01年の9・11以降、ブッシュ政権がとった種々の強硬策の非道性、違憲性が問われる中、11日、米USAトゥデーが、国家安全保障局(NSA)による国内通話記録の「極秘収集活動」を報じた。ブッシュ政権は、昨年盗聴活動が判明したときには、戦時下の大統領として盗聴権限を主張、また盗聴活動は「発信者か受信者の一方が国外」だから問題ないとしていた。
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┃Y・記・者・の・「・ニ・ュ・ー・ス・の・検・証・」┃
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□■米国家安全保障局 「テロ対策」で市民のプライバシーを国家的規模で侵害
ブッシュ大統領の支持率が20%台まで落ちてきた。10日には弟のジェブ・ブッ
シュフロリダ州知事について「いつかは大統領に立候補してほしい」などと語り、大
統領選への出馬に期待を表明したが、本人はその気はないらしい。
これまでのブッシュ流からいくと、これも支持率低下対策の一種と考えられるが、
従来と異なるのは、身内への「言い訳」らいいこと。「おれは大統領をやったが、弟
はやらなかった」と痛烈な批判を浴びて退陣した後でも、自身の立場だけは保持した
いとのお得意の「先手攻撃」か。
01年の9・11以降、ブッシュ政権がとった種々の強硬策の非道性、違憲性が問
われる中、11日、米USAトゥデーが、国家安全保障局(NSA)による国内通話
記録の「極秘収集活動」を報じた。ブッシュ政権は、昨年盗聴活動が判明したときに
は、戦時下の大統領として盗聴権限を主張、また盗聴活動は「発信者か受信者の一方
が国外」だから問題ないとしていた。
今回、その釈明も「虚偽」の可能性が強まっている。NSAは、テロ対策のデータ
ベース構築の名目で、数千万人に上る数十億件もの市民の通話記録を、米通信大手(
AT&T、ベライゾン、ベルサウス)から極秘に収集していたとされる。これが事実
であれば、通信事業者としての社会的責任は相当厳しく問われることになるだろう(
4番手のクウェストは協力を拒んだ→朝日新聞)。
ブッシュ大統領は「市民のプライバシーは侵害していない」などと、この件を認め
ていないが、ABCテレビも同日、この計画の存在を当局者が確認したと報じており、
当然米議会は与野党問わず反発を強めている。通信事業者の違法行為と国家の犯罪へ
の荷担、そして政権による常軌を逸した違法行為は、今後ブッシュ政権の存続をゆる
がす大問題へと発展する可能性も高い。
泥沼化するイラク、そして高騰するガソリンなどへの市民の政権への批判が高まる
なか、自分たちのプライバシーまで、密かに、それもウソをついてまで犯していたと
いうことになれば当然のことである。
問題の「要請した」国家安全保障局(NSA)だが、昨年初めまで、NSA長官は
マイケル・ヘイデン国家情報副長官がつとめていた。ブッシュ大統領は、突然辞任し
たゴス長官の後任として同氏を中央情報局(CIA)の新長官として指名したばかり
で、現在上院の承認待ちの段階にある。
ブッシュ大統領は「米国の歴史にとって重要な時期にCIAを率いていく適切な人
材だ」(ロイター通信)としていたが、同紙は空軍大将で、軍出身者のCIA長官起
用には反対の声もあがっていた。ゴス氏の突然のCIA長官辞任と、今回のNSAに
よる「国内大規模盗聴」の発覚が関係しているかどうかはまだ定かではないが、「元
NSA長官」「軍人」「時期CIA長官」とキーワードは揃った形だ。政権は軍人と
組し、文人を押しのけて国家的謀略を強行していたのだろうか―。
「対テロ戦争」のためと称してブッシュ戦時政権は、国内の言論と思想と人権と活動
を厳しく管理統制してきた。そこには当初から「違法性」が漂ってきたわけだが、そ
の異常な「掟破り」の手法に躊躇する人間を、政権維持のために追い出すところまで、
ブッシュ政権は与党からもすでに孤立している可能性がある。
ブッシュ政権の戦争責任を問うところに至る道筋としては、この件はまだ入口でし
かない。しかし、いわゆる「戦時政権」が市民全体を監視してきたという重大問題は、
日本にとっても他人事ではない。日本でも現在「共謀罪」新設に反対の声が高まって
いる。まさに、かつての悪法「治安維持法」の現代版であるが、この法案が与党の強
行採決で通るようなことがあれば、日本でも米国と同様の事態が起こりかねない。
共謀罪はすべての市民を政権のコントロール下に置くことを容認・正当化する法律
である。対米屈従を続ける小泉政権としては、自分のところも「戦時政権」をまねて
緊張と恐怖を撒き散らしてきた。共謀罪は、まさしく国内の言論、言動を制限し、犯
罪が予見された段階で厳しく罰則を課して統制管理を進めようとしているからだ。
米国議会はすでに、その「戦時政権」の検証の段階に入っている。今回の件もその
過程で発覚したものだ。その時期に、日本の与党は「遅ればせながら」ブッシュ政権
に連なって「共謀罪」の成立を強行しようとしている。何とも情けない話である。
米国とともに戦争に加われるよう画策している「改憲」も「米軍再編」もそう、憲
法としっかりつながりをもつ「教育基本法」改定の動きも同様だ。いずれも9・11
以降、小泉首相がブッシュ政権との「盟友」を演出して、加速させてきた動きである。
ブッシュ政権末期に至ってなお、世界に突出して米政権の後を追えば、日本は孤立ど
ころか世界の笑いものとなりかねない。
「自衛隊のイラク派遣」決定時と異なり、日本の米政権追従の動きは、もはやブッ
シュ政権再浮上の決め手にはならない。日本の政府与党には、米政権への追従は、自
らの延命策でもあるのだから簡単には動きを止められない、止めたくない事情もある
のだろうが、小泉米屈従戦時政権も終焉のときである。
米国ではこの問題で、議会では「恥ずべき話だ」(上院司法委のレイヒー筆頭委員、
朝日新聞)との発言も出ているという。共謀罪新設はじめ、日本の政府与党のいまの
動きについても、同じことをいいたい。後世に恥を残すような法案を、まともに審議
もせずに通すようなまねは決してすべきではない。
琉球新報によると、元沖縄人民党委員長で那覇市長、衆院議員を務めた故・瀬長亀
次郎さん(享年94)が戦後初めて上京した1956年8月から9月の滞在中、日本
共産党の幹部らと面談した足取りを国家地方警察本部(国家公安委員会の事務部局)
が尾行した記録文書が12日明らかになったという。
これは瀬長さんの二女・内村千尋さん(61)が昨年11月に、県公文書館が入手
したUSCAR(米国民政府)文書の写しから見つけたのだという。
沖縄経験史研究会の比屋根照夫代表はこの件ついて、「この資料がなぜ米国民政府
(USCAR)文書に入っているかが資料解明のポイントだ。当時の公安当局が瀬長
亀次郎にかかわる情報を逐一、米軍の諜報機関に提供していたことが分かる証拠資料
だ」(琉球新報)と語っている。
