
いまでこそあまり見ませんが、昔は夏の風物詩として夕顔棚はあちこちで見られたらしく、絵画、文学、芸能などによく取り上げられています。中でも源氏物語の夕顔は有名で、五条辺りのしもた屋に咲く花の名を尋ねる源氏に、女から返ったのは、香を焚きこめた白扇にのった夕顔と和歌で“こころあてにそれかとぞ見る白露のひかりそへたる夕顔の花”とあります。源氏と夕顔との出会いです。“よりてこそそれかとも見め黄昏にほのぼの見へし花の夕顔”源氏が返したたそがれにほの白く浮かぶ儚げな夕顔の名を持つ女は、ほどなく六条御息所とおぼしき怨霊にとりつかれ、夕顔の花のように短い命を終えます。やがてこの話は、能に取り入れられ「夕顔」「半蔀」となります。黄昏侍従という粋な別名もあります。
ユウガオ:夕顔(ウリ科ユウガオ属)はアフリカまたは熱帯アジア原産の、畑や人家で栽培される一年生のつる植物です。茎は5~10mにもなり、柔らかで粘質の短毛があり2分岐して他物に絡みつきます。雌雄同株で、花は夏、葉腋に単生し、ウリ類の花は黄色が多いのに対し白色です。花冠は5裂し、夕方咲いて翌朝しぼみます。
夕顔の花は、小袖、唐織、漆器、刀の鍔、浴衣に至るまで繰り返し紋様化されています。

一般人にとっては花より実が大事なのですが、清少納言は“いとおかしかりぬべき花の姿に、実のありさまこそ、いとくちおしけれ…”夕顔の名前も花もよいのに何でこんなに不恰好な実をつけるのかと嘆いています。はかない美か実用か、夕顔を見る人の感覚の違いでしょうか。
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