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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

夏休みの愛(後編)

2018-08-18 00:55:09 | 女流棋士の指導対局会

第6図以下の指し手。▲4七同金△4六歩▲5六金△4七銀▲6八玉△5六銀成▲同馬△6一金打▲6三歩△同金▲3一飛(第7図)

私はさして考えず▲4七同金とした。だが飯野愛女流初段はこちらに回って来ず、私はこの局面をまじまじと眺める。すると▲4七同玉とし、上に逃げる手を見せるのがベストに思えてきた。また▲7一銀と手掛かりを残しておく手もあった。
左の将棋はイ図。「読み切りました!」と成人氏が鼻息を荒くし、▲5三角と放った。

こちらに戻り、飯野女流初段は△4六歩から△4七銀。私にとって怖い展開だが、この銀が私の駒台に載れば心強い、と考え直す。
▲6八玉と指し掛けて▲5七玉も考えたが、それは△6五桂が入ってしまう。冷静に▲6八玉と指した。
▲5六同馬のあたりで午後5時25分になり、感想戦の時間になった。しかしW氏の判断は、「(もう3局終わっているし)成り行きで」だった。
飯野女流初段は△6一金打。ここに1枚入れられると急に固くなった感じで、なおさら私は、どこかで▲7一銀を入れておくべきだった。
私は▲6三歩から▲3一飛だが、しくじった感は否めなかった。

第7図以下の指し手。△4四桂▲3四馬△5六桂打▲7八玉△6二金上▲7一飛成△9三玉▲8五銀(投了図)
まで、105手で一公の勝ち。

左の将棋。「合駒が悪いですか」と飯野女流初段はイ図から△4二銀と受ける。成人氏は▲4二同角成。
??
「寄らないと思う……」と私はつぶやき、自分の将棋を考える。
しかし△4二銀以下▲同角成△同金▲3二銀△同金▲同桂成△同玉▲4二金△同玉▲5三銀成(ロ図)まで、成人氏が勝った。

「▲4五桂が(盤上に)あったのか!」と私は驚く。
上記の寄せは下手が1枚損をしている。すなわち▲4二同角成で先に▲3二金と打ち、△同金▲同桂成△同玉▲4二角成なら、銀が残る。よって△4二同玉に▲5三銀打△3一玉▲4二金まで、と考えたのだが、▲4五桂がいてはその節約も関係がなかった。
ただ成人氏は、1枚損をする寄せをした、ということは覚えておくべきだろう。
私の将棋は、飯野女流初段が△4四桂と馬取りに跳ねた。さすがの活用で、先の△3三桂と通じるものがある。
△5六桂打▲7八玉のあとは、△6七歩成▲同玉△9九角成がイヤだった。香を取られるのが痛く、ヘタをすると上手の上部が抜けてしまう。
ところが飯野女流初段は、△6二金上。これは▲7一飛成がありがたい。そして▲8五銀。ここで飯野女流初段が投了し、急転直下の終局となったのだが……。

投了図で△8四歩と突かれたら、どう指していいか分からなかった。即詰みはないから▲8二銀△8三玉▲8一銀成の予定だったが、△8五歩で難しい。
ただ、もう対局時間は終わっていたし、勝負の雰囲気はなかった。飯野女流初段が適当なところで切り上げてくれたのだろう。
「△5六桂打が悪かった」
と飯野女流初段がつぶやく。「取り込んで角を引いて定跡から離れましたよね」
私は何のことか分からない。
とりあえず△5六桂打に代えては△6五桂くらいか。
私は▲6一馬△同銀▲同飛成と進めるが、△6七歩成▲同玉△3四角(参考2図)が王手竜取りだ。

これでも私が勝てそうだが、大野八一雄七段は、▲6一馬では▲6一飛成△同銀▲同馬として、馬を自陣に利かせるのがいい、と教えてくれた。

序盤の検討に戻り、途中1図から私が▲4四歩と取りこんだのが変調で、ここは黙って▲8八角だったという。飯野女流初段が言ったのはこの手だったのだ。ああ思いだした。定跡は▲8八角以下△4五歩▲5五銀(知らないと指せない手)△4四銀▲同銀△同金▲2三歩△同飛▲3二銀△2二飛▲2一銀成△2三飛▲1五桂△2一飛▲4五桂(参考3図)という手順だったか。これは大野教室でOg氏らと検討したこともあった。

