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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

終戦記念日の4時から男(中編)

2020-08-25 00:08:17 | 新・大野教室

第2図で少年に▲2六銀と指されていたら、△1四歩▲3七銀で大切なと金を取られ、上手が戦意喪失になるところだった。
しかし少年は▲1七飛と浮いたので、私は△3六とと引き、これは私の優勢になった。
ちなみにここ、船戸陽子女流二段だったら、「ここはよく考えましょう」と言って、再考を促す。前局の▲4四桂もそうである。これが私にはできないのである。
将棋は私が勝った。

2局目に指した少年が指し足りないようなので、またも私が再戦する。振駒で、私が後手となった。
対局開始。少年が早くに▲2五歩を決めてきたので、私は向かい飛車に振る。相居飛車は神経を遣うのでイヤだ。時々飛車を振りたくなるのである。
少年は▲5七銀左から急戦である。さすがに少年、どの戦法にも精通しているようだ。

第1図の△4四角が欲張った手。捨て置けば△3三桂で、のちの△2五飛や△2五桂を見る。
少年は▲4六歩ときたが、△3三桂▲5六銀△2五桂▲4五歩△3七桂成▲2二飛成△同角▲3七桂△3九飛(第2図)で、私が有利になった。

戻って少年の▲4五歩では、じっと▲2六銀だったと思う。
第2図以降は、△2四角~△6八角成▲同金に△7七香が決め手。この囲いは一段目に飛車を置き、△7七○、が決め手になることが多い。
以下は豊富な持駒を利用して、先手玉を討ち取った。

ここまで5戦全勝は望外の成績である。
次はいよいよShin氏と対局である。Shin氏はいい会社に長年勤め、しっかり家庭も持っているよきパパである。私から見れば眩しい存在でしかなく、彼と対等に渡り合えるのは将棋しかない。Shin氏が振って、私が先手になった。
▲7六歩△8四歩に、▲6八飛と振った。Shin氏は居飛車の定跡に精通しているし、さっきも書いたように、振り飛車で序盤はラクに指したかった。
しかしShin氏は早々と△4四角と出、△3三桂と跳ねる。地下鉄飛車を狙っているのかと思いきや、玉を2一に収め、いっそう固くする構想だった。
私は▲4五歩~▲6五歩と突っ張り、▲7五歩。もし△同角なら、▲3三角成△同金▲7五飛の桂得で先手有利という仕掛けだ。
Shin氏は駒組を進め、私は▲6八角。しかし▲5七歩型だったので、違和感があった。ここでShin氏が仕掛ける。

第1図以下の指し手。△8六歩▲同歩△4四歩▲7六飛△4五歩▲7七角△7四歩▲同歩△7五歩▲6六飛△4四角▲6七銀△6六角▲同角(第2図)

名人戦は渡辺二冠が勝ったようである。B級1組に落ちてからの名人は初めてのはずで(8月25日註:読者から指摘があったが、加藤一二三九段の例をうっかりした)、36歳の戴冠はうれしいだろう。おめでとうございます。
Shin氏は△8六歩▲同歩の突き捨てを入れたあと、△4四歩。▲同歩は△同角で調子がいい。私は▲7六飛と浮いたが、堂々と△4五歩と取られてしまった。
私は▲7七角と戻ったが、Shin氏は△7四歩。こんなもん、取る一手と▲同歩としたが、その瞬間△7五歩~△4四角があるのに気付いた。実戦もそうなって、対His戦だったら投了していたかもしれない。しかしまあ投げられないので、▲6七銀と引く。のちの△8六飛が角取りにならないためだが、これもおかしな手だった。といって、ほかに指す手もなかったのだが。

第2図以下の指し手。△8六飛▲9五角△8九飛成▲5一角成△5五桂▲同角△同歩▲4四桂△6八飛▲3二桂成△同金(第3図)

