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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

由紀VS一公・3「室谷女流二段の攻め」

2017-11-26 00:05:26 | 女流棋士の指導対局会
このイベントの指導料金は、通常4,000円、大野支部会員3,500円。これが高いか安いかは判断が難しい。比較できるのがアイドルとの交流で、例えばAKBグループとの握手会は、CD1枚を買って数秒の会話だ。女流棋士との指導対局は、1局まるまる密着できて、私語もある程度可能。希望すれば握手やツーショット写真も叶うので、女流棋士をアイドルと捉えれば、かなり格安といえる。ただ、プロとアマの垣根が低すぎるのも問題ではある。
室内ではさっきから、カシャカシャとシャッター音が鳴っている。その主は大野八一雄七段とW氏で、室谷女流二段の撮影に余念がない。せいぜいいい写真を撮ってください。

第6図以下の指し手。△3五歩▲3八飛△2五桂▲3五歩△2四飛(第7図)

室谷由紀女流二段は△3五歩と合わせた。私はまったく読んでおらず、焦る。これを▲同歩は△同飛▲3六歩△2五飛と飛車交換を迫られ下手がわるい。
ここまで苦労して構想通り来たのに、この△3五歩で仕切り直し。プロの懐の深さを思い知った。
私は気を取り直して▲3八飛だが、室谷女流二段は△2五桂。これは気持ちいい手だ。
私は目をつぶって▲3五歩だが、室谷女流二段はノータイムで△2四飛。これは意外だった。ここは△3五同飛が考えられ、A▲同飛は△同角で論外。B▲3六金は△3七歩。C▲3六歩は△3四飛で、次に△2四飛~△1七桂成から飛車の侵入を見られてイヤだった。
もっとも室谷女流二段は、1手早く△2四飛と寄り、次の△1七桂成を見て十分と見たようだ。

第7図以下の指し手。▲2八歩△3一角▲4五歩△1五歩▲同歩△1七歩▲同桂△1五香▲4四歩△同銀(第8図)

第7図で▲2六歩は△1七桂成▲同香△2六飛で、飛車成が受からず下手わるい(実際は△1七桂成に▲3六金で下手も戦えた)。
そこで私の▲2八歩が苦心の一手。これなら△1七桂成には▲同香でよい。
室谷女流二段は△3一角だが、ちょっと意味が分からなかった。
私は▲4五歩。やや筋がわるいと思ったが、△4五同歩▲同銀△4四歩なら▲3六銀とし、▲2七歩~▲2六歩と桂を取りに行く構想だった。
ただしそんな虫のいい順が実現するわけもなく、室谷女流二段は△1五歩と端攻めにきた。そうか△3一角は、この手を見ていたのだ。
△1五香に、私は▲4四歩。ここは双方の読みのぶつかり合い。室谷女流二段もじっくり考えて、△同銀と取った。

第8図▲1六歩△同香▲2五桂△1九香成▲3六桂△2五飛▲4四桂△6二金寄▲4三歩(第9図)

このあたりでKur氏の将棋が終わり、室谷女流二段の勝ち。室谷女流二段は6人均等に手を進めていたようだが、微妙に差異が生じていたようだ。
感想戦が始まったが、室谷女流二段の声は芸能人の誰かに似ている。ちょっと鼻にかかっていて、若干イメージと違う。
感想戦が終わったが、W氏が「時間内は将棋が指せますので、2局目をどうぞ」と言う。将棋が終わるごとに客が抜ければ1人あたりの進行がスピーディーになるのだが、これでは変わらない。1時間半みっちり6面指しで全員勝負が着くとは思えないが、どうなのだろう。
私は▲1六歩と打った。ここ、ふつうに▲2五桂は△同飛▲1五香△同飛でわるいと思った。先に▲1六歩△同香の交換を入れておけば、その順がない。
室谷女流二段は△1九香成と香のほうを取ったが、そこで▲3六桂が気持ちいい一手。▲4四歩と取り込んだ際の読み筋が実現した。
△2五飛には▲4四桂が銀を取りつつ金取りの先手。駒割も右側の駒で銀香交換の駒得となり、これは下手が有利じゃなければおかしい、と思った。
△6二金寄に▲4三歩と垂らす。次に歩が成れるわけではないが、角がいなくなれば実現する。さっきから私はじっとした手が多いが、下手に動けば自爆する。女流棋界史上最高のアイドルを前にしながら、今日の私は妙に冷静だった。

