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「おれおれ詐欺の心理テクニックと被害防止策」

2018-06-07 | 安全、安心、


朝日新聞朝刊生活欄04/10/8日付け許可済み

「おれおれ詐欺の心理テクニックと被害防止策」

****は海保の書き込み(心理学的解釈)***で



 受話器を取ると、相手は、落ち着いた声の男性だった。

 「今野道代さん_仮名_のお宅ですか。品川警察署の者です」

***警察という権威をよそおうことで、話しの信頼性を高め、さらに相手より心理的に優位に立つ



 9月中旬の平日午前_時半ごろ。小平市の主婦今野陽子さん(?)_同_は、自宅にかかってきた警察の電話で突然、次女(?)の名前を聞かされ、驚いた。

 「本日、板橋区大和町の?号線で、道代さんの車が接触事故にあいました」

**「、娘の事故」と聞いただけで、母親は認知的にパニック。頭真っ白、目が点。正常な思考、判断ができなくなる。



「エッ、道代は?」

 「これから順序立ててお話します。お気持ちは分かりますが、落ち着いてよく聞いてください」

 《道代はどうなっているのか、私はそれをまず知りたかったのですが、相手はたたみかけるように話を続けてきました》

***「たたみかけて」一気に自分達のペースにのせる。そのために、最もらしい物語りを聞かせる。

***思い込み対策その1「疑問は、ともかく口に出して聞く」(思いの外化に寄る調整)




 「相手は自転車に乗っていて、ハラダカツヨさんという?歳の女性です」「道代さんは会社やお友達に連絡するより、まずは実家の連絡してくださいとのことでしたので、ご連絡しました。お母様ですね?」

 「はい」

 ***「疑問を口に出させないように、すぐに答えられる質問をしてくる」



《相手の説明に、はいはいとこたえるしかありませんでした。ただ、道代は車の運転が好きではありません。話を聞きながら、半信半疑でした》

 「道代さんはムライアイコさんの白いバンに乗って運手していたそうです。アイコさんはお友達ですか、同僚の方ですか。アイちゃん、と呼んでいるそうですが」

 「アイコさんは同乗していたのですか?」

 「今は分かりません。道代さんは、アイコさんをかばっているのか、お話しません」

 《聞いているうちに、本当に道代が運転していたのだと思い始め、だんだんドキドキしてきました》

***すでに架空の思い込み世界に入り込んでいるる。ここまでくると相手の言うがまま。



「もう一度、詳しく話を聞かせてください」

 

**ここで、ともかく理由をつけて、一旦、電話を切るのが一番。(思い込み対策その2は、「現場から離脱すること」)



「私は警察の者でお知らせをしています。今後は、検事からお聞きくださって、相談してください」

 「ちょっと待って。道代はどこにいますか」

 「品川の簡易裁判所の拘置されています。相手のハラダさんが東京海上火災の国選弁護人を雇われたので、電話を代わります」

 陽子さんの耳に、遠くの方で、「今野道代さんのお母さんです」と電話を代わる声が聞こえた。電話口に出てきたのは、警察官と同じ高めの声音で、やはり穏やかな口調の男だった。

**電話の持っている不透明性を逆に利用して、真実性を装っている

**権威の構造をみせてさらに心理的に優位に立つ。また、人をかえることによって、物語りの迫真性を作り出す。



「弁護士のナカヤママサシといいます。道代さんはとても優しく、まじめな方で、大変なショックを受けています。お気の毒です」

***「お気の毒です」の一言で、感情的な一体感さえ持つようにしてしまう。



 そうして、次のような説明を始めた。

**物語は、細部の正確さや矛盾を隠してしまう効果がある。



道代さんは制限速度で走っていたが、自転車に乗ったハラダカツヨさんが横断歩道でないところを飛び出してしまった。幸い、車の正面ではなく横にぶつかったので、大けがではなかった。倒れただけだった。道代さんが車の窓を開けて「大丈夫ですか」と聞き、ハラダさんは「大丈夫」と答えた。道代さんは車から降りず、そのまま去った。