第2図でShin氏は当然のように△8六飛と走ったが、先に△6九飛もあったかもしれない。▲5八銀とは引けないので、この銀の処置に困ったところである。
△8六飛には▲9五角があったが、Shin氏は織込み済。以下△8九飛成として有利、の読みである。
▲5一角成には△4六桂がイヤだったが、Shin氏は5五に桂馬を置いた。これは▲同角と切り、返す刀で▲4四桂が勝負手である。この将棋、後手を引いていては負けになる。
とはいえ攻め合いの△6八飛も厳しい。私はとりあえず金を取ったが……。

第3図以下の指し手。▲5九銀△6七飛成▲4三歩(第4図)

第3図で▲5八銀打は先手にならない。といって▲5八金打は投入のしすぎ。仮に△6七飛成▲同金となっても、この金は一生働かない。そこで▲5九銀と打った。△6七飛成で銀は取られるが、飛車を三段目に追いやり、一段竜を2枚の駒で遮断している。
そこで▲4三歩と垂らした。

第4図以下の指し手。△3一銀打▲4二金△1五歩▲3二金△同玉▲4二金△2一玉▲3一金△同銀▲4二歩成△1六歩▲3一と△同玉▲3三馬(第5図)

第4図で私なら、ノータイムで△4三同金。以下▲5二馬なら△3二銀の要領である。でもShin氏は取らないと思った。とはいえ△3一銀打は疑問で、私は▲4二金と張り付き、かなり形勢が縮まったと思った。
△1五歩は急所の端攻めだが、まだ猶予がある。私は▲4二金から攻め、先ほどの▲4三歩がと金に昇格した。△1六歩には▲3一とと銀得し、勝手にせいの▲3三馬。さっきまで敗勢だったことを思えば、この展開は望外である。

第5図以下の指し手。△1七金▲同桂△同歩成▲同香△同香成▲同玉△1六歩(途中図)

▲1六同玉△8六竜▲4六歩△1五歩▲同玉△1二香▲1三歩△同香▲1四歩△2四角▲同馬△同歩(第6図)

Shin氏は△1七金と放り込んだが、もったいなかった。ここは△1七歩成でよく、▲同桂は△1六桂があるから、不可。よって▲同香と取るよりないが、△同香成▲同玉で、玉を引っ張り出せた。本譜はここで金を1枚手放している勘定になるから大違いである。
Shin氏はすでに秒読み。私は数分残っているが、指す手は限られている。しかし△1六歩にはもう少し考えるのだった。すなわち▲1八玉で残していると思ったが、相当あぶない。それで▲1六同玉と取ったが、これでもわずかに逃れていると思った。
Shin氏は△1二香と打って詰み、と見ていたようだが、私は▲1三歩~▲1四歩。これで1四からの脱出ルートができ、逃れている。Shin氏は△2四角と馬を消しにきたが、ここで私が先手を取っては、逆転したと思った。

第6図以下の指し手。▲5三角△4二角▲3三香△3二桂▲2三桂△2二玉▲1三歩成△3三玉▲4二角成△同玉▲3一角△5一玉▲5二銀△6二玉(第7図)

▲5三角はノータイム。△4二角に▲3三香もノータイム。△3二桂には▲同香成△同玉▲4四桂で詰みと思ったが、私はノータイムで▲2三桂と打った。△4一玉なら、▲3二香成△同玉▲4二角成△同玉のとき、▲3一角と打てる。ゆえに△2二玉だろうが、そこで▲1三歩成と、香を取りながら王手ができる。この順に魅入られてしまったのだ。
だが▲1三歩成△3三玉に▲4四金で詰みと思いきや、△2二桂が利いている。そこで▲4二角成と先の変化に合流させたが、△同玉▲3一角△5一玉▲5二銀△6二玉のときに、指す手が分からなくなってしまった。私もすでに秒読みである。どうする?

