一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2月21日のジャンジャンマンデー(後編)・暴言をお詫びします

2011-02-25 01:02:45 | LPSAマンデーレッスン
芝浦サロンで私が最強と思う会員はO氏である。序・中盤の形の明るさ、研究量は他の追随を許さない。そして二番手グループの筆頭格がKun氏と思う。Kun氏もやはり不断の研究が光る。得意は振り飛車だが、相居飛車の乱戦も指しこなし、序・中・終盤とも穴がない。指していてイヤな相手である。
この日の4局目、Kun氏に勝てば三賞の光がはっきり見えてくる、大事な一戦であった。
振り駒で私の後手。余談だが、帰宅後この将棋を並べ返したら、どうも手数が合わない。ここで初めて、私が後手番だったことに気がついた。ずーっと、先手番だと勘違いしていた。
☗7六歩☖3四歩☗7五歩☖8四歩☗7八飛。ここで☖8五歩とすると、☗7六飛の菅井流でくるのだろう。そうなってはKun氏の研究範囲だから、私は☖8五歩を保留して、駒組みを進める。これで先手にはのびのび指されてしまうが、それで後手が作戦負けになるほど、将棋は簡単ではない。ひねり飛車の後手方だと思えば、対策はいくらでもあると思った。
数手後、☗1六歩に☖4四歩。これに☗4六歩は☖4五歩☗同歩☖同銀で1歩を手持ちにできるからよい。したがって先手は☗1五歩だが、私は☖4五歩と伸ばして、これで手に困らなくなった。
私は☖4三銀~☖4二金~☖4四角~☖3三桂と、着々と厚みを作ってゆく。
Kun氏は☗4八飛と回り☗4六歩☖同歩☗同飛と1歩を手にしたが、私は☖4五銀☗4八飛☖4六歩とガッチリ守る。次に☗4七歩☖同歩成☗同金ならこの位はなくなるが、先手の金が守りから離れるので、それは指さないだろうと思った。
4四と6五でお互い金銀を取りあったあと、私は6三の金を味よく☖5四金と上がる。これは厚みが生きる展開になった。
しかし☖8六歩☗同歩に、☖4三金と立った手がココセ級の緩手だった。指したあとに☗6四歩の垂らしに気づいた。実戦も☗6四歩。これを☖同金なら☗4四歩の叩きが厳しい(☗7七角が利いている)。よって☖6六金☗同銀☖同歩と進めたが、☗6六同角と歩を払わず、☗6三歩成とされて参った。
私は勢い☖6七歩成☗4四歩だが、ここで☖7七とがどうだったか。☗4一銀☖同玉☗4三歩成とされていたら、後手玉はほぼ受けなしで、投了もあった。
ところが本譜はたんに☗4三歩成だったので、☖同玉と取り、これは一遍に玉が広くなった。
以下は☖8六飛と走り、数手後の☗4七同飛に☖4六歩☗4九飛☖8八飛成と王手で成りこめては、さすがに優勢を意識した。
ではここで、終盤のハイライトを記してみよう。ここからは便宜上、先後逆とする。

先手・一公:1六歩、1九香、2二竜、2九桂、3七歩、5六銀、5七歩、6三金、6四歩、6五桂、6六玉、7五歩、8六歩、9七歩、9九香 持駒:角2、金、歩3
後手・Kun氏:1一香、1四歩、3三桂、3五歩、4七と、5三歩、5四銀、6一飛、7二金、7三歩、8一桂、8二王、8三銀、8四歩、9一香、9五歩 持駒:金、銀、歩

☗6三金に☖5四銀まで。私の残り時間は2分余り。Kun氏は30秒の秒読みに入っていた。
ここで私は☗7二金☖同銀☗7三桂成☖同桂☗7二竜☖同王☗8三角からの詰みを考えた。しかしちょっと過激か。じゃあ☗5三桂成と緩めるか。しかし自玉は大丈夫だろうか。桂馬がないので即詰みはないと思うが、危ない。いま見れば自玉に詰めろもかからないのだが、対局中はずいぶん危険に思っていた。
船戸陽子女流二段が、観戦に来ているのが分かった。いや松尾香織女流初段だったかもしれない。残り1分30秒。ここでいいところを見せてやれ、と、私は☗7三桂成と踏み込んだ。これを☖同桂なら、☗7二金☖同銀☗同竜…で、先ほどの順に戻る。ところがKun氏は☖9三王!
まったく読みにない手を指され、私は焦った。逃げる手は簡単に寄りだと考えていたからで、私はとりあえず☗8二角と打つ。しかし当然☖9四王と上がられ、8二角がスカタンになった気がした。☗8二角では黙って☗7二成桂か☗7二金、あるいは☗8三成桂☖同金☗7二角でよかった。
ここから私は乱れまくる。

