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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

ANAの株主優待券と、麹町サロン最悪の将棋

2023-07-28 01:18:06 | LPSA麹町サロンin DIS
あれは24日だったと思うが、27日のLPSA麹町サロンin DIS・島井咲緒里女流二段の回に、キャンセルが出た。そこで、25日夜に申し込んだ。この時点で満席だったらそれでよい。しかし翌朝OKのメールが来て、参加が決まった。
島井女流二段においては、5月18日の回も申し込んでいたが、私が土壇場でキャンセルし、指導をいただけなかった。その代わりという意味合いもあるが、2ヶ月遅れの誕生日プレゼントも渡したかった。
当日は午後に秋葉原のヨドバシカメラに寄ったあと、新橋に向かった。例によって、ここから都バスで麹町に向かうためである。
新橋駅前ではマルシェのイベントをやっていたが、私には関係ない。小諸そばのドアを開けたが、意外と客が多い。私は昼食は摂っていたので、今回は小諸そばをパスとする。
それにしても、きょうも暑い。駅ビルに入って涼を取ると、ある金券ショップの店頭に、ANA株主優待券の買取価格が張られていたのを見つけた。あぁここでいう優待券とは、飛行機の料金が半額になるというやつだ。私はANAの株主で、1年間で6枚もらっているのだ。
そしてその額が、
「2023年11月まで有効…2,260円 2024年5月まで有効…2,750円」
だった。
正直いって、愕然とした。私はANAの株主になって15年は経っていると思うが、その間、株主優待券をカネに換えたことは一度もない。よくテレビで、彼からもらったブランド品を、そのまま大黒屋に売る女性をやっているが、私は、せっかく私宛に来た商品を売るのはしのびなく、いつも家で眠らせたまま処分していたのだ。
だが、こうして数字を出されると、つい頭の中で計算してしまう。仮に株主歴15年として、これまで90枚、株主優待券を入手したことになる。その間、5枚前後(少ない!!!)は使用したから、85枚を換金ショップに売ったとして、「(仮に)2,500円×85枚=212,500円」の臨時収入となる。私はマジで、卒倒しそうになった。
なんで私は、いままで株主優待券を売らなかったのか!!
私はあらゆる事象にケチケチ攻撃をしているが、ここで小遣いを稼ぐチャンスがあったんじゃないか。そしてそれは、私がまったく知らなかったわけではなく、一方的なイメージで、拒絶していただけなのだ。何をやっているんだ何を!!
もう、いますぐにでも手持ちの株主優待券を売りたくなったが、手元にはもちろん、ない。それよりもバスの出発時間が迫っている。これから咲緒里姫と将棋だというのに、頭の中のほとんどを株主優待が占めていちゃ、将棋にならぬ。ここは将棋モードに替えないとと思った。
14時35分のバスで麹町に向かう。14時54分、定刻からやや遅れて、麹町四丁目着。
そのままビルに向かい、そこのトイレに入って、島井女流二段の前に着いたのは15時キッカリだった。
きょうは当然満席だが、先客は2名だった。
島井女流二段は相変わらずかわいらしかった。私が初めて島井女流二段にお会いしたときは彼女が20代だったが、そのころからほとんど変わっていない。
対して私はハゲが壊滅的に進行し、いまは跡形もない。しかし女性は男性の髪の毛の量に魅力を左右されない、とする見解もあり、私はその説にすがるしかない。
私はLPSAファンクラブの更新料と、指導料を払う。〆て9,500円。おカネというのは、けっこう簡単に出ていくものだと再認識した。
そして2ヶ月遅れの誕生日プレゼントを渡す。中倉彰子女流二段、渡部愛女流三段についで、今年3回目だ。渡すときは渡すことが続くものだが、上川香織女流二段の誕生日がこの30日である。ここまでくると、上川女流二段にも何か考えないとヤバイなと思う。
さっそく駒を並べる。島井女流二段が王を取り、私が玉を取る。島井女流二段が金、私も金。そこで私が早まって、2枚目の金に触れてしまった。いつも島井女流二段はパッパッパッパッ駒を並べるのだが、今回は私に歩調を合わせ。正調?の並べ方をしてくれるらしかった。
「大沢さんは、暑さはどうですか?」
「はあ、まあ大丈夫ですよ。まあ、暑いのは暑いですけど」
「暑いと大変ですよね」
「はあでも、私は2月に北海道の雪まつりに行って、8月に沖縄に行ってましたから」
「ああ、わざとそっちのほうに行くと。雪まつりは楽しいですか?」
「はあ、まあ楽しいですね」
実際はむなしさが相当あるが、それを言うと話が複雑になる。
「私も親戚が石垣島にいて、2回ほど行ったことがあります」
「おぅおぅ、石垣島はいいですよ。あそこを起点にして、ほうぼうの離島に行くんですよ」
そういえば12年前は、石垣島で、島井女流二段の結婚を知ったのだった。
「知り合いとかいるといいですよね。今年も行かれるんですか?」
「いえ、今年は行けません」
現在の私は、夏休みはおろか、年末年始もゴールデンウイークも、休みが取れない。だから平日開催であるサロンにも来られるという皮肉だ。だがこんな生活を続けるのはもう限界だ。「でもいつかまた、沖縄に行きます」
私は半分自分に言い聞かせるように、つぶやいた。
対局開始。私は角道を開けた。
(つづく)
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誕生日に指導対局

