一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

大野教室へ行く(後編)

2011-03-14 01:03:42 | 大野教室
なおも上手の猛攻は続くが、私は剣が峰でこらえる。☖2五銀に私は3四の成銀を見捨てて、☗3八玉と逃げた。☗3一とで飛車を入手し、☗3二飛の王手。大野八一雄七段との指導対局で、初めて上手の王が見えた。
上手は☖6二香とアイシャし、☖6五歩。厳しい攻めだが、私はこのときを待っていた。6筋の歩が切れたので、☗6三歩。これは☗6二飛成☖8一王☗7一金までの詰めろだ。やむない☖6三同金に☗6四歩☖同金☗7六桂。この桂が入って、筋に入ったと思った。
☖6六歩☗同銀☖6三香打。ここが下手の決めどころである。局面の一部分を記そう。

上手・大野七段:4四銀、4七成桂、6二香、6三香、6四金、7二王、7三桂、7四歩、8三金、8四歩、9一香、9四歩 持駒・角、銀2、桂…
下手・一公:3一と、3二飛、6六銀、6七金、6八玉、7六桂 持駒:金、銀、歩2

以下☗6一銀☖同王☗6四桂☖同香。ここまでくればあと一息。☗6三金まで、一手必至だ。それを分かっていながら、私はこうやった。
☗6三歩――。
これでも上手王は受けなしと思ったら、☖5二桂と受けられて寄りがないのに愕然とした。私は仕方なく☗4三金だが、さらに☖5一銀と受けられて、二の矢がない。以下☗4一と☖6六香まで、私の投了となった。
いやはや、この将棋はいただいたと思ったのだが、まさかの敗戦である。大野七段が飛車を見捨てて攻め合ってくれたのは、私への配慮だったと思われるが、そのチャンスを活かせなかった。先日のKun氏戦といい青年氏戦といい、簡単な勝ちを逃す私の未熟さには、目を覆うばかりだ。あまりにも弱い自分が、情けなかった。
感想戦では、☖1七同香成に☗同玉が危険な手で、ここは☗同金でしょうといわれた。その前、☖2五桂☗2七金のところでも、あらかじめ☗2七金と寄っておくのがいいとされた。しかしこんなプロみたいな手、私には何時間考えても浮かばない。上手の読みの深さに、舌を巻くばかりだった。
隣ではHon氏が飛車落ちで教わっていたが、☗7九角に☖8八歩と垂らされ、次の☖8九歩成が受からずに投了。もはや私たちは、顔を見合わせて苦笑するしかなかった。
かなり時間が経ったが、Hon氏との対局に入る。ここまで両者全敗。最後に初日を出したいところであった。
Hon氏の四間飛車に私は5筋位取りの作戦を採る。しかし5五の歩を只取りされ、不利に陥った。ところがHon氏が攻め合いに来てくれたので局面がもつれ、最後は私の一手勝ちとなった。
羽生善治名人・王座・将聖は5筋位取りを指したことがないというが、たしかにこれは5五の位を保つのがむずかしく、あまりいい戦法とは思われない。
大野七段にそれを言うと、大野七段は5筋位取りの指し方をスラスラと並べてくれた。なるほどこれなら5五の歩も守れ、強い戦いができる。先の矢倉右玉といい5筋位取りといい、私は基本的な指し方を何もマスターしていなかったと痛感した。
時刻は午後5時をとっくに過ぎている。もうお開きの時間だが、終了時間は関係ないようで、みなが残っている。パソコンに映し出されている棋王戦第3局・久保利明棋王と渡辺明竜王との一戦は、佳境に入っている。私は渡辺竜王を持ちたいが、大野七段は久保棋王持ちだという。
終局まで見届けたいが、これからみなは食事に出るようだ。しかし私は翌日、区の健康診断があるので、早く帰って静養したい。
しかしHon氏は「それはないでしょう」と帰してくれない。まあ、そうであろう。
大野七段がW・Akiちゃん、Hanaちゃんを駅に送り、帰るのを待って、私たちは和風ファミレスへ向かった。参加者は計6人だった。
食事を終えてのんびりしていると、中井広恵女流六段が見える。これは食事にお付き合いしてよかったと思う。
結局この日は午後からとても充実した半日を過ごしたわけだが、男性棋士の教えは女流棋士のそれと一味違って、とてもためになった。
女流棋士会の女流棋士は、国のおカネで男性棋士に将棋を教えてもらっているが、LPSAにはそれがない。ならばLPSA中堅女流棋士も強くなるために、自腹を切って男性棋士に教えを乞うしかない。それには大野七段が最適だと思う。攻め一辺倒でない、手厚い指し回しを習得できるだろう。
店を出るとき、大野七段に「誕生日おめでとうございます」と改めて述べた。大野七段は翌7日が誕生日なのである。52歳まで、あと1時間を切った。思えば2年前も私は、駒込ジョナサンで大野七段50歳のカウントダウンに立ち会い、その悲痛な叫びを聞いたのだった。
しかし今年大野七段は、
「50歳を過ぎてから、誕生日が来るごとに年齢をひとつずつ減らしてますから」
と語り、いまも
「48歳になりますから」
といった。女流棋士もそうだが、なんだかんだと理屈をつけて、棋士はどんどん若くなってゆく。
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2 コメント

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対局 (洋志)
2011-03-14 14:47:39
久保・豊島の王将戦、やってますね。神戸大震災のときの谷川さんのことを思い出します。
 なんとかやりくりして、計画停電が実施されずにすむといいですね。
 「けやき」がどうなるか。地元の人達が実質主体なら、開催できるのかもしれませんね。
 洋志は今回は残念ながら行けませんが。
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王将戦 (一公)
2011-03-14 23:30:22
>洋志さん
王将戦、やっておりますね。開始時の黙祷はいい判断でした。
「けやきカップ」は4-6で、延期の可能性が高いと私は見ています。
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