☗6七角☖8五銀☗同歩☖6五歩☗同銀☖5五金☗7七玉☖6五銀☗8四歩☖7六銀打☗同角☖同銀☗同玉☖8五角☗8七玉

二枚目の角を打って銀を使わせたが、その銀を取っている間に、こちらも角を取られてしまった。「米長の将棋」では、「むやみに王手を掛けるべからず」と教えているが、こうなっては☗6七角も、貴重な持ち駒を使って、損だった。ここでも、黙って☗9六歩があったかもしれない。
本譜は明らかに流れがおかしい。さらに指し手を記してみよう。

☖6三飛☗同歩成☖8二金☗同竜☖6五角☗8八玉☖8七金☗7九玉☖6七角成☗6八金☖5七と☗6七金☖7八歩☗8九玉☖6七と

☖6三飛と質駒を取られて焦ったが、☗同歩成☖6七角成には☗7七金で受かると思った。ところが☖6七角成の前に、☖8二金と8二の角を取られて青くなった。ここで☗8二角の罪が具現化した。持駒を打つ罪のひとつは、「相手に取られる可能性がある」ということだ。自分の駒台に置いておけば、相手に渡ることは絶対にない。
私は仕方なく☗8二同竜だが、ここでは☗8三歩成と詰めろをかけておくほうがよかった。いまは竜を働かせるよりも、8四の歩を消去するべきだったのだ。…と対局中は考えていたが、☗8三歩成では☗8六金と攻防に打ったほうがなお良かった。
Kun氏は手順を尽くして☖6七角成。これが詰めろ逃れの詰めろになって、勝負あった。☗8三歩成なら、少なくともこの手はなかったのだ。
私は☗9一竜の王手。Kun氏は☖9二銀と引く。銀冠の8三銀で移動合いされ、クサッタ。賞品がかかっていなければここで投了というところだが、投げ切れなかった。ここからの数手は記すのをためらうが、自戒のために記す。

☗7六角☖同角☗9二竜☖9三角☗8三竜☖8五王☗9六銀☖同歩☗7四竜☖8六王☗8五飛☖同角☗9五銀☖7七王☗8六銀打☖6八王 まで、Kun氏の勝ち。

実は☗7六角と逃げ道を封鎖して、寄りがあると思った。しかし現実は全然詰まない。☗8三竜以下の指し手は見苦しく、棋譜を汚しただけだった。
投了したあとは、どちらも放心状態。ただもちろん、私のほうがショックが大きかっただろう。終盤のあの将棋を負けたら、勝つ将棋がない。いやはや、自分がこんなに弱いとは思わなかった。これでは天河戦で惜敗した船戸女流二段や松尾女流初段を笑えない。
船戸女流二段が、どちらが勝ちましたか、と聞きにくる。
「私です」
とKun氏。これはつらい瞬間だった。
駒を駒箱にしまって、受付でたむろしている女流棋士らの元へいく。松尾女流初段に、
「(天河戦で)中井先生に負けた松尾先生の気持ちが分かりました」
と憎まれ口を叩く。
「ムカツク~」
と松尾女流初段。
Kun氏がお手洗いに行ったのを確認して、
「いや~、必勝の将棋を負けましたよ」
と嘆く。すると藤森奈津子女流四段が
「私なんか現役時代しょっちゅうだったわよ」
と言う。「大沢さんも、陽子ちゃんとの将棋とか、悪いのを拾ったのがあったんでしょう?」
「ああ、だけどあれは……」
「負け将棋を勝ったりすることもあるんだから、これでおあいこ。文句を言わないの」
とたしなめられてしまった。おフクロ…。
中倉宏美女流二段が、
「大沢さん、この前はワイングラスありがとうございました」
と言う。
「いえいえ」
「あれ手作りで…高かったんでしょう?」
「いえ、まあ、はい。手作りだから、買う時にこう、4脚出してもらったんですけど、それぞれ微妙に違いましてね、中倉先生の輪郭に最も似ているモノを選びました」
「……」
「こう下ぶくれのやつを」
「…………」
「あああっ!! いや違います、あのっ、白ワインのほうは限定品のやつでして、現地でしか買えないものだったんですから。ネットでも売ってないやつだったんですから! グ、グラスだって初日に買うのは味が悪かったんですけど、ずーっとカバンに入れて、だ、大事に持ってきたんですから」
「…………」
どうもいかん、熱くなって、心にもないことを口走ってしまった。しかしこのままここにいると、自分でも何を言いだすか分からない。
私はKun氏とTat氏を誘い、サイゼリヤに向かったのだった。
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2 コメント

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語るに落ちる (洋志)
2011-02-25 10:44:47
なんか、語るに落ちる(やぶへび?)の連発だったようですね。洋志もそういう時があるなぁ。
 さっと切り上げて、さっぱり忘れるのがいいのだろうなぁ。なかなか出来ないけれども(笑い)。
 イッコーさんの場合は愛嬌か(笑い)。
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語るに落ちていない (一公)
2011-02-25 12:55:23
>洋志さん
いやいや…松尾先生に言ったのは本音ですけど、宏美先生には、本当に、心にもないことを言ってしまいまして、宏美先生には本当に失礼しました、はい。
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