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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

長崎旅行2022・3

2023-04-12 23:30:07 | 旅行記・九州編
長崎を起点とした西九州新幹線が開業したのは、この日から3ヶ月前の2022年9月23日である。開業、というからには、新駅舎くらいは完成していると思った。
実際、九州新幹線(新八代-鹿児島中央)が2004年3月13日に部分開業した際も、鹿児島中央駅は九州新幹線の玄関口として、面目を一新していた。
しかしこの長崎駅は、工事中でまっさら。何もなかった。
だだっ広い空き地を抜け、歩道橋に上がると、ガランとした空間が闇夜の中でぽっかり口を開けていた。
何年か前までは、ここから長崎駅舎が見えたのだ。私が好きな駅舎で、十指に入っていたかもしれない。それがなくなり、私の心にも穴が空いたようだった。
かつて長野行新幹線が開業したとき、味のある長野駅舎が建て替えで壊されたが、新しいものができれば古いものがなくなるのは、世の理であるようだ。
さて、晩飯である。長崎は駅前に吉野家がある。しかし毎度そこでは芸がない。ほかをあたってみたが、これといった食事処がない。しかも雪が舞ってきた。雪の九州は、初めての経験かもしれない。
外は寒いし、迷っているだけバカバカしいので、吉野家に入る。並盛448円はだいぶ高くなったが、それでも牛丼が448円は安いというべきだろう。さらに、昨年の将棋ペンクラブ忘年会の昼食のときに入手したクーポン券を使って、30円安くなった。こういう割引は、料金以上にうれしい。
あとはネットカフェに行くのみだが、市電乗り場の近くに、餃子の王将があった。餃子の王将は、私が30代のころ、ひたすらポイントをためて、無料カードをゲットするまでになった。しかしそのカードを、王将は送ってこなかった。問い合わせると、住所不明で戻ってきたという。そんなバカなことがあるか! それから私は、王将を積極的にs利用しなくなった。
さて、王将はチェーン店だが、各地にご当地メニューがある。ここ長崎はちゃんぽんがあって、それが食べたくなった。いまはわだかまりも薄れているので、入店し注文する。
ちゃんぽんは、量もあって美味かった。チェーン店と侮るなかれ。味の研究はしっかりしているので、料金(638円)以上のお得感がある。
市電に乗り西浜町で降り、「フリースタイル浜町店」に向かう。店は割と早く見つかり、無事に入店できた。これで、最大の懸念が解決した。
暖かい空間で人心地がつき、PCでいかがわしいビデオを見てみる。新任女教師が生徒といっしょに身体検査を受けるやつで、「羞恥」のカテゴライズされていた。こういうバカバカしいシチュエーションが私は好きである。
ブログは「女流棋士の名前でしりとり」という生産性のない記事を書き、日付が変わったところで「マイナビ様へ深くお詫びいたします。」をアップした。ここでさすがに、就寝。

翌24日(土)。世間は土日で連休なのに、私はきょう、帰京せねばらない。もう、こんな生活はイヤだ。
さて、きょうは眼鏡橋近くの匠寛堂に行こうと思う。2年前にもお邪魔したが、そのとき買わなかった、特製献上五三焼佳好帝良「天地悠々」を今度こそ買いたい。
幸い、匠寛堂までは徒歩圏内だ。ネットカフェをチェックアウトしてぶらぶら歩くと、浜町アーケード街に着いた。
ここはさまざまな店舗が入っており、ぶらぶらするだけで楽しい。コメダ珈琲店もあった。旅先で時々見かけるのだが、入ったことはない。今回も入ってみたいのだが、その時間があったら観光に回したいので、パスとする。