(つづく)
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終戦記念日の4時から男(前編)

2020-08-24 00:14:56 | 新・大野教室
大野教室はお盆の時期にも「第1、第3土日曜開催」を崩していない。これはありがたいことである。今年はコロナ禍で姪と甥が遊びに来なかったので、終戦記念日の15日、大野教室に行った。今回は「4時から男」である。
川口駅構内の立ち食いソバ屋でかけそばを食べ、午後3時45分ごろ教室に入る。すると土曜日なのに下駄箱が満杯だった。土曜日は客が少なくなっている、とW氏の弁だったから、これは異変だ。
W氏「あれ大沢さん、珍しいね」
「私は大沢さんが来ると思ってましたよ」
と、大野八一雄七段が散文的に言う。「前回のとき、Shinさんが15日に来るって言ってたからね。Shinさんと指しに来ると思った」
私は図星を指され、苦笑いである。もちろんShin氏も来席していた。
1局目は小学生低学年と思しき少年と指す。和室にはOg氏(指導担当)、佐藤氏、Tod氏、Taga氏、Ok氏、Tok氏らの姿があった。これだけ成人が集まったのは珍しい。いまは子供たちに席巻されているが、ちょっと前はこれが当たり前の光景だった。
平手なので振駒にし、私が先手になった。私が彼相手に先手か。まだ平手だからいいが、彼に駒を落としてもらう成人もいるわけだ。子供相手だと、これが結構な屈辱になるのではなかろうか。将棋は年齢のハンデなく戦える競技ではあるけれど、それがアダになる場合もある。
将棋は横歩取りになった。私は▲3四飛のまま▲5八玉から▲3六歩。いわゆる青野流だが、この先どう指していいか分からない。
少年は角を換え△2六角(第1図)。

以下▲3八銀△3五角▲同歩△3六歩▲4五桂となったが、これに△4四歩なら苦しいと思った。少年は△3七歩成▲同銀△2九飛を選び、私は▲6六角。これに△2二歩なら▲7五角とするつもりだったが、△5二金で二の矢がない。
少年は△2二歩とせず△1九飛成だったが、私は▲1一角成(第2図)として十分になった。

以下数手進んで第3図。ここで▲3二馬と決断する。以下△3二同銀▲3四桂△5一玉▲5三角成△同金▲同桂成△2五角▲7九玉△3六角打▲7一銀まで、私の勝ちとなった。
感想戦。第1図以降△4四歩の変化は、▲6六角で難しい、の結論になった。とはいえ私たちレベルの感想なので、定跡は違う評価なのだろう。
今日は第78期名人戦第6局が行われている。私が家を出る時は、渡辺明二冠が勝勢だったが、豊島将之名人はまだ粘っているようだ。プロ的にはオワリでも、すぐに投げられないところである。
教室の和室の隅では、Taga氏とOk氏が熱戦を繰り広げている。

Taga氏はともかく、60歳近くになって将棋を始めたOk氏の上達が凄まじい。大野七段は、「ヒトは何歳から将棋を始めてもアマ四段になれる」と言ったが、その通りなんだと思う。
このあたりで、Tod氏が帰ってしまった。Tod氏には現在の環境も含め親近感を抱いているので、食事会でいろいろ慰めてもらおうと思ったのに、大誤算である。
次にTod氏が大野教室に行くことが分かれば、私も駆けつけたいと思う。
私の2局目は、また少年と。今度は私の飛車香落ち。この手合いは厄介で、端を破られるのを覚悟しなければならない。かつて植山悦行七段は、「飛車香落ちを指すくらいなら、二枚落ちのほうが指しやすい」と言ったが、私も同意見である。
対局開始。△3四歩▲7六歩△4四歩のあとに、△3二金と指したのが躓きの元。▲1四歩△同歩▲同飛に△1三歩とせざるを得ず、そこで▲3四飛と横歩を取られてしまった。よく分からないが、上手がこの歩を取らせては失敗だと思う。
しかしそこから私が怪しい手を連発し、最後は私の勝ち。