2023-06-17 23:30:44 | LPSA麹町サロンin DIS
2月下旬、3月2日(木)のLPSA麹町サロンin DISに、中倉彰子女流二段の空きがあることを知った。その日は彰子女流二段の誕生日。なんでそんなメモリアルな日に指導対局が入っているのかよく分からぬが、これでは申し込まざるを得ない。実は3月16日の分で、上川香織女流二段と島井咲緒里女流二段に申し込んでいたが、かようなわけで、2日も申し込んだ。よって3月は大変な出費になるが、そんな月もあると割り切るしかない。
当日お邪魔すると、先客が2名いた(のちに満席となる)。彰子女流二段は、相変わらず綺麗だった。気品のある美しさで、ほかの女流棋士とは一線を画している。
なおこの前日から、ご主人の中座真七段が休場に入っていたが、それには触れなかった。
ちょっと出し抜いた感があるが、彰子女流二段にチョコレートのプレゼントを差し上げた。当該女流棋士の誕生日にプレゼントをしたのは、意外にもこれが初めての気がする。その相手が彰子女流二段とは、意外な巡りあわせだ。
さっそく指導対局になった。ここは記譜と図面を駆使して紹介したいが、彰子女流二段は自分の将棋が紹介されるのを好まないと聞いたことがあるので、今回も記譜は載せるが、細かい感想は書かない。

▲一公
△女流二段 中倉彰子

▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲5六歩△9四歩▲9六歩△6二玉▲6八玉△7二銀▲7八玉△7一玉▲5八金右△3二銀▲6八銀△8二玉▲7五歩△3三角▲7七銀△4五歩▲5七銀△4三銀▲7六銀△4四銀▲6六歩△5四歩▲4八飛△5二金左▲6七金△2四歩▲8六歩△3五銀▲8五歩△2六銀▲4六歩△同歩▲同銀△3五銀▲4五歩△4六銀▲同飛△2五歩▲3六歩△2四角▲3五歩△同角▲4九飛△4六歩▲3六銀△3八銀▲4八飛△4七歩成▲同銀△同銀成▲同飛△4六銀▲4九飛△4七歩▲5八金△2六歩▲4七金△同銀不成▲同飛△4六金▲4九飛△2七歩成▲3六歩△3八と▲3五歩△4九と▲6五歩△2八飛▲8七玉△2九飛成▲1一角成△4八と▲8八馬△5八と(図)▲5五歩△2二飛▲5四歩△2八飛成▲5五角△5七と▲同金△8八竜▲同角△5七金
まで、90手で彰子女流二段の勝ち。

