goo blog サービス終了のお知らせ 

一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

将棋ペン倶楽部 通信47号

2016-06-21 00:52:12 | 将棋ペンクラブ
先日の抜歯の話だが、10日に病院で降圧剤をもらった私は、1週間薬を服用し、17日にあらためて病院で診てもらい、どうにか抜歯OKの了承を得た。
20日に歯医者へ行き、改めて血圧を測る。数値は下がっていて、ついに抜歯の運びとなった。ただ、まだ抜かず、今度は抗生物質をもらい、それを服用して数日後に抜くのだ。
だが、医者は「痛みはありますか?」「歯茎は腫れてないんですよねえ」とつぶやく。こっちは腹を括ってきているのだが、そんな言葉を聞くと、決心が揺らぐ。もう抜く歯なのに歯根に薬を塗ったりして、そんなのを目の当たりにすると、私はこの、根しか残っていない歯に愛着がわいてしまう。
「先生、いまさらですけど、この歯は抜いたほうがいいんでしょうか?」
私は恥を承知で聞いてみた。だけど医者は即答しない。抜いてもいいし、抜かなくてもいいというスタンスだ。抜いたら取り返しがつかないだけに、医者もファイナルアンサーは、患者に任せているようだ。
それで、私も土壇場の土壇場になって、抜歯を延期させてもらった。
しょせん私は、小心者だった。

   ◇

20日に「将棋ペン倶楽部 通信47号」が届いた。その案内をしよう。

●表紙
写真は、11日に行われた関東交流会の風景。その速報性に拍手。

●関西交流会の一日 森充弘…P2~P5
時系列で端的にレポートしている。同じ棋士の名前を何度もフルネームで書いているのは、筆者の信念だろうか。

●将棋川柳 ゲノゲのきたろう…P6
回答者がレギュラー化している。新規の回答者がほしい。

●勝負のもつ力量感―夢から覚めて考えたこと― 水野保…P7~P12
筆者は奨励会員で、現在対局している。しかし形勢はわるい。筆者には年齢制限が迫っていて…というところで、眼が覚める。筆者は夢を見ていたのだ。「勝負の力量感」を、ある歴史的イベントと絡めて考察する。

●懸賞詰将棋解答…P12

●愛媛・香川の子供将棋教室 榊原智…P13~P14
現地に訪問しているのに、ページ数が少ないのが惜しい。せめて4ページぐらい書いてほしい。

●第28回将棋ペンクラブ大賞推薦作一覧…P15~P17
全国の会員と幹事から、観戦記部門27、文芸部門11、技術部門6の作品が推薦された。

●編集日誌 湯川博士…P20

通信号とはいえ、全20ページは少ない。実はこの号、私は投稿するつもりだった。正確に書けば、投稿ネタがあった。しかし頭の中の構想を文章に起こすのが億劫で、書きそびれてしまった。
実は現在発売中の「将棋世界」に、私が書きたかったテーマの根幹が掲載されていて、もし今号に拙稿が載っていれば、合わせて読むとおもしろいものになっていた。
私がしっかり書いていれば――。
おのが怠惰をうらんだものだった。

このネタは多少時事的なものもあったので、次号への投稿は微妙なところ。気分が乗ったら、書き起こそうと思っている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第28回将棋ペンクラブ大賞、二次選考通過作品決定!!

