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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4回ペア将棋選手権④・本戦1回戦

2011-02-03 00:05:47 | LPSAイベント
ビルの隣にある牛丼専門店「吉野家」で慌ただしく昼食を摂り、再び対局場に戻る。
今回も勝者予想クイズが実施されており、決勝進出2ペアを当てる。本戦トーナメント表を見ると、中井・嘉野ペアと渡部・菊田ペアの勝者が松尾・野島ペアと当たり、船戸・渡辺ペアと美樹・中治ペアの勝者が島井・城間ペアと当たる。
女流棋士のみの戦いなら中井広恵女流六段を決勝進出者に推すが、ペア将棋ではそうはいかない。パートナーによって1+1が3にも4にもなることもあれば、0.5になる場合もあるからだ。
予選2回戦では、松尾・野島ペアが中井・嘉野ペアを破った将棋が見事だった。このふたりは息が合っている。本戦1回戦がシードというアドバンテージもあるし、この山は松尾・野島ペアが勝ち上がると予想した。
反対側の山は、船戸・渡辺ペアの息が合っていた。船戸ファンを公言する私としてはどうもおもしろくない。おもしろくないが、やはりこのペアを推さざるを得ない。
私はこれらの2ペアにチェックを入れて、投票した。
渡部愛ツアー女子プロが私を見て、
「大沢さん」
と言う。可憐だ。しかし「『みずなら』が2月5日で終わっちゃうそうです」と続けたので、驚いた。
「みずなら」とは札幌市内にある将棋サロンで、市内ではかなり知られた存在である。会員数も多く、札幌在住の渡部ツアー女子プロも、名を連ねていた。
私も何度かお邪魔したことがあり、この2月に私は、北海道由紀まつり…雪まつりに訪れるが、その時もみずならに寄るのを楽しみにしていたのだ。
「サロン、閉めちゃうんですか…。札幌市内だから、家賃とかバカにならないだろうしなあ…。田中さんでしたっけ? 温厚でいい人だったのになあ…」
なんだか旅先で乗るローカル線が廃止になるような気がして、さびしかった。
そろそろ対局の時間である。では例によって、各選手の配置を記そう。

美樹・中治(先)
  盤(時計)
船戸・渡辺(後)

