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高度成長は世界都市東京から――反・日本列島改造論

2013-09-03 00:11:33 | 書籍
高度成長は世界都市東京から――反・日本列島改造論
HSBC証券、JPモルガン等で建設・住宅・不動産担当アナリストを勤め、現在は株式会社ジパングなる会社で経営戦略本部シニアアナリストの増田悦佐(えつすけ)氏の著書。人口密度が高く、労働・住環境が悪いと言われがちな東京が、実は世界で突出した高効率都市であり、これからの世界都市のモデルと成りうることをデータ等を踏まえ説明する内容です。目次は以下。

はじめに
第1章 21世紀のキーワードは都市化とエネルギー効率
第2章 都市化の背骨には、鉄道が必要不可欠
第3章 世界中の大都市は東京をまねるか、亡びるかの岐路に立たされる
第4章 製造業も物流も、サービスも小売もこれからが本領発揮
第5章 都市再生―何をなすべきか?
おわりに

本著の要旨は、日本、特に東京の鉄道ネットワークは世界に類を見ない非常に理想的なネットワークであり、また広くは北関東から瀬戸内にかけて続く太平洋ベルトを切れ間なく続く都市とそれを繋ぐ高速鉄道ネットワークのお陰で、日本そして東京は世界でずば抜けたエネルギー高効率を実現しており、これからも都市機能の発達を促しつつ、それにより地方も効率的なシステムを作れるはずだという内容。

日本、特に東京の交通網のまさしくネットワーク性、定時運行、快適性(混雑さはおいておいて)、清潔さ、治安、サービス、多様性は世界に類をみないレベルだと思うし、鉄道事業に従事する身としては誇りに思えることです。

東京の都市機能、国際化、効率化等、経済競争力を考えれば、筆者の言う通り、東京の一極集中は理想的だと思うし、地方の効率化、事業の多様化も間違っていないと思います。但し、問題になっている山野部の荒廃や中国・韓国投資家による土地買収を考えると、国土の保全や安全保障という面を考えると、地方への配慮や投資の再配分、又は法整備は必ず必要だと思います。地方出身者としては。

ただ、いろいろなデータで東京の特徴を説明し、圧倒的に金持ちの多い都市だが、大金持ちは圧倒的に少ないことや、外資系が好きな赤坂界隈は働きづらい(笑)など、的を得ていて面白い分析。日本を良くしていくには、政治家や官僚が手出しをせず、民間に任せるべきと言うのはとても分かりやすい指摘です。

巻末にあるように、今の日本は世界のどの国も体験したことのない多様化を迎え、今後の世界のモデルケースになりうる存在なことは確かだと思います。それを活かし世界へ存在感を示しつつ、よりよい社会を作っていけるかは、我々世代の課題であり責任だと思います。