鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

白の女王がアリスの目の前で羊へと変化する(GLASS5-15)

2008-10-12 10:51:49 | Weblog
さてここでアリスは白の女王の後について小川を渡る。キャロルによる鏡の国の設定として小川を渡ることはチェスの新しい目に移ることである。かくて情景は一変する。
PS1: この情景の転換の様子をキャロルは上手に描く。以下それを見てみよう。

アリスが「女王様の指の怪我がまえよりベターになってるといいと思います」と言うと、女王が「とてもベター! much better 」と叫ぶ。彼女の声はだんだんと金切り声になっていく。「ベエター! Be-etter 」「ベエエエター!Be-e-e-etter 」「ベエエー! Be-e-ehh 」最後の言葉がまるで羊の鳴き声のようだったのでアリスはとても驚く。彼女は女王を見る。女王は突然、羊毛の中にくるまってしまったように見える。アリスは目をこすってもう一度よく見る。何が起きたか彼女には全くわからなかった。アリスは店の中にいる?そしてそしてカウンターの向こうに座っているのは羊?
 PS2:アリスの目の前で聴覚的に声が変化する。そして気づけば視覚的に女王は羊に変化する。アリスがいる場所も戸外から店の内部へと変わる。スムーズで不自然さがない情景の転換である。

 今やアリスは暗い店の中にいて肘をカウンターにつき、もたれている。彼女の前には年寄りの羊がいて、肘掛け椅子にすわり編み物をしている。そして時々編む手をやすめ大きな眼鏡ごしにアリスを見つめる。