眼鏡橋に着いた。眼鏡橋も大したことはないのだが、観光地だから来てしまう。
橋の手前に飛び石のようなものがあるが、観光客はその真ん中まで来てポーズを取る。そしてそれをこちらから、相方が撮るわけだ。私は一人旅なので、それはできない。
匠寛堂があったが、まだ開店していない。時刻は午前9時を過ぎているが、どうも10時開店のようだ。向かいのカステラ屋は開店しているが、そこで買うわけにはいかない。
しかし匠寛堂目当てで来た客が、この店に入る可能性は少なくないと思う。
ほかに行くところもないから、眼鏡橋の写真ばっかり撮っている。こうなったら、これを2023年の年賀状に使おうか。しかしこの眼鏡橋、改めて見ると巨大な眼鏡で、ちょっと不気味なところがある。



10時少し前、匠寛堂が開店した。早速入り、深呼吸をして、「天地悠々」を注文する。桐箱入りで1本4,800円(税込)。このくらいの大きさなら1,800円くらいが相場だから相当な買物だ。でも、いつも心配を掛けている親父へのお土産と考えれば、払える額である。
このあとは、甘木鉄道を訪問しようと思う。甘木鉄道は、おもに福岡県を走る第3セクターで、1986年開業。甘木鉄道は、かつて秋月城を観光した際に訪れた。今回の再訪は、2021年に「鉄印帳」を買ったため、それを埋めるためであった。
とりあえず市電に乗り、長崎駅前に戻る。明るい長崎駅前を見る。かつて駅舎があったところは何もなく、工事車両が入っている。長崎駅周辺はこれから明るい未来が待っているのに、私の心は晴れない。





対面の長崎バスターミナルに入る。
「基山まで大人1枚」
高速基山から基山駅までどれほどの距離があるか分からないが、歩ける距離だろう。
「いま、バスは走ってないんです」
「はあ?」
私は怪訝な声を上げた。
(14日につづく)
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長崎旅行2022・2