渡部・菊田(先)
  盤(時計)
中井・嘉野(後)
………………………………………………
      ペア将棋体験コーナー

スケジュールより23分遅い、13時53分、対局開始。
将棋が2局に減ったので、右のスペースが自由に行き来できるようになった。対局者の表情が覗えるようになり、これはありがたい。
手前右には新たに対局スペースが設けられた。ペア将棋体験コーナーで、女流棋士といっしょにペア将棋が楽しめる。藤森奈津子女流四段と中倉宏美女流二段が担当のようだ。
そのさらに手前では、「どうぶつしょうぎ」のペアマッチ選手権が催されるようだ。
局面。渡部・菊田ペアは、渡部ツアー女子プロが四間に飛車を振る。やっぱり渡部ツアー女子プロには振り飛車がよく似合う。ただ、チェスクロックまでが遠く、ボタンを押しづらそうだ。
船戸・渡辺ペアは中飛車穴熊。船戸女流二段の裏芸だ。これは事前に作戦を練ったものか。
大盤の解説は田村康介六段。早指し将棋にはうってつけの解説者である。
渡部ツアー女子プロ、☗3七桂。中井・嘉野ペアは穴熊で来ると読み、早めに攻勢を取ったのだ。案の定、中井女流六段は☖1二香と上がった。
開始から10分が経過した。さすがに本戦トーナメントだけあって、予選と違って、笑いがない。心なしか、空気がピンと張りつめた気がする。
中井女流六段、☖4二銀と引く。松尾流の四枚穴熊だ。完全に勝ちに来ている、と思った。
渡部ツアー女子プロが、くちびるに指をあてて考えている。おなじみのポーズだが、いつもはハンドタオルを口にあてている。
14時08分、渡部ツアー女子プロが合図をして、作戦タイムを取った。中井女流六段、嘉野満アマも席を離れる。相手の作戦タイム中は、自分たちは頭を休める、がふたりのスタンスのようだ。
船戸・渡辺ペアも作戦タイムだ。相変わらず駒を動かさず、検討をする。どう見てもお似合いのペアである。やっぱりおもしろくない。このふたり、指し手の方針をあらかた決めると、渡部・菊田ペアより先に作戦タイムを終えてしまった。まさに一心同体だ。これはもう、決勝進出は固いのではないか。
渡部・菊田ペアは濃密な検討になっている。このふたりは、雰囲気が似ているような気がする。親子にも見える。
ふたりと入れ替わるように、中井・嘉野ペアも作戦タイムを取った。このあたりの駆け引きはおもしろい。
14時14分、美樹・中治ペアが作戦タイムを取った。2局とも中盤のむずかしい局面であることが分かる。
ペア将棋体験コーナーでは、藤森女流四段、中倉女流二段が、観客といっしょに将棋を指している。機会があれば私も指したいが、女流棋士がOKしてくれるかどうか。
14時18分。大庭女流初段、☗4三歩成。これは大きな手だが、後手玉は9一にいる。このと金がどれくらい響いているか。
島井咲緒里女流初段が観戦に来た。次はこの対局の勝者ペアと当たる。やはり気になるのだろう。ピンクのスーツがまぶしい。すぐ近くにいるので、ドキドキしてしまう。
船戸女流二段、☖5六歩と銀頭を叩く。これは厳しい。筋に入ってきたか。船戸女流二段の、横顔のシルエットが美しい。やはり女流棋士の対局姿はいいと思う。
14時30分。中井女流六段が、パートナーの嘉野満アマをチラッと見た。局面は優勢だが、勢い余って、味方にまでニラミをくれてしまったのか。
14時31分、船戸・渡辺ペアが勝ち名乗りを上げた。穴熊は手つかず。快勝だったと思う。
ペア将棋を終えていた藤森女流四段が来て、
「どっちが勝ったんですか?」
と私に訊いた。
「船戸さんです」
私は複雑な思いで答える。
14時34分、中井・嘉野ペアも勝利した。渡部ツアー女子プロは、悔しさを隠せない。
再び島井女流初段が対局場へ来る。船戸・渡辺ペア-美樹・中治ペア戦の感想戦を見ていたが、思い出したようにこちらを見て、
「どっちが勝ったんですか?」
と、藤森女流四段と同じセリフを言った。
か、かわいい…!! その瞳はキラキラしていて、アイドルのようだ。ファンランキングの順位がムロヤユキと入れ替わった瞬間だった。
「船戸さんです。(次の対局、)ガンバッテください」
船戸・渡辺ペアの決勝進出に1票を入れているのに、私は躊躇なくそう答えた。
(つづく)
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第4回ペア将棋選手権③・予選2回戦

2011-02-02 00:25:29 | LPSAイベント
予選2回戦は12時03分に始まった。ただし松尾香織女流初段の着席が遅れたため、この対局のみ1分遅れの開始となった。
本局の各選手の配置は、下のごとくである。
   
     観客席(3席)
………………………………………………
島井・城間(先)  牧野・彰子(先)
  盤(時計)     盤(時計)
船戸・渡辺(後)  中治・美樹(後)

嘉野・中井(先)  太田・宏美(後)
  盤(時計)  (時計)盤
野島・松尾(後)  菊田・渡部(先)
………………………………………………
 観客席(3席)   観客席(3席)