といいつつ展開を軽く書くと、彰子女流二段の四間飛車に私は玉頭位取りに出た。しかし彰子女流二段に的確に対処され、非勢に陥った。
彰子女流二段は指導対局といえども全力投球で、今回もそう。2時間の長丁場だが、恐らく1局で終わるだろう。だが、適当にパッパッパッと指されるよりはよい。
後半に宏美女流二段が訪れた。チラッとプレゼントを見られた気がしたが、宏美女流二段の誕生日は過ぎちゃったからなあ……。

将棋は終盤戦に突入した。私は悪いながらも粘っていたが、図で▲5五歩と突いたのがココセ級の悪手。彰子女流二段に△2二飛と回られ、すべて終わった。
最後は金を取られて戦意喪失。そのまま投了した。やっぱり彰子女流二段は強かった。
今回は残念だったが、再戦の機会はあるだろうか。
なお中座七段は5月末で休場が明けるはずだったが、11月30日までの延長が発表された。これは心配である。だけど、私はどうすることもできない。
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香織、三番勝負(後編)

2023-05-12 20:34:05 | LPSA麹町サロンin DIS
きょうのNHK朝のドラマ小説「らんまん」は、主人公の万太郎が、寿恵子と劇的な再会をする回。寿恵子があまりにも可愛らしかった。
私も角館の美女と再会したかったが、叶わなかった。南足柄市の美女とは再会したが、その先まで行こうとしなかった。
らんまんの両人はオタクっぽく、今後の展開が楽しみである。

   ◇

上川香織女流二段は第2局中にも「大沢さんって、こんなに強かったっけ?」を連発していたが、本局は惨敗で、ぐぅの音も出ない。
感想戦に入ったが、上川女流二段は第3図から3手前の△8七角成で、軽く△8七歩成を指摘した(参考図)。

以下A▲同飛なら△同飛成▲同金で、これは先手の金が離れるから後手よし。またB▲同金から△7八角で、どう進んでも後手が戦える。
「この方が大沢さんらしかったんじゃないですか?」
と上川女流二段。確かにその通りで、本局は私の悪い面ばかりが出てしまった。
これでもう帰ろうと思ったが、上川女流二段は「決勝の第3局」と指す気満々である。それで3局目に突入した。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲5六歩△4二銀▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二銀▲5八金右△7一玉▲3六歩△5二金左▲6八銀△8二玉▲5七銀左△9四歩(第1図)

3局目はもちろん私が先手である。指導対局はこうでなくちゃいけない。
上川女流二段2度目の三間飛車に、私は▲2五歩を決める。今度は急戦で行くつもりだった。
△9四歩に次の手は。

第1図以下の指し手。▲9六歩△5四歩▲4六歩△6四歩▲3七桂△2二飛▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀△5六歩▲4四歩△同銀▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲8八角(第2図)

私は▲9六歩と受けた。「やっぱりそれが本手でしょ」と上川女流二段。
それはもっともだが、のちに戦いが始まったとき△9五歩の端攻めが生じるので、微妙なところである。
以下も昭和の定跡の進行で、私が唯一知っている、対三間飛車の急戦である。
▲4六銀に本譜は△5六歩だが、もちろん△5四銀もある。以下▲5五銀△同銀▲同角△4三金となり、この進行も定跡が整備されているが、難しい。
本譜に戻り、角を換わって▲8八角に、上手の応手は。

第2図以下の指し手。△4三金▲4七銀△5二飛▲5六銀△4四歩▲2四歩△4五歩▲5七銀△2四歩▲同飛△2二歩▲2三歩△4四銀▲2二歩成(第3図)

第2図では本譜の△4三金や△4二金、勝浦新手の△4二銀がある。△4三金には、▲3五歩△同歩▲4七銀もあったと思うが、うろ覚えで指せなかった。
▲2四歩に上川女流二段は△4五歩だが、私の▲5七銀が疑問。強く▲2三歩成と指すべきだった。
▲2三歩の合わせに上川女流二段は△4四銀。私はありがたく▲2二歩成としたが、次の手がまったく浮かんでいなかった。

第3図以下の指し手。△1五角▲2三飛成△3七角成▲5五歩△同銀▲同銀△同飛▲4四歩(指し掛け図)