2023-04-11 22:49:00 | 旅行記・九州編
私が逡巡していると、私の後方にいた、馬場ももこ似の女性が、千円札を差し出した。
そうか……そうなったか。
マスターはこの千円札と生卵を、袋の中に入れる。そう、いつものアレである。
マスターが生卵を割ると、白身の中から小さく丸められたお札のようなものが出てくる。そこでみなはもう驚いているのだが、拡げられたお札が、さっき馬場ももこさんの出したもので、さらにみなは驚いた。私が振り返ると、馬場ももこさんと目が合った。
ああ、やっぱり私が千円札を出しておけば……。……アレ? これとまったく同じシチュエーションで、私は去年も後悔した気がする。
結局私は、何年経っても成長していないのだ。
さらにマジックは進む。今年は若い女性が多いので、その歓声を聞いているだけで、私も楽しい。この状況は、いままでありそうでなかったことだ。
マスターが「π」の本をカウンターに載せた。これは文字通り、円周率だけがひたすら載っている本で、マスターはこれを読むのが好きだという。
「この円周率の数字が、人生の縮図を表しているようですよねえ」
私も鉄道旅行が好きなので、「時刻表は読み物です」という人の気持ちは分かる。よって、マスターの気持ちも分からなくはないが、それでも「人生の縮図」とは……。
ある女性が当てられた。そして、円周率の本は別の人に渡した。
「4ケタの好きな数字を言ってください」
「ハイ、0327」
「それは、なんでそう思いました?」
「何となく」
「はい。アナタ、○頁の上から○行目、左から○文字目を読んでください」
本を渡された人が答える。
「0、3、2、7…」
オオーッ、と、周りがどよめいた。
これはもうマジックというか、すべての数字を記憶してしまっているのではないか。
長く続いたマジックも、いよいよ最後である。カウンターの上に、20くらいの正方形の枠がついた、長方形の木枠が立てられた。
そして傍らには3つのカードが出された。前の女性が1枚をめくると、そこには「マリオ」と書かれてあった。
「きょうの人数なら全員ができるかな。最後は皆さんといっしょに大掛かりなマジックをしましょう」
私たちにはルービックキューブが配られ、それをガチャガチャやる。頃合いのいいところで私たちはそれを木枠に嵌めた。
全部埋まったところで、マスターがそれをこちら側に見せた。するとそれは、マリオの絵柄になっていたのだった。
ちょっと感動して、今回のマジックは終了となった。時刻は17時ちょうどだった。
私たちは去りがたく、マスターが用意した、ぐにゃぐにゃのスプーンとフォークを購入する。スプーンは例年どおり300円だったが、フォークは材質が変わったため(銅か?)、500円となった。私は両方とも買った。
ただ、いままでは購入者の名前を個別に書いてくれたが、今年はあらかじめマスターの名前が書かれたものが渡された。おカネもいつものオバサンにではなく、マスターに直接払った。
マスターには挨拶できたが、「気」は注入されず、あっさりお別れとなった。私もここ数年はロクな生活をしていないので、これでよかったのだと思う。そして2023年も、私はここに来られるだろうか。
川棚駅に戻ると、17時25分の長崎行きがあと7分で来る。私は佐世保方面に行ったから、今年は長崎方面に行くつもりだった。私はまで1,310円の切符(すなわち長崎まで)を買い、ホームに出た。しかし列車は来ない。私の見間違えで、実際は17時55分だった。私はこの類の間違いをよくやる。視力のせいではないと思う。おっちょこちょいなだけだ。
列車待ちの間、諫早での宿泊も考える。何度か入った諫早の町中華の、ちゃんぽんをまた食べたい。たが、長崎まで買ってしまったので、長崎まで行くしかない。
と、おっさんに挨拶された。あんでるせんで一緒だったようだ。私は言う。
「私は1999年から毎年ここに来ているのですが、一向に成長しません」
「……」
また私はいらぬことを言う。楽しかったですね、とだけ言っておけばいいのに……。
17時55分の長崎行き・快速シーサイドライナーが6分遅れで来た。列車に乗り、スマホで今宵の宿を探す。しかしクリスマスイブイブでは、なかなか空室がない。予算を上げても同様だった。
こうなったら裏ワザを使うしかない。ネットカフェだ。
だが長崎市はメジャーなそれがなく、私が見つけたのは、観光通電停近くにある、「フリースタイル」というネットカフェだった。ここが正常に営業していて、空席があれば、とりあえず今宵の宿は確保となる。
列車は後れを取り戻し、19時29分、定刻に長崎に着いた。
曲がりくねった通路を通り、表へ出る。……ん? なんだこれは!!
予想もしなかった光景に、呆然とした。
(つづく)
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長崎旅行2022・1

2023-04-10 00:03:54 | 旅行記・九州編
(2022年10月10日のつづき)
2022年12月23日、1年振りの旅行は再び九州・長崎へ。この間、ゴールデンウイークは博多どんたくに行けず、いやどこにも行けず、夏休みもなく、将棋で無聊を慰めていた。今回はマスターのマジックを堪能して、少しでもエナジーを回復したいところだ。
九州は一部雪の予報だったが、飛行機は滞りなく出ているようだ。私は06時17分発の山手線に乗ったが浜松町で降りず、品川まで行く。京急が特別料金で安くなっているので、こちらを利用するのだ。
タイミングよく快特に乗り、タイム17分で羽田空港第1・第2ターミナルに着いた。行きの飛行機は定番のスカイマークだ。神戸空港で一旦降りるのがアレで、時間はかかるが料金は安く、「いま得」で10,980円だった。ちなみに2021年は、日程と予約時期が微妙に違うこともあったが、わずか7,990円だった。
滞りなく飛行機は出発し、09時05分、神戸空港着。一旦待合室で待つ。
空は気持ちのわるい雲が広がっている。神戸だから関係ないが、長崎にこれがあると面白くない。
20分後、再び搭乗。101便から141便に名称が変わり、我が席も新たな席に代わった。昨年までは、一旦降機しても同じ席だった。09時40分、神戸空港発。
機内からの空は晴れていたが当たり前で、私たちは厚い雲の上を飛んでいるのだ。



