蟻取物語

蟻の採集や飼育に関する研究成果を、写真等を活用して公開する。

638 新黒化ムネアカオオアリ考 2

2010年01月28日 15時10分54秒 | Weblog
一般的にムネアカオオアリのコロニーに他のコロニーのサナギを導入し羽化させてみると、そのワーカーはコロニーの一員として迎えられる。
そこで、黒化ムネアカオオアリのコロニーにムネアカオオアリのコロニーのサナギを導入するとどうなるであろうか?
同一種ならば羽化後ワーカーは構成員として円滑に生活するであろうし、そうでなければ混乱が起こるであろう。
07年から08年にかけて、この実験を試みた。
07年夏黒化ムネアカオオアリのコロニーに、ムネアカオオアリのサナギ40匹ほど導入した。
サナギは羽化し、黒化ムネアカオオアリのワーカーとムネアカオオアリのワーカーは混乱することもなく、無事に越冬に入った。
翌春黒化ムネアカオオアリ女王は大量に産卵し、ムネアカオオアリワーカーは順調にサナギまで育て上げた。
ところがサナギが羽化すると、ムネアカオオアリワーカーが食べ始めたのである。
栄養状態の良い環境下での同一種の間柄では起こりえない事態である。
ムネアカオオアリワーカーと黒化ムネアカオオアリワーカーの間に、種固有フェロモンの相違があるに違いない。
両者の衝突が緩慢なのは両者が近縁の証であるようにも思える。

はたして黒化ムネアカオオアリはムネアカオオアリなのであろうか。

参照 (438 2008成果 養女作戦)

     ふじひろ  

637 新黒化ムネアカオオアリ考 1

2010年01月27日 10時59分59秒 | Weblog
画像は冬眠中の黒化ムネアカオオアリのコロニー。

北海道、日本アルプス山系などに生息している胸部が黒いムネアカオオアリについての調査結果である。
私がこのアリと初めて遭遇したのは、今から30年前、乗鞍山系においてである。
カラフトクロオオアリと同定した脱翅メスから、
胸部前節に仄かな赤味をさすワーカーが出た時である。

それ以後、亜高山に生息するカラフトクロオオアリ、ムネアカオオアリの調査を続けてきた結果、下記のいくつかの調査事実が確認できた。
1 調査地域での黒化ムネアカオオアリの生息地には、すべてカラフトクロオオアリが生息していた。
2 黒化ムネアカオオアリのワーカーは、カラフトクロオオアリ、ムネアカオオアリのメスいづれからも出る。
3 カラフトクロオオアリ、ムネアカオオアリいずれとも判断できない脱翅メスを採集することがある。
4 カラフトクロオオアリ、ムネアカオオアリの結婚飛行の時期は同一である。
 
 ヤマアリにおける混血と同じことが起きている可能性がある。