まで、63手で指し掛け。

△1五角の両取りがまったく読めていなかった。▲2七飛は△2六歩▲2九飛△2二飛で負けなので▲2三飛成とするしかないが、△3七角成で不利を自覚した。
次に△5五歩が厳しいので逆に▲5五歩と打ったが、そこでじっと△4六歩と伸ばされるのがイヤだった。
しかし本譜は△5五同銀。私はほっとしつつも▲同銀に、上川女流二段は△同飛できた。そこでふつうに▲5六歩でよかったのに、私は▲4四歩。

これが微妙な手だったのだが、ここで時間が迫り、指し掛けとなった。
指し掛け図以下は、△5七飛成の強攻があり、▲同金△6五桂の進行は、全然自信がない。
「次は3月に指しましょう」と上川女流二段。たしか2月も担当があったはずだが、「3月」というところが上川女流二段らしい。
ともあれ2時間で2局半指せれば十分。濃密な時間を過ごさせていただいた。また上川女流二段のファンになってしまった。
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香織、三番勝負(中編)

2023-05-11 21:56:59 | LPSA麹町サロンin DIS
初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲5六歩△5四歩▲5八飛△6二銀▲4八玉△4二玉▲5五歩△同歩▲同角△3二玉▲3八玉(第1図)

前局は私が後手だったのに勝ってしまったから、本局も私が後手になった。
2手目私の居飛車明示に、上川香織女流二段は「今度は得意形で」と中飛車に振った。
8手目」△4二玉に、上川女流二段は早くも5筋の歩を換える。ここで私は早くも失敗した。

第1図以下の指し手。△3四歩▲2二角成△同玉▲7八銀△4二銀▲2八玉△4四歩▲3八銀△4三銀▲4六歩△8五歩▲7七銀△4二金▲1六歩△5三銀▲5九飛△5四歩▲1五歩(第2図)

第1図で△3四歩と角道を開けたのが失敗。上川女流二段に角交換をされてしまった。
角交換自体はいいのだが、ここは△8五歩と突いて▲7七角と引かせ、そこで△3四歩と開ければ、▲2二角成△同玉で、△8五歩の一手を得できた。
本譜△2二同玉も、ふつうに△同銀と取るべきだった。「玉で取るんだ」と上川女流二段がつぶやいたが、「それは疑問手では?」と同義語にも聞こえた。
本譜、私は中央に駒を集めたが、玉が2二なので、厚みが構築できない。△5四歩と収めた手は情けなかった。
そしてまたも▲1五歩と位を取られ、焦った私は、決定的な疑問手を指す。

第2図以下の指し手。△3五歩▲6六銀△8六歩▲同歩△同飛▲7八金△8二飛▲7七桂△8六歩▲8九飛△8七角▲同金△同歩成(第3図)

第2図で△3五歩と位を張ったのが疑問。ここで玉頭位取りにする手はなかった。ふつうに△5二金右とし、次に△3二金くらいで、バランスよく指すべきだった。
▲6六銀に△8六歩は先手の待ち受けるところで、行くべきではなかった。ここは△3五歩の顔を立て、△3四銀と上がるべきだったか。
ただこれでも、作戦が分裂気味ではある。やはり△3五歩の罪が重かった。
本譜に戻り、△8六歩に上川女流二段は▲8八歩と受けず、▲8九飛と回った。
そこで△8七角が、誘われているようでアレだったが、打ってみた。
▲同金△同歩成となり、これは後手が十分に思えたのだが……。

第3図以下の指し手。▲5六角△5五金▲8三歩△5二飛▲4七角△4六金▲5八角△7八と▲8五飛△6八と▲2五角△6七と▲6五桂△6四銀▲7五銀△6五銀▲8二歩成△5六銀(第4図)

上川女流二段の次の一手は、▲5六角だった。何となくよさそうな手で、▲8三歩を防ぐA△8四飛は▲8五歩がある。またB△8六飛も▲9五角で苦戦を強いられそうだ。
私は指し手に窮したが、何かを指さねばならぬ。そこで△5五金と打ったが、これも冴えなかった。
上川女流二段は▲8三歩を利かして▲4七角と逃げる。私は△4六金と追っかけたが、金はこんな使い方をするものではない。
△7八と▲8五飛に△6八とと角を追ったが、▲2五角と逃げられた。これがあるなら△6八とでは黙って△7七とと桂を入手し、駒損を回復するのだった。
本譜も桂を取れたが銀が中途半端なところに進出してしまって、締まらない。△5六銀と出たが、金銀で敵の金銀を狙っているのだから、お話にならない。

