休む間もなく、３回戦である。相手は天野チルドレン２。今回は３チームが出場し、すべて４組だ。元奨励会三段・天野貴元氏の遺志を汲むチームで、どのチームも強いという印象がある。
私は引き続き大将で出場。以下藤宮氏、Abe氏、山本氏、木村晋介会長の布陣だった。
こちらはすべて着席しているが、あちらは大将～三将が決まっていない。結局じゃんけんをして、私の前にはメガネの男性が座った。
三たび私の後手で対局が開始され、初手▲２六歩。その手つきがたどたどしく、有段者には見えない。ただ、手つきだけで棋力が判断できないのが今のアマ棋界である。
それはともかく、２手目をどうするか。△８四歩で対ひねり飛車になればいいが、相掛かりになるとまったく手が分からない。よって△３四歩とし、三たび中飛車とした。
すると先手氏は▲７七角。早くもイビアナのニオイがする。しかし私に工夫がなく、ガッチリ組まれてしまった。ここ、結果論だが私は右桂を早く跳ね、△６五歩を見せて先手の動きを牽制するのだった。
先手氏は淡々と指し手を進め、今度は銀冠穴熊に変化しようとした。よく見ると、さっきはぎごちなかった手つきもふつうに見える。私は騙されていたのだろうか。いや、私が勝手に混乱しているだけか。
第１図以下の指し手。△８四歩▲４六歩△同歩▲同銀△６六歩▲５五歩△６七歩成▲同金△６五歩▲７七角（第２図）
私は△８四歩。のちの△８五歩を見た手だが、銀冠ではないので厚くない。▲４六歩からの動きには△６六歩と呼応し、▲同歩なら△同角で調子がいい。
▲５五歩には△６七歩成から先手陣を乱し、これはこれで後手も指せると見ていたのだが、次の動きはマズかった。
第２図以下の指し手。△８五歩▲同歩△９六歩▲同歩△９七歩▲同桂△２四角▲４七歩△３三桂▲８四歩（第３図）
△８五歩と突っかけたが、悪手に近い疑問手だった。▲同歩に△９六歩から動いたが、数手後の△９七歩を▲同桂と取られる手を軽視した。ここは▲同香の一手と読み、それなら△８五桂で面白いと見ていたのだから話にならない。
△８五歩では先に△９六歩▲同歩△９七歩とし、先手の出方を見るのがまだしもだった。ただしこの進行でも後手はつまらない。つまり△８五歩から動くべきではなかった。
私は△２四角と覗き▲４七歩と打たせポイントを取ったが、▲８五歩が大きく、忙しい。私は△３三桂と左桂を活用したが、突き捨てた▲８五歩を▲８四歩と伸ばされ、クサッタ。
△３三桂では△８五桂▲同桂△８四歩がまだしもだったが、それでも後手が悪い。
第３図以下の指し手。△４六角▲同歩△６六銀▲同金△同歩▲同角△６七金▲５六飛△６六金▲同飛△６五歩▲５六飛（第４図）
ここで△４六角と切ったが、自爆だった。実はこの時点で、▲５六飛の局面まで読んでいた。そしてこれは先手の駒を捌かせただけ、と認識しながら、△４六角と行ってしまった。大野八一雄七段がいたら叱責されているところで、不覚と言うほかない。
第４図以下の指し手。△４七角▲５九飛△３八角成▲６四歩△同銀▲８三銀△同金▲同歩成△同玉▲６二金（投了図）
まで、天野チルドレン２の勝ち。
△３八角成と馬を作り、△４八馬から△８四馬が利けばまだしもだが、当然そんな猶予はなかった。▲６四歩から綺麗に決められ、投了。
とにかく△８五歩からの動きがひどく、私はうなだれるだけだった。
感想戦はほとんど行わないが、In氏が来て、感想戦に付き合ってくれた。In氏は、中飛車で金銀が分裂して残った時点で不満と言い、「△４三銀が△８三にいて、ようやく戦える状態ですね」と容赦なかった。メチャメチャな言われ方だが、まあ事実である。
ほかのメンバーは、藤宮氏は快勝。後手氏も淡泊で、確かに攻防ともに見込みがないが、もう少し指してもよさそうだった。
３回戦の勝敗を聞くと、誰かが「４勝１敗」と言った。
「え？ ４勝１敗？ 出た出た！」
と私は叫ぶ。後ろの「出た出た」は、苦笑しながら言っている。「木村会長も勝ったの？」
大将だけ負けて副将以下が全勝するという、大将としては最も屈辱的な星だ。しかし天野チルドレン、もう少し強豪を揃えていたと思ったのに……いや、これは自チームに失礼か。
敵チームにしても、大将から三将までが同程度の棋力なら、私も必要以上にビビることはなかったのか？ しかしまあ、チームが勝ったので佳しとしよう。
気を取り直して、最終４回戦は大野教室２とである。対戦が楽しみではあるが、私はもう３回出たし、そもそも３回戦で負けた私は、参加資格がない。それに知った顔と戦うのも味が悪いので、４回戦の出場は固辞した。