しかしプロだから当然とはいえ、飯野女流初段がここまで定跡に精通しているとは思わなかった。
本譜に戻り、途中1図から▲4四歩△同金▲8八角△4五歩▲2五歩に、私は△5二飛がイヤだったが、▲2四歩と進めると飯野女流初段が首を傾げる。△5二飛は上手もおもしろくない、というわけだ。
では△4五歩がマズイというわけで、大野七段が示したのが△5四金!(参考4図)

後の譜でも現れたが、こうやって金を活用するのがいいのだ。△5四金以下は▲3三角成△同桂▲2三歩に、△4二飛でも△5二飛でも下手難局。こう進めば「(左)桂が跳ねているのが大きいね」(大野七段)というわけで、私が順当に負けていただろう。
もう次の回の人が来ていたので、感想戦はここで終了。失礼させていただいた。
私は最近半引きこもり状態だったので、今回は久しぶりに、人間らしいひと時を過ごすことができた。飯野女流初段およびスタッフの皆様に感謝します。
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夏休みの愛(中編)

2018-08-17 00:11:27 | 女流棋士の指導対局会

第3図以下の指し手。▲2三歩成△3七歩成▲2二と△5四金(途中2図)

▲2三飛成△8八角成▲同玉△4八と▲同金△6五金▲4三角△5五角▲7八玉△8八銀(第4図)

大野八一雄七段はこの時間、オプションの指導対局がないようで、みなの将棋を観戦している。
第3図では▲2五桂が予定だったが、読み直すと△2四飛▲3三桂成△2八飛成▲4四角△3七歩成▲5七銀△4七とで下手が負ける。
この筋が成立しないと▲2五歩の構想が疑問になるが、代替の▲2三歩成もなかなかの手だ。
▲2二とには△2八との一手と読み、そこで▲3二とでどうか、と考えていたら、飯野愛女流初段は△5四金! 1秒も考えてない手で、唸った。
これには▲3三角成△同桂▲3七銀で駒得なのだが、左桂を捌かせるのが気にいらない。それに△5五角の後手を引くし、考えているうち自信がなくなってきた。
それで▲2三飛成と飛車取りを避けたのだが、飯野女流初段に△8八角成~△4八ととされてみると、飛車と銀桂の二枚換えの上、彼我の玉形に差がありすぎて、下手難局なのに愕然とした。
しかも次に△1四角がある、と思ったら飯野女流初段は△6五金。実に味のいい活用で、前局もこの類の手が出てきた。これがプロの手だと感心した。
私は▲4三角と両金に狙いをつけるが、飯野女流初段は△5五角。いやこの王手が厳しい。さっき手順に△8八角成とさせ、玉が一路横にズレたのでよしと思ったが、完全に裏目に出た恰好だ。
これにA▲6六銀では△同金▲同歩△同角が王手金取り。またB▲7七銀には△8五桂だ。私は目をつぶって▲7八玉だが、飯野女流初段は香には目もくれず△8八銀。
これは負けたと思った。

第4図以下の指し手。▲6六銀△同金▲同歩△8九銀不成▲6七玉△6五歩▲同角成△6四銀▲5四馬△5三歩▲4五馬△3三桂▲3四馬△6五歩(第5図)

第4図は△7七銀打以下の詰めろ。それを防ぐには▲6八金か▲6八玉だが、△5六桂がある。もう投了しようと思ったのだが、60数手で投げたんじゃ飯野女流初段に申し訳ない。もう一手だけと、▲6六銀と受けた。
当然の△6六同金▲同歩に、△同角は▲5七金打と受けるしかないが、ここに金を使うようでは下手が勝てないと思った。
だが飯野女流初段は△6六同角に代えて△8九銀不成。これは▲6七玉と逃げて、やや小康を保った感がある。
飯野女流初段は、まあいいか、という感じで△6五歩。私はよろこんで▲同角成と取り、上手は以下もしつこく馬取りにくるが、私は角銀の周りをまとわりついて離れない。
よく分からないが、この展開ならもう少し頑張れると思った。
しかし▲4五馬に△3三桂が幸便で、この桂を跳ばせたのはマズかった。
飯野女流初段は再び△6五歩。対する次の手がどうだったか。

