ハイテク化された戦場でも、人間能力を必要とする。それが戦争なのです

2015-09-16 09:34:21 | 日記

 ハイテク化された戦場でも、人間能力を必要とする。それが戦争なのです

  「戦争をする」ということ。それはハイテク化された軍事力の駆使を意味することだけではない。そこでは人間の命の奪い合う「極限の場」の出現であり、国上げての総力戦である。

 日本もイラク戦争で「非戦闘地」と言われたサマワという地に自衛隊を派遣した。その任務はブルドーザーによる道路の建設、飲料水の確保などの「復興支援」という活動であったが、その駐屯地内にも砲弾が飛来したこともあったと報告されている。また帰還者に見られる「心的外傷後ストレス障害」と診断された隊員も少なくはないことも明らかになっている。

 それに加えて後日明らかになったものに、現地における部隊の派遣と移動・物資の輸送・武器、弾薬の輸送量の99%が、実は民間輸送会社の参入によって行われたことが判明している。その中身は、6年間で自衛隊機による輸送が24回に対し、民間機による輸送が100回ということも明らかにされた。それ以外、船舶によるものもある。

 安倍首相は述べる。「これからますますハイテク化されていく軍隊に、「(赤紙)徴兵制度」は要をなさないと」。(この件については9月15日のブログでも触れている)とんでもないことである。いかに無人飛行爆撃機が飛び、レーダーによる照射射撃が可能である時代であっても、兵士・装備品・飛んでいく弾丸、ミサイル・装備を整備する補完物資。そして食品をはじめとする必要品の輸送はすべてが人間の動力を必要とする。それが民間企業の参入を必要としたイラク戦争であった。形は変っても企業の業務命令で派遣された従業員がそこにいた。命を落としても「労災扱いの殉職」である。

 そして、ウクライナの紛争の記憶をたどってみる。「ロシア派」と言われる軍隊との対戦に、ウクライナ政府は60歳までの国民に徴兵を命じた。「要をなさない年齢と見られる国民」にである。それでもライフル銃なら3から5キログラム、重いものでも10キログラムである。50代でも十分に使いこなせる兵器となる。それだけではない女性も徴兵の適用を受けている。今や兵器の使用も「年齢・性別」とは関係が無い。最後は兵と兵との殺し合いである。

 名古屋高裁違憲判決がある。イラクで活動を行った航空自衛隊の輸送活動について憲法違反と判断した。その理由は、イラク特措法に従えば自衛隊の活動地域は「非戦闘地域」に限られるところ、航空自衛隊の輸送先であるバグダッドは、非戦闘地域とは認められないこと、輸送が武装した米兵であったこと、他国による武力行使と一体化した行動と言わざるを得ないとして、憲法9条1項違反と断じたのである。
 さらに同高裁は「現代戦において輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であるといえること」を大前提として違憲判断を行っている。この時の輸送の実態を、中谷大臣は「輸送総人員が46479人、内米軍人が約半数の23727人だった」と報告している。では、その輸送が自衛隊機(政府専用機)のみであったのか。民間航空機は使用しなかったのかは明らかではない。

 今回の安保法案にしても、米軍に対する弾薬の輸送などの軍事物資補給は明確な戦闘行為と評価される。この点においても他国の武力行使と一体化するものと判断されるのは当然であろう。いずれにせよ非戦闘員であるか否かを問わず、敵対する相手国にとっては「武力行使の一体化」と見る。しかも高度な知識、技能を要しない通常部隊が必要であることも明らかになった。

 5キログラムのライフル銃を使い、戦争物資を輸送する人間能力はまだまだ必要であることをイラク戦争・ウクライナ紛争は証明した。「赤紙徴兵」はあり得る。しかも「憲法解釈をしてまで、違憲を合憲にしてしまった歴史」は厳然として残る。このことを記憶し、挫折へと流されることなく夏の参議院選に心配りを期したいものである。


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