2016-06-20 01:16:17 | 将棋ペンクラブ
将棋ペンクラブから、「第28回将棋ペンクラブ大賞」二次選考通過作品が発表された。以下に記す。


●観戦記部門 一次選考通過19作品→二次選考通過5作品

藤田麻衣子 第28期竜王戦本戦トーナメント準々決勝 永瀬拓矢―佐藤康光 読売新聞

佐藤圭司 第73期名人戦七番勝負第2局 羽生善治―行方尚史 朝日新聞

渡辺弥生 第46期新人王戦3回戦 八代弥―佐々木勇気 しんぶん赤旗

馬上勇人 第5期女流王座戦五番勝負第3局 伊藤沙恵―加藤桃子 日本経済新聞

先崎学 第1期叡王戦三番勝負第2局 郷田真隆―山崎隆之 ドワンゴ

藤田麻衣子さんは文才豊かな実力派で、私は大いに買っている。本局は熱戦ということもあったが、指し手の取材に、より熱いものを感じた。藤田さんは昨年優秀賞を獲ったが、今年はワンランクアップなるか。
佐藤圭司氏の観戦記はあまり読んだことはないが、本作は大舞台にふさわしく、雅な描写が素晴らしかった。
渡辺弥生さんは、女流棋士会ブログでエスプリに富んだエッセイを発表している才女である。観戦記もおもしろく、読んで得した気分にさせてくれる。本作でも、両対局者への観察眼がいかんなく発揮されていた。
馬上勇人氏は女流王座戦の担当者にして、特級のアマ強豪。観戦記のツボも心得ていて、本作では、指了図の区切りが抜群にうまかった。
先崎学氏は貫禄の二次予選通過。今回の私の採点は、「優」8、「良」10、「可」1だった。上の4本は、私は「優」をつけたが、本作は「良」だった。本作は一読して抜群におもしろく、最初はノータイムで「優」をつけた。ただ、ネットでの発表なので、将棋ファン以外の読者も想定しており、くだけた表現が散見された。それが先崎流の思いやりであり大いに評価しつつも、私はやや鼻についてしまった。それで「良」に変えてしまったのだ。ただし秀作であること変わりはなく、本作が二次選考を通過したことに、私はホッと胸をなでおろした。

なお、私が事前に挙げていた「二推し」の作品は、いずれも二次選考通過ならず。両観戦記者には、次回の登場を期待している。


●文芸部門 一次選考通過4作品→二次選考通過3作品

北野新太「透明の棋士」ミシマ社

白鳥士郎「りゅうおうのおしごと!」SBクリエイティブ

佐藤康光「長考力 1000手先を読む技術」幻冬舎

「透明な棋士」は、ネット発のエッセイが印刷物になった、異色作品。全体に温かさがあふれていて、読後感が心地いい。
「りゅうおうのおしごと!」は、完結していない作品だったので、あえて評価しなかった。
「長考力」は、超一流棋士のよくあるエッセイだが、やはり手堅い出来になっている。なお、本のタイトルは中身とあまり関係ない。


●技術部門 一次選考通過5作品→二次選考通過2作品

大平武洋「ネット将棋攻略!早指しの極意」マイナビ

鈴木大介「将棋戦型別名局集 四間飛車名局集」マイナビ


以上の二次選考通過作品をもって、7月16日(土)に最終選考会が行われ、大賞、優秀賞が決定する。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

将棋ペンクラブ関東交流会2016(7)「幹事に感謝」

2016-06-19 12:34:14 | 将棋ペンクラブ
熊倉紫野女流初段を見ると、ひとりの男性参加者と談笑していた。でも人数が少ないせいか、ちょっとさびしそうだった。
私たちは将棋の話に興じ、里見香奈女流四冠の話になった。「彼女は今、幸せなのか」というテーマである。そこにちょうど湯川恵子さんが通ったのだが、さすがに意見は聞けなかった。
楽しい時間はすぐに過ぎ、午後7時が近くなった。最後は「一本締め」でお開きとなった。

Ok氏はバトルロイヤル風間さんに似顔絵を描いてもらい、満足気だった。Ok氏も昨年、棋書を紛失した口だが、そのマイナスを取り返しただろうか。似顔絵もそっくりだった。
ここで二次会への参加の出欠がとられた。場所は「みろく庵」で、棋士御用達の食事処だ。
いつもは静かに帰宅するのだが、今回改めて出欠を取られると参加したくなり、挙手した。
後片付けの最中、Tag氏と今回の将棋ペンクラブ大賞の話をする。それぞれ推したい観戦記が2つあり、1つは同じだったが、もう1つは別れた。その激論を交わしていると、そばにいた熊倉女流初段が目を白黒させていた。
「ペンクラブ大賞って、こんなに早く決めているのですか?」
まあ、そうである。9月の会報秋号に掲載するためには、早めの選考が必要となる。
ちなみに来月、木村晋介会長らによる最終選考がある。

三々五々、みろく庵に向かう。参加者は20人前後らしい。このほか、有志で別の場所に繰り出した人もいるだろう。
みろく庵に入って任意の席に座る。とりあえず、いる者だけで乾杯。
「いやあ、ここがみろく庵なんですね…」
と、右の丸メガネ氏が感慨深げだ。彼とは昨年のペンクラブ大賞贈呈式での指導対局で、隣合わせになったらしい。私はヒトの顔と名前を憶えないので、いつも失礼している。
しばらくして窪田義行七段が到着した。私たちのシマに来たが、知った顔がなくて怪訝そうである。やがてM氏やWas氏が到着し、七段はそちらのシマに移った。
私のシマは計7人になった。知った顔では、星野幹事、Tag氏、大阪在住氏、五段氏、丸メガネ氏…。ではここで、席の配置を記しておこう。

