ひなまつりの3月3日(土)は「大野教室」に行った。といっても、今日も「4時から男」である。
だが定刻の20分前に入ってしまった。土曜日は生徒が多く、奨励会5級のS君(13歳)を筆頭に10数名いた。
大野八一雄七段「今日はWat君が来てますよ」。
Wat君は大野門下として奨励会に在籍し、将来を嘱望されたが、2級のとき進路の都合で退会した。私は退会直後に角落ちで教えていただいたが、惨敗した。今日機会があれば教えていただこうと思う。
1局目はS君に教えていただく。当然私の先手で、▲7六歩△8四歩。ここが作戦の岐路だが、矢倉を志向して急戦で攻め潰されるのはシャクなので、三間飛車に振った。となればS君は穴熊に潜り、以下駒組合戦である。
私は▲4六銀型を目指すべく▲4五歩と位を張る。S君は△4四歩▲同歩△同銀と反発し、▲6五歩の銀取りには△5五歩。私は▲4五歩△3三銀引▲5五歩とし、この歩得は大きいと思った。

第1図。ここは▲2六歩と角を圧迫する手も考えたのだが、その後の▲2五歩にはよろこんで△4六角と切ってくるのだろう。そこで▲5四歩と突いた。と金作りを狙い、これは受けにくいのではと思った。
第1図以下の指し手。▲5四歩△8六歩▲同歩△7三桂▲5三歩成△4八歩▲3九金△6五桂▲5五角△8六飛▲8八歩△8七歩▲6八飛△8八歩成▲6五飛△9九と▲6三飛成△8九飛成▲4三と(第2図)
▲5四歩に△4二銀は利かされなのだろう。S君は△8六歩▲同歩△7三桂。これがプロ(の卵)の手で、次に△6五桂を見て、驚いたことにこれだけで手になっている。私が苦労してごちゃごちゃやったのは何だったのだろう。
ここで▲6八飛は△4六角▲同金△5七桂成(銀)なので私は▲5三歩成。ふつうは大きい手なのだが、穴熊相手にどのくらい効いているのだろう。
S君は△4八歩を利かして△6五桂と跳ぶ。私の▲5五角もこの一手であろう。
△8七歩に▲6八飛。どこかで▲4四歩も指したいのだが、遅い気がする。とはいえ飛車回りから桂を取りに行く手も悠長で、遅いと思った△8七歩のほうがよほど早い気がする。
果たしてS君に△9九と~△8九飛成と先に桂香を取られては、もはや穴熊ペースとなった。
▲4三とは先手唯一の楽しみだったが…。

第2図以下の指し手。△5一桂▲3二と△6三桂▲3三角成△同角▲同と△同桂▲4八金引△1七香(第3図)
以下、S君の勝ち。
S君の△5一桂が、当然ながら好手。私は当然▲3二とだが、△6三桂が角に当たるのが痛い。▲3三角成はややバカバカしいが、仕方なかった。
以下、△3三同桂まで一段落。私は二枚換えで得をしたようだが、この次上手は△3九竜~△6九飛の狙いがある。それを防いで私は▲4八金引としたが、ここで後手を引くのは痛かった。
ここでS君の△1七香が好手で、▲同香は△1九角で負け。私も▲1八桂(錯覚)と打って粘ったが、S君の指し手は的確。終盤、私に受け過ぎの一失もあり、S君に押し切られた。

戻って第2図の▲4三とでは、▲6九歩と、いったん我慢するのだったか。
感想戦。私が▲6八飛のあたりで▲4四歩と突きだすことも考えていたと言うと、S君は△4四同銀▲同角△3三角を示した。
銀を捨てても角を捌いてしまう手で、こうなれば後手必勝ということか。
「5三のと金に負けなし、って言いますけど、対穴熊の場合はそれが通用しませんからね」
と、右で指していたOg氏が言う。
確かにその思想も含め、穴熊には独特の大局観が求められる。私には穴熊は指せないと思った。
S君、指導をありがとう。
洋間では、「4時から男」のKaz氏が佐藤氏と指していた。私はYoさんと指す。私の二枚落ちである。
Yoさんは早指しが得意でないのか、チェスクロックは使わない。将棋は時間に追われて指すものではないので、もちろんこれで構わない。
Yoさんは二歩突っ切り。定跡通り来そうなので、私も△2二銀と上がって万全を期した。
こうなっては上手がきつい。中盤、Yoさんに捌く手があったのだが、それを逸して私が優位に立った。
終盤、私は△6七歩と叩き、これが必至級の痛打で勝ったと思ったのだが、9七の角を▲7九角と引いたのがYo氏の実力を示した一手。△6八歩成に▲同角を用意し、△2四玉へ逆王手する腹づもりだ。
それでも私は△6八歩成とするよりないが、形勢はどうなのか。
上手玉はかなり危なくなったが、一手の余裕を得た私は、下手玉を追う。▲4八玉に△4七歩!
「詰みがあったら詰ますのが大沢流ですか」
とOg氏が言った。

