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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

3度目の愛(前編)

2019-05-09 00:06:38 | 女流棋士の指導対局会
先月27日(土)は、埼玉県川口市の大野教室にて、飯野愛女流初段の指導対局会があった。
その前は昨年9月30日の山根ことみ女流初段まで遡る。生活にハリがないと外出も億劫になるもので、その後はまったく受ける気がしなかった。今回は「女流棋士ファンランキング」第1位の登板ということで、申し込んだわけだった。
今回は14時の回。川口駅で降りた後、「池田書店の大山本」を探すべくブックオフに行くも、該当場所に店舗はなかった。何だか更地になっていて、移転か閉店してしまったらしい。
スマホを繰ると線路の反対側、すなわち大野教室の先にブックオフがあり向かったのだが、道に迷って断念。時間も迫っているので。教室に向かった。
入室すると、大野八一雄七段、スタッフのW氏が私にチラシを見せた。6月16日(日)に行われる「女流棋士発足45周年記念パーティー」である。
これは5年前にも行われた大々的なもので、女流棋士ファンにはたまらない企画である。
ただ参加費は20,000円と高額で、相当ハードルが高い。今さら女流棋士との交流を望まない私はあまり興味がないが、大野七段らは私が申し込むものと決めてかかっていた。
でも申し込みは留保しておく。
飯野女流初段がいた。今日は赤紫のカーディガンを羽織り、紺系のロングスカート。凄まじいかわいらしさで、見とれてしまう。
まず、飯野女流初段から色紙をいただく。これは任意で、事前に申請すれば、為書き入りの色紙がいただけるのだ(2,000円)。私は「棋愛」を所望していた。
次に、飯野女流初段とのツーショット撮影である。しかし私は写真に写るのが嫌いなので、これは遠慮した。
午後1時58分、いよいよ対局開始である。
「平手でよろしいでしょうか」
「はい」
「先生も飛車振りたいでしょ?」
といういつもの会話のあと、私は▲7六歩と突いた。

△女流初段 飯野愛
▲一公
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲5六歩△4二銀▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二銀▲5八金右△7一玉(第1図)

この回の対局者は5人で、左から二枚落ち、私、香落ち、飛車香落ち、飛車落ちという手合い。なお、後から1人遅れて来る予定である。
私の右の人は常連で、最初は八枚落ちを所望していたが、熟慮の末、香落ちになった。
飛車香落ちの手合いは小さな女の子。こうした出会いが、将来の女流棋士を生んだりするのだ。
私の飯野女流初段との指導対局は3度目。過去2回は私が幸いしたが、1局目は、私が▲6三香(参考A図)とした手に飯野女流初段が△7一玉と引いた手が悪手で、ここは△6二歩としておけば、▲9三歩成以下の殺到も上手玉は寄らず、飯野女流初段が勝っていた。

また2局目は飯野女流初段の投了が悪手(参考B図)で、ここで△8四歩とすれば上手玉は寄らず、むしろ上手を持ちたい形勢だった。

つまり私としては2局とも勝負に勝って将棋に負けた感じで、消化不良なのである。今回は勝っても負けても、それを払拭したかった。
将棋は飯野女流初段の三間飛車。過去2局と同じなのだが、今回はなぜか四間飛車を予想していて、それなりに準備はしてきたのでアテが外れた。

第1図以下の指し手。▲3六歩△5二金左▲4六歩△5四歩▲6八銀△8二玉▲5七銀左△9四歩▲9六歩△6四歩▲3七桂△2二飛▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀(第2図)

私は▲3六歩とし急戦を明示した。もちろん持久戦もあるが、対局時間が1時間半では、じっくりした戦いは不向きだ。
飯野女流初段は△5四歩と突き、首を振った。いつもの将棋にしちゃったか、という感じか。
私は▲3七桂と跳ね、飯野女流初段は△2二飛。後の飛車の走りを防ぎ、手堅い一着だ。
私は▲5五歩と、習いある仕掛け。△同歩に▲4五歩。これを△同歩は▲同桂△4四角▲5四歩で駒得が約束され、下手有利。よって△5三銀は当然である。
▲4六銀にはいくつか応手があるが……。

第2図以下の指し手。△5四銀▲5五銀△同銀▲同角△4三金(第3図)

