むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

サワヒヨドリ:澤鵯(ネイチャー誌にでた日本最古のウイルス情報) 

2014-09-13 10:01:26 | 植物観察過去ログについて


三重県上野森林公園の湿地にサワヒヨドリ:澤鵯(キク科フジバカマ属)が咲いていました。
各地の日当たりのよい湿地や湿った草地に生える多年草で、ヒヨドリバナに似て、ふつう湿地に咲くのでこの名があります。
高さは40~90cm、茎や上半部の葉には縮れた毛が多く、対生する葉は長さ6~12㎝、幅1~2㎝の披針形で、明瞭な三行脈があり、ほかの仲間に比べて葉が細く、葉柄がないのが特徴です。
8~9月、茎の先に淡紅色の頭花をびっしりと集まってつきます。
ところで、万葉集にでる孝謙天皇の歌に、ウイルスによるサワヒヨドリの葉の病変が出ているという研究が、科学雑誌ネイチャーの2003年4月版に掲載されたことでこの草が一躍話題になりました。
「天皇太后共 幸於大納言藤原家之日 黄葉澤蘭一株拔取 令持内侍佐々貴山君 遣賜大納言藤原卿并陪従大夫等御歌一首 命婦誦曰」という副詞に続くその歌は、
“この里は 継ぎて霜や置く 夏の野に わが見し草は もみちたりけり”  巻19―4268で
意味は、この里は、いつも霜が降りるのでしょうか。夏の野で私が見た草は、もう もみじ色でした。ということで、澤蘭(サワアララギ)は今のサワヒヨドリ、黄色くなった葉はウィルス病にかかった葉だというのです。このウイルスの正体は、植物に感染するジェミニウイルスの一種で、ヒヨドリバナ葉脈黄化ウイルス(Eupatorium yellow vein virus EpYVV)と名付けられているそうです。

鋭い観察眼でウイルス病を詠いこんだ1首が、1200年以上も後に、世界的権威の科学雑誌を飾ることになろうとは、とかくの批評もあった孝謙天皇(重祚して称徳天皇)としてもその成り行きに驚いているに違いありません。

参考:

ウイルス病になった類種ヒヨドリバナの葉

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