へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

昔ならお国御前

2011-11-08 22:57:44 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

ショックで寝込んだ藤川先生は、高熱を出してしまい、
「このまま死んでしまいたい」
を連発しておばあちゃんをあきれさせた。
学校では野茂が、
「藤川先生、なんか言ってた」
と、陰でこそこそ話しかけてきた。
「ああ、今にも死にそうになっている」
嘘をいってもしょうがないから、ありのままを伝えた。
「ああ、やっぱりねえ」
野茂も心底困り果てている。
「いつもならおじいちゃんの冗談で笑って済ませられるんだけど、ご隠居さまのお声がかりらしくて」
と、ため息だ。
「冗談じゃないの?」
ぼくは野茂に聞けば、
「うん、昔からなんかねえ、うちからお国御前さまを出すんだって」
と意味不明なことを言う。
「お国御前さまってなに」
「ほら、殿さまってさ、ご正室さまは江戸屋敷におくでしょ?」
「うん、人質だってね」
「そう、で、参勤交代で国元に戻ってくると、国元用に側室がいるわけよ。ほら男の人って、何かと困るし、江戸のご正室さまや側室だって1年おきに離れ離れでは子供が生まれないでしょ。そういう場合に備えて国元にも側室がおかれるわけ」
「それがお国御前?」
「側室№1のこと。家同士の結びつきで結婚した正室とは違って、案外恋愛もあったから実質上の正室だったみたいだよ」
「へえ」
それが、なんで野茂が藤川先生と結婚する理由になるんだか、わかんないや。
「ほんとはねえ、私のいとこが結婚相手に選ばれていたんだけど、ほら、藤川先生、超ド級のヤンキーだったじゃん。で、いとこもレディースになっちゃって、で、別なヤンキーと結婚しちゃった」
「へ、へえ」
なんか、はでな人生だな。
「でもさあ、じじいどもの言いぐさが笑っちゃってさ」
「…」
「今は、すごい年齢差の結婚がはやっているから、そうしろって」
「だって、中学生だろうが」
「来年の誕生日がきたら籍入れろだって」

じじいども、何を考えてんだ?