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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

LPSA設立10周年記念パーティー(後編)

2017-06-06 00:14:45 | LPSAイベント
参議院議員の山東昭子さんがスピーチを始めた。山東昭子さんは昔からの将棋ファンで、確か1978年のNHK将棋講座で、西村一義七段(当時)の聞き手を務めたはずだ。
だから私たちは注目しなければならないのだが、みんな雑談に夢中で、耳を傾けていない。
鹿野圭生女流二段の姿が見える。鹿野女流二段もきものだが、髪をアップにした姿が妙に色っぽく、極妻とか、クラブのママに見える。
藤田麻衣子さんの姿もあった。藤田さんはLPSAの元所属だが、数年前に退会した。今日は静かにお祝い、というところか。
W氏が桐谷広人七段と話してきたという。今はメジャーになってしまった桐谷七段だが、ジョナ研メンバーは早くから、その特異キャラに注目していた。現在は「月曜から夜ふかし」でその活躍を見られるが、桐谷七段の本当のおもしろさは、別のところにある。
私も桐谷七段のもとに向かう。
「桐谷先生はじめまして。私将棋ブロガーでして、先生には一度、コメントをいただいたことがあります。私LPSAの教室によく通っていまして、そこで先生を拝見したこともあります」
桐谷七段は、うん、うん、と聞いている。
「あなたのようにLPSAを応援しているのは素晴らしい」
「ありがとうございます。先生のお部屋、引っ越し後もだんだん汚くなって、素晴らしいです! 私もモノを捨てられないんで、ああいうモノを左から右に移動するだけという、先生の気持ちがよく分かるんです!」
桐谷七段のお株を奪い、私がしゃべり続ける。「先生の『歩の玉手箱』、あれは名著です。トッププロから女流の将棋まで、精力的に取材されているのが素晴らしいです!」
「ありがとう。最近もね、初心者向けに将棋の本を書かないか、って話が来たんですよ。なんなら名前だけ貸してくれればいいからって…」
どうもそれは断ったようだ。「……。……あれ? 私今、何を言おうとしてたんだっけな…。忘れちゃった」
どうも桐谷七段、少しお疲れのようだ。ただ、名刺交換をしてくれた。私は失職中なのでいささか気が引けるが、桐谷七段と細い糸が繋がったのはありがたかった。
料理はまだ残っているが、私の食欲は回復せず、またウーロン茶を飲んだ。今日は暑いので、水分を補給するのがベストだ。
上川香織女流二段が見えた。右手にワイングラスを持ち、目がトロンとしている。
「あ、松尾先生」
「松尾じゃない」
「あ、上川先生でした」
「…それならいいか」
「いやいや上川先生、このたびは10周年おめでとうございます。でも上川先生はいつも若々しくて何よりです」
「ほんとにィー? そう思ってるー?」
「ホントですよ。38…くらいに見えますよ」
「それ、若く見えるっていうのー?」
「いや若いですよ。38って、いい数字でしょう? だってその目尻の小ジワで20代に見えるって言ったら、そっちの方がウソくさいですよ」
「…そうかなー」
「そうですよ。その小ジワがマニアには堪らないんですよー」
「ちょっと小ジワ小ジワって、ウルサイわよー」
「いやいやでも、上川先生がもう少し勝ってくれればねー。私、けやきカップにも行ったんですけど、上川先生、けやきカップに出てました?」
以前島井女流二段にも言った、ブラックテイストのジョークである。
「出てたけど、すぐ負けちゃったから」
「ああ、でも上川先生はすぐに負けるのがいいんですよね。上川先生が会心の切れ味で勝っちゃったらおかしいですもん」
「何よそれー」
「いやホントに、女流王座戦でもいい負けっぷりでしたし」
「それ、ホメられてるのー?」
「ホメてますよー」
Kun氏が、夫婦漫才を見てるみたいだ、と苦笑した。
「社団戦に出てよー。(第2日目の)7月30日は私の誕生日なんだから」
上川女流二段まで、自分の誕生日かこつけて、私(たち)に社団戦出場を促す。当局から極秘指令でも出ているのであろうか。

