日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

貫井徳郎著「乱反射」

2011-11-24 | 読書
昨日読み終えた1冊
ジワジワと涙が出て、公園ウオーキングの気分がなえた。

「乱反射」貫井徳郎著 朝日文庫 2009年新刊本の文庫化



2才の幼子が死に至る事がまず巻頭に示される。

母親を敬遠している30代の新聞記者
2才の子供と夫婦仲良く暮らしていたが
ほんの些細な事柄から全ては繋がって子供の死に至る。
車で家族旅行に出るのに「まあ仕方ない」
家庭ゴミをサービスエリアのゴミ箱に捨てる。

次から次へと巷の些細な事が始まる
犬の糞を街路樹の根元に放置する老人
道路拡張で街路樹が切られる事に反対する、お暇な主婦
精神疾患のため素手でものにさわれない植木職人
住民の苦情処理に出動しながらもうんざりする市職員
夜間診療のアルバイト医師
空いている夜間診療を利用する病気勝ちの大学生
わがままな妹と妹に甘い家族の中の車庫入れが苦手な姉

それぞれが勝手な事情で少しだけわがままを通す

その結果、2才の命が奪われるが
誰と言って決定的な罪に問われるほどの事はしていない。
積み重なった結果の悲劇だった。

新聞記者夫婦はやりどころの無い怒りで苦しみ
各個人の悪い所を指摘して逆切れされるが
始まりは「家庭ゴミ」の不始末だったのでは無いかと気付く

赤の他人の些細な不始末から始まり
赤の他人の何気ない慰めを立ち直りのきっかけとして
南の島で夫婦再生を成し遂げる(たぶん)

「これがミステリーか?」で読み進めるが
後半の新聞記者が異常な心理状態に陥り
妻が寝込んで動かない辺りからがやはりミステリーと納得する

最後の数ページはジワジワとたまる涙とはやる心

私のあの行為がヒョットして?と思う
誰にでもありそうな殺人行為
「風が吹くと桶屋が儲かる」を読み替え
「家庭ゴミの不始末が殺人を招く」的な「乱反射」

お勧めの1册です。
コメント
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