一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4回 中井広恵の将棋合宿(第7手)・私の熱局

2012-06-02 00:13:17 | 将棋イベント
浴衣に合わせて、髪はアップにまとめている。女流棋士の浴衣姿は、LPSAのファンクラブイベントやマンデーレッスンゆかたまつりで拝見したことがあるが、温泉旅館の浴衣はもちろん初めてだ。これは生々しいというか生活感があふれていて、なかなかよい。まさに中井広恵女流六段の魅力が全開だった。
私は中井女流六段をチラ見しつつ、対局に戻る。私は銀冠を構築した。Kun氏は△7二飛と戻し、△7五歩▲同歩△同飛。ここで私は▲5五歩と、銀取りに突きだした。△5五同銀は▲5六歩で銀が死ぬ。どうするかと見ていると、Kun氏は熟考の末△5五同飛と取った。
むかし北村昌男現九段と高橋道雄現九段の一戦で、後手の北村九段が△6四銀から△5五歩と突き、高橋九段が▲6五歩と突き返したことがあった。これを△同銀は▲5五歩で銀バサミ。しかし△5三銀(引)では、何をやってるのか分からない。
将棋には負けても指せない手がある。そこで北村九段は決然と△6五同銀と取ったが、▲5五歩の数手後、▲6六歩と打たれ惨敗した。
Kun氏の「△5五同飛」はこれとは状況が違うが、こんな歩、取らなければ男じゃない、という手。さすがだと思った。
以下▲7六銀△7五歩▲8七銀△○○○▲4六銀△4五歩▲5五銀△同角と進む。これを書いているいま、▲7六銀では▲7六歩かと思ったが、△7五歩▲4六銀△7六歩▲同銀△7五歩▲8七銀…と、本譜と似た進行になるようだ。
飛車銀交換の局面は先手が駒得だが、後手の駒も目いっぱい働いており、いい勝負である。これは意外だった。
▲3一飛、△2一桂、5四銀、6五角、7一金の局面で、私は▲7二歩△同金▲6一飛成△7一金▲2一竜。▲6一飛成△7一金に▲6五竜と角を取れるかと思ったら、ヒモが付いていた。私は▲2一竜だが、歩切れの相手に歩を渡して、しくじった。
以下、鼻血が出るような攻防が続くのだが、ここから一気に終盤の局面を載せる。

先手・一公:1六歩、1九香、2二竜、2五歩、2九桂、3七歩、4七歩、6四角、6七歩、7四銀、8五歩、8七金、9七桂、9八玉、9九香 持駒:金、銀3、歩2
後手・Kun:1一香、1三歩、2三歩、3四歩、4五歩、5三歩、5四角、6一歩、6二桂、7二金、7三金、7五歩、8二玉、8三歩、9三桂、9四香、9五歩 持駒:飛、歩

ここで私は長考し、▲9二歩。どう指していいのか、まったく分からなかった。
しかしこの直後私は、後手玉に即詰みがあったことに気づく。すなわち▲9二歩で▲7三銀成△同金▲同角成とし、△同玉に▲6四金△同玉▲5五銀△同玉と引きずりだす。さらに▲6六銀△6四玉▲5五金△7三玉(△6三玉は▲5四金以下)に▲7四歩!!で、まだ金銀が二枚あるから詰んでいた。
盲点だった。こんな俗な手順で詰むとは思わなかった。本譜は△9二同玉と取られ、玉を早逃げさせた形となってしまった。以下▲7三銀成△同金▲同角成△5八飛まで、Kun氏の勝ち。
カナケを一枚渡せば詰むのは覚悟していたが、こうするよりなかった。しかし▲7三銀成では、まだしも▲7三角成だったか。これなら同じ手順で進んだとき、△5八飛に▲8九玉で、先手玉は詰まない。しかしさすがに△5八飛では、△4八飛と打たれるだろう(それは詰む)。
最後は残念だったが、今合宿一番の熱局だった。こんな将棋が指せるなら、私もまだまだ捨てたものではない。
ところでR氏の話によると、となりの部屋の囲碁部の中に、さっき中井広恵さんに似た人を見たけど…と怪しんだ人がいたという。しかし別のひとりが、そんなことあるわけない、と打ち消したという。
まあ、それはそうだろう。囲碁将棋の宿に中井女流六段率いる団体が泊まっていれば、ふつうはそれらしい団体名にする。
しかるに私たちは「W」という個人名で手配している。この中に中井女流六段がいるとは、ふつうは思わない。
時刻は11時すぎ。次はKaz氏とのリーグ戦である。まったく、次から次へと難敵が現れる。
マージャンは終わったようだ。しかし連珠や囲碁に興じている生徒がいる。そしてほぼ全員が浴衣姿。温泉旅館の典型的な風景である。
私の先手で▲7六歩△3四歩。ここで少考し▲2六歩。しかし以下の作戦が決まらず、気がついたら雁木に組んでいた。
きょうのKaz氏は不調らしく、電車内での「レッドアロー杯」も含め敗戦続きらしい。そう言われてみればたしかに、指し手にはいつもの元気がなかった。
私はふつうに指して、優位を築く。そこで迎えた終盤の部分図が以下である。

