蟻取物語

蟻の採集や飼育に関する研究成果を、写真等を活用して公開する。

33 2006蟻道楽人ふじひろの5大ニュース

2006年12月31日 15時25分53秒 | Weblog
1 土生さんの掲示板に参加、
  蟻友と多くの有意義な情報の交換ができた。

2 5月、ケブカクロオオアリの
  ケース内ペアリングに成功した。
  40年来の努力が実を結び、感激ひとしお。

3 7月、日本蟻類研究会に入会、
  「2」のケブカクロオオアリのケース内ペアリングについて、
  その成果を発表した。

4 4月、鹿児島で、
  アメイロオオアリの初期コロニーを採集した。

5 8月、乗鞍高原で、50年ぶりに、
  ツヤクロヤマアリの脱翅雌と、
  ヤマクロヤマアリ(Q3)コロニーを採集した。

以上が私の2006の5大ニュースです。

蟻取物語を見ていただき有難うございます。
来年が皆様にとって、よいお年であることを、
お祈りいたします。

    ふじひろ  
  
  

32 越冬管理 ニシムネアカオオアリ

2006年12月30日 12時04分44秒 | Weblog
ニシムネアカオオアリ
オオアリ亜属。九州、四国等に棲息する。
ムネアカオオアリとの違うところは、
前胸部が真黒であること、一点に尽きるようだ。

ニシムネアカオオアリは、
日本では、比較的暖かい地方に棲息しているためか、
越冬時には仮死状態にはならないようだ。
光を当てると、ムズムズと動き出す。

あまり科学的な見方ではないが、
ムネアカオオアリと比べ、
より野生的な雰囲気を漂わせているように見える。
女王蟻の胸部背面の黒色とか、
腹部の蜂のような長い線形とかに。

また、大型ワーカーが羽化した時の前胸部であるが、
ムネアカオオアリにおいては、やや白っぽいのに比し、
ニシムネアカオオアリでは、すでに真黒である。
胸部全体が白っぽいので、その色彩のコントラストは、
一段と鮮やかである。

来年は、ニシムネアカオオアリとムネアカオオアリの相違点を、
実体顕微鏡を用いて、解明していくつもりである。

  ふじひろ   


30 越冬管理 緊急事態

2006年12月27日 11時21分22秒 | Weblog
昨夜は激しい雷雨。
今日は18℃まで気温が上昇する予想。
越冬管理が危機に。

とりあえず、   
今日は亜高山地帯のアリをインキュベーターで5℃管理することに。
18℃管理していたクロナガアリ2蟻巣を、
インキュベーターから出し、日当たりの良い場所に移す。
インキュベーターを5℃に設定、
カラフトクロオオ、ケブカクロオオ、ムネアカオオ、
ヤマクロヤマ、ツヤクロヤマ、アカヤマを、
収容した。

夕方、温度が下がる予想なので、
その時点で元の状態に戻すこととする。

          ふじひろ   

28 越冬管理 カラフトクロオオアリ

2006年12月26日 15時14分05秒 | Weblog
仮死状態のカラフトクロオオアリ
 
12月に入ってから、インキュベータに入れて、
1日につき1℃づつ下げていった。
1℃迄下げたところで、仮死状態になった。

カラフトクロオオアリ
オオアリ亜属
標高1700から1800mの針葉樹林帯に棲息する。
体色は黒、ツヤがあり美しい。
樹木中に営巣する。
飛行は7月下旬から8月上旬。
コロニーの活動期間は、6月下旬から9月上旬頃か。
梅雨明けまでの期間に、
コケを材料にした餌場までの蟻道を地上につくる。

30年前から、脱翅雌を採集、
コロニー化を進めるも、東京近郊ではコトゴトク失敗。
そこで、10年前からインキュベーターを使い、
温度管理をするも、やはりダメ。

失敗の最大の要因は越冬管理にあると、判断した。
すなわち、仮死状態で越冬することが、
正常な生態リズムを確保することの要件であると。

来春の覚醒が正解を出す。

               ふじひろ   



27 越冬管理

2006年12月25日 14時44分51秒 | Weblog
蟻飼育成功の成否は、
私の永年の経験から、給餌管理と越冬管理にあると思っている。
特に、冬は蟻が活動しないため、
飼育管理を軽視してしまいがちである。
ワーカーが大量死したり、
春が訪れても女王が産卵しなかったりする。
この傾向は、オオアリ亜属に著しいので注意する必要がある。