 しかし、実は女性は妊娠6カ月で、縁石におなかをぶつけたため、念のために病院へ行った。すると流産だった。本人には本当のことは知らせていないが、夫は大変ショックを受けている。結婚して4年目で待ちに待った赤ちゃんだったらしい。夫は、「妻も悪いが、心からの謝罪をやっていただかないと困る」と言っている||。

 《女性が妊娠、と聞いた瞬間に、私の頭は真っ白になってしまいました。相手が道代と同じ?歳、ということも、ますますひとごとでないと思わせました》

 ナカヤマの話は続いた。

 「道代さんに非はなかったとはいえ、車から降りず、走り去ってしまったのでひき逃げになります。過失致傷で6年の刑が執行されます」「裁判は第一審、第二審というのがありまして、今日が第一審です」

**法律用語はめくらましとしては最適。ある程度は意味がわかりるが、かといって本当のところはわからない。何か大変なことが起こりそうとの予感を持たせるのに効果的。さらに、そんな言葉をあやつる人は権威の象徴のように思えてしまう。

これも心理的に優位に立つ仕掛けの一つ



、ほん《ずいぶん急展開な話、とは思ったのですが、すでに気が動転していますので、問いただすこともしませんでした》

 「ただ、ハラダさんが、もし道代さんには過失はないと認めれば、?日間の拘留で済みます。けれども、道代さん側が保釈金を払えば、今日、出られます」

 《話を聞いてすぐ、道代が最近出張から帰ってきたばかりで、今仕事から手が離せないほど忙しいと言っていたのを思い出しました。また、会社に知られたら良くないとも思い、今日のうちに、と思いました》

「おいくらですか」

 「200万円です。出せますか?」

 「はい」

 「現金ですか、振り込みですか」

 「現金を直接、そちらへ持っていきます」

**「直接持参」は相手にとっては、困ったとなります。、今野さんは、これで冷静になるための時間稼ぎができます。



「第一審は?時半にあります」

 「もう?時近くで、そちらへ向かうには、2時間近くかかります」

 「お宅はどちらですか」 「小平駅です」

***時間切迫の状況を作って、思い込みから脱出できないようにする。

***思い込み対策その3「対応する行為をするのに、間合いを入れる」)



「それは無理ですね。それでは、電車に乗られる前に、こちらへ電話をしてください。私の連絡先は、(携帯電話の番号)。お金は、普通預金から出されるのですか?」

 「定期預金です」

 「普通預金ではだめですか」

 「お金がほとんど入っていません」

 「いくら残っているのですか?」

 「……」



**多額の現金の引き降ろしがすぐにはできないようにしておく。

***思い込みい対策その4(リスクのある行為は、やりぬくくしておく「フールプルーフ化」)



《このやり取りのあたりでさすがに、どうもおかしいな、と思い始めました》

 「では、お金を降ろしたら、連絡をください」

***これ以後の対応は、夫への「連絡」と「活用」が遅かった以外は、適切。



電話が切れた後、陽子さんは急いで道代さんの名刺を探し出し、道代さんの職場へ電話をした。

 あいにく、道代さんの姿は今見あたらない、とのことだった。道代さんの夫に連絡し、状況を話すと、そんな話はおかしいですよ、と笑われた。念のため、地元の警察署に電話をかけ、板橋区大和町に事故があったかどうか、品川の拘置所に道代さんがいるかどうか、調べてほしいと頼んだ。

