蟻取物語

蟻の採集や飼育に関する研究成果を、写真等を活用して公開する。

952 カラフトクロオオアリ(2-4) 生態

2012年06月30日 19時15分47秒 | Weblog
樹木、倒木内に営巣する。
実質子育て期間は3カ月ていど。それでいてコロニーは巨大化するし、大型ワーカーも生産される。
とにかく幼虫、サナギの成長が早い。
南関東のムネアカオオアリに比して、倍近いスピードで成長する。
野外観察の機会には恵まれていないので具体的には言えないが、食糧には不自由していないようだ。
夜明け近くから日差しが強くなるまでのあいだ、樹幹をワーカーの行列が続く。
水汲み作業のように見える。
腹部を膨らませているのは、樹液・甘露なのであろう。
亜高山帯には蝶、トンボ、バッタ、甲虫など食糧となるものが豊富だ。

カラフトクロオオアリの生息地帯はムネアカオオアリの王国でもある。
標準的には7月下旬に結婚飛行が行われる。
営巣環境が同じ両者がコロニー化を果たすには過酷な状況下にある。
ムネアカオオアリの初期コロニーをあばくと、
カラフトクロオオアリのワーカーが出てくることがある。
カラフトクロオオアリのメスが営巣に成功しサナギまで成長させたところで、
ムネアカオオアリのコロニーと遭遇し壊滅させられたためであろう。
限られた営巣場所をめぐって、壮烈な戦いがあることが予想される。
そこにカラフトクロオオアリが繁栄できない理由の一端がかいまみえる。

冬季は仮死状態になる。
5月に倒木中にいたコロニーは仮死状態のままかたまりになっていた。
カラフトクロオオアリを飼育するときには、重要なポイントになる。
昼夜の温度差が激しい。
夜は十五℃近くまで、下がる。
亜高山地帯の気候が、カラフトクロオオアリの生態リズムに重要な影響を与えている。

951 カラフトオオアリの考察(1-4) 生息環境

2012年06月28日 15時51分19秒 | Weblog
これからの記述は乗鞍高原での事例に基づくものである。

私が初めて乗鞍高原を訪れたのは1979年7月のことである。
それから30年間毎年のように通い続けた。
亜高山帯のアリの採集、生態観察のためである。
特にカラフトクロオオアリは、中心的課題だった。

まず、生息環境について記述しておく。
標高は1600~1700㎞。
植物は針葉樹林、熊笹など。
活動期間は6月中旬から9月中旬の間。
活動時の気温は15℃から27℃(昼夜の気温の差が大きい)
結婚飛行は7月梅雨明けの晴れた日
樹木の根もとに巣口があることが多い。

945 2010カラフトクロオオアリ 羽化

2012年06月13日 11時20分10秒 | Weblog
2010年7月、乗鞍高原で採集したオオアリ亜属の脱翅メス。
カラフトクロオオアリかムネアカオオアリか、判別がつかなかった。
昨年ムネアカオオアリのサナギを導入、
今年になって、初めてワーカーを得ることができた。
まだ、体色が定着していないが、
カラフトクロオオアリに間違いないだろう。