秋、羽化し、越冬幼虫だけになっても、
充分な給餌の継続が必要である。
ワーカーが餌をとらなくなる迄、続けることが肝要である。
体中に脂質が不足すると、
越冬中に大量死することがある。
栄養状態が悪くなると、越冬幼虫を食べてしまうことがある。
自然死を春から、夏の終わりまで延ばすことが重要ポイント。
ワーカーの寿命は2年から3年であるから、
次世代のワーカーを誕生させるためにも、
欠かせない要件なのである。
また、越冬幼虫の存在は、
コロニー活動の原動力であるので、これも極めて重要。

亜高山地帯のオオアリ亜属の越冬は、
仮死状態にするというのが、私の信念。
それは、正常な生態リズムを確保するためである。
春になり、仮死状態から蘇ると、
生き生きと、活動的になる。
脱翅雌の場合では、産卵を開始する。
仮死状態にせず、越冬させると、
産卵の開始は認められなかった。
                   (続く)

              ふじひろ   

26 続「今後採集計画のある種」(後)

2006年12月18日 14時31分36秒 | Weblog
ハヤシクロヤマアリ
ヤマアリ属、普通種、体長5~7㎜
体色は黒、腹部背面にビロード状の光の光沢がある。
クロヤマより、大きくてキレイ。
飼育は、クロヤマからハヤシクロヤマに変えていくつもり。

ツノアカヤマアリ
ヤマアリ属、普通種
体長5~7mm、頭部後縁がくぼんでいる。
頭部と腹部は黒っぽく、胸部は赤い。
子供時代、北海道で飼育していた、懐かしいアリ。
再度チャレンジする。

ケズネアカヤマアリ
ヤマアリ属、普通種
体長4.5~7mm、後脚脛節外面に多くの立毛がある。
北海道東部に棲息、
西部に棲息するエゾアカヤマアリとは、
棲み分けているようだ。
研究対象としては惹かれるが、
東京近郊での飼育は難しいだろう。

タカネクロヤマアリ
ヤマアリ属
体長4~5mm、体色は灰色あるいは褐色かがった黒色。
胸部は赤みをおびる。
本州中部の標高2700m以上の高所に広く分布する。
日本での究極の寒冷地アリ。
東京近郊での飼育は事実上困難であるが、
採集できれば、
インキューベータを用いて、挑戦するつもり。

アシナガアリ
アシナガアリ属、最普通種
体長3.5~8㎜、胸部、脚が比較的長い。
ほっそりしている。
道具を使うアリとして知られている。
生態は面白いが、脱翅雌からのコロニー化は難しい。

サムライアリ
サムライアリ属、普通種
体長7mm、体色は少し褐色味を帯びた黒色。
大あごの形が鎌状。
クロヤマアリを奴隷にする。
毎年脱翅雌を採集するも、クロヤマアリへの寄生は失敗の連続。
来年は、2匹の雌を同時にクロヤマアリのコロニーに入れ、
サムライアリが多雌であることの証明に挑戦する。

                画像データーベース 参照

          
                  ふじひろ   


25 続「今後採集計画のある種」(前)

2006年12月17日 12時48分24秒 | Weblog
オキナワクロオオアリ
オオアリ亜属、極めて稀にみる種
体長7~9mm
体色は黒
魚釣島で確認
この種を採集できれば、オオアリ亜属完全制覇になる。

ケブカアメイロオオアリ
アメイロオオアリ亜属、沖縄では普通種
体長7~10mm、頭部、前胸に多くの立毛
アメイロオオアリとの混合巣をつくってみたい。

ツヤミカドオオアリ
ミカドオオアリ亜属、稀に見る種
体長7~13mm、体色は漆黒色
体色、体型が魅力的。奄美大島に棲息。

ケブカツヤオオアリ
クサオオアリ亜属、稀に見る種
体長4~5mm、胸部背面に立毛
ケース内ペアリングに挑戦してみたい種。
来春、長野に採集に行く予定。

ツヤクシケアリ
ツヤクシケアリ属、極めて稀に見る種
体長5~7mm、頭部と腹部は黒、胸部は赤っぽい
北海道丸瀬布昆虫生態館で、学芸員の方に見せていただいた。
すごく綺麗。採集意欲はケブカクロオオアリに匹敵する。

