都行きを決意。紋左衛門の三味線の稽古は厳しく、どうやら下心もあるようです。

宇吉が兵役を解かれ、喜太夫のもとに帰ってくると、そこにさくはいず・・・。