向かって左側が勝利ペア、右側が敗退ペアである。右の2局は負けたら終わり。今回のペア戦は最低2局が約束されているが、1局でも多く指したいという思いは、単独での対局以上のものがあろう。決勝トーナメント進出のために、絶対に負けられない一番である。
対局が始まったのに、写真を撮っている人がいる。開始後の写真撮影は禁止である。
観客として来ていた早咲誠和アマ竜王が、解説に招ばれた。石橋幸緒天河のイキな計らいである。私は対局場にかぶりついていたので、早咲アマの解説は拝聴しなかったが、解説場にいたTat氏によると、早咲解説はすこぶるおもしろかったという。
曰く、
「終盤は、角の価値が1.5なら、金の価値は5」
「棒銀は割に合わない戦法」
「銀を引くか出るかだったら、引く手に好手が多い」
「端玉には端歩、ではなく、端玉にも端歩。玉頭に突く歩はどの筋も厳しい」
など。
私も聞きたかったが、つい女流棋士の対局姿に注目してしまった。
観戦記界の大御所、東公平氏の姿が見える。東氏はLPSA指し初め式にも姿を見せていた。将棋ペンクラブ創設者のおひとりでもあり、いつかじっくり話を伺いたいが、叶うかどうか。
中井広恵女流六段が「いや~」とつぶやいて☗6八銀と上がった。私の位置からは局面が辛うじて見えるのだ。相手のひとりである松尾女流初段とは、2月6日に天河戦の挑戦者決定戦を争う。ペア将棋とはいえ、ここはどちらも相手を叩いて、勢いをつけたいところだ。
今回は中倉宏美女流二段のお顔が見える。ほおが桜色に染まり、いいオンナ度が増している。
相手の渡部・菊田ペアが作戦タイムを取った。局面は宏美・太田ペアの三間飛車穴熊、渡部・菊田ペアの銀冠だ。むずかしい局面のはずだが、宏美・太田ペアに会話はない。
続いて松尾・野島ペアも作戦タイムを取った。局面がハッキリ見える。松尾・野島ペアの四間飛車に、中井・嘉野ペアは舟囲い。居飛車側の作戦が現代では新鮮だが、もちろん自信はあるのだろう。今回もお互い話はせず、中井女流六段は席を外した。
12時19分、彰子・牧野ペアが作戦タイム。相手の美樹・中治ペアも相談に入った。
松尾女流初段が中井・嘉野ペア側を持って検討している。まるで加藤一二三九段みたいだ。
中井女流六段が戻り、松尾・野島ペアの作戦タイムも終わって、対局が再開された。中井女流六段が、松尾女流初段と野島崇宏アマをチラチラ見る。ちょっとコワイ。
中倉女流二段と太田博朗アマは、いい雰囲気で寄り添っている。見ているこちらはあまりおもしろくない。
大庭美樹女流初段は、将棋盤のほぼ中央に位置している。ペア将棋は女性が主役だから、女流棋士が考えやすいような配慮が必要である。美樹・中治ペアは後手番なので、右側にチェスクロックがあり、大庭女流初段は8女流棋士の中で、最も将棋を指しやすかったと思う。
右奥にいる中倉彰子女流初段がビシッと指し、チェスクロックのボタンを、バシン、と叩いた。
中倉女流初段は、ふだんはニコニコして朗らかだが、対局中は一変、ひじょうに厳しい顔になる。LPSAでは最も落差が激しい女流棋士である。
12時26分、中井・嘉野ペア、宏美・太田ペアが相次いで作戦タイムを取った。恐らく中盤の佳境であろう。ここは濃密な検討をしたいところである。
美樹・中治ペアが作戦タイムを取ったころ、対局に戻った中井女流六段が高笑いをした。歩の位置を間違えて検討していたため、仕掛ける手が成立せず、3分の作戦タイムが無駄になってしまったらしい。前局はかなり早い段階での作戦タイムだったし、このペアはちょっと抜けているところがある。もっとも作戦タイムがなくても、個々の実力を合わせて勝ちますワ、というところであろう。