                      画像データーベース 参照

                 ふじひろ   



24 今後採集計画のある種

2006年12月15日 16時07分18秒 | Weblog
来年から下記の種のアリを計画的に採集していきます。

オキナワクロオオアリ

ケブカアメイロオオアリ

ツヤミカドオオアリ

ケブカツヤオオアリ

ハヤシクロヤマアリ
ツノアカヤマアリ

ツヤクシケアリ

アシナガアリ

サムライアリ

ケズネアカヤマアリ
タカネクロヤマアリ

               ふじひろ   

23 飼育中のアリ一覧

2006年12月14日 12時46分07秒 | Weblog
現在、飼育中のアリの種類を下記に列記します。

クロオオアリ
ムネアカオオアリ
ニシムネアカオオアリ
ケブカクロオオアリ
カラフトクロオオアリ(脱翅雌)

アメイロオオアリ

ミカドオオアリ

ヨツボシオオアリ

クロヤマアリ
アカヤマアリ
ヤマクロヤマアリ
ツヤクロヤマアリ

トビイロケアリ

クロナガアリ

エゾクシケアリ

トゲアリ(寄生中)

以上の16種類です。

               ふじひろ  

22 蟻研講演録ナンバー10「ケブカケース内ペアリング」

2006年12月08日 13時40分06秒 | Weblog
オオアリ亜属のケース内ペアリングについて、検討します。
まず雌雄の羽蟻、ワーカーを採集します。
雌は2匹以上、雄は10匹以上、ワーカーは50匹以上は必要です。
蛹を採集した場合は、羽化させます。
その時は、充分な給餌が必要です。
越冬させる場合は、温度は低くします。

ペアリングケース
サイズは標準的には、400㎜×200×200程度。
内部を観察出来るように、透明な素材のものを選びます。
通気孔があるものがいいようです。

人工蟻巣
サイズは90㎜×90×90程度。
木材でつくります。
上部が開けられるようにします。

時期
4月に入ったら、人口蟻巣に収容し、
ケースの中に入れます。
4月中は室内において、陽に当てないようにします。
この間は、充分な給餌に心がけます。
5月になったら、ペアリングに誘導します。
ケースを外に出し、陽のあたる場所に設置します。

ケース内温度
ケース内に日陰をつくり、小さい温度計を設置します。
ケース上部に遮光板を置き、調節することによって、
ケース内温度を25℃から28℃に維持します。

ケース内湿度
ケース内に湿らせたスポンジを入れておきます。
ケース内が温まると、ケースの側面が濡れますが、
そのままにしておきます。
羽蟻が翅をとられますが、
心配要りません。
ワーカーが助けて、夕方には蟻巣に運びます。
ケース側面に水気がなくなった時が、
最適な湿度状態となったと考えられます。

ペアリング臨界状態
何日か経過した後、
午後3時ころ、夕日がケース内に斜めに差し込むようになると、
ケース内が、ペアリングの臨界状態になり、
突然、ペアリングが始まります。
時刻、温度や湿度とその変化、陽光状態など、
ペアリングの引金を引く条件がケース内を満たし、
ペアリング行動の最適になった状態を、
「ペアリング臨界状態」と表現します。

ワーカーと蟻巣の必要性
私の経験では、ペアリングが開始するまで、
何日もかかります。
その間、休養と栄養補給が必要です。
羽蟻が何日もケース内で飛び回っても、元気なのは、
ワーカーと蟻巣があるからだと考えています。

これまでの10回にわたるレポートは、
今年岩手県で行われた大会において、
私が講演した時の手元の原稿です。
講演においては、時間の関係上、大幅に短縮して発表しました。