第9図以下の指し手。△9六歩▲同歩△9七歩▲同香△8五桂▲8六銀△9七桂成▲同銀△1五飛(第10図)

誰かが入室したが、私は振り向く余裕はない。
室谷女流二段は△9六歩。今度はこっちの端攻めにきた。かつて関浩六段だったか、大山康晴十五世名人との対局で、名人にじっと▲1五歩と伸ばされ背筋が寒くなった、という記事を読んだことがあった。
大山十五世名人は端攻めの名手でもある。先の△1五歩もそうだが、私は大山十五世名人に教わっているんじゃないか、と錯覚した。
△8五桂には迷ったが、▲8六銀と入れた。上手には切り札の△5四歩(角道を通す)もあるから、下手は穏便に収めるのがよい。そのさなか桂香が入れば、それを攻めに使えるからいいと思った。

第10図以下の指し手。▲3四歩△1七飛成▲3三歩成△4五香(第11図)

▲3四歩は微妙なところで、亀の歩みの雰囲気がなくもない。△1三角とされたら自陣に直射するので、一長一短だ。
室谷女流二段は△1七飛成。私は△1八飛成~△2九竜を予想していたのだが、それでは大勢に遅れると見たのだろう。こうしてみると、屈伏の▲2八歩もよく働いている。
▲3三歩成。指した瞬間、▲4二歩成もあったと思った。△4二同角には▲3三歩成が先手だ。が、そこで△3七歩があるか。やはり▲3三歩成でよかったようだ。
そこで室谷女流二段に△4五香と打たれドキッとした。さっきまでこの香は▲同銀と取れたから、盲点になっていた。三段目の竜はこの手を見ていたのだ。

第11図以下の指し手。▲4六桂△1三角▲4二歩成△4六香▲同金△8四桂(第12図)

このあたりで左の男性の将棋が終わる。男性氏の快勝で、最後は室谷女流二段も気付かぬ名手で即詰みに斬って落とした。
続いて感想戦。これは女流棋士とアマが対等に話せる絶好のチャンスではある。が、時刻は12時を過ぎており、これで残り4局の1局目が終わるのか、やや難しい形勢になってきた。
男性氏の2局目は、以前別の会場で指した指し掛けの将棋。これが終盤の難しい局面なのだが、何か私は違和感を覚えた。
▲4六桂に△1三角。ここで▲3五歩と角道を止めたいのだ、本当は。だが△2四角と出られた時、▲3三との処置に困る。上手は△1五角~△5九角成もあり、これは下手の気持ちがわるい。実際室谷女流二段が△2四角を指す率は小さかったと思うが、こちらは優勢を意識しているから、些細なことでも気になってしまう。
それで▲4二歩成と攻め合った。だが、こちらのほうがよほど危険だった。
△4六香▲同金のあと、たとえば△4六角▲同銀△4七金のイモ攻めはどうか。上手玉はまだまだ余裕があるから、攻めが繋がれば上手が勝つ。
やはり▲4二歩成では▲3五歩だった…と後悔し始めたところで、△8四桂が指された。
これも厳しいが、もう少し頑張れそうである。次が、本局唯一の自慢の一手だった。

(つづく)
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由紀VS一公・2「構想通り」

2017-11-25 01:51:51 | 女流棋士の指導対局会
室谷由紀女流二段は、テレビやネットで拝見するのと同じ、目が眩むほどの美貌だ。装いはチェックの長袖シャツに紺系のスカートで、シャツの下はタートルネックを着こんでいる。初冬なので鉄壁の防御だ。できれば盛夏の私服を拝みたかったが、こればかりは仕方ない。
ほかの対局者の手合いは、私の左から飛車落ち、銀桂落ち、二枚落ち、香落ち。何と平手は私だけである。銀桂落ち、という変態的な手合いを所望したのはKur氏で、これは昔からやっている。「この間(渡部)愛ちゃんにこの手合いでボコボコにされました」。
今回は室谷女流二段が右側の銀桂を落とす。繰り返すが変則的で、室谷女流二段も困惑を隠しきれない。だがその表情がまた、たまらないのである。
香落ちの下手氏には、室谷女流二段が「私が先に指すことになりますけど、いいですか」と断っている。平手より香落ちを所望する下手は、実は手ごわい場合が多い。