先手・一公:1六歩、2六歩、3六歩、4六金、5三成桂、5六歩、6三と、6四角 持駒:角、銀、香
後手・Kaz:1一香、1三歩、2一桂、2三歩、3二金、3四歩、4一玉、4四金、5四歩、5六銀、8二飛

△5六銀、と首を差し出した局面。ここで▲4二銀△同金▲同成桂△同飛▲同角成△同玉▲6二飛以下詰むのは分かっていた。しかし私は気が変わって、▲4二銀に換えて▲5二と。以下△同飛▲同成銀△同玉▲5三銀△4三玉▲4四銀成△同玉▲4五飛まで私の勝ちになったが、△4三玉で△4一玉と引かれていたら、すぐには詰みが分からなかった。△4一玉には▲4二飛△3一玉▲3二飛成△同玉に▲3三香で詰むのだが、残り時間数分で読み切れたかどうか。
将棋は最後まで気を抜いてはいけない、と教えられた。
時刻は11時50分。Hon氏はここで就寝。隣りの囲碁部も部屋に戻ったようだ。ずいぶん早いが、これがふつうといえばふつうなのだ。
午前0時を回り、合宿は3日目に入った。あれだけ買った飲み物はほとんど消費されている。しかしお菓子は思ったほど減っていない。私が所望した「うまい棒」と柿の種は、封も開けられていない。
じゃあ指しましょうか、とW氏に誘われた。ジョナ研の生徒会長と副会長の一戦だ。これはなかなか見られない対局である。
将棋は先手W氏の石田流。W氏▲7六飛~▲3六飛に、私は△3四歩を守るべく△4三玉。ここから私の苦戦が始まった。
W氏は少考を重ね、軽快に捌いていく。いつか悪手を指すだろうと期待していたが、次善手どまり。いよいよ私は苦しくなった。
▲5二馬・持駒金、銀… △1一香、1四歩、2一桂、2四歩、3二玉、3三銀・持駒銀…の局面で、W氏は▲4三金△2二玉▲3三金△同桂。以下私の逆転勝ちとなった。
局後植山悦行七段が検討に加わってくださったが、▲3三金が失着、の指摘があった。
「ここは黙って▲4一馬」
と植山七段。これに△2三銀なら先手玉への脅威がなくなるうえ、▲3二銀で受けなし。これならW氏の勝ちだった。
W氏、数年前に私と初めて指したときは私の二枚落ちだったが、最近メキメキと力をつけており、平手でもいい勝負になってしまった。W氏は植山七段や大野八一雄七段と親交が深く、よく将棋を教わっている。いわば英才教育を受けているわけで、その成果が如実に現れている、といえる。
ともあれこれで私のリーグ戦は終了。星は6勝2敗+指導対局3敗(自由対局は勝敗にカウントせず)だったが、6勝といっても負け将棋ばかり。実感は1勝7敗+3敗だった。
(つづく)
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