劣化ウラン弾:国連が初報告 ボスニア「がん死亡率4倍」/毎日新聞

2008-10-05 20:08:32 | 世界
【ニューヨーク小倉孝保】国連の潘基文(バンギムン)事務総長が、「人体への悪影響」も指摘される劣化ウラン弾について、「使用の影響」に関する初めての報告をまとめたことが2日、分かった。19カ国と国連機関の意見を列記する形で、国連本部として現状認識を初めてまとめた。近く国連総会に提出する。毎日新聞が入手した報告によると「がんの死亡率が通常の4倍になった」「使用は国際人道法違反」との厳しい意見があった。総会での規制議論のたたき台になるとみられる。

 報告は「劣化ウラン弾使用の影響」と題し、昨年末の国連総会で劣化ウラン弾の影響調査を求める決議が採択されたことを受け、国連軍縮局が作成した。国連の求めに応じ意見を提出したのは日本、ドイツ、イタリア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどと、国際原子力機関(IAEA)、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)など。

 米国など安保理常任理事国やインド、パキスタンなどの核保有国、イラク、クウェートなど被害が疑われる国の意見はなかった。

 報告によると、ボスニアは、ボスニア紛争中の94年、米軍が劣化ウラン弾を使用した地域で住民を調査した結果、他の地域の住民に比べ「がんの死亡率が4倍になった」とし「調査が必要」と主張した。アルゼンチンは「使用一時中止を」、カタールは「禁止すべきだ」としたほか、セルビアは「使用は国際人道法違反」と批判した。

 一方、ドイツやスペインなど旧ユーゴスラビア連邦の平和維持に派兵した国は「帰還兵への調査の結果、健康への影響は認められない」と主張。日本は国際機関を通じた調査を注意深く見守るとの姿勢を示した。

 また、IAEAは、放置された劣化ウラン弾に住民が直接触れないよう規制すべきだと指摘。WHOは、報告件数が少なく結論が出せないとしたうえで、放置された劣化ウラン弾に子どもが触れて被ばくする危険に言及し、対策を求めている。

 【ことば】劣化ウラン弾

 原子炉や核兵器に使うため天然ウランを濃縮した後に残る核廃棄物「劣化ウラン」を弾頭に備えた弾丸。比重が大きく貫通する力が強いため、主に戦車や装甲車を攻撃する際に使われる。着弾時に微粒子が拡散し、がんや白血病などの健康被害が生じる▽燃焼時にも微粒子が飛散し、大気や土壌が汚染される--とも指摘される。非政府組織によると、少なくとも米英仏など20カ国が保有する。

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20081003k0000m030147000c.html

劣化ウラン弾:国連初報告 保有国、決議を無視 強制力なく、協力拡大課題に
 【ニューヨーク小倉孝保】潘基文(バンギムン)国連事務総長が、劣化ウラン弾の影響に関する報告を初めてまとめたことで、国際的な規制に向けた議論への足掛かりができた。しかし、国連総会は昨年、影響調査を求める決議を採択したにもかかわらず、米国はじめ劣化ウラン弾を保有する国々はこれを無視し、協力しなかった。包括的規制がいかに難しいかを見せつけたと言えそうで、今後、協力国の拡大が課題になる。

 劣化ウラン弾については昨年、非同盟諸国から使用の一時禁止を求める声が強まり、当初、総会第1委員会(軍縮・安全保障)に提出された決議案には「一時使用禁止」の条項が入っていた。しかし、欧米などの反対が強く、最終的に「調査決議」で落ち着いた経緯がある。

 今回の報告では、ボスニア・ヘルツェゴビナが健康被害の可能性を指摘し、国際原子力機関(IAEA)や世界保健機関(WHO)も残留した劣化ウラン弾に直接触れないよう対処すべきだと訴えた。このため、6日から始まる総会第1委員会で、非同盟諸国から「一時使用禁止」を求める動きが改めて出る可能性がある。

 しかし対人地雷やクラスター爆弾と比べ、劣化ウラン弾は健康や環境への直接的な影響を確認しにくいのが特徴だ。劣化ウラン弾が健康被害につながったと多くのイラク住民や米兵が訴えているが、米政府などはイラク住民については「栄養・薬品不足」、米兵については「戦争中のストレスなどが原因とも考えられる」とし、劣化ウラン弾の直接的因果関係は認めていない。

 今回、総会決議にもかかわらず安保理常任理事国とインド、パキスタンなどの核保有国、イスラエル、エジプト、サウジアラビアなど、劣化ウラン弾を保有するとみられている国のほとんどは劣化ウラン弾への意見を軍縮局に提出しなかった。決議には強制力がなく「努力目標」的意味合いが強いためだが、決議への真剣な対応を求めていくことが議論を深める一歩となる。

http://mainichi.jp/select/world/news/20081003ddm007030153000c.html


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