第1図以下の指し手。▲4八銀△9四歩▲5六歩△9五歩▲2六歩△4二飛▲6六歩(第2図)

室谷女流二段の視線が戻ってきて、私は▲4八銀と指す。これが温めていた手。ここ、ふつうに▲2六歩だと、△5四歩▲2五歩△5二飛▲4八銀△5五歩となり、中央の位を張られておもしろくない。個人の見解はあろうが、私はこの展開は下手不利と見ている。そこで▲4八銀を先にし、将来の△5四歩には▲5六歩を可能にした。
室谷女流二段は9筋の歩を伸ばす。対穴熊には有効だろうが、私は中央志向なので、この手を緩手にできれば、下手が作戦勝ちにできると思った。
室内は暖房が入っているが、客は軽い興奮状態になるから、暑いくらいだ。
大野八一雄七段が「もう少し経ったら冷房にしましょう」と軽口を飛ばした。
カメラを手にしたW氏が撮影している。
「大沢さんやっぱりでかいなあ」
全体の対局風景を撮っているのだろうか。だが断言しよう。ブログの読者は、客の画像なんか見ない。必要なのは室谷女流二段のアップである。今日は大野七段ともども、室谷女流二段の専属カメラマンになるのがいいと思う。
室谷女流二段は四間飛車に振った。

第2図以下の指し手。△6二玉▲6八玉△7二銀▲7八玉△7一玉▲5八金右△3二銀▲6八銀△4四歩(第3図)

第2図の▲6六歩が私流で、いままで何度も出てきたが、角交換を拒否する手である。若干気合が悪いが、それ以上に上手の捌きを抑える意味がある。
角交換を拒めば、△2二飛からの逆棒銀もない。本譜は互いに玉を整備したあと△3二銀~△4四歩となったが、これは二昔前の将棋だ。すなわち自分の土俵に引っ張り込んだと思った。
次の一手も私流。

第3図以下の指し手。▲6五歩△4三銀▲5七銀右△5二金左▲6七銀△3五歩▲5五歩(第4図)

今日はたぶん室谷ファンの集まりだから、あちこちで私語が飛ぶと思ったが、意外に静かだ。室谷女流二段も時々何かをつぶやくが、私は将棋に集中しているので、ほとんど聞き取れない。
私は▲6五歩と再び角道を通した。美濃囲いの発展には△6四歩が不可欠だが、それを阻んだのだ。私は振り飛車も指すことがあるが、△6四歩が突けないと美濃囲いは相当息苦しい。
もう昔の将棋に戻っているので、私はもう、角交換を恐れない。上手がそれを狙うとすれば△4五歩の前に△3三角が必要で、下手は▲2五歩の一手を省略できるからトクだ。私の▲6六歩は一時の屈伏だったが、それは将来の▲6五歩を見ていたからといっても過言ではなかった。
室谷女流二段は△4三銀から△3五歩と突いた。これは大山康晴十五世名人が多用していた順で、先の△7二銀といい、室谷女流二段が大山十五世名人の将棋を勉強しているのがよく分かる。ただし大山十五世名人の将棋なら、私も多く並べており、少しは大山流が身についているはずだ。
私は▲5五歩と位を張った。再び角道が止まったのはウッカリしたが、何となく、室谷女流二段が嫌がるだろうと思った。

第4図以下の指し手。△1四歩▲5六銀左△3二飛▲2五歩△3四飛▲4六歩△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛▲6八金上△1三角(第5図)

室谷女流二段は△3二飛から△3四飛と石田流に組む。ここまで上手の指し手は大人しく、私は落ち着いて対処している。現在私を取りまく環境は人生最悪、もう将棋どころではないのだが、逆に考えればだからこそ、将棋にしか集中できない状況ともいえる。
室谷女流二段は3筋の歩を換えたが、私はその前に△3四飛と浮かせているので、不満はない。
△1三角には少し迷った。

第5図以下の指し手。▲4七金△3三桂▲1六歩△1二香▲3六歩(第6図)