第4図以下の指し手。▲4七歩△5七金▲9一と△5八と▲8一飛成△5一金▲3四桂△同銀▲同角△4九と▲5二角成△同金寄▲4九銀(第5図)

上川女流二段は▲4七歩と打つ。ここで△3三桂は▲4三角成△同金▲4六歩なので、△5七金と入った。せっかくの金が、ほとんどその価値を失くしている。
▲9一とに△5八と。あのと金がここまで使えたことは収穫だが、金1枚を入手したところでどうということもない。それより上川女流二段のほうが価値の高い手を指している。
▲8一飛成と桂を取り、それを▲3四に打たれた。第2図で△3五歩と突いた手を咎められた形で、もうダメである。このあたりで投げるべきだった。

第5図以下の指し手。△3六歩▲同歩△5五角▲4六銀△7七角成▲5七銀(投了図)
まで、81手で上川女流二段の勝ち。

第5図で△2四桂と打ち△3六桂打を狙う手も、手堅く▲2五銀と受けられてダメ。私の△3六歩はおまじないみたいだが、ふつうに▲同歩と取られて手がない。
気が付けば、先手には▲5三歩の楽しみがある。これを打たれたらオワリだが、受ける手もない。
ということで、▲5七銀までで投了した。いやまったく、ひどい将棋にしてしまった。

(つづく)
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香織、三番勝負(前編)

2023-05-10 00:05:15 | LPSA麹町サロンin DIS
1月12日のLPSA麹町サロンin DISである。中倉彰子女流二段に教えを請うたあと、中休みにTod氏と、階下のドトールコーヒーに入った。Tod氏は上川香織女流二段との予約はないが、私が強引に付き合ってもらった。
私はコーヒーのほかに、お店オススメのローストビーフサンドを注文する。私の辞書にはないメニューだが、たまにはいい。
将棋関係の友人としゃべるのは楽しい。店には悪いが、長居してしまった。
麹町サロンに戻り、上川女流二段との対局である。
上川女流二段の回も満席だった。上川女流二段とは2ヶ月ぶりの顔合わせだが、きょうも魅力的である。本日2度目の指導料を払って対局開始だが、上川女流二段が「たまには先手で指したい」と言う。女流棋士相手にそれは畏れ多いが、従うことにした。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲7八飛△6二銀▲7五歩△6四歩▲5八金左△6三銀▲4八玉△4二玉▲1六歩△3二玉▲3八銀△4二銀▲3九玉△4四歩▲4六歩△4三銀▲1五歩(第1図)

上川女流二段は三間飛車。私は相手に石田流に組ませ、それを中央から反撃するのが好きなので、あえて飛車先の歩を決めず、△6二銀と上がった。
上川女流二段は当然▲7五歩。そう来なくちゃいけない。
13手目▲1六歩に、私は前局と同じく受けない。心の余裕がないのだろう。
上川女流二段が▲1五歩と伸ばし、次の手は、私としては当然。

第1図以下の指し手。△5四銀左▲4七金△4五歩▲同歩△同銀▲4六歩△5四銀引▲6八銀△4二飛(途中1図)▲6五歩△8八角成▲同飛△6五歩▲8六歩△3三角▲7七銀△8二飛▲2八玉(第2図)

私は△5四銀左。ここ「右」だと、のちに▲7四歩を狙われる。本譜▲4七金には△4五歩と角道を通しつつ、1歩を手にして気持ちいい。
そして▲6八銀に△4二飛(途中1図)が狙いの一手。飛車の横利きがなくなったいまが唯一のチャンスで、次に△4五歩▲同歩△同銀からの進撃を見ている。