長崎空港へは10時55分に着いた。空は曇天で、いましも雨が降りそうな厚い雲が広がっている。不吉な予感がするが、もっともきょうは、天気はほとんど関係ない。
11時20分、長崎空港線の路線バスが発車した。約45分後、定刻を5分遅れて川棚バスセンターに着きそうになったが、誰も降車ボタンを押さない。結局私が押したが、川棚で降りたのは私だけだった。クリスマスイブイブのこの日、わざわざ川棚まで来てマジックを見る物好きはいないということか。



さて、きょうは金曜日、平日なので旅行貯金ができる。川棚駅前に郵便局があり、だいぶ昔に1回貯金をしたことがある。自分ルールでは同じ郵便局で2度貯金をしないが、やむを得ない場合はこの限りではない。要するに何回してもよい。「川棚駅前郵便局・1223円」。この時期の貯金額はかなり高い。
あんでるせんは現在飲食の提供をしていないので、昨年も入った「まゆみ」に入る。しかし昨年食べた海鮮天丼(1,000円)は、この時間は生ものはやっていないということで、不可だった。
仕方がないので、「ハンバーグとエビフライセット」をオーダーする。これはボリュームがあって美味かったが、1,400円は散財してしまった。旅行に出ると気が大きくなっていけない。
さてあんでるせんの前に来たが、13時開店の時間が近づいても、あまり人がいない。
と、1階から客がゾロゾロ出てきた。そうだ、ここは以前コインランドリーだったが、数年前から待合室になっていたのだ。
店内に入ると、そこそこ人がいた。ただ、満席にはなっていないようだ。とりあえず平日なのと、前述の通り、クリスマスイブイブということもあるのかもしれない。
私は大テーブルの一角に腰を下ろすが、すぐマジックが始まるので意味はない。ただ、お冷は出てきた。ここのレトルト風カレーライスが懐かしいが、コロナが収束したら、また食べられるようになるのだろうか。



奧さんらしきいつもの女性が出てきて、見学料を徴収したあと、恒例の席決めである。私はカウンター後ろの、いちばん右の場所となった。立ち見としては、まあいいほうである。全体では私を含めて19名。カウンターも含めて3列で済んだ。男性7名、女性12名で、これはうれしい。私の高校がこの男女比率だったら、私はまったく違う人生を送っていたと思う。
13時32分、マスターが登場した。毎年思うことだが、マスターは本当に歳を取らない。少なくとも初対面から23年経っているのに、メガネをかけた以外は、外見上何の変化もない。
対して私はブクブク太り、頭もハゲ散らかして、結婚もできず、合わせる顔がない。あんでるせんに来るたびモヤモヤした気持ちになるのは、そのためである。
マジック開演である。マスターが「どなたか指環を貸してください」という。お馴染みのマジックだが、ネタが分かっていても興味深い。
みなはマジックを見て驚くが、私はその反応を見てゲラゲラ笑う。しかしこれは厳密にいえば不健全な反応であって、みなと同じく驚かねばならないのだろう。だから私は、あんでるせんを卒業しなければならない人間だと思う。だけどそれが受け入れられず、私は毎年ダラダラと長崎に来ている。人間失格だと思う。
マジックは滞りなく進む。なお私は今回、二千円札を除く一通りの紙幣と通貨を用意している。もし入り用なら出すが、そこまで貪欲ではない。
マスターがお札を所望した。やや時間がかかっているが、出そうとしている人はいる。
「こういうのは早く出すことで(このマジックを見ることの)積極性が分かりますよ」
とマスター。それなら全種類を用意している私は該当するかと思うが、出さなければ意味がない。
マジックはいくつも進み、そのたびに3番の女性が棒を引いている。その何度目かに、私が当たった。
ただし残念、私に与えられた指令は、カードの間にスコップを突っ込む振りをして、「スコップ!」と叫ぶ、例のやつだった。
私は都合3度スコップと叫び、カウンターの上にカードの山が4つ並んだ。傍らには音楽再生プレイヤーが置かれ、ウルトラセブンのイントロが流れている。
マスターが音楽に合わせてカードを開くと、7が4枚並んだ。マスターが失敗することはないと思うが(何度かあるが)、私もホッとする。
この後「AKB48」もやったが、このときは「B」と「8」が入れ替わっていた。
まあそれはともかく、マスターはこのレパートリーがかなりあるという。しかし私が聞いたのは、この数年でこの2曲だけである。ほかの曲も聴いてみたいところだ。
マスターが、新たに千円札を所望した。しかしまたみんなまごまごしている。私はすぐにでもポケットから出せる。出すか? 出さないのか?
(つづく)
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長崎旅行2022・0