中井女流六段のほおも紅潮し、勝負はこれからである。12時33分。金を引いて、ボタンをバシッ、とひっぱたいた。ボタンの押し忘れには要注意である。このくらいの音を出したほうがいいのかもしれない。
ちなみに太田アマは「パシッ」、野島アマは「ポン」、菊田裕司アマは「トン」という押し方だった。女流棋士に比べて、男性アマは穏やかである。きっと性格が反映されるのだろう。
12時36分、嘉野アマが左手で指し、ボタンを押す。
中倉女流二段が、首のところまで桜色に染めている。形勢はいいのか悪いのか。
12時38分、船戸・渡辺ペアがこの日初めての作戦タイムを取った。船戸女流二段は相変わらずスタイルがいい。ところでこのふたりは駒を並べず、盤上で指を動かして、今後の方針を決定していた。これは時間節約のための「新手」といえるだろう。
ふたりは3分を待たずして、作戦タイムを終了した。このペアは息が合っている、と思った。
牧野正紀アマが、ひときわ大きい音でボタンを叩く。あやうく時間切れになりそうな雰囲気だった。これは形勢が芳しくない証拠か。
12時41分、宏美・太田ペアが投了。中井・嘉野ペアも投了した。
予選を通過した渡部愛ツアー女子プロは、さすがにほっとした表情。中倉女流二段の「桜色」は、形勢悪化のしるしだったようだ。
松尾・野島ペアは、優勝候補相手に、快勝だった。解説場に招ばれた中井女流六段は、
「作戦タイムを取ったのが大悪手でしたね」
と苦笑していた。まあ決勝トーナメント進出は決まっているので、余裕がある。
12時44分。中倉女流初段が左手をほおにあてて考えている。その顔は厳しい。闘う若奥様である。
12時49分、船戸・渡辺ペア-島井・城間ペアが終わったようだ。しかしどちらが勝ったかは、この位置からでは分からない。残すは彰子・牧野ペア-美樹・中治ペアの1局となった。数人もの観客が近くに立ち、その推移を見守っている。
12時57分、いったん席を離れた島井女流初段が戻り、船戸・渡辺ペアと感想戦を再開した。島井女流初段は、私が想像する以上に、将棋が好きなのかもしれない。
13時02分、蛸島彰子女流五段、大庭美夏女流1級の姿が見えた。同じ「彰子」の中倉女流初段の将棋はどうか。Tat氏によると、お互いの玉が中段に出ているらしい。
昼食を摂りたいが、終局を確認してからにしたい。
船戸・渡辺ペア-島井・城間ペアはどちらが勝ったのか。壁に貼られてある星取表を見ると、島井・城間ペアに「○」が付けられていた。
彰子・牧野ペア-美樹・中治ペア戦のライブ観戦者は10名を数えている。盤上はどうなっているのだろう。果てしない泥仕合、の感が強くなってきた。
私もたまらず、観戦の輪の中に入る。これは…美樹・中治ペアが優勢に見えるが、どうだろう。
13時23分、午後から解説の田村康介六段の姿が見える。まだ対局が行われていることを、訝しく思っただろう。なにしろスケジュールでは、13時30分が本戦1回戦の開始なのだ。
と、24分、彰子・牧野アマが投了を告げた。早指しの雄・田村六段が念力でもかけたのだろうか。ともあれ本戦出場最後の切符は、美樹・中治ペアが獲得した。
さあ、ここからが本当の勝負である。
(つづく)
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第4回ペア将棋選手権②・予選1回戦