右の男性は相振り飛車になっていたが、形勢が思わしくないのか、大仰に溜息を吐く。いつものパターンで、私もつられて苦笑した。
また飛車香落ちの女の子は、早くも端を破り、指しやすい。あとは成香をどう活用するかだ。
第2図で△5六歩は、▲4四歩△同銀▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲8八角△4二金▲3五歩△同歩▲4七銀△3九角▲2六飛△8四角成▲5六銀△7四馬▲3五銀(参考1図)という感じになるが、上手には△9五歩の端攻めがあり、振り飛車も十分指せる。

しかし飯野女流初段は△5四銀。もちろんこれもあり、以下も相当難しい。
私は定跡通り銀交換をするが、第3図の次の手を誤った。

第3図以下の指し手。▲4四歩△同角▲同角△同金▲5三角△5四金▲3一角成△5二飛▲2一馬△4七歩▲同金△6五金▲5四歩△5五角(第4図)

第3図では▲8八角と引くのが定跡だと思う。以下△4五歩▲5五銀△4四銀▲同銀△同金▲2四歩△同歩▲2三歩△同飛▲3二銀△2二飛▲2一銀成△2三飛▲1五桂△2一飛▲4五桂(参考2図)が進行の一例だ。

だが私はうっかり▲4四歩と取り込んでしまった。2月の支部対抗戦ではふつうに▲8八角と引いたのに、何をやっているのか。
本譜、飯野女流初段は一瞬動きを止めたあと、△4四同角と取った。これには私も▲同角と取り、▲5三角が継続の一手。ここ▲3一角は、△5二飛▲5三銀△3二飛▲4二角成△同飛▲同銀成となるが、上手に捌かれていると思った。「▲5三角」は中原誠名人が大山康晴十五世名人との第44期名人戦第1局で指した手で、それを拝借した(参考3図)。

本譜、私は手順に桂得を果たしたが、中央がいかにも薄い。そこで飯野女流初段は△4七歩。ここで、6人目の客が現れた。今日はゴールデンウィークの初日だが、もちろん仕事の人もいるのだ。
6人目の男性は、平手を所望した。時々見かける方で、かなりの手練れである。
盤面。私は▲4七同金の一手だが、さらに中央が手薄になってしまった。そして上手は△6五金と、手順に金を活用する。なんだか本当に大山十五世名人みたいだ。
△5五角にはどう受けるか。

第4図以下の指し手。▲7七桂打△4二飛▲4三歩△5二飛▲6五桂△同歩▲8八銀△6六歩▲同歩△6五歩(第5図)

私は手堅く▲7七桂打とした。得した桂だし、これでいいと思う。
飯野女流初段は△4二飛と寄ったが、▲4三歩△5二飛となっては一手パスだと思う。ただ、私の馬も二重に止まり、活用しにくくなった面はある。
ともあれ▲6五桂と金を取り、これで金得。悪いはずがないと思った。
△6五同歩には角成りを受けなければならないが、▲7七銀は△8五桂が気になったので、じっと▲8八銀と受けた。一瞬カベ銀なので気が利かないが、ほかに手が思いつかなかった。
飯野女流初段は△6六歩。玉のコビンを突いてイヤな手だが、私は何はともあれ、△4六歩がイヤだった。以下▲5七金なら△4五桂▲同桂△4七歩成でどうか。優勢を意識している下手にとっては、こうやって勝負勝負と来られると、相当気持ちが悪かった。
本譜△6五歩に、次の手が私流である。

(つづく)
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山根ことみ女流初段の指導対局会(後編)

2018-10-05 00:42:42 | 女流棋士の指導対局会

第7図以下の指し手。▲8六香△3七銀成▲同銀△6四桂▲6五馬△7六桂▲3九歩△5六歩▲同馬△3八竜▲同歩△3七角成▲同歩△6八銀(第8図)

このあたりでShin氏の将棋が終わり、山根ことみ女流初段が投了した。おいおいShin氏、平手勝利の一抜けか!
和やかに感想戦を行う2人を横目に、私は盤面を苦渋の表情で見つめる。くっそう▲2七歩と打っとけばこんな苦労をしなくて済んだのに……。つらい、この苦痛から解放されたい。投げちゃおうか。
でも最後だけ未練がましく、▲8六香だけ打ってみた。
山根女流初段は△3七銀成から△6四桂。これも厳しいが、先に駒損しているからどうなのだろう。
△7六桂(▲同馬は△3八竜)は次に△6九竜の狙いだが、それは▲3九歩がピッタリである。
……うん? これは下手が面白くなってる?
山根女流初段は△5六歩を利かして△3八竜だが、▲同歩にまだ角当たりが残っている。山根女流初段はこれも切って、△6八銀。最後のスパートにきた。