2022-10-10 22:58:34 | 旅行記・九州編
今年も恒例の長崎旅行が控えている。厳密には「四次元パーラー・あんでるせん」へのお邪魔だ。
それには電話予約が必要で、12月のぶんは、10月1日解禁となる。だが10月1日当日はいろいろ忙しく、電話をする暇もなかった。
2日もいろいろあって、気が付いたら夜になっていた。あんでるせんへの電話は2つあり、ひとつは末尾が「5385」、もうひとつは末尾が「2375」である。我がスマホには「5385」が上段にあったので、こちらに掛けた。
だが話し中だった。後日やっと繋がったが、「振込め詐欺防止のため、お客様の名前をお答えください」とか訳の分からない指示が出たうえ、結局誰も出なかった。
後日「2375」へも掛けたが、呼び出し音は鳴るものの、やはり誰も出ない。私もこんな歳になって寂しいチョンガーで、将来の楽しみが何もない。希望がない。そんなわけだからあんでるせんへの熱意も薄れつつあり、今年なんかは最悪、予約を取れなくてもいいかなと思った。
そしてきのう9日、ハッと思い出して、「2375」へ掛けてみた。呼び出し音が7回鳴り、もう切ろうと思った瞬間、いつもの女性が出た。
簡単に挨拶をしたあと、「12月17日土曜日」の回の予約をお願いした。しかしこの9日間で12月の予約はほぼ全部埋まったとのことで、あっさり断られた。
しかしここから予約を頑張るのが私である。参加するのは私ひとりだけだからと食い下がる。しかし12月17日は臨時休業だそうで、この日だけは予約が取れないという。
それで、以前はなかった「キャンセル待ち」を、申し込もうとしたら、23日(金)に空きが出たとのことだった。
これも運命なので、その日を予約した。24日も休めるかどうかは分からないが、23日をマスターに呼ばれているなら、24日も休めるだろう。
なお予約用の電話だが、現在は「5385」の電話は使用していないという。そういえば店頭にも「2375」の番号が記されていた気がする。私の記憶力なんて、その程度のものである。
ともあれそんなわけで、今年は12月23日に、あんでるせんにお邪魔することになった。
(12月23日以降につづく)
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2021年長崎旅行・6「10億円を獲り損ねた男」

2021-12-31 00:10:53 | 旅行記・九州編
お茶屋の店頭には年末ジャンボ宝くじの幟がたなびき、出入り口のガラスには、宝くじ各種のポスター、高額当選金の実績などが掲げられていた。ここは、その筋の販売で有名なのか?
私は近くの交通整理員に聞いてみる。私はこの初夏から、この類の人には親近感を抱いているのだ。
「なんでこんなに客が来てるんですか?」
「ここは宝くじが当たるんで有名なところでしてね」
やはりそうか。「ほら、あそこに店の電話番号が書いてありますでしょ」
庇の幌のところだ。「××―1192。いいくじ、と読めるわけです」
「ほう」
その左には、「銘茶 たばこ 宝くじ 冨田園茶舗」とあった。



