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会話「会話は心の元気の総合ビタミン」周りを元気にするキーワード解説その3

2018-09-27 | ポジティブ心理学
会話「会話は心の元気の総合ビタミン」

●たかが会話、されど会話
この年になると、人と話すことがかなり減ってきます。とりわけ、大学の教員は、研究室があるので、誰も来なければ、一日まったく会話なし、といこともしばしばです。さらに、家では、1人。まったく会話ありません。あらためて会話不足の自分に驚かされます。

それもあってか、最近やけに会話のことが気になります。とりわけ、女性の会話上手がうらやましくてなりません。
テニスコートにいくと、ゲームを待っている間、楽しそうに会話しているのは女性どうしだけ。男は、お互い離れて座り黙ってゲームをみているか、順番がくるまで一人散歩です。
話すように作られている女性脳と、勝つことを志向するように造られている男性脳との違いなんて話もどこかで聴いた気がしますが、確かに、遺伝的な性差の一面ではないかとつい思ってしまいます。
しかし、これほどいろいろ意味で大切な会話。女性の独占物にしておいてよいわけはありません。
心の元気づけという点で、すこし考えてみたいと思います。

●会話の4つの機能
一つは、心の中に溜まっていた思いを吐き出させる「カタルシス機能」です。話してすっきりした、聴いてもらってありがとう、という気持ちにつながります。

2つは、「親しみを高める機能」です。会話の頻度と親しみとはほぼ比例関係にあります。
 
3つは、「情報交換・収集機能」です。うわさ話からビジネス上の情報交換まであります。

4つは、「発想触発の機能」です。話しているときに、あれこれさら発想が触発される機能です。

これで終わりとしたいところですが、精神科医・斎藤環氏によると、会話にはさらに、治療的な機能もあるようですので、追加しておきます。
「妄想は、モノローグによって強化され、ダイアローグによって解放される。

いずれにしても、会話は「仲間を元気にする」だけでなく、「頭」「気持ち」も元気にする、まさに総合的な機能をもっていることになります。

●気持ちをすっきりさせる会話のコツ
話すと気持ちがすっきりするのは、どうしてなのでしょうか。
 
気持ちは、普段はストレートに表に出してはいけないことになっています。腹が立っても、ぐっと抑えなければなりません。うれしくて舞い上がっても、それを素直に表現してしまうと仲間からひんしゅくをかってしまうこともあります。
 
気持ちの表出には、ほどほどの抑制が求められます。だからこそ、たとえば、酒席や晴れの席、あるいは一人のときなどでは、「どうぞ、ご自由に」となります。
 
あるいは、気持ちの言語化をします。気持ちを言葉にするわけです。そのための語彙がたくさんありますね。
ネガティブのほうなら、「悲しい、つらい、凹んだ、――――」
ポジティブなら「楽しい、うれしい、気持ちいい、――――」
 
言語化することで、気持ちの世界に閉じ込められたエネルギーが知的世界に転化されます。そして、暴れ馬が御者の手綱裁きによって動くような感じになります。感情の知性化と言われています。
 
言語化にも、内向きに行う場合と、外向きに行う場合とがあります。いずれにも、カタルシス機能があります。暴れ馬のたとえを使うなら、御者の制御のもとで、馬場を動き回るようなものです。
 
内に向かう言語化の典型が、日記です。日記に、思いのたけを書く、あれです。
 
外に向かうのが会話です。
 
会話をカタルシスとして機能させるためには、いくつかの工夫が必要となります。
①聴き上手をみつける
 会話は相手があってはじめて成立します。ましてや、自分の思いのたけを受け止めて気持ちすっきりとなるためには、それなりの相手でないとうまくいきません。
 それになりの相手とは、聴き上手ということになります。
あなたの言うこと(思い)を、じっくりと共感的に受け止めてもらえる相手です。
自分の場合は、妻がそんな存在だったときがあったように思います。
 あなたの場合は、どうでしょうか。

②自分が聴き上手になる
 聴き上手の相手を求める前に、自分が聴き上手になってしまうこともあります。それが、相手に聴き上手の大事さを実感してもらえることになります。会話は、相互的なものです。相互的であることを無視する会話をする人が結構、多いのも事実です。できれば、そういう人は避けたいですね。
「賢さは聴くことに由来し、後悔は話すことに由来する」なんて格言もあるくらいです。
あるいは、先日のNHKラジオ「ぼやき川柳」でこんなものがありました。
お題は、「奇跡」。
「おばさんが、今日は静かに聴いている」。
このおかしさ、わかります?

傾聴という言葉は聞いたことがあると思います。カウンセリング場面でカウンセラーに必須の技術です。ここまでできれば言うことなしですが、傾聴ばかりも疲れます。

●親しみを増す会話のコツ
①会話の親しみの機能は、初対面でから発生している
前後左右、見知らぬ人に囲まれたところに着席したとして、すぐに隣の方に挨拶ができますか。
あるとき、これをしなかったばかりに、食事中、ずっとだんまり、気詰まりな時間を過ごしたことがあります。
すぐに自己紹介、そして、一言追加、これが初対面では必須です。

②秘密を話す
「実は、――」は、親しみを確実に増します。
自己開示と呼ばれているものですが、一種の秘密の共有です。会話の楽しみの一つでもありますね。
うわさ話もこの類になりますが、一番は、自分のことを開示するものです。
自慢話もありますが、これは、要注意です。むしろ、「実は、この前、振り込め詐欺にあいそうになってね」といった類の失敗話のほうが、親しみを増します。

●頭を元気にする会話のコツ
会話の3つ目、4つ目の機能は、会話のもっている知的機能です。
もちろん、ここでは、これまで述べてきた会話とは、内容が違います。

知的内容です。たとえば、
・ 夕べ読んだ本の感想
・ 今気になっていること
・ 日本の政治についての意見
テーマはいくらでもあります。
こうした知的内容について、あなたはどれくらい仲間や家族と会話しているでしょうか。
あるいは、そもそも、こうしたテーマについて、問いかける仲間や家族がどれくらいいるのでしょうか。
多くは、こういうテーマについては、議論、討論の範疇になります。ことあらためて、たとえば、会議の場でやることになります。
しかし、その手前で、お隣さんとちょっと休憩のときに会話してみる、ということもあってよいのではないでしょうか。
やや「重い」会話になります。会話の暗黙のルールからすると、やや違反めいたところがあります。しかし、そこから発想のヒントが得られたり、解決の糸口が得られたりすることがあります。
我々研究者にとって、学会の場がこうした役割を果たしています。

最近では、facebookやtwitterの活用もありかも。ただ、これは、あくまで会話の補助的なものとの位置づけですね。
最後に、日経Associe onlineロジカルシンキングの達人になる」からの1節を引用にして終わりとします。

「たとえばその時の仕事について、何か物足りなさを感じ始めているけれども、何がしたいのかまではよくわからないといった時。こういう時に適切な人と話すと、心の中のあちこちに浮遊している問題意識や思いつきなど「やりたいことの素」が動き出します。そして話している間に、あるいは話し終わってしばらく一人で考えた頃、あっちでくっつき、こっちでくっつきして形をなし始め、やがて「そうか!」と何がしたいのか見えてきます。」(高橋俊之)

さらに、こんなことを言う人もいますので、参考までに。
「普段顔を合わせている人との雑談からは、なかなか新しい発見が生まれにくい。」(ルイ・パスツール)


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