第8図以下の指し手。▲6八同金△8八飛▲6七玉△6八桂成▲7六玉△7八成桂▲8三香成△同銀▲同馬△同玉▲7五桂△7二玉(第9図)

第8図で上手玉に即詰みがあれば話は早い。しかしわずかに足りないと思った。それで▲6八同金と1枚入手する。この銀はかなり大きい。
△8八飛には▲6七玉△6八飛成▲7六玉で勝ち、と思いきや、△6八桂成がある。いや先に△8七飛成として、香を取りに行く手もある。これはまだまだ難しい、と気を引き締めていると、山根女流初段は△6八桂成~△7八成桂ときた。
これは詰めろでないので▲7五桂でもいいが、ここはもう▲8三香成といった。
ここでShin氏の左の男性の飛車落ち戦が終わった。これも男性氏の勝ち。みんなようけ勝ちよって、私もますます負けられなくなった。

第9図以下の指し手。▲6三銀△同金▲8三銀△6二玉▲6三桂成△5一玉▲3一飛△4一香▲3三角(投了図)
まで、119手で一公の勝ち。

▲8三銀に△6二玉では、いったん△7一玉と落ちられると、詰み筋が分からなかった。でもふつうに▲7二銀打で詰むか。
本譜は即詰みで、山根女流初段の投了となった。

感想戦。山根女流初段は、△2九飛成の第7図から▲8六香と打った手を褒めてくれた。
「もっと(2~3筋方面を)受けてくれると思ってたんですけど、攻めに来られてしまって……」
また中盤の第5図で、私の▲6七角に対し△5六歩~△4九飛がやはり疑問だったらしく、
「こんな狭いところに飛車を打ってしまって……。この局面は2歩あったから、△9五歩と端攻めをするべきでした」
と悔やんだ。「▲9五同歩なら△9八歩~△9七歩~△9八飛(参考2図)で」

確かにそう指されたら、受けがなかった。本局は序盤の折衝以後、常時上手に緩めてもらった感じだ。
感想戦が終わり席を立つと、Kaz氏が
「ふたりが勝って私が負けると、ふたりに差をつけられた気がします」
と嘆いた。しかしとんでもない話で、結婚していい仕事に就いているアンタのほうがどれだけ幸せかと思う。将棋の勝ち負けなんてどうでもいい。
とはいうものの、勝つと負けるとでは気分が天と地だ。私に気持ちよく白星を配給してくれた山根女流初段には、あらためて感謝の意を表したい。
さて、この後は山根女流初段を交えての食事会である。場所はいつもの定食屋。まだ指している人はいるが、Kaz氏、Shin氏と先乗りすることにする。
店に入り、そのまま3人は同じテーブルに着く。ほどなくして残りの一行も入店し、みなで食事となった。
私は山根女流初段との会話を愉しみたいのだが、場所が離れすぎている。とはいえ棋友とのバカ話も楽しい。
大野八一雄七段が「レモンの木、大丈夫かなあ」とつぶやく。今日はJR東日本の計画運休があり、JRの営業は20時まで。よって私たちも、どこかせわしない。
食後に山根女流初段が近くに移動してくれたが、私は不覚にもKaz氏とShin氏との会話に夢中になってしまい、結局一言も交わさなかった。残念である。
19時に散会となった。そして帰りの電車内では、Kaz氏に山根女流初段との将棋を見せてもらった。
Kaz氏はひどい将棋を指した、とボヤいていたが、山根女流初段の指し手が巧妙で、敗戦もやむを得ない感じだった。

帰宅後、木村一基九段の本を確認する。

すると、今日とまったく同じ局面が載っていた。第3図からの▲5七銀引はやはり疑問手で、これには△4三銀▲3三飛成△同桂▲3四歩△同銀▲3一飛△4三銀▲1一飛成△2七飛(参考3図)で後手優勢とのことだった。

正着は▲2二角で、「この一手」。以下△4四角には▲5五銀!!が好手となる。以下△5五同歩▲3三角成△同角▲3四飛△5六歩▲4四銀(参考4図)△2二角▲3二飛打△4四角▲同飛△4三銀▲同飛成△同金▲5二銀が一例で先手優勢。△5四歩型だから▲5五銀が利かないと思いきや、それでも歩頭に出る手が成立していたのだ。