私は▲4七金と上がった。形は▲6七金右なのだが、上手の飛角(桂)が攻撃態勢にあるので、現状では支えきれないと見た。それに下手は、もう抑え込みに入っているのだ。
△1二香には▲3六金から▲2六金も考えたが、ちょっと筋悪だと思った。それで▲3六歩と突いたのだが、室谷女流二段は盤面を一瞥し、次の手をノータイムで指した。

(つづく)
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由紀VS一公・1「感激の初手合わせ」

2017-11-24 00:23:50 | 女流棋士の指導対局会
大野教室はかつて大野八一雄七段と植山悦行七段の2人講師体制だったが、現在は大野七段のみの指導である。それゆえ、若干単調さも生じてきた。
それを補うためか、大野教室では女流棋士の指導対局会を行うことにした。その第1弾が昨年11月23日の渡部愛女流二段の巻である。もっとも大野七段と渡部女流二段は旧知の仲なので、彼女の登板は予想されたところであった。
渡部女流二段はもちろんいい人選だが、私は室谷由紀女流二段をはじめ、ほかの独身女流棋士もお願いしたい。だが大野七段は致命的なまでに女流棋士の知己がいない。そこでスタッフのW氏や私は大野七段に、「女流棋士の顔と名前を覚えること」「女流棋士に営業すること」を課したのであった。
大野七段もよく営業し、結果、和田あき女流初段、宮宗紫野女流初段(残念ながら結婚してしまった)、中村真梨花女流三段と、いろいろな女流棋士の指導対局会を催してきた。
大野七段は「女流棋士の指導対局会を月1回したい」と意気込んだが、ここ最近はまさにそのペースで、有言実行はさすがだった。
だがそこに、室谷女流二段の名前はない。室谷女流二段は女流棋界人気ナンバー1で、あっちこっちのイベントに引っ張りだこである。まさに超多忙で、いかな大野七段といえども、室谷女流二段を落とすことは無理に思われた。
そんな10月19日、大野教室のHPを見たら、室谷女流二段の指導対局の告知があってびっくりした。これ、男性棋士なら羽生善治棋聖の指導に匹敵する。大野七段は実にすごいことをやってのけたのだ。
指導日は11月23日。奇しくも第1回の指導対局会と同じ日である。募集はいつもより1人多い6面指しの3回転。なんだかひっそりと告知された感もあったが、人気者の彼女のこと、席はすぐに埋まると思った。
ところで私の立場はどうか。この指導対局会は指導のほかに、大野教室を知ってもらうための入口、という意味合いもある。極論すれば、教室のレギュラーが参加するより、全員新参で固めたほうが教室の立場としてはありがたいのだ。ゆえに私は、参加に消極的だった(そんなわけで、昨年11月23日の渡部女流二段の回にも、私は参加していない)。
だから講師が室谷女流二段でも無視していたのだが、HPは毎日チェックしていた。予約の埋まりは意外に緩やかで、きのうは2席、今日は1席、という按配である。やはりHPを見る人が少ないのだろう。私はその経過を横目に、それはそれで複雑な気分だった。
10月29日(日)、私は社団戦の最終日に参加した。この時点で室谷女流二段の空きは、1部(10時~)が2席、3部(16時~)が1席あるだけだった。
朝、Kaz氏に参加の有無を聞かれたが、「しない」と答えた。この時点では。
だが私は大野教室にだいぶ参加しているし、それはふつうに、参加の権利があるともいえる。しかも私は19日に告知を確認しているのだ。これから予約をしようという人に気兼ねして、席を譲る必要もあるまい。
私は遅まきながら、1部に申し込んだ。もし2席が先に埋まっていたら、それはそれでしょうがないと思った。
その後W氏から返事が来て、私の参加が決まった。ついに室谷女流二段と初手合わせである。

