
最先端の遺伝子技術を駆使 mRNA-1273
モデルナ社のワクチン候補であるmRNA-1273は、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝子を使って生成する最新の遺伝子工学を駆使して作るワクチンである。
新型コロナウイルスは、ウイルスの細胞の外郭に「突起」(スパイク)が付いている形状をしていて、この「突起」がヒトの細胞の受容体(外部の物質を細胞内入れる“入口”)に吸着して侵入する。「突起」は、スパイクたんぱく質で形成されている。スパイクたんぱく質はウイルスが胚細胞に侵入する際に、外部から細胞内に入る入口である受容体(Recptor)に吸着して、そのロックを解除する鍵として機能する。

mRNAワクチンのスキーム 出典 About mRNA-1273, Moderna
このスパイクタンパク質を形成させる遺伝子、mRNAを人工的に作り上げて大量に培養して、無害化させた脂質ナノ粒子(脂肪の塊の粒子)組み入れ、疑似ウイルスを作り上げる。脂質ナノ粒子は、ウイルスベクターとして働く物質で、遺伝物質を細胞に送達させるようを作り上げた粒子である。このmRNA遺伝子が組み込まれたナノ粒子を凝縮してワクチンをつくる。
mRNA-1273ワクチンをヒトに接種すると、新型コロナウイルスに感染した時と同じように、疑似ウイルス(ウイルスベクター)がヒトの細胞に侵入して、細胞のたんぱく質の生成・増殖システムを乗っ取り、細胞内にスパイクたんぱく質(新型コロナウイルスの「突起」[Spike]にあるたんぱく質)を増殖させる。スパイクたんぱく質は、外部の物質の細胞外にも進出するようになると、ヒトの免疫システムが反応し、これを撃退しようとキラーT細胞などの免疫抗体を総動員して対抗する。
こうして免疫システムは、新型コロナウイルスの細胞への侵入の鍵となっているスパイクタンパク質の撃退法を学習して記憶をする。これを「免疫記憶」と呼ぶ。
実際にヒトが新型コロナウイルスに遭遇して、ウイルスが胚細胞に侵入しようとした時には、免疫システムが記憶を呼び戻して体内の免疫抗体を総動員してウイルスの侵入をブロックして撃退する。ワクチンの接種で、免疫システムはスパイクタンパク質への対抗策を学習・記憶しているので、いち早くウイルス感染を撃退する体制を整えることが可能になっているのである。

新型コロナウイルスの侵入をブロックする免疫抗体(Y) 出典 About mRNA-1273, Moderna
モデルナ社のワクチンは、こうした最新の遺伝子工学を利用して開発したワクチンのある。新型コロナウイルスの遺伝子構造はすでに中国が完全に解明して公開しているので、実際に新型コロナウイルスを持っていなくてもワクチン開発は可能である。
モデルナ社は開発をスピードアップし、今年の夏には第3相(フェーズⅢ)臨床試験に向けて準備を進めており、「2021年までに」には新型コロナウイルスのワクチンとして承認を得たいとしている。
5月7日、ニューヨーク証券取引所では、モデルナの株価は一時13%も急騰した。 今年の初め以来、同社の株式は150%以上も値上がりした。
またワクチンを製造する世界のバイオテクノロジー企業は、いずれもワクチンの生産を急ピッチで進める体制を整えており、今年7月には備蓄の構築を開始できるとしている。 先週、モデルナ社はスイスの製薬企業であるロンザ(Lonza)との10年間の提携を発表した。
(出典 ニューヨークタイムズ 5月7日)

新型コロナウイルス 治療薬・ワクチン 開発最前線 ~レムデシベル アビガン モデルナ オックスフォード大学/アストラ・ゼネカ Johnson & Johnson臨床試験 勝者は誰が?~
ワクチンの種類 遺伝子ワクチン ウイルス・ベクター・ワクチン プロテイン・ベース・ワクチン 不活性化ワクチン
モデルナ ワクチン、mRNA-1273の第2相(フェ―ズⅡ)臨床試験を開始
新型コロナウイルスは変異する 米英の研究者が確認
BARDA NIH(米国立衛生研究所) NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所) CDC(アメリカ疾病予防管理センター)

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)
2020年6月20日
Copyright (C) 2020 IMSSR
******************************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
******************************************************