よって▲2二角には△4六歩▲3三角成に例の△3七歩となり、▲3七同飛△3六歩▲3四馬(▲3六同飛は△4五銀▲3五飛△3三桂▲同飛成△5六銀で後手優勢)△3七歩成▲同桂△4七歩成▲同銀……(参考5図)と、難解な終盤戦に突入することになる。

この変化を前日に勉強していたら、まったく違った将棋になっていた。もっとも今日の将棋も、自分らしい展開になったので、満足している。
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山根ことみ女流初段の指導対局会(中編)

2018-10-04 00:42:17 | 女流棋士の指導対局会

第3図以下の指し手。▲5七銀引△3七歩▲同銀△2五銀▲2二角△4四角▲6六歩△5五歩▲同歩△3六歩▲2八銀△5五角▲3三角成(第4図)

山根ことみ女流初段の手つきは「ピシッ」という感じではなく、駒をスイ……と前に押しやる独特のもの。しかしこのほうが凄みを感じる。
下手勢はみな押し黙って対局しており、軽口も聞こえない。
第3図では▲8八角か▲2二角か▲2二歩か。▲8八角が定跡だろうが、そう進むと、研究の差で負かされると思った。
それで▲5七銀引とした。いかにも退廃的だが、以前コンピュータ将棋との一戦で、こう指されて困ったことがあったので、対策を教えてもらおうと思ったのだ。
山根女流初段の解答は△3七歩~△2五銀だった。しかしこれは下手が1歩をもらい、上手の銀がソッポなので、ありがたい気がした。もちろん山根女流初段は、あえて外してくれたのだろう。
私は▲2二角。香が浮いてないので、この場合は敵陣に打つのがベターだと判断した。
△4四角~△5五歩に私は▲同歩。これには△5五同角がワンセットと思いきや、先に△3六歩と打たれてシビれた。
対して▲4八銀右では△5五角の時香取りになるので2八に引いたが、これでは銀が遊んでしまい、面白くなかった。戻って△4四角には、すぐ飛車を取るのだった。
私は▲3三角成。

第4図以下の指し手。△3三同角▲5六歩△6四歩▲4一飛△6五歩▲2一飛成△6六歩▲7七桂△4六歩▲同歩△5五歩▲6六銀△5六歩▲5五歩△5七歩成▲同金△1二角▲同竜△同香(第5図)

山根女流初段はさして考えず△3三同角と取ったが、私は△3三同桂で、後の△2八角成~△6四角を見せられたほうがイヤだった。
もっとも△3三同角でも△5六歩▲同銀△6六角の狙いがあるから、私は▲5六歩と謝る。しかしここは▲6七金とし、上部を厚くするべきだった。
△6四歩と突かれて、次の△6五歩が厳しい。対して▲7七桂は△7四歩と替わって面白くない。受けてもいられないので、▲4一飛と下ろした。
私は桂得し、△6六歩には▲7七桂と跳ねる。どうして私の将棋は、いつも囲いが薄くなってしまうのだろう。
△4六歩は意味が分からなかったが、△5五歩で意味が分かった。すなわち▲5五同歩なら△1二角の王手竜だ。一応▲同竜と取れるが、飛車を渡すとまずい。
私も工夫をしたが、結局△5七歩成で王手竜の筋を通されてしまった。▲5七同銀は△6五角の飛車竜取りがあるので(錯覚。実際は桂が利いていて打てない)▲5七同金だが、またも駒が上擦ってしまった。
△1二角には竜角交換し、さて次の手は。

第5図以下の指し手。▲6七角△5六歩▲同角△4九飛▲3九銀△4四角▲6七角△4八歩(第6図)

第5図で目につくのは▲6四桂だが、桂も渡すし、あまり得にならないと思った。
それより現状、下手陣の脅威は△4九飛だ。現在は単騎なので捕獲できそうだが、打たれないに越したことはない。それで▲6七角と打った。一瞬気が利かないようだが、▲1二角成から自陣に引き揚げれば手厚いし、また▲5六馬~▲8六香~▲7五桂の反撃も望める。実は9月27日に指された王位戦予選、谷川浩司九段VS小林健二九段戦で、先手の谷川九段が▲8四歩△同歩~▲7五桂~▲4七角の筋で快勝しており、本局もそれを目指したのだ。
山根女流初段は△5六歩▲同角と角筋を変え、強引に△4九飛と打ち込んできた。
ここで手堅いのは▲3九歩だが、それでは▲2八の銀が泣く。そこで疑問手を承知で、▲3九銀と引いた。
△4四角は一手の価値がなさそうだが、△3五角や△2六角を見ている。私は再び▲6七角と引き、飛車取り。そこで△3九飛成▲同飛△4八銀▲3八飛△5七銀成▲同銀△4七金を読んだが、軌道修正が利かなかった。
実戦は山根女流初段が△4八歩と辛抱したが、これでは私が指しやすくなった。
が、好事魔多し。安心した私は、悪手を指す。

