滋賀県とモンゴル・フブスグル県の民話を収めた絵本を、日本とモンゴルの交流を進めるNGO(非政府組織)「21世紀のリーダー」メンバー岩佐佳子さん(53)=大津市皇子が丘2丁目=らがこのほど作り、フブスグル県の子どもたちに配った。両県にあるそれぞれ国内最大の湖の誕生にちなむ物語を掲載しており、岩佐さんは「民話を通じて互いの国への理解を深めてほしい」と話している。
題名は「かたりくらべ 日本とモンゴルの昔話 ひともっこ山/フブスグル湖」。モンゴル語と日本語を併記し、絵や翻訳は両国の芸術大の学生や研究者に依頼した。
モンゴルの「フブスグル湖」は世界でも屈指の透明度を誇る。民話では羊飼いの老女が井戸のふたを閉め忘れてあふれた水で湖ができた。湖水を流すためにつくられた川は水があふれた際に老女が発した「エグ(うわぁ)!」という叫び声から「エグ川」になった。
滋賀からは、長浜・田村山と琵琶湖にまつわる「ひともっこ山」を紹介している。湖の土を運び、富士山頂に運ぶはずの一もっこ分の土が落ち、田村山になったという昔語りだ。
岩佐さんは一昨年12月、知人に誘われてモンゴルを訪れ、マイナス30度の寒さの中で道路のごみや泥を掃除する子どもたちを見て「元気を与えたい」と思った。知人らとNGOを結成。モンゴルの書店に外国民話はあっても自国の作品がないことに気付き、絵本作りを思い立った。
今年1月にフブスグル県を再訪した際、8学校に50冊ずつ寄付した。子どもたちは笑顔で感謝の言葉を述べ、早速、文字を指さしながら声に出して読んでいたという。
絵本は田村山のある長浜の小学校にも配る予定だ。「モンゴルの子どもたちは、一家の働き手として水くみや家事を一手に引き受ける。彼らの姿を日本の子どもたちにも伝えたい」と岩佐さん。「民話はその国に生きる人々そのものを表す。世の中、暗い話が目につくので来年は笑い話をテーマに絵本を作ってみたい」と意気込んでいる。
【関連ニュース番号:0801/124、1月27日】
(3月12日付け京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008031200082&genre=K1&area=S20