蟻取物語

蟻の採集や飼育に関する研究成果を、写真等を活用して公開する。

20 蟻研講演録ナンバー8「ケブカケース内ペアリング」

2006年12月06日 16時11分01秒 | Weblog
5月7日
朝、ケース内を見ると、
雌1匹が、翅をつけたまま、蟻巣から出ていた。
ケースごと、
28℃に設定したインキュベータに入れ、
10分ほどして、ケースを取り出すと、
雌は翅を落としていた。
蟻巣に戻る気配は無く、
ケースの側面を歩き回っている。

ケース内の2匹の雌を取り出して、
調べてみた。
あれほど過酷なペアリング行動の繰り返しにもかかわらず、
交尾を終えた雌は3匹とも、
傷もなく、元気で健康体であった。

      参照「脱翅雌」 

3匹の雌は、
それぞれ30匹ほどのワーカーを与え、
新しい人工蟻巣に収容した。

            参照「飼育蟻巣」

驚いたことに、
雄10匹はすべて健在であった。
自然状態では、雄は飛行すると100%死亡するが、
ケース内ペアリングでは、交尾後であっても、
生き残れるのである。

三つの人工蟻巣は、
大型の飼育ケースに入れ、本格的にコロニーの育成を開始した。
新女王の産んだ卵から、ワーカーが羽化すれば、
このプロジェクトは完全な成功となる。
5月10日には、卵がみられた。
卵塊も日々数を増し、5月中に幼虫も順調に成長した。
6月に入ると、蛹が見られるようになった。