第6図以下の指し手。▲1二角成△2六角▲5六馬△3七歩成▲同桂△3六銀▲2八銀△2九飛成(第7図)

左のShin氏戦は、Shin氏が強気な指し回しで、山根女流初段を追い込んでいる。私も早指しのほうだが、私より早く指してしかも下手優勢とは、何となく面白くない。
私は▲1二角成と香を取ったが、△2六角と出られて青くなった。
半分遊んでいた角に躍り出られたからで、これはマズい。▲1二角成ではじっと▲2七歩(参考1図)が正着で、これで上手は指しようがなかった。

本譜は▲5六馬と引いたがこれもやや疑問で、ここでも▲2七歩と催促すればよかった。
山根女流初段は歩成から△3六銀と出る。あの銀にも活用され、クサッタ。
しかも次は△3七銀成があるから▲2八銀と上がったが、△2九飛成で、この飛車にも生還されてしまった。まったく泣きっ面に蜂とはこのことで、網が破れてはもうダメである。もはや戦意喪失で、投げよう、と思った。

(つづく)
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山根ことみ女流初段の指導対局会(前編)

2018-10-03 00:40:08 | 女流棋士の指導対局会
9月30日は「第4回・将棋文化検定」が東西であったが、大阪会場は台風24号の影響で中止。東京は予定通り行われたようだ。
もっとも私は申し込みに遅れてしまったので、受験せず。これも運命である。

同じ日には埼玉県川口市の「大野教室」で、山根ことみ女流初段の指導対局会があった。「ことみ」という名が珍しく、芸能界では京野ことみを思い出す。私は3コマ目の16時からの回に申し込んでいた。
14時40分ごろに自宅を出たが、本来なら、台風に備えて帰宅しようというところ。そこを逆行するのだから、将棋ファンはつくづくバカだと思う。
川口駅に着き、やや迷ったが、エキナカで立ち食い蕎麦を喰らう。無職は浪費を慎むべきだが、景気づけだ。
雨の中を教室に向かうと、以前駐車場だった広大な空き地に、建設中のビルがあった。ここはホテルかオフィスビルか。
前を行く男性の歩みが遅い。どこかを探している感じで、一声かける。やはり教室に来た人で、いっしょに入室した。
中では山根女流初段が、2コマ目の最後の客に、指導対局を行っていた。奥の和室では大野八一雄七段が指導対局の真っ最中。
W氏がいたので、挨拶する。
「最近教室に来ないじゃない」
とW氏。確かにそうで、前回は8月の飯野愛女流初段の指導対局会だった。その前の教室参加は6月、その前は4月だったと記憶する。間隔は開いているが、私は来たい時に来るだけだ。
Kaz氏がいた。「山根先生の四間飛車に棒銀をやったんですけど、短手数で吹っ飛ばされました」
実力派で腰の重いKaz氏が、勝敗はともかく短手数で敗れたとは解せない。山根女流初段は想像以上の手練れのようだ。あと、Kaz氏は振り飛車党から居飛車党に戻ったようだ。そのまま振り飛車党を続けてくれれば、私も与しやすかったのだが……。
定刻には早いが、個々で記念写真を撮ったあと、もう駒を並べ始めた。現在私を含めて、下手は5人。もうひとりはShin氏で、遅れて来るらしい。
ほかの4人が対局を始めたあと、私の駒を並べる。
「手合いは何にしますか?」
「平手でよろしいでしょうか。先生も飛車を振りたいでしょ?」
と、これはいつものフレーズである。
5人目の対局開始となった。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△9四歩▲5六歩△3二銀▲6八玉△4二飛▲7八玉△7二銀▲5八金右△4三銀▲2五歩△3三角(第1図)