 2階にいた夫が、1階で陽子さんがバタバタしているのを聞きつけて、「どうした?」と聞いてきた。

**もっと早く夫を呼ぶべき。

**思い込み対策その5(人の助けをかりる「助けられ上手」になる)



《けれども、すっかり私は慌てているので、「ちょっと待って」とこたえるので精いっぱいでした》

 すると、ナカヤマから、前の電話から5分を待たずに、次の電話がかかってきた。

 「定期口座ですと、お金を降ろすときに銀行から理由を聞かれます。このように(内容覚えておらず)理由をこたえてください」

 その後、すぐに地元の警察から電話があり、板橋区の事故も拘置所の件も、実際にはない、とのことだった。

 5分後ほどに、再び電話があった。「ハラダというものです」。被害者の夫を名乗った。「待ちに待った子どもだったんです。謝罪をしていただきたい」。泣き声だった。

落ち着きを取り戻した陽子さんは初めて、その演技臭さを感じた

***「道代と連絡がとれました」と一言いって、電話を切っておしまい。(取材は朝日新聞東京本社生活部 山田 史比古)



「おれおれ詐欺や架空請求書詐欺を支えるIT技術」

・携帯電話 足がつかない/仮想世界をつくり出しやすい

 対策 プリぺード式を廃止する

・ATM いつでもどこでもお金を振り込める

 対策 一定額以上の振り込みには手間ひまがかかるようにし    ておく

・個人データベース ターゲット層を簡単に絞り込める

 対策 名簿販売の禁止をする 



いずれの対策も、自由な経済活動とのバランスをとるのが、難しい。しかし時限立法で被害を食い止める即応性がこれからの政治と行政には必要。もぐらたたき戦術しか、当面はない。

 膨大な資金が暴力団や犯罪集団に流れているのを放置したままという政治や行政や警察にも納得がいかないものを感ずる。石原都知事のこわもて対策が歌舞伎町を静かにしたそうだが、その気になれば一定の効果のある施策ができるのだ。安全に守ってくれるということを高い税金を払って国民は行政と政治に付託しているのだということを自覚してもらいたい。

 無視すればよいだけでは太刀打ちできない。相手はプロの犯罪集団なの

振り込め詐欺の被害者にみる日本人のメンタリティ(心性)

1)母子密着

 アメリカで活躍していて20年ぶりくらいに帰国したある教授によると、こういう詐欺事件はアメリカでは聞いたことはなかったし、起こり得ないのではないかという。

 その理由は、2つ。

 一つは、母子分離がきちんと出来ているので、成人した子供の尻拭いを親がすることはありえないというのが理由の一つ。

 もう一つは、金銭決済の方式が小切手なので、お金が決済されるまで時間がかかるというのがもう一つの理由。

 後者の理由は、こうした詐欺事件が多発したら、銀行側でとるべき対応のヒントになるはずだが、その気配はまったくない。

2)リスク感覚の欠如

 関西人は、この詐欺にあまり引っ掛らないらしい。

 また、もっぱら、専業主婦が被害者になる。

 そこには、リスクに対する感受性の欠如があるように思える。

 100万単位のお金の振り込みには、崖から飛び下りるようなリスクがあると思うのだが、いかに大切な人のためとはいえ、いとも簡単に振り込んでしまう。

 商売をしている人なら、そんなことはまずありえない。金銭の移動に関しては最大限のリスク感覚を発揮するように習慣づけられているからである。

 その点、関西人は、商売人ならずとも厳しい金銭感覚、さらには、”ホンマカイナ-”に見られるようなリスク感覚を身に付けているので、詐欺師も警戒しているのかもしれない。

 関連して余談を一つ。

 インターネットショッピングがかなり普及しているようだ。一体、買う人は、どれくらいのリスクを見込んでいるであろうか。あるいは、どのようにしてリスクを計算しているのであろうか。詐欺行為も多いのに。とても恐くて自分では手を出せない。



振り込ませ詐欺;なぜ何度も振り込んでしまうのか」

 セールスなどの技法の一つに、「段階的要請法」というのがある。小さいことをまず受け入れさせてから次第に大きなもの(本物)を買わせるのである。まず低い障壁を越えさせるのである。

 昨日の新聞には、28歳の女性が、12回にわたり、1200万円を振り込んだ詐欺が報道されていたが、そのテイクニックがまさに段階的要請法だった。心理学が悪用されたのかも。だったら、やはり、心理学で武装しないといけない。

 さらに巧妙なのは、電話してくるのを待つ手法。これも巧みなマーケッティング手法。懸賞応募やお問い合わせ手法と同じ。見事にターゲット絞りをお客のほうにさせてしまうのである。

 とうとう我々の大学関係者にも、架空請求書が来たらしい。警告が事務から回ってきた。

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