大阪 Tag 五段
            壁
星野 青年 一公 丸

アカシヤ書店の星野氏は今日所要があり、昼はいなかった。だが午前中に将棋会館に来て、すべての仕事を終わらせてから現場に向かった。こうした陰の功労によって私たちは、心置きなく交流を図ることができたのだ。
Tag氏が席を外している間に、室谷由紀女流二段の話になる。
「室谷さんはあと1年で大阪に帰ることになってるんですよ」
と大阪氏。
「いやそれはないでしょう。彼女はこのまま東京で暮らします」
「いや3年経ったら大阪に帰ると、森(信雄)さんと話がついてるんやて」
「いやいや、東京ほど刺激的な街はないですよ。一度東京に来たら帰れませんって。室谷先生は残ります」
私と大阪氏の意見が真っ向から対立したが、話に加わる者はいない。
Tag氏が戻り、その後も談笑が続くが、私は大阪氏の名前が思い出せない。氏は会報投稿の常連なのだが、例によって失念している。あちらは「大沢さん」としっかり私の名前を読んでいるのに、私は失礼なことだ。
左の青年は、知己がおらず所在なさげだ。それを察知してか、後ろのシマにいたA氏が彼を引き取った。
私はこっそりスマホを取り出し、「将棋ペンクラブ」「会報」で検索する。大阪氏の氏名を知るためだ。
すると私のブログ記事が出てきて、彼が「Shigeyama」と分かった。ああShig氏だ!
やっとすっきりした。
ここで丸氏が退席。北陸新幹線で上田に帰るという。昼の熊本県水俣市もそうだったが、地方から参加する人には頭が下がる。丸氏の未来に幸あれと願った。
Shig氏、「女流棋士の総選挙やったら、上位は誰かなあ」。
1位は室谷女流二段でお互いキマリだが、2位が出てこない。
Shig氏「竹俣紅ちゃん!」
一公「おおそうか!」
しかし3位が出てこない。昔だったら山口恵梨子女流二段と即答するのだが、今はその輝きに翳りが見えている。
結局3位以下は出てこなかった。
再び室谷女流二段の帰阪の話が出る。
Shig氏「室谷さんは大阪に帰りますよ」
Tag氏・一公『帰りません!』
今度はTag氏が加勢してくれた。Tag氏とは将棋の意見が合わないことが多く厄介な存在だが、味方になればこれほど心強い存在はない。
果たして室谷女流二段は来年、どう結論を出すのか。
またも里見女流四段の話になったりして話題は尽きない。
しかし時刻は10時近くになり、ここで散会となった。今年も楽しい交流会だった。幹事諸氏に改めて感謝の意を表し、来年も盛大な会になることを願った。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

将棋ペンクラブ関東交流会2016(6)「いけないこと」

2016-06-18 02:16:25 | 将棋ペンクラブ
増田裕司六段のもとに向かうと、その先にいた渡部愛女流初段が私たちを見て、ケラケラ笑った。彼女には私たちがどう映ったろうか。
「増田先生、はじめまして。私、増田先生に似てると思うんですが、どうでしょうか」
「似てます似てます」
私が担当直入に切り出すと、増田六段は気圧されたように言った。
私は大いに満足して、ツーショット写真を所望する。近くにいた女性幹事さんにスマホを渡し、1枚撮ってもらった。いまさらだが、便利な世の中になったものだ。
が、その画像を確認すると、私があまりにも太っていて、愕然とした。しかも頭が薄い! この風貌で、よく増田六段が認めてくれたものだ。
私が半分うなだれて戻ると、A氏が
「関西の人は太ったり痩せたりが激しいからネ。この5年の間に増田さんは痩せて、逆転しちゃったんじゃない?」
と、分かったような分からないような理屈で、慰めてくれた。
いずれにしても、男性棋士との初のツーショット写真が増田六段とは、光栄なことであった。
アルコール類はかなり買ってきたが、あまり飲んべえもいないようで、未開栓の缶がけっこう残っている。割と人気があるのはソフトドリンクで、これは足りないくらいだ。もっと買っておくのだった。
左前方の女性陣は、若い男性とのおしゃべりに忙しいようだ。A氏もどこかへ行ってしまった。私の右は前田祐司八段のような人で以前対局したことがあるが、今日はまだ話していない。
その右の人も中年で、囲碁の井山裕太七冠の記事を手帳に貼っていた。かと思うと日本全国のご当地アイドルとのツーショット写真も大量にスクラップしており、その守備範囲の広さに圧倒された。前者はともかく、後者は若々しい趣味で、私もこうありたいと心底感心した。
もう6時は回っていると思うが、例年と雰囲気が違うのは、まだ空が明るいことだ。わずか3週間程度の違いだが、そのぶん陽が伸びているのだ。

