真っ赤な偽り「年功序列賃金論」

2014-10-01 13:17:47 | 日記

    真っ赤な偽り・安倍首相の発言

       「子育て労働者の処遇改善を邪魔している年功序列賃金論」

   拝啓、安倍晋三首相殿。貴方は、今の労働者の賃金形態をどれだけご存知ですか。というのも今般の「政労使会議」の中で年功賃金の見直しを言及されました。その理由は「子育て世代の処遇を改善するためにも、年功序列の賃金体系を見直し、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切だ」と述べています。

   つまり、「年功を重ねれば自動的に賃金が上がる。そのしわ寄せが、子育て時代の後輩の賃金の原資を食うことになる」という論理の展開であり、「生産性を上げるのに、さして寄与しない年配従業員の賃金は下げて当然」ということにも連なる論理です。

  それは認識不足そのものです。また、そのことを吹聴している官僚がいるとするなら、実態を知らずのスズメです。しかし、頭の良い官僚が知らないはずはありません。意図的な吹聴と受け止めることこそ正しいと思います。もちろん経営者団体の側からすれば申し分のない政府見解ということになるでしょう。

  私はかつて民間労働組合の、しかも中軸の存在であった組織の賃金担当執行委員をしていました。1970年代ですから半世紀前ということになります。当時は、年功を重ねることにより、定期昇給も含め、自動的に収入増という賃金体系にあったことは事実です。しかし、オイルショックを前にした企業の原価低減策は、賃金原資の抑制を強く打ち出すものとなりました。それが「職能給」の導入と、賃金総枠に対する年齢給の逆転現象であり、労使の熾烈な対立となった時代でした。

  それが、次のような賃金形態への傾斜でした。本給(年齢給)< 職務給+能率給という形態です。

  賃金形態の中で、職能給は「資格」と「職務」と「職能」とに分解され、資格が上がらなければ職務も上がらない。「資格・職務」によって仕事(職能)も決まるという人事管理と結びつく賃金形態へと変化していったのです。労働者は、収入増を求めて上の資格を得ようとします。資格が上がらなければ上の職務に付けない。職務が変わらなければ低い定額の仕事で甘んじなければならない。賃金上昇は定昇とベースアップのみ。それさえも実現しなかったのが昨今の実態でした。

  当時の賃上げ闘争は、ベースアップを要求と同時に、企業が打ち出す、本給の比率を減少させる「職能給重視」の方針との対決でした。半世紀前のことです。当時の実態を知る立場で推測すれば、現在の民間企業の賃金形態は、年功序列賃金とは程遠い実態にあるといっても間違いないでしょう。「子育て労働者が、高い資格、職務を得る保障があるならともかく、子育て層の処遇改善などは真っ赤な偽りです」

  安倍首相の「年功賃金の見直し」を唱える背景には、労働者間の競争と分断、そして労働組合の弱体化をもくろむものと見抜かなければなりません。労働組合は、内部のとりわけ自社の賃金形態を隠すという保守性を持っています。しかし、安倍政権の主張に対し「現在の賃金は、年功序列の体系になっていない」ことを、悔しいことですが明確にする責任があるはずです。労働組合の反論を望むこと大です。