へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

住職さまは子煩悩

2015-08-26 14:42:41 | へちま細太郎

ことみよ須庭寺の。

百合絵さんに子供が誕生して、我が家もにぎやかになりました。
じじいにとってみれば、孫より若い息子の誕生となって、ぶっとびまくりだわ。
うちの5人の子供たちも、思わぬ赤ん坊の登場で、
「弟ができた弟ができた」
と、おおはしゃぎ。
いや、弟じゃないって。。。
年の若い、おじさんだって。。。
バカオヤジは年がいもなく、
「拙僧も上原謙に負けてないわな」
と高笑い。
誰よ、上原謙って、といったら、百合絵さんのお兄さんという、メインブラックのおとなしめバージョンの方が、
「それは、加山雄三の父親の俳優のことだな。妻の小桜葉子は岩倉具視公の曾孫である」
と、教えてくれた。知らんわ、そんな往年の昭和スターのことなんぞ。
「なあにが岩倉具視よ、貧乏公家え~」
と、義姉の尼さんは容赦なく悪口を言う。
まあ、自分のご先祖の第2代藩主の田吾作の悪口満載のロクでもない尼さんだから、まったくの他人は余計らしい。
息子誕生に気を良くしたクソじじいは言うに事欠いて、
「これは若死にした長男の生まれ変わり、ゆえに成人したら須庭寺を継がせる」
と、大宣言してしまった。
当然のことながら、うちのバカ亭主の顔が引きつる。
「あ?」
青筋がたって何か言いかけたとたん、
「僧は僧でも、我が母校の宗派に」
と、百合絵さんの別な後ろ襟のお兄さんとやらが口を挟んできた。
「清きままに、育つのもまた神の思し召しとして、是非我が神の手に」
「か~つ
クソじいいが、超大音量で「喝」と叫び、驚いた5人の子供たちが泣き出し、赤ん坊も火がついたように泣きだしてしまったのよ~。
「我が組の後継ぎと申し入れてあったはずだけどな」
と、百合絵さんのお父さんが割って入る。
何が「我が組」よ。近所の隣組のくせに、騙るにもほどがあるわ。
バカ亭主はバカ亭主で、庭で爆音とどろかせて出かけちゃうし、もういい加減にして
と、いう周辺の騒ぎもどこ吹く風の百合絵さんは、思わぬ年齢での出産にも関わらず至極健康体で、相変わらずの天然ボケで、大事な大事な息子のおむつを取り替えておりましたとさ。
ちゃんちゃん。
ほんと、あと継いで欲しい~。