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米国製エリートは本当にすごいのか?

2011-11-26 11:28:53 | 書籍
米国製エリートは本当にすごいのか?
東洋経済編集部記者 佐々木紀彦氏による、米国におけるエリート養成システムを解説する著。「米国製」というのは「米国人」ではなく、米国においてエリート教育を受けた人たちが、今で言えば中国人や韓国人達も含むという定義です。

氏は、大学在学中にサマープログラムで、就職後に休職し大学院へと、計2回スタンフォードに留学した経験があり、その後の記者生活の経験や豊富な書物などを分析を加え、米国製エリート、米国の戦略や安全保障、それに対しての日本の今とこれからについてを分析する内容です。最後の方で、英語学習や留学の勧めが出てくるなど、前半の鋭く分かりやすい分析に比べると、最後が尻切れかつ、精神論的な結びになっているのが残念ですが、全体を通して、若い人の鋭い視点の面白い内容だと思います。

序盤、1章2章では、自らの経験やデータを元にアメリカの大学の実態を説明。曰く、講義内容は、日本の大学と変わらないが、講義以外でのインプット(課題)と、出すべきアウトプット(論文)が多いこと。多様性があること。そして勉強しかすることが氏の結論。また、優秀な学生の質や比率は日本の大学と同レベルだが、平均以上のエリートを生み出すシステムとも述べています。

中盤、3から5章では、日本が弱いとされている、経済、歴史、インテリジェンスについて、教育システムや思想形成や学生達の志向や取り組みかたについて解説。特に「歴史」については、歴史の短いアメリカだからこそ、他国を含め、歴史を学び、自らを知り相手を知り、歴史を作るという考えのもと、「コンシステンシー(普遍性)」、「サイクル(循環)」、「ノベルティ(新規性)」の3つの要素を分析。また歴史のみならず地理(いわゆる地政学)も重要であり、アメリカは隣(南北)を同盟国で挟まれ、エネルギー自給率、食料自給率も高く、人口も多い。つまり非常に恵まれた国土であること。ゆえに実は非常に内向きで、一般人は自国外のことはあまり知らないなんてことも解説しています。

最後に6章では日本のエリートについて述べ、本書を締めています。日本は欧州のように成熟化してきているので、留学生が減っていることを焦ることはないけれど、失われた20年からの浮上には、これまでにないリーダーが求められるため、そのためにも世界と伍していける若い世代が必要。だから若いうちに外に飛び出すことが大切だよ。と言うのが結論。そして、愛国心があり、バランスのとれたエリートが生まれることを期待します。と締めています。

最後の章は、以前紹介した、成毛眞さんの「日本人の8割に英語はいらない」と同じ話で、母国語で高度な教育が受けられ、内需もそれなりにある日本では皆が海外思考になる必要はなく、国を引っ張っていくリーダー(エリート)達がグローバルになれば成立するわけです。

ただ、単一民族国家である日本では多様性はなく、また国家感、愛国心を育てるのは、外に出て自分で感じることが大切です。

そういう意味で、日本の教育は、受験目的だったり、思い出作りの海外旅行ではなく、若く柔軟なときだからこそ、その必要性を理解させ、目的意識を持つということが重要だと思います。


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