第5図以下の指し手。▲5八玉△6六歩▲3二竜△5二桂▲6二歩△5一金▲2一竜(途中3図)

△6二金▲8九馬△4七歩(第6図)

私は戦場から遠ざかる▲5八玉。これが3四馬による8九銀取りにもなって一石二鳥と考えたのだが、冴えなかったか。仮に△5六桂と打たれてもアタリが強くなっていて、やはり自信がなかった。
飯野女流初段はじっと△6六歩。これもプロの手だと思った。
私は▲3二竜と、プチ反撃。飯野女流初段は△5二桂と受けたが、これに▲同馬とはまだ行けない。
それで、▲6二歩と打った。対して△6二同金でも私は手段がなかったが、飯野女流初段は△5一金。これもさすがの金寄りで、さっきから私は唸ってばかりだ。
このあたりでTok氏の将棋が終わり、Tok氏の勝ち。見事な内容だったようだ。
小学生低学年の将棋はいいとして、中学生の将棋は中学生が優勢に進めているように見えた。
左の成人氏はいつものようにため息が激しいが、うまく指しているようだ。右の成人氏は、竜の活用が今一つで、劣勢である。
右の成人氏の将棋が終わり、飯野女流初段の勝ち。下手にも勝ち筋があったようだが、正着を続けられなかった。
私は▲2一竜。これには△4一歩と遮断され、一手の価値がないと思ったのだが、指してしまった。
ところが飯野女流初段は△4一歩と打ちかけ、△6二金と上がった。私は▲8九銀と馬を取り、これが▲7一銀の先手。これはさすがに良くなったと思った。
そういえば前局も飯野女流初段は、普通に指せばこちらが劣勢なのに、弱気な手を指して形勢を悪くしたことがあった。それがわざとか否かは、分からない。
飯野女流初段は△4七歩。次の手をノータイムで指したのはマズかった。

(つづく)
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夏休みの愛(前編)

2018-08-16 00:21:47 | 女流棋士の指導対局会
7月28日(土)は埼玉県川口市の「大野教室」で飯野愛女流初段の指導対局が予定されていたが、台風の影響で中止・延期になった。私は予約をし損ねたので関係なかったが、その代替がこの14日(火)に行われることになり、今年も沖縄に行かない私は、幸いにも予約を入れることができた。
14日午後3時すぎ、川口に向かう。7月は6面指し×3コマだったが、今回は2コマに減じていて、私は16時の回に予約していた。
川口駅に着き、エキナカの立ち食い蕎麦屋でかけそばを食らう。久しぶりだ。かけそばはセコそうだが、後から来た客が2人、そろってかけそばを注文していた。
大野教室の前に着くと、すぐ前の母子も入室した。指し手は小学生低学年or幼稚園の男児で、母親は付き添いということだ。
入室すると、飯野女流初段がスタンバイしており、大野八一雄七段、W氏がいた。「久しぶり」とW氏。まったくその通りで、不義理を申し訳なく思う。
飯野女流初段は相変わらず魅力的だ。またNHK杯トーナメントでは先日から、藤田綾女流二段の代打として聞き手に出演した。ますます快調である。
私が飯野女流初段に教わるのは、前回(3月31日)のここ以来、2度目。勝敗はともかく、少しでもいい将棋を指すことを考えた。
まずは対局者が飯野女流初段とツーショット撮影。これはいい記念になる。
まだ開始まで時間があるが、駒だけ並べる。私が最後となり、並べ終わると
「手合いは……平手でしたよね」
と飯野女流初段。
「はい……先生も振りたいでしょ?」
「はい!」
ちょうど4時になりましたね、と飯野女流初段が言い、対局開始となった。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲5六歩△4二銀▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩△9四歩(第1図)