2011-02-01 22:08:41 | LPSAイベント
今回は持ち時間10分、使い切ると1手30秒である。途中に3分の作戦タイムを1回取ることができる。
対局場の7階は、エレベーターを囲むようにして、「コ」の字型になっている。隣接のビル側が対局室、道路側が解説室である。各選手の配置は以下のごとくである。

     観客席(3席)
………………………………………………
渡辺・船戸(先)  嘉野・中井(後)
  盤(時計)  (時計)盤
宏美・太田(後)  彰子・牧野(先)

城間・島井(先)  中治・美樹(後)
  盤(時計)  (時計)盤
菊田・渡部(後)  野島・松尾(先)
………………………………………………
 観客席(3席)   観客席(3席)

中央には将棋盤が4面置かれている。最初はこの存在の意味が分からなかった。
観客席はパイプ椅子が6脚置かれているのみ。私は各選手の表情を窺いたいのだが、奥には入れない雰囲気だった。とりあえず任意の椅子にすわったが、やはり選手の顔がほとんど見えず、おもしろくない。
困惑していると、中井広恵女流六段がニコニコ笑って私を見ている。私が挙動不審でキョロキョロしていたからか、それとも30日未明にアップした私のブログがあまりにも変質的だったので、苦笑したものか。
持ち時間10分の早指しなので、各選手とも序盤は飛ばす。松尾香織女流初段や大庭美樹女流初段はチェスクロックから遠く、ボタンを押しにくそうだ。ここは男性アマが配置を替わるなど機転を利かせなければならないが、女流棋士もお気に入りの位置があるやもしれず、何ともいえない。
午前中の解説は石橋幸緒天河。よく通る声が、こちらまで聞こえる。しかし対局者には耳に入っていないだろう。
10時50分、中井・嘉野ペアが早くも作戦タイムを取った。2人は中央の将棋盤に向かい、駒箱から駒を出す。そうか…。私としたことがウカツだった。これは作戦タイム検討用の将棋盤駒だったのだ。
それはともかく、ずいぶん早い作戦タイムではないか? 本局の方針を話すにしても、もう少し局面が進んだところで検討したほうが、有意義に思える。
10時57分、今度は松尾・野島ペアが作戦タイムを取った。手前のふたりがいなくなったので、大庭・中治ペアの姿が見えた。ふたりも小声で検討している。
作戦タイムを取った側が検討しているときは、相手も考えることができるので、この制度はあまり意味がないようにも思える。ファミリーカップのペア戦ではアイマスクやヘッドホンをしていたが、本局ではそうした措置も取られていなかった。
その30秒後、島井・城間ペアが作戦タイムを取る。島井咲緒里女流初段の、ピンクのスーツが愛らしい。島井ブルーより島井ピンクのほうが似合うのではなかろうか。
11時02分に宏美・太田ペア、04分に渡部・菊田ペアが作戦タイムを取り、中央がにぎやかになった。
渡部愛ツアー女子プロは、今回制服を着用している。高校生女流棋士は制服を着用すべし、が私の持論である。女子高生の3年間は短い。制服を着られるときに着ておいたほうがよい。
11時07分、彰子・牧野ペアが作戦タイムを取る。対局場所にじじいがひとり侵入している。奥にも観戦席が設けられているが、立ち見はまずい。気持ちは分かるが、ほめられた行為ではない。昨年の1月、大阪で開かれた公開1dayトーナメントで、観戦マナーの悪かったじじいを思い出す。
「(この手を)指したのは島井さんでしょう」
という石橋天河の声が聞こえる。大盤解説は、島井・城間-渡部・菊田戦を取り上げているのだ。
彰子・牧野ペアの作戦タイム中、中井・嘉野ペアは言葉を交わさず黙ったままだ。頭の中ではこの将棋を考えているのだろうが、お互いの読み筋を確認するまでもない、ということか。
11時10分、美樹・中治ペアが作戦タイムに入った。私は立って、盤面を覗きこむ。馬やと金を作り、自玉は銀冠の堅陣。これは美樹・中治ペアの優勢、いや勝勢に見える。
11時22分。各将棋とも佳境に入ってきている、通常の対局のように、空気がピンと張りつめてきた。
船戸陽子女流二段の顔が見えた。私からは最も遠い席にいるが、顔が見えるだけいい。相手の中倉宏美女流二段は、背中が見えるのみだ。
しかし船戸・渡辺ペアは作戦タイムを取っていない。優勢で考えやすい局面なら、無理をしてタイムを取り、相手に考慮時間を与える必要もない。
先ほどのじじいは、中井・嘉野-彰子・牧野戦のすぐ横まで近づいている。他人事ながらハラハラする。
大庭女流初段が、深刻な顔で考えている。おかしい。とても優勢の将棋の顔ではない。
11時31分、宏美・太田ペアが投了したようだ。やはり船戸・渡辺ペアの快勝だったのだろう。
32分、松尾・野島ペアも投了したようだ。続いて渡部・菊田ペアも投了。まるで終了時間を申し合わせたかのようだ。
私は松尾・野島-美樹・中治戦を覗きこむ。うん? 美樹・中治玉の頭に敵銀が載っている。これは美樹・中治ペアの負けではないか! あ、あの将棋を負けたのか!?
ペア将棋は、負けるとパートナーに対して申し訳が立たない。大庭女流初段の落胆ぶりが痛々しかった。
石橋天河が、
「☖8九竜を指したのは島井さんでしょうねぇ」
と解説しているのが聞こえる。
11時38分、中井女流六段がほおに手をあてて考えているのが見える。
「(島井・城間ペアは)ふたりで考えている気がしないですね」
と、石橋天河。ペア戦においては、たぶんこれが最高の褒め言葉であろう。昨年の同大会は藤田麻衣子さんが優勝したが、私も同じ印象を持った。
対局開始から1時間が経過した。本局の持ち時間は短いが、1時間は長いというべきだろう。
LPSAスタッフ氏が通り、
「これが噂の大沢メモですか」
と笑う。私もニヤッと笑う。
私もメモなしで将棋を観戦したいのだが、ブログを書き始めてから、そうもいかなくなった。
11時49分、中井・嘉野ペアが勝利。すでに勝利していた船戸・渡辺ペア、松尾・野島ペア、島井・城間ペアの計4ペアが、決勝トーナメント進出を決めた。
(つづく)
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第4回ペア将棋選手権①・開会

