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日本はなぜ敗れるのか 敗因21カ条

2010-01-30 23:56:52 | 書籍

Nippon

吉越さんの著書でお勧めの本。自らもフィリピンに出兵し、捕虜収容所に収容された著者が、小松真一氏がリアルタイムに残した『虜人日記』に記された、戦中の記録と日本の敗因21カ条を元に日本がなぜ敗れるのかを分析する著書です。過去形ではなく現在進行形なのがミソです。

敗因21カ条は、

1.精兵主義の軍隊に精兵がいなかった事。然るに作戦その他で兵に要求される事は、総て精兵でなければできない仕事ばかりだった。武器も与えずに。米国は物量に物言わせ、未訓練でもできる作戦をやってきた

2.物量、物質、資源、総て米国に比べ問題にならなかった

3.日本の不合理性、米国の合理性

4.将兵の素質低下(精兵は満州、支那事変と緒戦で大部分は死んでしまった)

5.精神的に弱かった(一枚看板の大和魂も戦い不利となるとさっぱり威力なし)

6.日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化する

7.基礎科学の研究をしなかった事

8.電波兵器の劣等(物理学貧弱)

9.克己心の欠如

10.反省力なき事

11.個人としての修養をしていない事

12.陸海軍の不協力

13.一人よがりで同情心が無い事。

14.兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついた事

15.バアーシー海峡の損害と、戦意喪失

16.思想的に徹底したものがなかった事

17.国民が戦いに厭きていた

18.日本文化の確立なき為

19.日本人は人命を粗末にし、米国は大切にした

20.日本文化に普遍性なき為

21.指導者に生物学的常識がなかった事

アウシュビッツを凌ぐ殺傷能力である、3000人を15秒で死に追いやると言う、バシー海峡の恐怖など、我々が知らない、知らされていない戦争の記録がたくさんあり、日本の太平洋戦争に関する報道の少なさが、非正確さを改めて感じることとなりました。

またこの本は、単なる戦争記録、戦争批判ではなく、現代の日本にも脈々と続く、日本人が失敗する資質を、戦争と言う特殊な環境下での事象、行動を例に、解説するものです。

本書は当然、戦中の日本軍、日本人に対する考察、分析、批評なのだが、読めば読むほど、今の日本企業、日本人に当てはまる箇所がほとんどで、吉越氏が経営者には読んでもらいたいと言う意味がよく分かります。

日本人は元来職人ゆえ、何事にも、論理的な分析がなく、長年の勘と腕で物を作り、上手く出来たら喜び、失敗したら精進がたりないとただただ作り直す。これは、ロシアに勝てば、日本人は素晴らしいと天狗になり、アメリカに負ければ、日本人はダメな民族だと完全否定することと同じこと。勝った時にも負けた時にもその分かれ目を検証し、次に活かしていかねばなりません。これこそ、小松氏の言う、「反省あって反省力なし」という指摘なのです。

まさに、日本にはプロジェクトマネージメントはなく、日本人にプロジェクトマネージャーはいないのです。だからと言って、欧米のプロジェクトマネージメントが万能だとは思いませんが。

さて、出たとこ勝負の体力勝負の、やりじまいの私ですが、そろそろ反省力を身につけ、しっかり人生のプロジェクトマネージメントをせねばなぁと考えさせられた、かなり奥深い本でありました。