                     ふじひろ  




21 蟻研講演録ナンバー9「ケブカケース内ペアリング」

2006年12月07日 11時55分50秒 | Weblog
6月下旬にワーカーの羽化を確認出来た。

           参照「ワーカー羽化」

写真中央のワーカーを見ていただきたい。
体色は黒ではなく、羽化後の間もない状態であることが分かる。
ムネアカオオアリと比べ、色が濃いようである。
ケブカクロオオアリのケース内ペアリングが完全に成功した。
                      

12月7日現在、
1コロニー当たりのワーカー数は、
およそ60匹程度である。
今年は新ワーカーが40匹ほど誕生したようである。  
来年は、200匹コロニーを目指します。
最後に交尾を終えた雌は、
残念ながら、8月上旬に死亡した。
原因は不明である。

現在、2コロニーは冬眠中である。
                   

次回は、オオアリ亜族のケース内ペアリング技術について検討し、
この投稿のまとめとします。

                    

20 蟻研講演録ナンバー8「ケブカケース内ペアリング」

2006年12月06日 16時11分01秒 | Weblog
5月7日
朝、ケース内を見ると、
雌1匹が、翅をつけたまま、蟻巣から出ていた。
ケースごと、
28℃に設定したインキュベータに入れ、
10分ほどして、ケースを取り出すと、
雌は翅を落としていた。
蟻巣に戻る気配は無く、
ケースの側面を歩き回っている。

ケース内の2匹の雌を取り出して、
調べてみた。
あれほど過酷なペアリング行動の繰り返しにもかかわらず、
交尾を終えた雌は3匹とも、
傷もなく、元気で健康体であった。

      参照「脱翅雌」 

3匹の雌は、
それぞれ30匹ほどのワーカーを与え、
新しい人工蟻巣に収容した。

            参照「飼育蟻巣」

驚いたことに、
雄10匹はすべて健在であった。
自然状態では、雄は飛行すると100%死亡するが、
ケース内ペアリングでは、交尾後であっても、
生き残れるのである。

三つの人工蟻巣は、
大型の飼育ケースに入れ、本格的にコロニーの育成を開始した。
新女王の産んだ卵から、ワーカーが羽化すれば、
このプロジェクトは完全な成功となる。
5月10日には、卵がみられた。
卵塊も日々数を増し、5月中に幼虫も順調に成長した。
6月に入ると、蛹が見られるようになった。

                                             

 


19 蟻研講演録ナンバー7「ケブカケース内ペアリング」

2006年12月05日 16時02分02秒 | Weblog
5月6日、この日は、私、蟻道楽人にとって、
忘れられない特別な一日となった。
雌はあと2匹残っている。
交尾を終えていないはずだ。
翅がⅠ匹分しか落ちていないから。

この日もいつものようなスタートをきった。
ケース内の温度が上がると、いつものように雄が飛行を始める。
昼近くになって、蟻巣から雌の羽蟻が2匹が出てきた。
陽を浴びて飛行を始める。
期待に胸が高まる。

午後3時、
ついにその時がやってきた。
陽がケース内に斜めに差し込んでいる。
陽がやわらかくなってきているので、遮光板をはずした。
今までむやみに飛び交っていた雄が、飛行を止め、
翅を半開きにして、
つっかかるような姿勢で、セカセカと歩き始めた。
突然、
雄が一斉に他の雄やワーカーに交尾態勢を取り始めた。
動くものなら何でも、背後からしがみつき、
交尾をしようという感じ。
雄にしがみつかれたワーカーのとまどった表情に、
思わず笑ってしまった。

雌2匹は、少し離れた所にいたので、気がせいたが
やがて、雄と出会い、交尾が始まった。
雄が1匹の雌の側面からしがみつき、交尾が始まる。
雌も今までのような、避けようとする行動は無い。
雌は静かな姿勢をとっている。
交尾は5秒ほどで終わった。
その後も、他の雄が次から次と交尾をしかけてくる。
もう1匹の雌の交尾も、
同じように目撃できた。

はじめに交尾を終えた方の雌は、
丹念に、腹部の先端を嘗め回すと、
翅を落とし、さっさと蟻巣に戻ってしまった。
もう1匹の雌は、
ケース内に姿が見えなくなった。