2011-01-31 01:43:01 | LPSAイベント
1月30日(日)、LPSA恒例の「ペア将棋選手権」が、今年も行われた。このときの模様をきょうから数日間に亘って記す。
第4回となる今回の対局会場はLPSA芝浦サロン。サロンは2階だが、今回は7階の特設会場だった。
午前10時開場、10時30分開会式である。私は10時30分ちょうどに会場入りした。私は対局者でも何でもないので、遅刻しても一向に構わないのだが、開会式には間に合った。この辺りが、時間に厳しい鉄道マニアの習性と言えようか。
受付を済ませて室内を見渡すと、出場女流棋士と出場アマ強豪がそこここにいる。中倉宏美女流二段と目が合ったので、目礼する。松尾香織女流初段には、
「マッカランありがとうございますぅ」
と、あらためて御礼を言われた。もう口をつけたのだろうか。しかしあの結果は、私にとって屈辱だった。
「今度(の芋焼酎勝負)は負けませんから」
と返しておく。
30日は女流名人位戦第2局が行われるからか、それともまだ朝早いからか、観戦者はまばらだ。しかしその中に、早咲誠和アマ竜王の姿があったので驚いた。
早咲アマは九州在住だが、28日に東京・将棋会館で、武者野勝巳七段と竜王戦を戦っている。金曜日対局だったので、週末まで滞在を延ばしたのだろう。
代表理事・石橋幸緒天河を先頭に、今回出場の各選手・計16名が前方に勢揃いした。
パッと目についたのは島井咲緒里女流初段のピンクのスーツで、スカートがミニのうえ、タイト気味だった。今回はベストドレッサー賞の類はないが、もしあれば、早くも入賞確定である。船戸陽子女流二段は青系の服だったが、イメージカラーを交換したかのようだった。むろん船戸女流二段も、見事なファッションだったのは言うまでもない。
出場選手の自己紹介は端折って、女流棋士からアマ選手へ、恒例の直筆扇子の贈呈式が行われた。私がイラッとくる瞬間である。
私は第2回のペア選手権から拝見しているが、正直言って、女流棋士とアマ強豪が仲睦まじく将棋を指す姿は正視できない。
それなら行かなければいいのだが、後で「ケツの穴の小さい男だ」と嗤われるのもシャクなので、将棋の勉強のためだと自分に言い聞かせて、観戦に来ているわけだ。
もっとも私がペア将棋選手権に参加できるくらいの強豪だったら、最初からLPSAサロンには通っていないわけで、となれば船戸女流二段や中倉宏美女流二段らとも知り合いにはなっていなかった。弱かったから、LPSA女流棋士とお近づきになれたのだ。皮肉なことではある。
さて今回のシステムだが、8ペアで優勝を争い、まず予選を2局指す。1回戦の勝利ペアは、2回戦で同じく勝利ペアと戦う。1回戦で負けたペアも、やはり2回戦では負けたペアと指す。
すると「○○」「○○」「○●」「○●」「●○」「●○」「●●」「●●」という星が出来上がる。2勝ペア2組は決勝トーナメント進出とともに、1回戦が免除される。1勝ペア4組は決勝トーナメント1回戦からの出場となり、計6ペアであらためて栄冠を争うことになる。
ここで出場選手と対戦カードを記しておこう。
中井広恵女流六段・嘉野満ペア(ジュポン化粧品)-中倉彰子女流初段・牧野正紀ペア(リコー)ペア、船戸陽子女流二段・渡辺徳之(ジュポン化粧品)ペア-中倉宏美女流二段・太田博朗(富士通)ペア、松尾香織女流初段・野島崇宏(日本レストランシステム)ペア-大庭美樹女流初段・中治一郎(富士通)ペア、島井咲緒里女流初段・城間春樹(日本レストランシステム)ペア-渡部愛ツアー女子プロ・菊田裕司(リコー)ペア
以上16名が所定の場所につき、10時43分、戦いの火蓋が切って落とされた。
(つづく)
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LPSA指し初め式・超ウルトラセクシーダイナマイト スーパースペシャル(後編)