ところが……。
（つづく）
私は引き続き大将で出場。以下藤宮氏、Abe氏、山本氏、木村晋介会長の布陣だった。
こちらはすべて着席しているが、あちらは大将～三将が決まっていない。結局じゃんけんをして、私の前にはメガネの男性が座った。
三たび私の後手で対局が開始され、初手▲２六歩。その手つきがたどたどしく、有段者には見えない。ただ、手つきだけで棋力が判断できないのが今のアマ棋界である。
それはともかく、２手目をどうするか。△８四歩で対ひねり飛車になればいいが、相掛かりになるとまったく手が分からない。よって△３四歩とし、三たび中飛車とした。
すると先手氏は▲７七角。早くもイビアナのニオイがする。しかし私に工夫がなく、ガッチリ組まれてしまった。ここ、結果論だが私は右桂を早く跳ね、△６五歩を見せて先手の動きを牽制するのだった。
先手氏は淡々と指し手を進め、今度は銀冠穴熊に変化しようとした。よく見ると、さっきはぎごちなかった手つきもふつうに見える。私は騙されていたのだろうか。いや、私が勝手に混乱しているだけか。
第１図以下の指し手。△８四歩▲４六歩△同歩▲同銀△６六歩▲５五歩△６七歩成▲同金△６五歩▲７七角（第２図）
私は△８四歩。のちの△８五歩を見た手だが、銀冠ではないので厚くない。▲４六歩からの動きには△６六歩と呼応し、▲同歩なら△同角で調子がいい。
▲５五歩には△６七歩成から先手陣を乱し、これはこれで後手も指せると見ていたのだが、次の動きはマズかった。
第２図以下の指し手。△８五歩▲同歩△９六歩▲同歩△９七歩▲同桂△２四角▲４七歩△３三桂▲８四歩（第３図）
△８五歩と突っかけたが、悪手に近い疑問手だった。▲同歩に△９六歩から動いたが、数手後の△９七歩を▲同桂と取られる手を軽視した。ここは▲同香の一手と読み、それなら△８五桂で面白いと見ていたのだから話にならない。
△８五歩では先に△９六歩▲同歩△９七歩とし、先手の出方を見るのがまだしもだった。ただしこの進行でも後手はつまらない。つまり△８五歩から動くべきではなかった。
私は△２四角と覗き▲４七歩と打たせポイントを取ったが、▲８五歩が大きく、忙しい。私は△３三桂と左桂を活用したが、突き捨てた▲８五歩を▲８四歩と伸ばされ、クサッタ。
△３三桂では△８五桂▲同桂△８四歩がまだしもだったが、それでも後手が悪い。
第３図以下の指し手。△４六角▲同歩△６六銀▲同金△同歩▲同角△６七金▲５六飛△６六金▲同飛△６五歩▲５六飛（第４図）
ここで△４六角と切ったが、自爆だった。実はこの時点で、▲５六飛の局面まで読んでいた。そしてこれは先手の駒を捌かせただけ、と認識しながら、△４六角と行ってしまった。大野八一雄七段がいたら叱責されているところで、不覚と言うほかない。
第４図以下の指し手。△４七角▲５九飛△３八角成▲６四歩△同銀▲８三銀△同金▲同歩成△同玉▲６二金（投了図）
まで、天野チルドレン２の勝ち。
△３八角成と馬を作り、△４八馬から△８四馬が利けばまだしもだが、当然そんな猶予はなかった。▲６四歩から綺麗に決められ、投了。
とにかく△８五歩からの動きがひどく、私はうなだれるだけだった。
感想戦はほとんど行わないが、In氏が来て、感想戦に付き合ってくれた。In氏は、中飛車で金銀が分裂して残った時点で不満と言い、「△４三銀が△８三にいて、ようやく戦える状態ですね」と容赦なかった。メチャメチャな言われ方だが、まあ事実である。
ほかのメンバーは、藤宮氏は快勝。後手氏も淡泊で、確かに攻防ともに見込みがないが、もう少し指してもよさそうだった。
３回戦の勝敗を聞くと、誰かが「４勝１敗」と言った。
「え？ ４勝１敗？ 出た出た！」
と私は叫ぶ。後ろの「出た出た」は、苦笑しながら言っている。「木村会長も勝ったの？」
大将だけ負けて副将以下が全勝するという、大将としては最も屈辱的な星だ。しかし天野チルドレン、もう少し強豪を揃えていたと思ったのに……いや、これは自チームに失礼か。
敵チームにしても、大将から三将までが同程度の棋力なら、私も必要以上にビビることはなかったのか？ しかしまあ、チームが勝ったので佳しとしよう。
気を取り直して、最終４回戦は大野教室２とである。対戦が楽しみではあるが、私はもう３回出たし、そもそも３回戦で負けた私は、参加資格がない。それに知った顔と戦うのも味が悪いので、４回戦の出場は固辞した。
ところが……。
（つづく）
