開戦から3月20日で5年を迎えたイラク戦争を考えようと、米国とイラクの戦争体験者を招いた講演会が3月23日、大津市梅林1丁目の滋賀弁護士会館で開かれた。生々しい戦場での体験談に、参加した約120人は戦争の悲惨さを感じ、早期終結を願っていた。
米軍や自衛隊の撤退などを訴えるため、市民団体「ピースアクション・イン・滋賀・実行委員会」が主催。元米軍兵士ジョー・ウィラーさん(31)と、イラクの首都バクダッドで戦傷者の治療にあたったイラク人医師のモハメッド・ヌーリ・シャキルさん(31)が講演した。
ウィラーさんは大学卒業後の2000年、学費返済のために陸軍に入隊。開戦後、衛生兵としてバグダッドに入った。暗闇から銃で狙われる環境に、周囲の兵士は兵隊、市民、子どもの区別なくイラク人を撃つように。10代の少年を撃ち殺し、「やってやったぞ」と歓喜の声をあげた同僚。パトロール中の自分たちに手投げ弾を手にして何げなく近づいてきた6、7歳のイラク人少女-。
「戦場では兵士が『危ない』と決めれば殺す。実際に脅威かどうかは問題ではない」。ウィラーさんは時折、涙で声を詰まらせながら、「兵士のほとんどは愛国心などではなく私と同じような経済的理由で入隊した。もうこんな戦争は終わらせねば」と訴えた。
一方、シャキルさんは開戦後、移住していたヨルダンからバグダッドに戻り、親族や恩師が殺される中、医師として死傷者を救護。傷ついた子どもたちの写真を紹介しながら「この子たちが国際秩序の脅威というのか。ミサイルの下には誰がいるのか知ってほしい」と話した。
参加した大津市大物の櫛淵久子さん(79)は「親や兄弟を戦争で亡くした経験があり、二人の怒りがとりわけ強く伝わってきた。あの戦争から何十年もたっている今でも人が人を殺す現実が許せない」と話した。
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(3月24日付け朝日新聞)