山根女流初段は振り飛車党という情報は仕入れてきたが、とくに対策はしなかった。ただ、四間飛車で来そうな気がしたので、前夜に木村一基九段著の「NHK将棋シリーズ 急戦・四間飛車破り」を読もうと思ったのだが、読み忘れてしまった。
山根女流初段はすぐに飛車を振らず、6手目に△9四歩。これにお付き合いするほど私は心の余裕がないので、中央の駒を進める。
奥の2人は社団戦の戦友らしく、山根女流初段との対局姿を写真に撮るよう、W氏にお願いしていた。
「あれっ?」と山根女流初段。ほかの4人の手合いは、こちらから飛車落ち、平手、飛車香落ち、あとのひとつは見えなかったのだが、山根女流初段が平手局を飛車落ちと勘違いし、飛車落ち用の手を指してしまったらしいのだ。
しかし待ったはせず、そのまま駒組を進めた。
山根女流初段は四間に飛車を振り、▲2五歩△3三角まで。次が作戦の岐路だ。

第1図以下の指し手。▲6八銀△6二玉▲3六歩△7一玉▲5七銀左△5二金左▲9六歩△8二玉▲4六銀△5四歩(第2図)

山根女流初段は黒系のニットのカーディガンを着用していて、まさに秋の装い。写真では神経質そうな感じを受けたが実物はそんなことはなく、そこはかとなく漂う天然感は、面白キャラのニオイがぷんぷんする。
第1図は手が広いところで、ここで作戦を練るのが居飛車の醍醐味だ。私は▲6八銀と上がり、とりあえず左美濃を捨てる。次に▲3六歩とし、急戦を明示した。
このあたりでShin氏が入室し、私の左に座った。
「お久しぶりです」
とShin氏。「元気でしたか」
「元気じゃないよ」
本当にそうで、最近は手足に熱を持ったり、内臓のあっちこっちに痛みがあったりと、体調は最悪である。思い切って人間ドックで診てもらおうとも思うのだが、検査が恐ろしくて、その踏ん切りがつかない。
「最近将棋指してます?」
「指してねえよ。そんな状況じゃないよ」
「だけどそういう時のほうが、大沢さんは強いからなあ」
「……」
△5二金左には、心の余裕ができてきたので、▲9六歩と突く。さらに▲4六銀とし、ナナメ棒銀とした。
対して上手の△5四歩がやや珍しい気がした。むろん飛車のコビンが開くからで、将来の△2七角~△5四角成がない。ただし△6四角の筋が残っているので、下手はこの手に気を付けなければならない。

第2図以下の指し手。▲3五歩△3二飛▲2四歩△同歩▲3四歩△同銀▲3八飛△4五歩▲3三角成△同飛(第3図)

左の将棋を見るとここも四間飛車対急戦で、やはり山根女流初段の△5四歩型だ。山根女流初段はこの形を得意にしているようだ。
Shin氏の囲いは「▲6八銀・▲7九金・▲5九金」で、これは最近の「将棋世界」で見たことがある。確認すると、大橋貴洸四段が得意にしているらしい。さすが勉強熱心なShin氏、最新形に詳しい。
第2図で下手は▲6八金直や▲1六歩があるが、いずれも△1二香と替わって面白くないと思った。それで単刀直入に▲3五歩と仕掛けた。
こうなれば、以下数手は定跡手順。途中▲2四歩の突き捨てが肝心なところで、これを怠ると将来▲3四飛と走った時、▲2四飛と横滑りできない。ただし上手に1歩を渡したので、それなりの反撃も覚悟しなければならない。
▲3八飛には△4三金もあるが、山根女流初段は△4五歩。まあそうであろう。
私は角を換わって、△3三同飛まで。さて次の手は。

(つづく)
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山根ことみ女流初段の指導対局のお知らせ

2018-09-26 00:21:30 | 女流棋士の指導対局会
埼玉県川口市の「大野教室」では、9月30日(日)に、山根ことみ女流初段の指導対局を行います。
山根女流初段は1998年3月9日、愛媛県松山市生まれの20歳。ピンクレディーの未唯と同じ誕生日です。女流棋士は2013年10月1日デビュー。つまり9月30日で丸5年となります。今年度は女流名人リーグ入りを果たし、今最も乗っている若手女流棋士のひとりです。
今年6月には、関西所属から関東所属になりました。そこをすぐにアプローチして、指導対局会にこぎつけたスタッフの行動力はさすがです。
当日はまだ空きがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
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