3局目はまた別の少年で、また私の飛車香落ち。たぶんいくらか前は、大野七段と二枚落ちだったのだろう。そこから上達し、いまは飛車香落ちに昇格しているに違いない。つまり大野七段の教えをしっかり守っているわけで、油断のならない相手ということである。
対局開始。私は△3二金を後まわしにし、△3三角~△2四歩~△2二銀。少年は▲1四歩△同歩▲同飛と来たが、私は△2三銀。これで飛車が成れない仕組みである。
少年は▲1八飛と引き、私の△1四歩に、今度は▲4八飛と、こちらに戦機を求めてきた。

だが部分図の▲4四桂が錯覚。△同歩で▲3二角成とはできない。▲4四桂のとき待ったをしてあげてもいいのだが、それは少年のプライドを傷つける。黙って△4四同歩と取った。
少年は▲4四同飛としたが、△4三銀▲4八飛△3三角で、私はだいぶ楽になった。
「これは大山―升田戦みたいですね」
とOg氏の声。T君と対局中で、覗き込むと、Og氏の振り飛車に、T君が居飛車穴熊に囲っていた。
私「昭和43年の名人戦ですか?」
Og「はい」
私「第2局ですね」
Og「はい」
これは升田幸三九段の構想が冴えたのだが、終盤▲8一銀成の疑問手を指して惜敗したやつだ。
すると誰かが「マニアックな会話だ……」とつぶやいた。
私の将棋は、以下私が勝った。

感想戦は、▲4四桂より前の、下手の攻め筋を説いた。▲4四桂には触れないのがエチケットである。
しかし少年は消化不良だったようで、W氏がそこを汲み、再戦となった。
今度は少年もポカなく指したが、私は△5七角成(第1図)とし、まずまずの形勢。
しかしそこから数手進んで第2図の△5五桂が意味不明の大悪手。ここで少年に好手がある。

(つづく)
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8月2日の大野教室(4)

2020-08-16 00:22:26 | 新・大野教室

第1図から△5五銀▲同金△同歩▲同角(第2図)と進んだが、私は金を手放すのが惜しくなり、△7一玉。そこで▲7六銀と手厚く打たれ、チャンスを逸した。

もっともここでは互角であろう。以下Shin氏は▲8六歩~▲8五歩と伸ばしたが、私は意地でも△8三歩とは謝れないところである。Shin氏は▲8四歩。これで本局は、▲8四歩が活かせればShin氏の勝ち、活かせなければ私の勝ち、ということになった。
私は△4五歩と仕掛ける。定跡書ではこれで後手の攻めが成功するのだが、のちの△3六歩▲同銀に△4六歩、とじっと打ったのが緩手で、私がつまらない形勢にしてしまった。
以下数手進んで、私は△8六金(第3図)。

以下▲8七銀に△8五金。▲7七桂には△7五金の予定だったが、▲9七角△7四金のとき、▲8三歩成△同銀▲7五歩△8四金▲8五歩の狙いがあり、あまりいい金打ちではなかった。
私は気を取り直し、再び4~5筋を攻める。これが好調な攻めのようで、実は攻めさせられている感もある。

進んで第4図。ここでShin氏は▲7五桂とした。これも厳しいが、私はこの瞬間、▲8八飛を恐れていた。ごちゃごちゃやっているうちに八筋ががら空きになり、生じた筋だ。これは▲8四歩が最大限に活き、後手は相当気持ちが悪い。
本譜は△3六銀成。ここでも▲8八飛があったが、今度は私にも△7四銀の受けがあり、微妙に状況が違う。
以下は私がもたつきながらも寄せ形を築いたが、まだ先手に受けがあった。だがShin氏は▲7一銀△同玉▲6三桂不成△同金▲2一竜と、王手攻勢で最後の突撃を試みる。しかし際どく詰まず、私の制勝となった。
時刻は午後7時をとうに過ぎていたが、感想戦を行った。序盤から丁寧に行い第4図の局面まできたが、私指摘の▲7五桂を、Shin氏も認めた。
「飛車は縦に使うことを考えていたから、気付きませんでした」
とShin氏。こう進んでいたら、Shin氏が勝っただろう。
(お互い的外れな手を指していないから、私は後日の棋譜再生が容易と踏んだのだが、数日経ったらかなり忘れていて、ブログでの棋譜披露ができなくなってしまった)

さて、晩飯である。佐藤氏はまたも帰宅したため、メンバーは大野七段、W氏、Shin氏、私の4人となった。このメンバーで食事は史上初ではないか? みなは否定したが、まあ金曜教室ではあったかもしれないが、土日教室では初めてと思う。
食事は例の駅ビルにて。とんかつ屋は開いていいたようだが、インドカレー店に入った。
ではここで、席の配置を記しておこう。

出入口
   Shin  大野
壁   □   □
   W   一公
     壁

私たち定番の部屋で、客は私たちのみ。ソーシャルディスタンスは取っている。
私たちはカレーを食したあと、食後のゆんたくに入る。この店は長居に寛容なのがありがたい。
私は夏子さんの件で、みなに泣き言を言った。この類の話は9年振りだが、大野七段もW氏も、別の女性の件で再び聞かされるとは思わなかっただろう。
私「だから、26年前に彼女とうまくいってりゃ、それ以後の人生は変わってたわけよ。駒込に将棋指しに行ってないから、大野教室にも来ていない」
W氏「それは分からないよ。やっぱり将棋指しに来てたんじゃないか?」
私「どうかな、将棋指すより嫁さんといたほうが楽しいんじゃないか?」
なんだかこの会話が虚しい。
「だけど大沢さん、50過ぎてそこまで全力で悩めるなんて羨ましいよ」
と、大野七段が言った。これと似たセリフを、9年前にも聞いた気がする。
最近は藤井聡太棋聖の影響からか、某所での将棋教室では、受講を希望する生徒が増えているらしい。だがこのご時世なので、主催者側は人数制限を行っているという。これも巡り合わせの不運である。
気が付くと時刻は午後10時になり、閉店の時間になった。2日連続の交流で私のストレスもほんの少し軽減されたが、しょせん過去が変わるわけではないので、虚しさは変わらない。
Shin氏は15日(土)も大野教室に来るという。私はどうしようか。
(おわり)
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8月2日の大野教室(3)

2020-08-15 00:08:10 | 新・大野教室

第4図以下の指し手。△9四歩▲9七飛△8六飛▲8七歩△8五飛▲9八飛△9五歩▲8八飛△9六歩▲9八歩△3六歩▲4七金△5五飛▲5八歩△3三桂▲5七歩△同歩成▲同銀(第5図)

大野八一雄七段は△9四歩。▲同歩は△同飛で、飛車交換が受からない。△5七桂がいるから、下手は強い戦いができないのだ。
私は飛車をひとつ引いたが、逸機。ふつうに▲9八まで引くべきだった。
大野七段は「9七か」とつぶやき、△8六飛。▲8七歩△8五飛に私は▲9八飛とまた引かざるを得ず、頗る模様が悪くなった。
だが△5五飛にようやく▲5八歩が打てて、桂馬を取り切れた。
とはいうものの、2歩損しているうえ、飛車角が蟄居状態。形勢は思ったほどよくない。

第5図以下の指し手。△3五銀▲5六歩△5一飛▲2七桂△4四銀▲3六金△3五歩▲3七金△2五歩▲2四歩△3四銀▲1五桂△1四歩▲2三歩成△同銀▲同桂成△同玉(第6図)

四枚落ちの少年は対局相手がいなかったこともあるが、大野七段に定跡の分からないところを聞いている。その意気やよしである。
△5一飛に▲2七桂はあまり気が利かないが、ほかに指す手が分からなかった。ただし△4四銀に▲3六金と歩を払えたのは収穫である。
△2五歩に、▲2四歩。△同銀なら▲3四歩なので大野七段は△3四銀だが、私はスイと▲1五桂と跳ね、半分中途半端だった桂が、銀との交換を約束された。大野七段は怒って?△1四歩だが、私は▲2三歩成とし銀得になり、これは負けられないと思った。

第6図以下の指し手。▲4七金△2六歩▲2八歩△3四玉▲4八角△2一飛▲3七金△3六桂▲3九角△2八桂成▲同角△3六歩(第7図)

上手は△5五歩の狙いがあるので私は▲4七金と寄ったが、どうだったか。▲4七銀だったかもしれない。
大野七段は△2六歩▲2八歩を利かし、△3四玉。これが上手特有の指し方で、次に△2一飛を見ている。そして実際そう指されると、次に△2七桂の打ち込みがあり、これは容易ならざる形勢だと思った。
△3六桂▲3九角には△2五桂がイヤだったが、▲2六金△1七桂成に▲2五銀があり、△同飛▲同金△同玉▲2二飛は下手勝ち(参考A図)。

大野七段は「(△2五)桂は大したことないなあ」とつぶやきつつ、△2八桂成から△3六歩。これがさすがの手で、私はすっかり困ってしまった。

第7図以下の指し手。▲2六金△同飛▲2七歩△2一飛▲5八玉△5一飛▲4七桂△5四金▲6六歩△7五歩▲6七金△7一飛(第8図)

第7図で▲3六同金は△2七歩成が厳しい。以下▲2五銀△同桂▲2七銀はあるが、あまり考えなかった。▲2六金から▲2七歩は、こう収めたくなるところであろう。
△2一飛に、私は「居玉を避けよ」で▲5八玉。126手目で初めて玉が動いた。
大野七段は△5一飛から△5四金。ついにこの金まで出動してきた。
そして△7五歩~△7一飛。中盤では私に歩の持駒が5枚くらいあったのに、いまは歩切れ。つまり△7六歩~△7七歩成の突進が止められず、私はこの間に上手玉を寄せざるを得なくなった。しかし相手玉は見えない。

第8図以下の指し手。▲4五歩△3五銀▲同桂△7六歩▲4六桂△3五玉▲5四桂△7七歩成▲4六角△4五玉▲5五金(投了図)
まで、144手で一公の勝ち。

実はここで、▲4五歩が狙いの一手だった。これに△4五同桂と△4五同銀は▲4六桂。△4五同玉は▲2六桂。△4五同金は▲6四角△5三銀▲8二角成。いずれも下手に楽しみが出る。
大野七段はひねって△3五銀と出たが、私は▲同桂。これを△同玉とも取りにくいので大野七段は△7六歩ときたが、やはり▲4六桂が絶好となった。以下▲5五金まで、大野七段の投了となった。

「(第7図以降の)△5四金が失敗した。こんな手を指さず、すぐに△7一飛(参考B図)とすべきだった」

と大野七段。「中盤銀損になったけど、悪くないとは思ってたんだよね」
私は、急転直下の終局になったので、自分の勝利が信じられず、ボーッとしていた。ただ勝敗は別にしても、長期の実戦不足の割には、粘り強い将棋が指せたと思う。
またさっきの少年が大野七段に質問をしたので、私は感想戦をせず、席を離れた。

今日は昼から入ったので、まだ将棋が指せる。今度も新規の少年で、私の後手。つまり平手だ。
将棋は相居飛車で、角換わりになった。少年は早指しで、文字通りノータイムだ。早見え早指しは元気があっていいが、若干ムッとくる。
将棋は私がやや有利のまま終盤に向かったが、△3五桂・▲4七金の局面で、少年は▲5六角。これは▲4七金にヒモを付けた手だと思ったが、△2三玉への王手になっていた。あやうく△4七桂成として負けになるところだった。

この後は優劣不明の戦いになったが、第1図の▲3四角と出た手が敗着。△5九金▲7九玉△6九金打まで私の勝ちとなった。
ここまで、六枚落ちの敗戦を含め、3勝3敗。最後はShin氏との対局となる。振駒でShin氏の先手となった。▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金に▲3八銀とするのが今風だ。私も△7二銀としたが、Shin氏はなおも▲9六歩。それでこちらがひねり飛車になった。

第1図から△5五銀▲同金△同歩▲同角に、△5四金▲8八角△6五金が私の読み筋。途中△5四金ダサイが、この金が中央を制して、指せると思った。
ところが……。
(つづく)
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8月2日の大野教室(2)

2020-08-14 00:11:02 | 新・大野教室

第2図で私は△6四香と打ったが、覇気のない手だった。Kob君は▲5五銀。これが厳しく、△5五同角は▲同角。△5三角は▲6四銀で、A△同角▲同角△同金▲5三角。B△同金▲同角△同角▲6三金で、いずれもKob君が優勢になる。私は手順Bを甘受したが、これは負けたと思った。
だがKob君も寄せをグズり、気が付けば私は中空に要塞を作っていた。Kob君の持駒は飛角しかなく、これは私に形勢の針が触れたと思ったが、Kob君は粘り強く指し、最後は私が競り負けた。いや、この敗戦は痛かった。
負けた将棋の感想戦はサラッとやりたいところだが、Kob君は初形に戻す。それで私も付き合うことになった。
序盤、私の△6四歩で、Kob君は△5四歩を予想していたという。それもあるだろうが、そこを研究していたらキリがないので、先を急ぐ。
角交換後の▲5五銀に私は△6三銀としたが、Kob君は△6三金を考えたという。ただ角交換をしたので、ここは△6三銀がベターだと思うが、どうか。
中盤、私が△7二飛として袖飛車の形になり、ここは自信があったのだが、Kob君も我に利ありと思っていたらしい。
問題は第2図で、Kob君は△6四銀(参考図)を予想していたという。なるほどこれが将棋の手で、△6四香なんていう手はなかった。

私は感想戦が好きではないが、感想戦も根を詰めてやってみるものだと思った。
時刻は午後3時半にならんとしている。感想戦が長くなって、3時休みがなくなってしまった。
さっきから声がしていたが、Shin氏が来ていた。前回私が来たときはW氏から、Shin氏に将棋に対する熱意がなくなったらしい、という話は聞いていた。
だがこうして来たということは、また将棋熱が高まったということだろう。

4局目は初心者君(小学生)と戦う。私の六枚落ちである。大野教室は本当に新規が多い。
私はボンヤリ指していたが、初心者君は▲2五歩まで止めて、スズメ刺しできた。たぶん大野八一雄七段の教えだと思うのだがこれが肝要で、上手の△2四歩~△2三金を抑えているのだ。
これで端を破られたが、初心者君は▲4四角と歩を取ってきた。しかしこれは△同銀でタダだ。さすがに私もこの自爆手を説明し、思い留まってもらった。

数手進んで、私の△7六歩まで。ここで初心者君は▲6八玉と指そうとしたが、私は「▲7七桂が生きているうちに、こちらの玉を詰ましましょう」と言った。
とりあえず▲4三銀△5三玉まで行ったが、ここで初心者君は考える。1分くらい経って「アッ」と叫ぶと、彼は▲4二竜(勝利図)と指した。ここはむろん▲5二金でもいいが、持駒を使わないという条件を付ければ見つけにくい手で、こうした発見の快感が、将棋を強くする。

そしていよいよ、大野七段との指導対局となる。もちろん角落ちでお願いした。

初手からの指し手。△5四歩▲7六歩△6二銀▲2六歩△5三銀▲2五歩△4二玉▲2四歩△同歩▲同飛△3二玉▲3六歩△2二銀▲3五歩△2三歩▲2六飛△4二金▲3八銀△8四歩▲7八金△6二金▲7六歩△8五歩(第1図)

大野教室での指導対局は、2019年4月27日「大野教室Presents・女流棋士の指導対局会」以来、1年3ヶ月振り。それ以外の場所だと、新宿将棋センターの1月6日以来、7ヶ月振りとなる。
私は居飛車の作戦を採り、△3二玉に▲3六歩。そこで△2三歩でなく△2二銀だったので、早速▲3五歩と突っ張った。
そこで△2三歩に、いつもなら「一公流▲2五飛」だが、本局は▲3五歩と突いているので、▲2六飛と引いた。
△8五歩にはどう指すか。

第1図以下の指し手。▲7五歩△4四銀▲3六飛△2四歩▲7七角△2三銀▲4六歩△5三金▲4五歩△同銀▲7六飛△5五歩▲同角△6四歩▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲7六飛(第2図)

私の右側にOk氏が入った。Ok氏は飛車落ちでの対局である。Ok氏、よくここまで強くなった。
局面、急戦調の将棋では、上手に飛車先の歩を交換させてもよい、というのが大野七段の教えだが、上手に歩を持たせると何かと面倒なので、▲7五歩と突いた。
大野七段は△4四銀~△5三金と盛り上がってきたが、私は▲4五歩△同銀▲7六飛と軽快に動く。
次に▲3七桂があるので大野七段は△5五歩と銀の動きを楽にしたが、私は喜んで▲同角と取る。
△6四歩には▲7四歩からまた1歩を手に持ち、下手が十分だと思った。

第2図以下の指し手。△5四銀▲2八角△3四歩▲7五飛△6三金▲7七桂△7四歩▲8五飛△8四歩▲8六飛△3五歩▲5六歩△7三桂▲5五歩△4五銀▲9五歩△8五桂▲6八銀△7七桂成▲同金△8五歩▲9六飛(第3図)

このあたりで佐藤氏が見えた。
△5四銀には▲2八角とこちら側に引く。角は8八にいても効果が薄いので、配置換えである。
△3四歩には▲7五飛と浮き、△6三金には▲7七桂と跳ねる。これに△7四金なら、強く▲同飛△同歩▲6四角でよい。
△7四歩には歩を取りつつ▲8五飛とぶつける。△8四歩と謝らせ、これは気持ちがいい。
ただ大野七段に△7三桂と跳ねられてみると、上手も駒が目いっぱい働いている。勝負はまだこれからと気を引き締めた。
△4五銀に私は指し手に窮し▲9五歩。これに大野七段は△8五桂と跳ねる。駒の持ち合いは下手が有利だが、大野七段に有効な桂の使い道があるのだろう。
桂交換のあとの△8五歩には▲9六飛と寄ったが、私にはイヤな筋が見えていた。

第3図以下の指し手。△5六歩▲7八金△8六歩▲同歩△8四飛▲4六歩△3四銀▲3九角△5七桂▲4八金(第4図)

大野七段はこちらの将棋を見た後△5六歩と垂らした。私は△6五桂▲7八金△5六歩がイヤだったのだが、それは▲6九桂と受けて何でもなかった。
△8六歩に▲同飛は△同飛▲同歩△5七桂で悪い。よって▲同歩だが、やや飛車の動きが減殺された。
私は▲3九角。これが▲2八角と引いたときからの密かな狙いで、△8一飛なら何かのときの端攻めを見ている。ただ▲3九角では、黙って▲4七銀~▲5六銀を目指すのが本手だった。
大野七段は△5七桂と遮断したが、私は▲4八金。この桂を取り切れば完封となる。ただ▲4八金では▲5八金とすべきだった。▲4七銀~▲5六銀となったとき、▲5七角と味よく取れたからである。

(つづく)
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