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マーケティング研究 他社事例 564 「M&Aを繰り返し成長する1」 ~エア・ウォーターの事例~

2020-05-25 09:25:13 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 564 「M&Aを繰り返し成長する1」 ~エア・ウォーターの事例~


これまでにエア・ウォーターが手掛けたM&Aた提携の件数は、約200件に上ります。

2000年度には連結売上高2208億円のうち55%を占めていた産業ガス事業の比率は2018年度には22%に下がりました。

農業・食品や医療といった事業が新たな柱となり、2019年3月期の売上高は9年前の約2倍の8015億円となりました。

営業利益でも新事業が産業ガスに近い規模になっています。

M&A助言会社レコフによると、2019年に日本企業が関わったM&Aは前年比6%増の4088件と過去最高を記録しました。

そのうち、国内企業同士の件数は約3000件と言います。

事業の構造改革や海外市場の開拓を狙い幅広い業種で行われるM&Aですが、その成功率は3割といわれています。

では、エア・ウォーターはどのようにしてM&Aを繰り返し成功させることができたのでしょうか?

気になりますね。

エア・ウォーターは大同ほくさんと共同酸素という産業ガス2社が統合して2000年に生まれました。

当時、産業ガス業界は業界再編の真っただ中で、国内の主要なプレ―ヤ―は大陽日酸、日本エア・リキードなど大手3社に絞られていました。

多くの製品や工場で使われる産業ガスは、需要は安定しているものの大きな成長は望みにくい事業となっています。

ライバルの大陽日酸が2018年、同業のプラクスエア(アメリカ)の欧州事業を約6400億円で買収し海外市場でのシェア拡大に突き進んでいた時に、エア・ウォーターが選んだのが、ガスの需要家、つまり「川下」での事業多角化の道でした。

そのひとつが農業・食品分野です。

2002年に廃業・解散した雪印食品の北海道工場を譲り受け、ハム・ソーセージ事業に参入したのが初めの一歩でした。

しかし、縁もゆかりもないところからのスタートではありませんでした。

もともと、冷凍に使う窒素ガスを取り扱っていたことから、食品冷凍の事業は手掛けていました。

そこで、生ハムやソーセージの製造・販売に加えて、野菜の冷凍素材も展開し、それでも数年間は、まだ子会社の一事業にすぎない位置づけでした。

転換点は2009年です。

当時の社長で中興の祖とされる故・青木弘氏の決断で、7万㎡のトマト栽培用のガラス温室を買収しました。

エア・ウォーター農園を設立し、農業事業への本格参入を決めたのでした。

買収した農園は、オムロンが農業事業から徹底して別会社の手に渡り、最後は経営破綻していたものでした。

買収当時は、「廃墟のような状態になっていた」と言います。

5年間、赤字続きの苦しい時代が続き、6年目でようやく黒字化しました。

「うちは買収した事業を手放さない。基本的には成功するまでやる」

エア・ウォーターの農業参入の話は広がり、長野県安曇野市で菜園を運営していた第三セクターから、「菜園を手放したい」という話が持ち掛けられました。

そこでエア・ウォーター農園が菜園を買収し、運営は2,3ねんで持ち直した上、思わぬ「実り」もあったのでした。

それが、菜園のすぐ近くに工場を構えていたゴールドパックの買収でした。

主にコーヒーやジュースなどの飲料をボトル詰めする同社は当時、ファンド傘下で大手飲料メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産」を請け負っていました。

事業は順調だったものの、社内ではファンドではなく事業会社に経営してもらうことを望む声が上がっていました。

安曇野の地縁からエア・ウォーターに情報が舞い込み、2012年に買収に至ったというのが経緯でした。

(続く)


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