2011-01-09 00:38:28 | LPSAイベント
超ウルトラセクシーダイナマイトスーパースペシャル・船戸陽子女流二段の指し手になったが、何たることか、目の前にはにわかカメラマンがズラーッと並び、私からは船戸女流二段がまったく見えなくなった。
首を上下左右するが、どうしても見えない。といって露骨に場所を移動したら、チャイナドレスのスリットから覗く船戸女流二段の脚が見たいのが、バレてしまう。
何ともおもしろくないが、私はカメラマンの後頭部をうらめしく見つめるだけだった。
船戸女流二段が指し終えると、徐々にカメラマンが散っていく。「立ち会い」の女流棋士も、自分の指し手が終わると座を外し、招待客の相手に回った。
いよいよ私の名前が呼ばれた。相手は一般招待(だと思う)の男性氏。一礼して着座すると、傍らの中倉姉妹が
「今年は陽子さん(が相手)じゃないんですね」
とニッコリ笑っていう。
「グッ…。き、きのういい思いをさせていただきましたから」
私は強がりを言い、
「これが脇息(きょうそく)ですか。タイトル戦みたいだ」
と、寄りかかった。
気息を整えて☗8六歩。
W氏、Hak氏も指して、指し初め式(対局)は午前11時33分に終わった。
ここで初めて、石橋代表理事が挨拶をする。内容は覚えていないが、わりと穏やかだった気がする。昨年の中井広恵代表理事は、
「今年はみんな、将棋を勝つように」
だった。しかし現実は厳しく、当人だけが勝ちっ放しだった。とはいえ、LPSA女流棋士は勝たねばならぬことに、変わりはない。今年は各棋士とも、正念場であろう。
乾杯の音頭はLPSA理事氏だった気がするが、よく思い出せない(注:W氏から、乾杯の音頭は、島田良夫・テレビ東京元アナウンサーだった、との指摘をいただいた。お詫びして、ここに加筆します)。私は金子タカシ氏にビールをついでもらった気がする。このあたりの記憶も怪しいが、レポートを書くことを前提にしているわけではないから、仕方ない。
中倉姉妹が登場した。中倉姉妹も艶やかなキモノ姿なのだが、今回は競争相手が悪かった。昨年6月の「NIS×TefuCUP」で、島井咲緒里女流初段が鮮やかなブルーのワンピースでベストドレッサー賞を受賞したが、男性は女性の露出に弱いのだ。
ただ、露出といっても、チャイナドレスを着こなすには大人の色気がないとダメだ。室谷由紀女流1級や山口恵梨子女流初段では、若すぎる。女流棋士会では山田久美女流三段が最適だと思うが、それでも船戸女流二段とは、大駒一枚違う。
話を戻すが、中倉姉妹の進行で、30日に開催する「第4回 ペア将棋選手権」の組み合わせ抽選が行われた。企業の担当者がいる場合はその方にクジ(トランプ)を引いていただき、いない場合は女流棋士が引くという塩梅だ。
女流棋士と企業のアマ強豪が仲睦ましく将棋を指す図は、傍から見ていて、あまりおもしろいものではない。にもかかわらず、昨年の第3回、一昨年の第2回と、私は観戦に出向いている。
2009年1月・蒲田で行われた第2回では、1回戦で敗退し観戦に回っていた船戸女流二段に
「負けちゃいましたあ」
とつぶやかれ、ドギマギしたものだ。あのときは、まだ私の船戸ファンが世間に知られていなかった。もちろん当人にも。
今回は女流棋士のペア企業は決めたが、細かい組み合わせまでは決めなかったようだ。今年観戦に行くかどうかは、LPSA女流棋士の営業次第である。
山下カズ子女流五段がいらしたので、大胆にも詰将棋を作るコツを聞いてみる。ほうー、と頷ける内容だった。
そこへ蛸島彰子代表代行(女流五段)もいらっしゃり、山下女流五段と話を交わした。オールドファンには堪らない光景である。
