『お天道様は見てる 尾畠春夫のことば』
この本、オススメします。
尾畠さんの屈託ない笑顔の裏には幾重にも重なる苦労や父親との関係、そして人情があったのですね。
人知れず味わった孤独感や極貧。それでもたくさんの人に救われてきた。
店を持つためにひたすら貯金に励んだ数年間。子どもを大学に入れて独立した暁には、この恩を社会に、そして自然にお返ししたい…とずっと思っていたそうです。ここが凡人ではないところです。
彼の願望はブレていない信念のもとにすべて成し遂げられています。
この本は、人に必要なのは学識ではなく、知恵であることが余すところなく示されています。
この本を読みながら実父を思っていました。
私の父は高校の先生から税理士になり、後に公認会計士となりました。
私が生まれた頃は豊かな時代でしたので、衣食住に苦労することは一度もありませんでした。
時折話す父の子どもの頃の苦労話は自慢話にしか聞こえなかったし、子どもを偏愛する性格をややもすると疎ましく思っていました。
独立独歩で財を成した父は怖いものがないように振る舞っていましたし、父は父母への尊敬の念も薄かったのです。
そんな父の喋った切れ切れの記憶が尾畠さんの半生を見て繋がったのです。
尾畠さんは末っ子。
口減らしで奉公に出され、中学校卒業とともに奉公を終えて、ひとり路頭に迷ったのです。
私の父も口減らしで奉公に出されたと聞いています。床屋さんだったとか。あとからわかったことですが、育ちの良い母は、子どもの頃、親戚のおじさんに連れられて、この店に行っていたそうです。そして丁稚奉公していた父を見ていたのです。
「目のクリクリした可愛い男の子がよく働いている…」と思ったそうです。
母は父より3歳年下。その頃から縁があったのです。
父は、大人になったら店を持とう。店を持ったらもっとこうすれば儲かる…と思ったそうです。
父の実父母は夫婦仲が悪く、特に母親は情が薄い人だったようです。
私たち孫にはそれほどではなかったのですが、父は子どもの頃から母親に抱かれた記憶がなく、ずっと心を通わせることなく99才で祖母は亡くなりました。
母は優しい人でした。
危篤の知らせを受けて九州の祖母の病院に両親がお見舞いに行ったとき、俄かに持ち直した祖母の第一声は「照子さんは?」だったそうです。
父は苦笑いしたそうですが、内心は嬉しかったのではないか?と今更ながら思うのです。
私もいつかはあの世に旅立ちますが、あの世では、「あの時、分かってあげなくてごめんね」なんて言わなくても無言で分かり合えるのでしょう。
尾畠さんの本を読んで、父への感謝の気持ちが起こるなんて不思議です。
この本に出会えたのは神谷立子さんのお陰です。
私は夫とは18歳で出会っています。初対面でピピっときました。(笑)
本との出会いも偶然ではなく必然なのですね。
尾畠さんの今までの沢山の経験から生まれた、誰のマネでもない宝物のような1つ1つの言葉が心にぐいぐい響きます。マスコミが取り上げるずっと前から、世間の物差しではなく自分の良心にそって生きてきた人。
今だからこそ沢山の人に読んで頂きたいです。
私はお腹の底からジワッと熱くなり元気が出ました。
尾畠さんの魅力(人間力)は誰をもノックアウトする本物だけが発するパワーに溢れています。
その人生はカルマ・ヨーガそのもの。
力強くお勧めします!