11月23日当日、ドキドキしながら川口駅を降りる。その道すがら、私の横をKur氏が抜いて行った。
彼は自販機でドリンクを買って、私を見た。私に限らないが、講師が室谷女流二段だから参加した、という手合いは多いに違いない。
10時48分ごろ入室すると、室谷女流二段は着座していた。生の室谷女流二段を拝見するのは4月30日のシモキタ名人戦以来。指導対局はもちろん初めてで、感激である。
すぐに1人入室して、合計6人になった。
W氏が各人に写真撮影の了承を聞いて回っている。以前この教室で頭頂部のアップを載せられたことがあるので私は拒絶したいのだが、いまさらそうもいくまい。
まだ対局開始まで間があるが、全員が着座したので、もう駒を並べてしまう。
私は右から2番目。右の人相手に室谷女流二段が「王」を置き、私に移った。
「オオサワと申します…ヨロシクおね……」
室谷女流二段はここでも「王」のみを置き、左に移る。これは私が上手の駒を並べてもいいということだろうか。「王」を見ると、マス目にかかっている。これは駒をマス目上に置く「有吉式」だ。
私は自分の駒を並べつつ、上手の駒も注意深く並べる。結局、すべて駒を並べてしまった。
右の男性は飛車落ち。室谷女流二段が初手を指して、私を見た。
「初めて…ですね」
指導対局どころか、言葉を交わすのも初めてである。
「…はい。手合いは、平手でよろしいでしょうか。先生も平手を指したいでしょ? 平手がお好きそうだし」
室谷女流二段が苦笑して、平手戦になった。
2010年7月17日、第4期マイナビ女子オープンの公開対局で室谷女流3級を拝見し、一発でファンになってから7年4ヶ月。ついに盤を挟んだことに、私は感激で一杯である。今日は悔いのない将棋を指さねばならない。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩(第1図)

室谷女流二段は振り飛車でくるだろう。そこで3手目、私に用意していた手があった。

(つづく)
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8月12日の女流棋士指導対局会・中村真梨花女流三段編(後編)

2017-08-27 22:50:19 | 女流棋士の指導対局会

第7図以下の指し手。▲5九桂△8九桂成▲5二成香△5九竜▲同金△同馬▲6一成香(第8図)

この局面で左の四枚落ちの将棋が終わり、下手の快勝。感想戦が始まったので、私は現局面をじっくり考えることができた。
まず、下手のこの囲いを何というか知らないが、唯一の弱点は「7七」で、竜が一段目に利いている時は、△7七歩と一本打たれるだけでもシビれてしまう。今回は頭の丸い△7七桂だったが、それでも手になっているのに驚いた。
△7七桂に、捨て置けば△8九竜があるので挨拶をしなければならない。まず▲7七同玉は△8九竜で生きた心地がしないので、却下。
次に▲7七同金は△6九銀▲8八玉△5八銀成で、金一枚をボロッと取られるのは痛い。
最後に▲7七同桂だが、これにA△9九竜なら、▲8九金△9六竜▲5二成香で下手勝ち。
だがB△8九銀▲8八玉△7九銀の追撃が嫌味だ。
私は一息入れるべく手洗いに立つ。戻る間際Kaz氏が手空きだったので聞いてみると、1~2コマで2局を終えたという。戦績は、中村女流三段に平手で勝ち、和田女流初段とは時間切れ引き分けになったという。
それを聞いたら、私もこの将棋は負けるわけにはいかない。
まだ時間があるので、四枚落ちの男性は、二枚落ちで再戦。「でも作戦がなくなっちゃいました」と謙虚だ。
Hon氏も佐藤氏との検討を終え、2局目は平手で行うことになった。
私はいろいろ考えた末、▲5九桂と受けた。しかしいかにも味の悪い手で、負けたらこれが敗着になると思った。
△8九桂成に▲同玉は結着が長引くと見て私は▲5二成香だが、中村女流三段は△5九竜と、こちらを切ってきた。もっとも△5九馬から入ると▲7一角からの詰み筋が生じるので、当然ではあった。
▲5九同金△同馬に、私は下手玉が不詰みと見て▲6一成香と金を取ったが…。

第8図以下の指し手。△7七銀(投了図)
まで、98手で中村女流三段の勝ち。

第8図で△6一同銀は▲7二飛以下詰み。よって上手は下手玉を詰ますしかないが、中村女流三段に△7七銀と打たれてビックリした。何と、これで詰んでいる。私は呆れて投了。
中村女流三段は、「最後は私が負けていたような…」とつぶやいた。「でも(第6図からの)▲3五歩がいい手でしたね」。
上手は下手の手を何かしら褒めなければならないが、いくら下手がいい手を指しても、負けてしまったら意味がない。
大野八一雄七段が感想戦に加わってくれたが、「え? あの将棋を負けたの? ちょ、ちょっと戻してよ」と遠慮なくくる。
私は第7図に戻したが、△7七桂には▲7七同桂でよかったようだ。以下Bの△8九銀▲8八玉△7九銀なら、▲9七玉(参考図)で、以下△6八銀成▲同銀は下手に▲7一銀が生ずるから下手の一手勝ち。