(つづく)
だが定刻の20分前に入ってしまった。土曜日は生徒が多く、奨励会5級のS君(13歳)を筆頭に10数名いた。
大野八一雄七段「今日はWat君が来てますよ」。
Wat君は大野門下として奨励会に在籍し、将来を嘱望されたが、2級のとき進路の都合で退会した。私は退会直後に角落ちで教えていただいたが、惨敗した。今日機会があれば教えていただこうと思う。
1局目はS君に教えていただく。当然私の先手で、▲7六歩△8四歩。ここが作戦の岐路だが、矢倉を志向して急戦で攻め潰されるのはシャクなので、三間飛車に振った。となればS君は穴熊に潜り、以下駒組合戦である。
私は▲4六銀型を目指すべく▲4五歩と位を張る。S君は△4四歩▲同歩△同銀と反発し、▲6五歩の銀取りには△5五歩。私は▲4五歩△3三銀引▲5五歩とし、この歩得は大きいと思った。

第1図。ここは▲2六歩と角を圧迫する手も考えたのだが、その後の▲2五歩にはよろこんで△4六角と切ってくるのだろう。そこで▲5四歩と突いた。と金作りを狙い、これは受けにくいのではと思った。
第1図以下の指し手。▲5四歩△8六歩▲同歩△7三桂▲5三歩成△4八歩▲3九金△6五桂▲5五角△8六飛▲8八歩△8七歩▲6八飛△8八歩成▲6五飛△9九と▲6三飛成△8九飛成▲4三と(第2図)
▲5四歩に△4二銀は利かされなのだろう。S君は△8六歩▲同歩△7三桂。これがプロ(の卵)の手で、次に△6五桂を見て、驚いたことにこれだけで手になっている。私が苦労してごちゃごちゃやったのは何だったのだろう。
ここで▲6八飛は△4六角▲同金△5七桂成(銀)なので私は▲5三歩成。ふつうは大きい手なのだが、穴熊相手にどのくらい効いているのだろう。
S君は△4八歩を利かして△6五桂と跳ぶ。私の▲5五角もこの一手であろう。
△8七歩に▲6八飛。どこかで▲4四歩も指したいのだが、遅い気がする。とはいえ飛車回りから桂を取りに行く手も悠長で、遅いと思った△8七歩のほうがよほど早い気がする。
果たしてS君に△9九と~△8九飛成と先に桂香を取られては、もはや穴熊ペースとなった。
▲4三とは先手唯一の楽しみだったが…。

第2図以下の指し手。△5一桂▲3二と△6三桂▲3三角成△同角▲同と△同桂▲4八金引△1七香(第3図)
以下、S君の勝ち。
S君の△5一桂が、当然ながら好手。私は当然▲3二とだが、△6三桂が角に当たるのが痛い。▲3三角成はややバカバカしいが、仕方なかった。
以下、△3三同桂まで一段落。私は二枚換えで得をしたようだが、この次上手は△3九竜~△6九飛の狙いがある。それを防いで私は▲4八金引としたが、ここで後手を引くのは痛かった。
ここでS君の△1七香が好手で、▲同香は△1九角で負け。私も▲1八桂(錯覚)と打って粘ったが、S君の指し手は的確。終盤、私に受け過ぎの一失もあり、S君に押し切られた。

戻って第2図の▲4三とでは、▲6九歩と、いったん我慢するのだったか。
感想戦。私が▲6八飛のあたりで▲4四歩と突きだすことも考えていたと言うと、S君は△4四同銀▲同角△3三角を示した。
銀を捨てても角を捌いてしまう手で、こうなれば後手必勝ということか。
「5三のと金に負けなし、って言いますけど、対穴熊の場合はそれが通用しませんからね」
と、右で指していたOg氏が言う。
確かにその思想も含め、穴熊には独特の大局観が求められる。私には穴熊は指せないと思った。
S君、指導をありがとう。
洋間では、「4時から男」のKaz氏が佐藤氏と指していた。私はYoさんと指す。私の二枚落ちである。
Yoさんは早指しが得意でないのか、チェスクロックは使わない。将棋は時間に追われて指すものではないので、もちろんこれで構わない。
Yoさんは二歩突っ切り。定跡通り来そうなので、私も△2二銀と上がって万全を期した。
こうなっては上手がきつい。中盤、Yoさんに捌く手があったのだが、それを逸して私が優位に立った。
終盤、私は△6七歩と叩き、これが必至級の痛打で勝ったと思ったのだが、9七の角を▲7九角と引いたのがYo氏の実力を示した一手。△6八歩成に▲同角を用意し、△2四玉へ逆王手する腹づもりだ。
それでも私は△6八歩成とするよりないが、形勢はどうなのか。
上手玉はかなり危なくなったが、一手の余裕を得た私は、下手玉を追う。▲4八玉に△4七歩!
「詰みがあったら詰ますのが大沢流ですか」
とOg氏が言った。

(つづく)