谷川治惠女流五段がいた。女流棋士会の重鎮まで参加とは珍しい。そして谷川女流五段は、当ブログの読者である。
「谷川先生、お世話になっております。先生に似ている芸能人がなかなか見つかりません。自己申告していただけないでしょうか」
谷川女流五段はそれには答えず、
「大沢さんのブログは局面が載るようになって、見やすくなりました」
と言った。
櫛田陽一七段が通ったので挨拶する。櫛田七段は、LPSA金曜サロンで手合い係を務めたことがあるのだ。これはカルトクイズ級の豆知識である。
時刻は午後8時近くになり、これで中締めとなった。1時間半はあっという間だった。
改めて今回、LPSAが10周年記念パーティーを開けたのはめでたかった。船出の時から前途多難のケはあり、事実退会者も何人か出たが、LPSAはそのたびに、よく踏ん張った。
LPSAは窮地に追い込まれた時こそ、底力を発揮した。私は敬服するのみである。
次の10年を考えると私は還暦を過ぎてしまうし、確実にハゲが進行しているだろう。もちろん結婚はしていないだろうし、まともな仕事に就いているかも微妙だ。マジで明るい材料がないのだが、LPSAが今以上に発展してくれれば、これに勝るよろこびはない。とにかく今回は、本当におめでとうございました。

会場を出ると、クロークに森内俊之九段がいた。なぜフリークラスに転出してしまったのか。それを聞きたいところであるが、当人は本心を語ってくれまい。
あたりを見回しても知己がいない。この時間なら、まっすぐ帰れば「小さな巨人」をリアルタイムで観られる。私はひとり、帰路に着いた。
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LPSA設立10周年記念パーティー(中編)

2017-06-05 01:02:41 | LPSAイベント
まず、2007年6月3日に東京・新宿の路上で行われた設立イベントの模様が流れる。
これが私とLPSAとのファーストコンタクトで、私は女流棋士を間近で拝見するのも初めてだった。皆さんLPSAのTシャツを着用して親しみやすさを演出し、アイドルユニット・サバイブのミニコンサートや、石橋幸緒女流四段VS天才少女・竹俣紅ちゃんの飛車落ち対局など、内容も盛りだくさん。私は一遍にLPSAのファンになったのだった。
場面が変わり、米長邦雄永世棋聖が映る。もし永世棋聖が存命で会長職にあったら、今回果たして出席しただろうか。私はしたと思う。
かつてはLPSAの存在を疎ましく思ったことがあるかもしれないが、もういがみあっている時代ではない。普及という同じ目標に向かって、手を携える気持ちが勝ったと思うからだ。

記念上映会が終わってしばらくすると、島井咲緒里女流二段とフーリオ君が壇上に上がった。「ネコSHOGIバトル」のPRである。フーリオ君ともこれまた、最近はよく顔が合う。
将棋ペンクラブ幹事・三上氏の姿が見えた。三上氏も交流会からの連投だが、半分公務が入っている。
私のもとへ、中倉彰子女流二段が挨拶に来た。
「いやあ中倉先生、相変わらずお綺麗で。Wさんともよく話すんですが、中倉先生は洗練された美しさですよねえ」
私としては最大限に褒めたつもりだが、彰子女流二段はそれほどうれしそうでない。いわゆる「室谷由紀タイプ」で、ここは美貌ではなく、「いつつ」や「しょうぎのくにのだいぼうけん」で持ち上げたほうがよかった。
彰子女流二段は忙しそうで、ほかに移ってしまった。
次にいらしたのは渡部愛女流初段である。今日は赤系の振袖で、ひときわ艶やかだ。
「(6月の)指導対局はよろしくお願いします」
と言う渡部女流初段が凄まじく美しい。貌がほんのり朱に染まり、渡部女流初段がこんなに美人だとは思わなかった。これでは全国に愛ファンが生まれるわけである。
「社団戦に出てくださいネ。(1日目の翌日は)私の誕生日ですから」
と渡部女流初段が言う。LPSAのブースで待ってますから、ということだろう。
「ハイ」
と私の代わりにKun氏が答えて、私はいよいよ社団戦に出なければならなくなった。
となれば、渡部女流初段へのバースデープレゼントだ。今年は何をプレゼントしようか。
その後もしばし雑談をしたが、とても幸せなひとときだった。
今年は久しぶりに見る顔も多い。LPSAファン氏の顔が見える。けやきカップ以来だが、こちらから向かうのも億劫だ。
「大沢さんでしょうか」
声を掛けられて振り向くと、見慣れぬ青年氏である。「大野先生のブログでお顔を拝見しておりましたので、ご当人かなと…」
聞くと、大野八一雄七段は永年、ある中・高等学校の講師をしていたのだが、青年氏はそこの生徒だったという。それが縁で、私のブログも読んでくれていたらしかった。
実はこういうパターンは時々あるが、自分が有名になった気分になり、ちょっと誇らしい。作家や芸能人がファンに声を掛けられた時も、こんな気分になるのではと思った。
「社団戦は出られるんですよね」
青年氏の口からも社団戦という単語が出てビックリ。聞けば彼も3部で出場するという。
私などは大野教室で大した戦力にならないが、どうなのだろう。

