◇ 先生の講話
1.永字八法の書き方(第5画の左払い)
前回説明した通り、左払いには直線左払い(掠:りゃく)と曲線左払い(啄:たく)がある。第5画の左払いは啄。啄は、掠のように起筆で入れた筆を一旦しっかり止めてからそれを起こして左下へ運ぶのでなく、起筆は軽く入りそのままスッと左下に向かわせる。したがって起筆下部のコブが掠ほどには出ない。 これを基本にして筆の動きはやはり8通りほどのバリエーションがある。 (注:点画の名称については下の「永字八法図」をご参照下さい。)
2.手本について
墨心誌にあるお手本を真似する必要はない。真似するための手本としては歴代の書家の書から選んで臨書することがベスト。臨書には二通りある。一つ目は、先ずお手本の上に半紙を載せ、字形の輪郭(中心線)を書いてからそれに沿って筆を走らせる。二つ目は最初から手本を見て、そのとおりに筆を走らせる(運筆する)。六段ぐらいの人が臨書するにふさわしい手本は「明末清初」の書。王羲之や顔真卿の書は左右対称のきれいに整った字形であるが、明末清初の字形はアンバランスであることが特徴。
3.草書の字形について
草書の字形は行書をさらに崩したものではなく、篆書の書き方から来たものとして、行書とは筆順や字形の違う「書」、「幸」、「隹」、「草」などを例に、草書体の字を白板に書いて説明された。 また併せてひらがなについて、特に「お」、「か」、「ち」、「ひ」などを筆で書く場合の字形は印刷活字の字形とは大分異なるので注意するように、との説明があった。
◇ 実技指導
6月の規定課題「祭酒楊師道」および各自の随意課題作品について、長時間にわたり朱書きによる懇切丁寧な添削指導が行われた。
◇ 配布資料
・「永字八法」各字画の毛筆字形表 ・かなの字源表 ・ひらがな50音字の毛筆お手本
(出席者8名)(荻野 記)