へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

雪だるま

2014-02-05 20:51:24 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です

昨日の雪は、夜のうちにやんでしまった。
で、帰る前に降りしきる雪の中で、子供のように雪合戦をして遊んだ。
道路が凍結してしまう前に早く帰れと、一斉下校になり、ぼくたちはスクールバスのバス停前で大騒ぎをした。
もう、怒る先輩もいないからね。
でも、中学生が呆れたような視線を向けてきたのが痛かったな。
「雪だるま作っぺ」
たかのりが水分たっぷりの雪を丸めて、ぼくの顔に押し当ててきた。
「次いつ雪降るかわかんねえべ」
豪雪地帯の人が聞いたら、激怒するような発言をしてたかのりは雪をまるめ始まった。
「そうだなあ」
ぼくは、雪が舞い落ちてくる空を見上げながら、年に2、3回降ればいい雪を楽しみたかった。
「やろう」
ぼくは、たかひろやみきおたちのあとについで、雪を転がし始めた。気がつけば、バス停の前に集まっていた全員が、雪だまを転がしていた。
バス停の後ろの芝生がむき出しになり、あちこちにぶっかこうな雪だるまができていた。
ひときわ巨大な雪だまをみんなで持ち上げると、偶然隣にはるみがいた。
「おまえ、手袋してないのかよ」
「ぬれちゃうもん」
はるみはその細い指を赤くして、夢中になって雪たまを持ち上げた。
そして、完成された雪だるまにたかのりが顔をつくると、
「よし、できた。名前ははるみな」
と、はるみに向かっていった。
「何でよ~」
「おこんなよ、おめえ、今までだったらバカにして手伝ったことなかったろ。ごほうびだ」
へ~、たかのり、よく気がついたな。
「あ、ありがと」
はるみが照れてお礼いうなんて、明日も雪かもな。
雪だるまには、いつのまにかリボンが飾ってあった。
「かおりからもらったクッキーについてた」
たかひろが、彼女からもらったというクッキーの袋についていたリボンを雪だるまに飾ったんだ。
そうか、みんなあんなわがままでしょうもなかったはるみが、こんなに成長したことに、気付いていたんだ。
いつのまにか、おとなになっていくんだなあ。
ぼくは、ポケットからカイロを出して、
「ほら」
と、はるみの手に乗せた。
はるみは、ぼくの顔を見上げて、
「ありがとう」
と照れながら言った。
ぼくは、一瞬だけど、そんなはるみがかわいいと思った。

コメント (1)
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