辺りを見回すと、男性棋士の姿もある。左前方には中村修九段がいる。この機会だから、話しかけてみた。
「中村先生こんにちは。毎年花みず木女流オープンで、先生の解説を楽しませてもらっています」
「ありがとうございます」
「私『将棋マガジン』の創刊号で中村先生を初めて見まして…。当時は先生が奨励会3級でしたか、佐伯先生と写っていらして…。あ、奨励会員は強いんだな、と。だから私の奨励会員のイメージは中村先生なんです」
「そんな年齢? あなたはおいくつ?」
「51です」
「私は54」
「ウチはおカネがなかったんで、昔の将棋マガジンを捨てずに、いつまでも読んでいたんです」
私は続ける。「だから先生が六段時代に王将を獲られた時も、先生の実力からして、やっぱりな、という感じでした」
もう、ほとんど私がしゃべっている。「昭和55年組は強かったですもんねえ。でも皆さん、今は降級してしまって…」
ここまではまあよかったが、私はうっかり口をすべらす。「先生もA級は無理でしたもんねぇ…」
言った瞬間、しまったと口をつぐんだが、中村九段の回答は明快だった。
「私は今もA級を狙っています」
きっぱりと言った。「とりあえず(B級2組を)昇級して、A級が見える位置に行く。勝負はそれからですね」
「おおー、素晴らしい、失礼しました!」
「今期は太地戦…。(1回戦の中村)太地ですね。ここを勝てれば…」
中村九段が、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「A級順位戦の最終局は、いろいろ中継されるじゃないですか。あれはA級棋士が主役ですよね。私は中村先生に、あの登場人物のひとりになってもらいたいんです」
「がんばります」
と中村九段は言った。
今期の中村九段には期待してみよう。
(つづく)
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LPSA設立10周年記念パーティー(前編)

2017-06-04 02:12:15 | LPSAイベント
5月21日、将棋ペンクラブ関東交流会の後は、LPSAの設立10周年記念パーティーである。私はパーティーの類があまり好きではないのだが、LPSAの存在は私の10年を確実に変えた。LPSAがなければ将棋熱がぶり返すこともなかったし、プロ棋士にここまで指導を受けることもなかった。まあそのぶんおカネもかかったが、とにかくLPSA区切りの10周年とあれば、一言お祝いとお礼を言いたかった。
会場の最寄り駅・銀座近辺へはいろいろルートがあるが、国立競技場駅から大江戸線に乗れば、築地市場駅まで1本で行くので、これがいい。
大江戸線に乗るのはかなり久しぶりである。車両がやや小さかったが、乗り心地はよかった。
築地市場駅から10分ほど歩き、「コートヤード・マリオット銀座東武ホテル」に着く。すると私の前にタクシーが停まり、中から佐藤康光九段が降りてきた。おお! 日本将棋連盟の会長も今回はお出ましである。
フロントで会場を聞くと、3階とのこと。佐藤会長もエスカレーターに乗るところで、私も付き人のような感じでついていった。
午後6時の開場時間を過ぎていたが、ロビーにはたくさんの参加者がいた。Sug旦那もいて、氏に会うのは数年ぶりだ。挨拶をして、受付に向かう。
参加費は1万円である。実は事前にW氏に、ご祝儀を出すべきか聞いてみた。私は渡す気満々だったのだが、W氏の回答は、「招待された人が参加費の代わりに出すものなんじゃないか?」で、それもそうだと納得した私は、参加費だけを納めることにしたのである。
だが芳名帳の脇には多くのご祝儀袋があった。ああ、オレも用意するべきだった、と後悔したが、もう遅い。
しかも記帳のあと一拍置いたら、「(参加費は)1万円です」と言われうろたえた。おカネは銀行の封筒に入れてきたのだが、この暑さで袋がふやけてしまい、内ポケットからうまく取り出せない。
やっと1万円をむしりとり、受付嬢に渡した。これだけでもう、私は汗びっしょりだ。
大庭美樹女流初段に挨拶される。今日はきもの姿で、ちょっと見違えてしまった。今日は皆さんこんな感じなのだろうか。
会場に入ると、かなりの参加客だった。私が毎年出席する得意先の新年会に雰囲気が似ていたが、そちらは義務で味気ないのに対して、こちらは何人か知己がいるので、楽しくなりそうな予感がする。
定刻になり、福山知沙アナの司会でパーティーが始まった。
まず、LPSA所属の女流棋士が登壇する。向かって右から中倉宏美代表理事(女流二段)、蛸島彰子女流五段、山下カズ子女流五段、藤森奈津子女流四段、鹿野圭生女流二段、大庭美樹女流初段、中倉彰子女流二段、島井咲緒里女流二段、大庭美夏女流初段、上川香織女流二段、船戸陽子女流二段、渡部愛女流初段、堀彩乃女流2級である。寺下紀子女流四段、神田真由美女流二段は欠席のようだ。皆さんきもの姿で、艶やかだ。
宏美代表理事の挨拶。「大勢の方にご支援いただき、この日を迎えることができました。イバラの道を歩んだこともありましたが、この道を選んだことに後悔はありません…」
数分が経った。宏美女流二段はまだいろいろ話したいことがあったようだが、涙なしでは語れなくなりそうで、マイクを離した。この場にふさわしい、平安顔であった。
ファン代表として、株式会社ザンギの挨拶。ザンギは歯科衛生品など、ケア製品の製造・販売を行っている。
「LPSAの企画力には、対局をこなしながらよく考えられるものだと、感心いたします」
続いて佐藤会長の挨拶。
「LPSAが発足してから、あっという間の10年という気がします。この間、女流棋界がずいぶん変わってきたと思います。…若手が強くなってきました。
これからの将棋界の課題は、女性ファンの増加に尽きます。
LPSAと女流棋士会、お互いに切磋琢磨して、…お互いに融合していくこと…いいところを取り入れていくことがベストと思います」
乾杯の音頭は、森内俊之九段が登場した。「皆さま、乾杯してよろしいでしょうか」
何だか可笑しかった。
乾杯のあとは、昇段の免状授与式である。まず、女流二段に昇段した彰子女流二段に、宏美代表理事から免状が送られた。妹から姉へ免状とは滅多に見られぬ光景で、私たちもウルウルしてしまう。
続いて蛸島彰子女流五段にも、女流六段免状が送られた。これはサプライズで、歓声が上がる。蛸島女流六段は女流棋士の第1号で、ここから女流棋士の歴史が始まった。女流六段昇段は遅すぎたくらいで、とにかくめでたい。
さて、懇親会である。Kun氏が来た。Kun氏は将棋ペンクラブのあと予定どおり大野教室で指して、こちらに入った。
「千駄ヶ谷から川口に行って銀座は、(場所的に)味がわるいと思いましたが」
とKun氏。なんのなんの、そのバイタリティーに脱帽である。
そこへ美夏女流初段がいらした。千葉ロッテマリーンズの話題になる。現在ロッテは負けが込んでいるのだが、最近連敗を脱出したらしい。
私も野球は好きだが、最近はほとんど興味がない。でもふたりは楽しそうだ。
「Kunさんも大沢さんも、社団戦頑張ってください」
「ハイ!!」
とKun氏が2人ぶんの返事をした。私は社団戦に出るのだろうか…!?
W氏もこちらに来た。W氏は大野教室と蕨将棋教室のスタッフをやっているので、今日もほうぼうで営業をしているようだ。
会場では美味そうな料理が並べられているが、W氏は麺類を美味そうに頬張る。しかし私は例のポップコーンでお腹がいっぱいになって、何も食べられない。完全にしくじった。
島井女流二段が挨拶にきた。今年は府中、天童、二子玉川に続いて4度目の鑑賞で、かなり近しく感じる。きょうはピンクの和服がよく似合っていた。
W氏が島井女流二段の髪型を褒めるのだが、それが細かい。これが私にはできないところで、褒められた島井ちゃんはうれしそうだ。W氏の抜け目のなさにはいつも感心する。
ステージ脇では、LPSA10周年の記念ビデオが流れる。たしか1周年記念の時も流れたはずで、この手法はLPSAの得意技だ。
(つづく)
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第10回武蔵の国 府中けやきカップ(4)

2017-04-08 14:04:15 | LPSAイベント

第7図以下の指し手。▲5八玉△4六桂▲6八玉△4九飛成▲3六歩△同玉▲2八桂△3七玉▲2六銀△同玉▲3六金(投了図)
まで、94手で一公の勝ち。

第7図で▲7九金で勝ちだと思ったが、△7八金の王手が気になった。そこで▲5八玉を考えた。以下△6九銀▲4八玉△3六桂▲3八玉△3七歩▲同玉△2六金▲3八玉△3七歩▲2九玉(参考図)でギリギリ残していると思った。

それで▲5八玉と上がったのだが、△4六桂と打たれて飛び上がった。
これを▲同歩は△4七銀でかなりあぶない。自玉もそうだが、△4七銀が3六に利き、玉も4六に逃げる変化が生じる。ここに至って▲5八玉の罪に気付いたが、そもそも参考図が好んで飛び込む変化ではない。ふつうに▲7九金(▲7九桂でも▲7九金打でもよい)と引く方がよほど安全で、▲5八玉は魔が差したとしか思えない。
▲7九金と指したら将棋が終わる。だから別の手を指してもう少しこの将棋を楽しみたい…という気持ちが潜在的にあった、といったら中座真七段に不遜といえようか。
私は読み直して▲6八玉。これに△5八金の追撃もイヤだったが、中座七段はふつうに△4九飛成とした。私は▲3六歩と打つ。そうして読んでいるうち、上手玉に即詰みがあることがわかった。
「負けました」
と中座七段が投了した。「最後は▲7六玉と逃げる変化があったから残していたのかな」
と中座七段。
「▲5八玉が失敗しました」
「そうですね。そこは▲7九桂でも▲7九金打でも投了でした」
私は恐縮するばかりである。そして中座七段は意外なことをいった。
「△3四角が悪手だった」
「そうなんですか」
「うん。▲3三桂成で終わってしまった。でもうまく咎められたことをホメるべきなんでしょうね」
「はあ、これで何とかいけそうかなと」
「…でもねえ、おもしろい戦法でしたねえ。桂をポンポン跳ねてねえ」
中座七段は私をまっすぐ見ていう。
「はあ、▲2五飛を指させていただきました」
最後はお互いの話が噛み合っていなかったが、これで感想戦は終了した。
とりあえずは、▲2五飛戦法の快勝譜だったといえよう。

いよいよけやきカップの決勝戦である。対局者は中倉宏美女流二段と渡部愛女流初段。渡部女流初段は連覇を、宏美女流二段は悲願の初優勝を狙う。解説は蛸島彰子女流五段と堀彩乃女流2級。
午後4時少し前に対局開始となった。戦型は先番渡部女流初段の四間飛車。むかしは振り飛車党だった彼女、いまは裏芸である。
渡部女流初段は角交換を誘い、▲8八飛と振り直す。宏美女流二段は片銀冠を構築した。戦いはまだまだこれからだ。
と、ホールにガチャガチャという騒音が響いた。
島井咲緒里女流二段とともに登場したのは「フーリオ」くん。将棋カードゲーム「ネコSHOGIバトル」のマスコットキャラクターらしい。
神聖な対局場所に現れたからまさに「乱入」だが、そこは愛嬌というところ。いいPRになったようだ。
将棋は中盤にさしかかった。私は詰将棋の解答確認である。スタッフ嬢に聞くと、岡本眞一郎氏は帰ったとのこと。ただ昨年に続いて解答プリントが用意されていたので、確認した。
第1問は9手詰だった。しかも2問目や3問目と比べるとはるかに易しい。
この問題を間違えたとは…。私は二重のショックだったが、これも私らしい。
解説は上川香織女流二段と島井女流二段に交代した。将棋は完全に持久戦で、金銀四枚が自陣に固まっている。
数手進んで、宏美女流二段は馬を自陣に引き付けた。
解説は上川女流二段から、中座七段にバトンタッチ。指導対局が終わったのだ。
中座七段「馬は金銀3枚といいますが、これで7枚になりますね」
さらに宏美女流二段は、△7八角を3四に成り返った。
中座七段「……。これで金銀10枚分になりましたね」
いや固い固い。まるで鉄筋の要塞のようだ。これは宏美女流二段、駒損ながら有利に見える。だが渡部女流初段の二枚飛車も強力だ。
ここで場内に大きな拍手が起こる。聞き手が島井女流二段から中倉彰子女流初段(当時)に代わったのだ。いよいよ真打の登場である。
彰子女流初段、きょうも袴姿で美しい。将棋ファンのはなしの中で、「美人女流棋士」というテーマで必ず名前が挙がるのが彰子女流初段である。3人のお子さんがいるのに、みずみずしさが損なわれてないのが素晴らしい。
そんな彰子女流初段の聞き手は、中倉姉妹のうらばなしが披露されたりして、おもしろい。
盤上は壮絶な攻め合いになっていた。宏美玉は△2二玉・△2三馬・△3三馬という、見たこともない「馬囲い」。渡部女流初段も▲5八竜・▲5九飛で、これも珍形の部類に入るだろう。
しかし渡部女流初段の攻めが鋭く、宏美女流二段の要塞は徐々に崩されていく。最後は▲3三金まで、宏美女流二段が投了。渡部女流初段の優勝となった。
宏美女流二段と彰子女流初段が嘆きながら抱き合う姿が印象的。そこに悲壮感はないが、残念無念の思いが伝わってきた。
渡部女流初段はうれしい連覇だが、アウェーの立場を考えると、複雑な心境、というテイだった。
さらに表彰式、お楽しみ抽選会が行われた。抽選会は、アンケートに答えた人から選ぶものだ。
せっかく当たっても帰ってしまった人もいて、けっこうチャンスはある。私は最後の最後に当たった。Sak氏も当たっていて、彼も毎回何かしらもらっていくが、私もけっこう引きがいい。しかしこんなところに運を使っているからいけないのだ。
宏美女流二段「LPSAはこの5月で設立10年を迎えます。その時はLPSAファンをお招きして、盛大なイベントを考えています」
5月になったその時、自分がどんな環境にいるのか想像もできないが、とにかくLPSAの発展を心より祈りたい。今日はありがとうございました。とても楽しかったです。
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第10回武蔵の国 府中けやきカップ(3)

2017-04-07 12:49:51 | LPSAイベント

第2図以下の指し手。△2三歩▲8五飛△8四歩▲2五飛△6四銀▲6六歩△9四歩▲6五桂△8五歩▲7七角△8六歩▲8八銀△7五歩▲同歩△5五歩(第3図)

本家に▲2五飛を指して、私はこれだけでもう満足だった。
本譜▲8五飛に△8四歩と謝らせて▲2五飛。ここまではいい進行じゃないか?
△6四銀には将来の桂頭攻めをかわす意味で、先に▲6五桂と跳ねた。
△8五歩には▲8七歩が無難だが、それでは△8六歩▲同歩△同飛で、△8四歩と屈服させた意味がなくなってしまう。そこで、▲7七角から▲8八銀と突っ張った。
△7五歩▲同歩に△同銀は、▲5三桂不成がある。しかしあえてその順を選び、以下△7六歩の攻め合いも相当だったと思う。

第3図以下の指し手。▲7四歩△7二飛▲8六角△7四飛▲6九玉△5二金右▲8七銀△9五歩▲同歩△7五銀▲4五桂(第4図)

△5五歩と飛車の横利きを止められて、何かの時に△7五銀がある。私は▲7四歩と伸ばし、△7二飛に▲8六角と、嫌味な歩を払った。
△7四飛には▲6九玉と、居玉を避けつつ金にヒモをつける。だが敵飛に近づき微妙だったかもしれない。
△7五銀に▲5九角は△6六銀で、▲6五桂が浮く。▲4五桂は角銀交換を承知の勝負手だった。

第4図以下の指し手。△8六銀▲同銀△3四角▲3五飛△4四歩▲7五歩△8四飛▲8五歩△6四飛(第5図)

中座七段は淡々と指すので、形勢判断のヒントにならない。
△8六銀▲同銀。角銀交換になって駒の損得はほぼなくなり、これ以降の悪手は許されなくなった。
△3四角が厳しかった。飛車取りはもちろん、▲7八の金に間接的に利いているのが大きい。私は▲3五飛と寄るよりないが、窮屈なところに押し込められてしまった。
中座七段は△4四歩。▲4五桂を取りきられたら、下手が負ける。私はとりあえず敵飛を追い回し、△6四飛まで。ここ△5四飛は、▲5三桂右成△同金▲同桂成でどうか。金を取っても桂を2枚渡すのはつらく、私はこちらのほうがイヤだった。
△6四飛に▲5三桂右成は△同金▲同桂成△6六飛で下手難局。指し手に窮したようだが、ここで私は起死回生の一手を見つけた。

第5図以下の指し手。▲3三桂成△同玉▲2五銀△4三金▲5三桂成(途中図)

△4二銀▲4三成桂△同銀(第6図)

▲3三桂成で一本取ったと思う。中座七段がしばらく考えたところを見ると、軽視していたのかもしれない。△同玉の一手に▲2五銀。これで角を取り返せる形になり、形勢を挽回したと思った。
何となく、ギャラリーが多くなったように感じる。中倉宏美女流二段VS島井咲緒里女流二段戦はとっくに終わっていたようだ。
ステージで岡本眞一郎氏の声がした。詰将棋の解答発表だ。昨年までは決勝戦の後に行われていたが、順番が変わったようだ。
初心者向けの詰将棋に続いて、一般向けの解答が始まった。だが私は盤面に集中しており、目をやる余裕もない。
第1問の解答をやっている。
「これは半分(あぶりだしの)答えが出ちゃってますね。こうやってこうやって…。ここで▲1三角と答えた人がいましたが、それは…」
とか聞こえる。ウン…? ▲1三角は、私の解答だぞ。…この手が違っていたか?
「…▲○○○まで。これで10になりますね」
10!? やっぱり「10」にならなきゃいけないのか? 今回のけやきカップが第10回だからか!!
全3問の解答が終わった。全問正解者は2名で、やはり私の名前は呼ばれなかった。
2名にはもれなく賞品が贈られた。残りの何名かには抽選となるが、何と私の名前が呼ばれた。第1問は落としたものの、難解な第2問と第3問を答えたのだ。岡本氏が情けをかけてくれたのかもしれない。
「(賞品を)もらってきていいですよ」
と中座七段。その言葉に甘えて、賞品をいただいてきた。府中の名菓、青木屋のお菓子だろうか。
局面――。中座七段の△4三金に、私は迷いつつ▲5三桂成(途中図)とした。これには△6六飛が気になるが、▲6七歩△8六飛▲4三成桂△同玉▲3四銀で、この展開は上手が避けるように思った。
中座七段は△4二銀と我慢する。私は▲4三成桂と金を取り、二枚の桂が綺麗に捌けて、下手十分になったと思った。
さて第6図で次の手が、本局唯一の自慢の一手である。

第6図以下の指し手。▲7七銀△7三桂▲5三金△3二金▲4三金△同金▲3四銀△同金▲同飛△同玉▲5二角△4三桂▲3五歩△同玉▲4三角成△8九飛(第7図)

右の指導対局は終わったようだ。飛車落ちだったが、中座七段の勝ち。対局者が減ればそれだけプロの負担が軽くなるから、下手は気を引き締めなければならない。私は顔を真っ赤にして考えた。
第6図から▲3四銀△同銀▲同飛△同玉▲1六角にも食指が動いたが、1枚手駒が足りない感じがした。
そこで、攻めたいところをグッとこらえ、▲7七銀と引いた。王手銀取りを防いだだけだが、上手にも有効な手がないと見たのだ。▲7七銀は地味だが、よくこの手が指せたと思う。
△7三桂に、よく分からないが▲5三金と張り付いた。以下△3二金に▲4三金以下△3四同玉までと進む。これでは先ほどの変化と持ち駒が同じだが、△4一金が盤上から消えたので、今度は▲5二角と敵陣から打つ手が生じた。
以下△4三桂に▲3五歩が決め手で、△同玉▲4三角成で上手玉は一手一手となった。
対して上手の反撃は△8九飛だろうが、▲7九金と飛車取りに引いて、上手は手がないだろう。
果たして中座七段は△8九飛。ところが私は、とんでもない手を指してしまう。

(つづく)
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