中井女流六段がいらっしゃる。船戸女流二段のチャイナドレスに話が及ぶが、中井女流六段は、(この前普及で訪れた)台湾で買ったものではないか、という。
中倉姉妹の周りは、さすがに人が多い。指し初め式のとき、「船戸先生のチャイナドレス、素敵ですよねえ」と中倉姉妹の同意を得ようとして、それが失礼にあたると思い口をつぐんだのだが、それと同じ行為を、私は昨年している。
すなわち、中倉宏美女流二段のキモノ姿に見とれ、その同意を船戸女流二段に求めてしまったのだ。何たる悪手。
同年代の女流棋士をホメるときは、時と場所と相手に要注意だ。
そういえば今年は、昨年あった「クイズ・LPSA18人に聞きました」のようなお笑いコーナーがない。式全体が、ちょっと淡泊になった。
女流棋士も、昨年はいた神田真由美女流二段、島井女流初段、渡部愛ツアー女子プロが参加していない。LPSAの所属棋士は絶対数が少ないだけに、3人も欠けるのは大打撃だ。まあ指し初め式くらい、いくら休んでも構わない。退会しなければよいのだ。
船戸女流二段がシャナリシャナリと歩き、少し屈んで、ウォーターサーバーの水をそそぐ。うわ…。ホントに、歩くセクシーダイナマイトだ。
「先生、きょうの先生のチャイナドレスは素晴らしい!! 私感動しました! もう今年の将棋10大ニュースは、きのう先生と対局したのが1位、きょうの先生が2位で…いや逆だな、きょうの先生のチャイナドレスが1位で、決まりました!!」
私がそうまくしたてると、船戸女流二段は、まあまあ…というそぶりで苦笑する。しかし今回の船戸女流二段のいでたちは史上最強であり、他の参加者も異論はないだろう。
続けて今回のドレスの購入場所を聞くと、何と日本だった。
う~む…。ふつうの女流棋士は、日本でも中国でも、チャイナドレスは買わない。しかし船戸女流二段は、私が知る限りでも2着持っていることになる。まさにフナトヨーコの、面目躍如であった。
中締めの前に、本日参加女流棋士の、記念撮影となる。石橋代表理事、蛸島代表代行、大庭美夏女流1級、大庭美樹女流初段、中井女流六段、山下女流五段、多田佳子女流四段、藤森奈津子女流四段、中倉宏美女流二段、船戸女流二段、松尾香織女流初段、中倉彰子女流初段の12名であった。
中締めになり、招待客は三々五々帰ってゆく。私もサッサと帰るべきなのだろうが、今年はW氏らとサイゼリヤへ出向くことになっている。昨年は将棋ペン倶楽部への原稿寄稿のため、中締めのあと浅草木馬亭へ取材に行ったから、エライ違いだ。
そのW氏が、船戸女流二段と私のツーショット写真を撮ってくれることになった。私はケータイを持たず、デジカメも持って来なかったので、配慮してくれたのだ。
私は女流棋士とツーショット写真は撮らない主義なのだが、こんな場なら構わないだろう。
船戸女流二段が、キュッ、と右に立つ。すかさず私が、カチッ、とポーズを取る。この感覚、この呼吸。「負けちゃいましたあ」と言われた2年前では感じなかったと思う。
撮られた画像を見ると、なかなかお似合いのふたりだった。

サイゼリヤには1時すぎに入る。メンバーはW氏、Tat氏、Hak氏、私。あとからN氏も合流して5人となった。
この5人で話すことといえば将棋しかないが、毎回毎回、よくネタが尽きないものだと思う。今回は「女子プロゴルファーより将棋女流棋士に美人が多い」との説に、全員がノータイムで相槌を打った。
4人がランチセットをオーダーしたのに、精算を終えて店を出たときは、すっかり暗くなっていた。たった数百円で、また4時間以上も長居してしまった…。
コメント (3)
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