6面は洋室で扇形に並んでおり、手前左からTok氏・飛香落ち、小学生低学年・六枚落ち、中学生?・平手、成人男性・角落ち、私・平手、成人男性・飛香落ちである。
本局、飯野女流初段の振り飛車は確定。私の居飛車明示にどこに振るかだが、6手目に三間に振った。
私は前局、石田流を促して▲2五歩を保留したが、今回は▲2五歩△3三角を決めてしまう。
さっきの小学生低学年の将棋はポンポン進み、端を破って▲1一香成。
しかし飯野女流初段が待ったをかける。この成りは取りにならないのだ。少年はちょっと考えて、▲1二香成と銀取りに成った。周りから
「(今は六枚落ちだけど)将来の名人になるかもしれない」
の軽口が飛ぶ。
そしてあまりにも優しい愛先生の指導に、彼になりたい、と思ったのは私だけではないだろう。
△9四歩の局面が作戦の岐路である。

第1図以下の指し手。▲3六歩△7二銀▲6八銀△5四歩▲5七銀左△5二金左▲4六歩△6四歩▲3七桂△2二飛▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀(第2図)

対振り飛車の居飛車の醍醐味は作戦の選択で、第1図から持久戦を選べば、左美濃、玉頭位取り、やや変則的だが穴熊、などいろいろある。私は▲3六歩と突き急戦を明示した。持久戦だと時間がかかるので、速戦即決でいくのだ。
▲3七桂に△2二飛も仕掛けを防いで常道で、大山康晴十五世名人の将棋によく見られる。
私は▲5五歩~▲4五歩と仕掛ける。以前中倉宏美女流二段との指導対局で、この手順を逆にしたため、▲5五歩に△同角と取られて飛び上がったことがあった。
▲4六銀には△5六歩か△5四銀か。

第2図以下の指し手。△5四銀▲2四歩△同歩▲5五銀△同銀▲同角△4三金(途中1図)

▲4四歩△同金▲8八角△4五歩▲2五歩△3五歩▲2四歩△3六歩(第3図)

飯野女流初段は△5四銀と上がった。ここ△5六歩も本手で、それは▲4四歩△同銀▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲8八角△4二金▲3五歩△同歩▲4七銀(参考1図)が進行の一例となる。

ほかの人の将棋は、中学生戦は飯野女流初段の振り飛車に、中学生君の穴熊。
左の成人氏は相居飛車で、成人氏が棒銀に出ているが、捌けそうにない。
局面。△5四銀の対抗はあまり好きではなく、この変化はあまり勉強していなかった。
とりあえず2筋の歩を突き捨て銀交換を果たしたが、下手は5筋の薄さが目立つ。
△4三金には▲4四歩から▲8八角と引き揚げた。
ここでA△5五歩かB△4五歩を予想した。Aは▲4五歩△4三金▲4四銀でどうか。またB△4五歩には▲2五歩の継ぎ歩で指せると思った。
飯野女流初段が歩を持つ、4五に打て! と念じたら、4五に打ってくれた。
私は予定通り▲2五歩と打ち、飯野女流初段も△3五歩の反撃。ここは△5二飛と転戦する手も考えたが、この手も厳しい。▲2四歩に△3六歩と、攻め合いになった。

(つづく)
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3月31日の指導対局会のオプション・大野七段編(後編)

2018-05-08 01:34:13 | 女流棋士の指導対局会

第7図以下の指し手。△2七同香成▲2五金(途中3図)

△2四馬▲5三銀△3三玉▲4二銀不成△4四玉▲3二竜△3九飛▲4九金(投了図)
まで、100手で一公の勝ち。

第7図で大野八一雄七段は3一の竜を取りかけたが、△2七同香成と、こちらの飛車を取った。下手陣に成駒を作り、これも迫力がある。
が、これは地獄行きの一手だった。私の▲2五金が、ひそかに狙っていた手。▲3五銀と▲5三銀の詰めろで、この2つが妙に受けにくい。
大野七段は、「そうか…」とつぶやき最後の読みに入る。さしあたって△3九飛が恐いが、▲4八玉で逃れている。△3三馬が△4四玉の陰になっているのも大きい。
私は△1五馬(参考1図)を恐れていた。王手なので▲1五同金と取る一手。これは▲5三角以下の詰めろになるが、△3一金でそれも解ける。以下▲5三角△3四玉▲3五銀△3三玉▲3一角成(参考2図)で私の勝ちと思うが、上手にもうまい受けがありそうである。