私の右が空き、上野裕和五段が座った。私は昨今の将棋戦術について感じていることを上野五段に言う。まあ簡単にいえば、対振り飛車に急戦を指す人がいませんね、これでいいんですかね、の類だ。その言い方が我ながらエラソーで、これじゃあ立場があべこべである。
上野五段は私の憂慮に同意してくれたが、内心はどうだったろうか。
上野五段はまたどこかに行ってしまい、私の左には、2局目に対局した三段氏が座った。彼とは何となく話し、右に「前田八段」が戻ってきて、その輪に加わった。
しばらく3人で話していたが、A氏の奥さんと「前田八段」が同時に私に話しかけた。
ここで私がまたもや大悪手を指す。奥さんを手で制して、「前田八段」の話を先に聞いたのだ。
ここ、仕事ができる人なら、何はともあれ女性の話を聞くのではなかろうか。よく分からぬが、そんな気がする。
高校の文化祭の時、近隣の女子校の将棋部が我が将棋部に遊びに来た時も、私は相手をせず、後輩との将棋を優先させた。ほかにも似たような事例はいっぱいあるが、この空気の読めなさが、私の人生のすべてである。だから彼女さえできないのだ。
ちなみにこの後、もうA氏の奥さんと話す機会はなかった。まあ、そうなるのである。

A氏が渡部女流初段を連れてきて、男性会員のそばに招き入れた。現金なもので、それまで女性陣と話していた男性陣が、そろって回れ右をする。みんなそろって記念写真を撮ったりして、楽しそうだ。
もっともA氏の奥さんら女性陣も、渡部女流初段と写真を撮っていた。
ちなみに私は、(女流)棋士とはツーショットより、単独で撮りたいほうだ。自分が映ることに嫌悪を抱くからで、さっきの増田六段との写真が異例だったのである。
渡部女流初段はみなと談笑する。この位置からは彼女の後ろ姿が拝めるが、紺のノースリーブから伸びる腕がなまめかしく白い。
私は「前田八段」や三段氏と談笑するが、眼は渡部女流初段に釘づけだ。
そのうち、何だかムラムラしてきた。
渡部女流初段とは、彼女が中学生の時からの知り合いだが、今までそんな目で見たこと一度もない。まあ、そのくらい渡部女流初段が魅力的だったわけだが、おのが変態的性癖に情けなくなった。
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

将棋ペンクラブ関東交流会2016(5)「魔が差した」

2016-06-17 00:26:03 | 将棋ペンクラブ

第2図で私は△3三角と受けたが、チャンスを逸した。以下▲7六銀△8四銀▲6八角△2二飛と進んだが、これでは後手作戦負けだ。
△3三角では何はともあれ、△7六歩と打つところだった。以下▲6八角で2四の地点が受からないが、そんな悠長なことをいっている局面ではなかった。
本譜は▲7六銀と埋められたのが痛い。△2二飛も利かされで、こんな手を指すなら最初から袖飛車にしないほうがいい。
実戦は私が劣勢に陥り、最後は余計な1歩を渡したために、それが致命傷になって、敗退。この1敗は痛かった。
時に午後3時30分。もう新しい対局は付けず、終わったところから盤駒を片付ける。しかし今年は例年と様相を異にしていた。全然対局が終わっていないのだ!
数えてみると、21局もあった。さらに指導対局は7面が続行中。私は唖然とした。
それでも徐々に対局が終わり、今度は長テーブルが出される。4時からの懇親会のためだ。
しかしここでも異変が起こった。通常は壁に沿ってテーブルを配置するが、今年は参加者が多いため、部屋の中央にもテーブルを配したのだ。上から見ると「目」のような感じだ。これでは各人の移動がままならないが、やむを得ない。ちなみに今年は90人以上の参加者があったらしい。