「このくらい(▲9七玉まで)は私でも読めたんだが…」
と私はつぶやく。しかしその後の攻防が読み切れず、却下してしまった。
感想戦を終え、時計を見ると4時50分である。当然中村女流三段は2局目を申し出てくれたが、私は自分の脆弱な終盤に呆れ、2局目は固辞した。

というわけで、本日の女流棋士指導対局会は0勝2敗。1局ぐらい入れたかったが、連敗。これも実力なので仕方ない。
中村女流三段も和田あき女流初段も早見え早指しで、指していて気持ちよかった。
次に教わる機会があることを楽しみにしています。
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8月12日の女流棋士指導対局会・中村真梨花女流三段編(中編)

2017-08-26 22:09:48 | 女流棋士の指導対局会

第4図以下の指し手。▲4四銀△6三飛▲2一歩成△2八角▲3一飛成△1九角成▲3七桂△3六歩▲同竜△4一香▲4六銀△4四香▲同角△4三飛▲2二角成△1八馬▲2七歩△1七歩成(第5図)

△4六歩の取り込みに▲4八歩と受ければ無難だが、ほとんど考えなかった。とはいえ▲4四歩では△3三飛とぶつけられる。以下▲同飛成△同桂は、▲2二歩がスカタンになっていけない。
私は▲4四銀と打った。かつて大山康晴十五世名人VS植山悦行七段の将棋で、中盤銀交換になり、その銀をお互い自陣に打ち合ったことがあった。とても手厚い手で、勉強になった覚えがある。
▲4四銀も同じテイストの手で、善悪は分からないが、この一手と思った。
ここで△2六角がイヤだったが、▲4三銀成△3五角▲5二成銀△同金▲3二飛で私がよさそうだ。
が、中村女流三段はノータイムで△6三飛。ほかには△1三飛もあったが、相変わらずの早指しだ。上手がマジで考えているのか、分からなくなってきた。
ともあれ▲2一歩成と桂得する。△2八角に▲3一飛成として、これは居飛車がまずまずではないのか?
△1九角成に▲3七桂も味がいい。
しかし中村女流三段の△3六歩~△4一香がさすがの反撃。銀香交換になったが、この香は1九にいたわけだから、冷静に考えればまだまだ難しい。
△1七歩成でようやく手番が回ってきた。

第5図以下の指し手。▲4五香△1三飛▲3一竜△1六飛▲5七銀△2七と▲4二香成△6二金寄▲4五桂△1七馬(第6図)

私は▲4五香と打った。ここは▲4四歩でもよかったが、香なら4三にも4二にも成れるので香とした。先の▲4四銀と似た意味がある。
△1六飛浮きの銀取りには▲4七歩もあったが、▲5七銀と引き締めた形が味がいい。
Hon氏の将棋が終わったようで、何とHon氏の勝ち。指導対局の場合、勝っても負けても私の一抜けが多いのだが、今回はHon氏が勝ち抜けだから、完全に一本取られた形だ。
▲4二香成△6二金寄のあと、中村女流三段が△3七とと指してしまう。私が指したと勘違いしたようだ。で、私は取られそうな桂を跳ねる。
私の楽しみは▲4四馬である。それを防いで中村女流三段は△1七馬と引いた。

第6図以下の指し手。▲3五歩△2六馬▲4四馬△1九飛成▲5三桂成△同金▲同馬△7七桂(第7図)

私は▲3五歩と馬道を遮断した。一回休みだが、これで▲4四馬を実現させようというわけである。
中村女流三段の△2六馬は気が利かないが、△1六飛を侵入させる意味。私は▲4四馬とし、予定通りだ。
Hon氏は佐藤氏と先の将棋の検討をしている。
▲5三桂成△同金▲同馬。下手の右桂が上手の左金と交換になったのだから大きな戦果だ。
が、そこで△7七桂が飛んできた。
何だこれは!?

(つづく)
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