「最たる例があそこの○○屋さん。1等が当たったんですよ」
「おおお」
「それでもう、県外からお客さんがワンサカ来るようになって……」
「……」
それで交通整理員まで雇って?いるのだから、物凄い売り上げということだろう。
私は年末ジャンボ宝くじを買ったり買わなかったりだが、今年は買うつもりだった。今回はちょうどいい機会で、買うしかないと思った。
年末ジャンボは連番、バラがそれぞれ箱に入れられており、客は自由に取ることができた。これなら恨みっこなしだ。
私は連番20枚、バラ10枚を買った。が、欲の皮を突っ張らかして、バラも20枚にした。
「12,000円です」
店員さんが散文的に言う。が、私の指に連番がもう1袋くっついてきた。
「15,000円です」
「いや、これは違います、買いません。
……でもこれが運命の分かれ道だったりして」
私は冗談めかして言ったが、実際そうだったのではないか? 私は10億円をみすみす手放してしまったのではないか?
私は気を取り直し、お茶を買う。1,000円だったが、いい買い物をした。
しかし駅に戻る時も、あの手放した宝くじが気になって仕方がない。あれは本当に10億円だったのではないか?
私は財布をまさぐった。残金は1万円と、あといくらだろう。だが、家を出る時1万円を足したおかげで、宝くじを15,000円分買おうと思えばできた。これが微妙な綾で、私に「買え」という、神様の計らいだったとも思えるのだ。
そう考えると、私はますます落ち込むのだった。
伊万里駅前からは高速バスに乗った。博多までは鉄路で行っても似た額だが、さすがの私も乗り換えが面倒だし、高速バスは誰に気兼ねすることなくのんびりできるからいいのだ。
天神日銀前までは1,880円。ポケットには千円札を2枚忍ばせたが、小銭で880円あった。
天神日銀前でピッタリを払い、降車。いつもの天神バスターミナルでなかったのでかなり迷ったが、福岡市役所ふれあい広場になんとか着いた。いつもの「天神クリスマスマーケット」である。
今年もきらびやかにライトアップされているが、私はここに来るのが目的なので、もう中には入らなかった。





ちょっとお腹が空いた。中洲川端の商店街に「ウエスト」があったので入る。頼むはもちろん「ごぼ天うどん」(大盛り)である。福岡のうどんはコシがないが喉ごしがよく、つるつる食べられて、私は好きだ。
会計は560円。しかしSuicaは使えないとのことで、小銭をかき集めたら、5円や1円を除き、470円しかなかった。さっきは560円あると思ったのに、錯覚だったか……。
レジには「千円札が不足しています」の張り紙がある。だがないものはなく、私は最後の壱万円札を使うしかなかった。
気を取り直して、博多駅前に行く。ここは「博多クリスマスマーケット」と名前を変える。ここもお馴染みの光景で、1年振りに帰ってきたという感慨がある。しかし何というか、客の熱気が昨年ほどではないような気がした。
一回りしてくると、たぶん有名なソプラノ歌手だと思うが、ステージで素晴しい歌声を響かせていた。無料で楽しめるステージは醍醐味で、私はさっぽろ雪まつりが懐かしくなった。









時刻は午後8時にならんとしている。帰りの飛行機は21時05分なので、もう空港に向かうしかない。
博多空港に着くと、多くの客が手荷物検査場に並んでいた。時間に余裕を持たせたのに、けっこう際どかった。
飛行機はANAとスタ―フライヤーの共同運航便。機材はスターフライヤーで、背もたれの液晶画面がよかった。
無事離陸・着陸し、帰りも京急を使い、12時前に自宅に着いた。これにて1泊2日の現実逃避は終了である。

風呂に入る前にジーパンのポケットをまさぐると、なぜか千円札が出てきた。
伊万里からの高速バスのとき用意していたおカネだ。だが一部は小銭で払ったため、この千円札は使わなかったのだ。
ということは、ウエストで壱万円札を使う必要はなかったのだ。
私は呆れるしかなかった。
それはいいとして、問題は年末ジャンボである。決戦は2021年12月31日。
ここで10億円が当たればいいが、外れたら、私が買わなかったあの宝くじが、10億円だった可能性がある。
さて結果やいかに。
(おわり)
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