A氏らは近くの酒屋へ酒類の買い出しだ。何人か若手をピックアップしているが、いつもはこんなに遅かったろうか。それを質すと、今年は参加者が多くて、買いに行きそびれたとのことだった。
うむ、それなら私も手伝いたい。それで、私もついていくことにした。ここで席を離れたら、自己紹介と色紙or棋書ゲットの機会を逸するが、もし間に合わなかったら、あとで余った棋書でももらえればいいと思った。
酒屋は将棋会館の近くにあった。が、そのすぐ先で何かの撮影をやっている。どうも、ドラマ撮影のようだ。今朝のテレビクルーがそうだろうか。そういえば対局の時も、誰かが「トヨエツを見た」とかしゃべっていたっけ。
しかし私は酒屋に入るしかない。棚にある缶ビールや缶チューハイを片っ端からカゴに入れていく。
レジ前では、私たちペンクラブ組が列を作っていた。と、俳優の甲本雅裕の姿が見え、店のガラスを鏡代わりにして、髪の毛を整え始めた。
おおっ…と思うが甲本雅裕、ふつうの風貌である。はっきり言って、存在感は私たちとまったく変わらない。
だが彼はれっきとした俳優で、周りのスタッフも相当気を遣っている(のだろう)。世の中不公平だと思う。ちなみにこれ、「俳優」を「棋士」に置き換えても、意味が通じそうではある…(さらにどうでもいいが、甲本雅裕は、渡部愛女流初段と同じ6月26日生まれである)。

ビニール袋に大量の缶ビールを入れて、4階大広間に戻る。そのまま各テーブルに何本か置いていった。ついでに床の間の賞品を見ると、色紙や棋書が綺麗さっぱりなくなっていた。
…チッ、酒なんか買いに行くんじゃなかった。
私は急に後悔の念がわいてきて、Was氏に棋書が残っていないか聞いた。
「全部なくなっちゃいましたよ」
「……」
私は目の前が暗くなった。

1日に6勝もして何ももらえないって、そんなバカな話がある!?

昨年は熊倉紫野女流初段の色紙を獲り損ね、棋書もこの部屋で紛失し、結局出てこなかった。今年こそは何かほしいと、1時間前まではもらう気満々だったのだ。それが、どこで悪手を指したのだ? 酒屋だ。酒屋同行は完全に魔が差した。
と、いまごろブーたれたところでもう遅い。
まったくこの一連の出来事は、自分の人生を表しているかのようだった。
私はもとの席から右に1つズレたところに座り、その向かい付近にはA氏夫妻が座った。そうだ、さっき見た女性はA氏の奥さんだった。奥さん、当ブログに登場するのは数年ぶりである。
その左はこれまた美人だ。ビジネスショウの大手電機メーカーの受付にいそうな雰囲気で、実際その手の経験者に思われた。
彼女はA氏夫妻の紹介で来たらしい。A氏が私を紹介してくれるが、頭が「中住居」の私と話しても彼女はおもしろくないだろうから、私も必要最低限のことしか言わなかった。
将棋ペンクラブの雄、窪田義行七段のスピーチ。
「だいぶ遅くなりましたが、やっと七段になりました…」
会場はやんややんやの喝采である。
窪田七段は小物を出して、ポソポソしゃべる。続いて週刊誌を取り出して、ごちゃごちゃやる。私たちに見せたいページがあるらしい。相変わらずの窪田ワールドで、会場が爆笑の渦に包まれた。
続いて上野裕和五段の挨拶。
「私は女流棋士の指導と比べると人気がないということが分かっていますので、指導対局で工夫をしています。3段階に分けて…」
要するに、下手の希望によって手の緩め加減を変えるというわけだ。さらに前述した、記譜プリントサービスもある。この誠実さが上野五段の魅力である。
続いて熊倉紫野女流初段と渡部女流初段のスピーチがあった。2人は幹事席のほうにいて、私は今年もお話しできそうにない。私は一度座った場所から移動しないので、必然的にそういうことになる。
みんな酒類をつぎ、湯川博士幹事の音頭で乾杯(木村晋介会長は所用で欠席)。この際、将棋ペン倶楽部会報の表紙絵を担当してくださっていた、中原周作氏の勇退が発表された。
ここからは楽しい雑談となるが、私は例によって自ら話しかけず、場の雰囲気を愉しむ。
しばらくすると、幹事席の手前に、増田裕司六段の姿を見つけた。増田六段は昼にちらっと見かけたが、懇親会にも参加してくれたのだ。
その増田六段は、以前当ブログにも書いたが、顔が私とよく似ていると思う。いや、そっくりだと思う。
今回改めて、A氏夫妻に問うてみる。すると「似ている」と言った。
私は念には念を入れて、増田六段のもとへ行く。といっても談笑中の六段に声は掛けず、六段のすぐ上に我が顔を近づけて、A氏夫妻の反応を見るのだ。ふたりがゲラゲラ笑っていた。
私が席に戻ると、A氏が「似てますよ」と笑う。
ブログで発表した時は不評だったが、我が主張が証明されて、私は満足した。
…いやしかし、当の増田六段は私を見てどう思うのだろう。私は再び、増田六段のもとへ向かった。
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする