一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第65期王位戦第5局・第2日目

2024-08-29 22:26:35 | 男性棋戦
伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦第5局(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)、第2日目である。藤井聡太王位の封じ手は、やはり5筋の歩を突く手だった。が、その数手ごの藤井王位の金打ちに、渡辺明九段は銀を打った。そうか! 角を取るなら取れ、という手だ。
飛金交換ならアレだが、角金交換は互角に近いところもある。渡辺九段、最善を尽くして形勢はほぼ互角だ。
ただどうであろう、指し手を考えていて、楽しいのは先手ではないだろうか。少なくとも、どうやって後手陣を攻めようか、考え甲斐がある。対して後手は、どう対処しても互角がいいところ、のイメージがある。
藤井王位は銀を呼び込み、端に角を打つ。天野宗歩の名角を引くまでもなく、端の異筋の角打ちは名角のニオイがする。
しかしこの角は、8筋の歩打ちで止められてしまった。ただ、後手はこれで8筋が渋滞し、飛車が不自由になった。果たして藤井王位は、7筋に銀を打って飛車を狙う。
渡辺九段、5筋に銀を打って最後の勝負に出る。ここで藤井王位が角を打ったのが決め手となった。以下は必然の手順を辿るが、このとき藤井王位の端角が、守りに利いてきた。これがもうひとつの狙いだったか!
王手に対する桂合いが絶妙だった第3局を引くまでもなく、藤井王位にはひとつの手に複数の意味を持たせる手が実に多い。目いっぱい駒を働かせるのだ。
つまり、双方が100点の手を指しても、藤井王位は150点の手を混ぜてくるので、藤井王位が有利になる理屈だ。
渡辺九段は金を打って肉薄するが、藤井王位は合い駒請求の飛車打ち。金打ちに、藤井王位は「逃げながら」桂を補充した。これもひとつでふたつの意味も持つ手だ。
最後はその桂を急所に打ち、渡辺九段投了。第4局につづき、藤井王位の快勝となった。
感想戦では、渡辺九段が首を垂れるというか、傾げるシーンが見られた。これはこのシリーズ全体の特徴だったと思う。快勝した第2局はいいとして、第1局と第3局は渡辺九段が勝っていてもおかしくなかった。結局終わってみれば1勝4敗での敗退で、これは当事者としては相当堪える。まったく渡辺九段、藤井王位の出現で、棋士人生の設計がすっかり狂ってしまった。
さて、藤井王位は22歳1ヶ月にして、永世王位の有資格者となった。先に得た永世棋聖と合わせ、早くも「永世二冠」である。タイトルを2つ獲ったわけではない。「永世」を2つ獲得したのだ。まったく、異次元の強さだ。
なお同日、藤井王位の師匠である杉本昌隆八段が第66期王位戦予選を戦ったが、阿部隆九段に敗れた。同じ日に師匠と弟子が、最悪の星と最高の栄誉を手にした。それもよかろう。
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