大野七段は駒音高く△2四馬と上がった。
これに▲2四同金なら△同歩で詰めろが解け、竜当たりが残る。
ただ△2四馬なら、上手玉が寄ると思った。私は▲5三銀△3三玉▲4二銀不成△4四玉としてから、▲3二竜と金を取った。銀を3三の地点に利かし、そこで金を取るのがミソである。
△3二同銀なら▲5四金まで。大野七段は△3九飛と打ったが、私は▲4九金。ここ▲4八玉は△3八成香でトン死だが、金を使っても、上手の詰めろは解けないのだ。ここで大野七段の投了となった。

勝った私は、さっきまで負けを覚悟していたので、キツネにつままれたよう。「勝ちに不思議の勝ちあり」とはよくいったものだ。
「寄せはなかった…?」
と、大野七段が聞く。
「3一の竜を取られていたらダメでした」
第7図で△3一金なら、下手は指しようがなかった。
大野七段に1日2勝させていただいたのは久しぶり。私の実力ではあり得ないことで、私の職が決まらないので、大野七段が元気をくれたのだろう。
なお気が付けば、本局も居玉での勝利だった。
時刻は午後5時50分ごろ。後は中年氏の将棋が残っていたが、もう終了時間を過ぎているので、感想戦はせず、私は席を立った。
飯野愛女流初段の指導対局も、まだ続いていた。私は緊張から解放されて、やっと飯野女流初段を「鑑賞」する余裕が生まれた。
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3月31日の指導対局会のオプション・大野七段編(中編)

2018-05-07 00:26:46 | 女流棋士の指導対局会
私は味よく辞退しようとも思ったのだが、やはりお言葉に甘えるのが本手であろう。
感想戦を終えた角換わりの中年氏ももちろん再戦で、またも角換わりの将棋を所望した。
中年氏は飯野愛女流初段の指導対局がメインできたのだろうが、とんだところに将棋学徒がいるものだ。
その飯野女流初段は、3コマ目の指導対局の真っ最中。でも不思議と、あちらの将棋は気にならなかった。
私も2局目開始である。

初手からの指し手。△5四歩▲7六歩△6二銀▲6八銀△5三銀▲5六歩△6四歩▲6六歩△4四歩▲6七銀△4二銀上(途中1図)

▲2六歩△4三銀▲2五歩△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛(第1図)

2局目は振り飛車を考えたが、大野八一雄七段は察知しているようで、なかなか玉の態度を決めない。つまり私が振れば、右玉にするハラなのだ。
△4二銀上に、▲2六歩と突いた。これで上手の玉が、相居飛車の定位置である「3二」に行きづらいと考えたからだ。
私は飛車先の歩を交換し、今度は2八まで深く引いた。

第1図以下の指し手。△4五歩▲4八銀△4四銀右▲5七銀△3四歩▲3六歩△3五歩▲同歩△同銀▲6五歩△3三桂▲6四歩△6二飛(第2図)

△4五歩。私の手番だったら▲4六歩を考えたから、いちばんイヤなところを突かれた。「角落ちは位負けをしない」が鉄則だが、私はその禁をよく破る。
捨て置けば△4四銀右~△5二飛があるから、私の▲4八銀~▲5七銀は絶対。
しかし△3四歩に▲3六歩が甘く、かえって△3五歩から1歩を持たれてしまった。
私の▲6五歩は一瞬だけ気持ちがいいが、△3三桂に▲6四歩と取り込んでも△6二飛で取り返しにこられ、あまりでかしていない。

第2図以下の指し手。▲6八金△3六歩▲3八歩△6四飛▲9六歩△5二金▲2二歩(途中2図)

△8四飛▲2一歩成△8七飛成▲7八金△8八竜▲同金△7九角(第3図)