「そうかあ……。大沢さんて、そういう鋭いところあるよね」
と上川女流二段が感心してくれる。
ぐずぐずできない上川女流二段は▲6五歩と暴れてきたが、私は角交換に応じ、じっと△6五歩と歩得を果たす。
▲8六歩にはもったいないが、△3三角と手放してみた。
▲2八玉に次の手は。

第2図以下の指し手。△7四歩(途中2図)▲6八飛△7五歩▲9八香△5二金右▲3六歩△6四銀▲3七桂△4二金上▲5六歩△8五歩▲4五歩△8六歩▲4六角△6三金▲5八飛△8七歩成(第3図)

第2図から△7四歩(途中2図)と突いたのが、当然とはいえ自慢の一手。狙うは2手先の△7六歩で、これが実現すれば後手が勝つ。果たして上川女流二段も「それ、よさそうな手に見える」とつぶやいた。

まさに△7四歩さまさまだが、これは1972年8月23日・24日に指された第13期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)第3局、▲内藤國雄八段VS△大山康晴王位において、内藤八段の指した手を参考にしている(参考図)。

こちらはちょっと高度な桂頭攻めだが、棋譜並べをしてプロの指し手がインプットされていると、稀に応用が利くことがあるのだ。
上川女流二段は▲6八飛と回ったが、私は△7五歩と取り込む。また1歩得して気分がよく、今後の指し手が分かりやすくなったのもよい。
しかし▲9八香には一転、△5二金右とした。玉の守りを強化して、この手は相当に価値あると思った。事実上川女流二段も、「そういうじっとした手が指せるのはさすがね」と感心してくれた。
私はさらに自陣を整備し、△8五歩。とにかく慌てないことを心掛けた。

第3図以下の指し手。▲2五桂△2四角▲5五歩△4五銀▲2四角△同歩▲1三桂成△4六歩▲5六金△6七角▲4五金△同角成▲8三歩△5二飛▲2三銀(第4図)

「あれー、大沢さんって、こんなに強かった?」
と上川女流二段。▲2五桂と跳ねたが、私は手順に△2四角と交換を迫る。結果それが実現したが、これは後手が若干儲けた。
先手は▲4六歩と銀を殺す1歩がないので、▲1三桂成とする。その寸暇を割いて△4六歩と抑え、後手ますます好調である。
数手後の▲2三銀に、玉をどこに逃げるか。

第4図以下の指し手。△4三玉▲6一角△1三桂▲5二角成△同玉▲8二飛△6二金▲5四歩△7一金▲6八銀△3五歩▲5三歩成△同銀▲5四歩△6四銀▲1四歩△2五桂▲1三歩成△3六歩▲4八金△1三香▲同香成△1七角▲1八玉△3九角成(投了図)
まで、96手で一公の勝ち。

第4図で△4一玉と逃げるのがふつうだ。しかしそれだと取れそうな▲1三成桂を▲2二に入られるのがイヤだ。
そこで△4三玉と逃げれば、上川女流二段は▲6一角と準王手飛車を掛けてくるだろう。そこで△1三桂と桂をはずせば、後手がさらによくなると思った。
果たして本譜もそのように進み、後手はさらによくなった。
▲8二飛には△6二金がいい引き締め。「それ、すごくいい手」と上川女流二段が褒めてくれた。
▲5四歩に△同馬は▲同飛△同歩▲8一飛成がある。そこで△7一金と飛車を殺した。これが負けない手で、これで行けそうな気がした。
上川女流二段は▲6八銀。25手前に銀取りに歩を成られてから、やっと逃げた。
私は△3五歩と急所を衝く。これが銀取りと同時に先手玉のコビンを攻めた、一石二鳥の好手。
上川女流二段は構わず▲5三歩成△同銀▲5四歩とした。これに△同銀は、▲3四銀不成△同馬▲5四飛のような狙いが生じて、やや危険である。黙って△6四銀と逃げた。
▲1四歩に△2三馬と銀を取ってもしょうがない。△2五桂と跳ねて寄せを目指した。以下、△3九角成に、上川女流二段が投了した。
上川女流二段の焦りもあったが、わりとうまく指せたと思う。
簡単に感想戦を済ませ、すぐに2局目が始まった。

(つづく)
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