やがてくる△6四飛の銀取りを守らねばならないが、▲5八金右は将来△4七銀成が生じた時、▲同金と取れない。といって▲7八金は、5七に利いていない。よって▲6八金とし、玉は6九~7八と収めようと思った。
しかし△3六歩▲3八歩と凹まされたのも痛い。
このままでは作戦負けになるが、△5二金に▲2二歩を発見した。これに△同金なら▲9七角△8四飛▲3一角成△8七飛成▲7八銀△8八竜▲2二馬で下手よし。
これで一本取ったと思ったら、大野七段に先に△8四飛と寄られ、アオくなった。
これに▲7八金は△2二金で下手勝てない。私は行きがかり上▲2一歩成だが、△8七飛成▲7八金に、△8四竜と引いてくれるような上手ではない。△8八竜~△7九角と両取りに来られ、これは下手が劣勢に陥った。
戻って▲6八金では、ふつうに▲7八金だった。なんでこういう時に6八に上がってるんだ…。自分がうらめしくなった。

第3図以下の指し手。▲7一飛△6二玉▲8一飛成△8八角成▲6四桂△5三玉▲5二桂成△同銀▲3一と△4三金(第4図)

第3図で両取りを受けるならA▲5八飛である。しかし△4六歩▲同歩△同銀▲同銀△同角成が飛車取りで、これは下手が勝てない。ならばB▲6八飛だが、これも△同角成と飛車を手持ちにされると、相当厳しい形勢だ。
そこで勝手にせいとC▲7一飛と打った。これには△6一歩でも△4二玉でも下手が苦戦だったが、大野七段は△6二玉。飛車に当てて、△8八角成とした。△6一歩は将来の△6六歩がなくなるから、打ち切れなかったようだ。
▲8一飛成に△8八角成。△6二玉も意外だったが△8八角成もそうで、△5七角成と詰めろに成ると思っていた。
私は▲6四桂の金取り。対して大野七段の△5三玉がまた意外で、▲5二桂成と金を取り返せては、頑張る気になった。
このあたり、私が不甲斐ない手を連発したものだから、大野七段が微妙に緩めてくれたと思う。
本譜に戻って、▲3一と△4三金。ここでどうするか。

第4図以下の指し手。▲3二と△6五桂▲6六銀右△5七金▲6八歩△8九馬▲5八金打△同金▲同金△9九馬(第5図)

ここは▲2三飛成が見える。だが一手の価値に乏しい気がした。それより少しでも早く敵駒をハガすのがよいと、▲3二とと活用した。
以下、大野七段の攻めに私は防戦一方。△8九馬は、捨て置くと△6七馬~△6八銀がある。▲5八金打は仕方ないが、どうにか一息ついた。
大野七段は△9九馬と攻め駒を補充する。対して私の次の手が悪手だった。

第5図以下の指し手。▲6五銀△2四香▲2七桂△2六銀▲3一竜△2七銀成▲3三と△同馬▲3五桂(第6図)

飛車落ち氏はいよいよ形勢が悪化し、投了した。
Tod氏は快勝したようで、大野七段に「ふだんもこんなふうに指してください」と声を掛けられていた。
第5図で▲6五銀と桂を外したのが、負ければ敗着という悪手だった。大野七段に△2四香と打たれ、将棋が終わった。ここは何はともあれ、▲2三飛成だった。これなら次の▲3三とが厳しく、下手も指せたと思う。
△2四香で、いつもの私ならここで投げるが、今日は記譜も付けているし、もう少し悪あがきをしたい。それで泣きの▲2七桂を打った。
大野七段は慌てず△2六銀と上がり、こちらは延命のないX手スキである。
▲3一竜はせめてもの活用だが、▲6五銀のせいで馬筋が通っている。▲3三とに△同馬と引き付けられ、下手もう絶望である。
私は意味不明の▲3五桂。べつに△4二金と引かれてもダメだろうが、とにかく盤上に駒を置かなければしょうがない。

第6図からの指し手。△3二金▲6四金△4四玉▲4三桂成△同銀▲2七飛(第7図)

大野七段は△3二金。さらに強く、竜を叱ってきた。私は▲6四金を決め、▲4三桂成。またも金を取りながら、桂で王手した。
大野七段は△4三同銀。
?? この時、私の脳裏に「死んだふり攻撃」が閃いた。
私は▲2七飛と、力なく成銀を取る。大野七段はどっちの飛車を取る?

(つづく)
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