同氏はまた、「共謀罪」が新設された場合「平和や市民運動の団体が政府に批判的
な集会を開く時には、偵察などの諜報・情報活動が行われるようになるであろう。治
安維持法の再来が憂慮される」(同)と警鐘を鳴らしている。
琉球新報 「瀬長氏尾行記録」を発見 1956年上京時 国家地方警察本部
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-13583-storytopic-1.html
琉球新報 諜報活動生々しく 二女の内村さん「すさまじさ実感」
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-13584-storytopic-1.html
共同通信 米大統領支持率30%割れ 政権運営の「危険水域」
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=KCH&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006051301004394
共同通信 通話記録の提供要請拒否 連邦規定違反と米クエスト
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=KCH&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006051301004049
共同通信 数十億件の通話記録収集か 米政府、大手通信会社から
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20060512/20060512a3310.html
ロイター 米大統領が政府の通信傍受を擁護、プライバシー侵害報道を否定
http://news.goo.ne.jp/news/reuters/kokusai/20060512/JAPAN-213071.html
共同通信 通話記録の収集「合法的」 米大統領弁明、議会は反発
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20060512/20060512a3350.html
毎日新聞 <米国>盗聴批判の国家安保局、国内全通話記録も入手?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060512-00000028-mai-int
朝日新聞 米NSA「国内通話記録も収集・蓄積」 米紙報道
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20060512/K2006051201550.html
読売新聞 米情報機関、数十億件の電話記録を秘密裏に収集
http://news.goo.ne.jp/news/yomiuri/kokusai/20060512/20060512i408-yol.html
毎日新聞 <共謀罪>16日採決を与党が提案 民主党に再修正案も示す
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060512-00000139-mai-pol
共同通信 「共謀罪」拡大解釈に懸念 参考人、恣意的運用にも
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000204-kyodo-pol
毎日新聞 <共謀罪>ジャーナリストら改正案の廃案求めて集会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060511-00000133-mai-soci
時事通信 「共謀罪」法案に賛否=衆院法務委が参考人質疑
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000112-jij-pol
毎日新聞 <共謀罪>衆院法務委で参考人質疑
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000042-mai-pol
◎ 「共謀罪の廃案」を求める緊急声明 ◎
私たちは、いま衆議院法務委員会で審議されている「共謀罪の新設法案」につき、
強行採決に反対するのはもとより、その廃案を強く要求します。
どのような修正がなされようとも、この法案は憲法で保障された「言論・表現・結
社・内心の自由」を侵害し、かつ「処罰対象は実際の行為」とする刑法の原則を、根
底から覆すものにほかなりません。
615種もの罪が新たな対象となるだけでなく、規定する対象団体にしても、捜査
当局の恣意的判断が入りこむ危険性は、きわめて大きいと考えます。
共謀罪成立には予備行為を要件とする修正案にしても、「既遂の犯罪行為」を処罰
する日本の刑法体系に混乱をもたらします。
これまで二度も廃案となったのは、この法案には憲法に違反する重大な規制と新た
な処罰が盛り込まれているからです。いかに修正しようとも、基本が変わっていない
以上、市民の自立的な表現や活動が阻害されるのは目に見えています。
以上の点から、あらためて「共謀罪の廃案」を強く求めます。
2006年5月15日
日本ジャーナリスト会議
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参照
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/35314bc49370ef6e934cfabaabd1e652
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/8bb815b03c1640cdb4e194a8c15c4469
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日本ジャーナリスト会議 『JCJふらっしゅ』2006/5/17 1070号
▽米政府、数十億件の通話収集
プライバシー侵害は53%に
米紙USAトゥデーが11日に報道したところによると、米政府は2001年の中
枢同時テロ以来、令状なしで国内からの通話を盗聴していたNSA=国家安全保障局
が大手の通信会社に対し、テロ対策の目的で、数千万の市民の通話記録の提示を要求
し、数十億件もの記録を極秘に収集していたという。
同紙によると、通話記録は同時テロ直後からで、米通信大手の3社、AT&T、ブ
ライゾン・コミュニケーションズ、ベルサウスが提供し、その際、NSAは「テロ容
疑者の通話活動を追跡する」と説明していた。
同紙は、昨年判明した盗聴活動で、ブッシュ大統領は「戦時下の大統領には盗聴の
権限がある上、発信者か受信者の一方が国外なので問題ない」との見解を示していた
が、今回明らかになった通話は国内のものが多いことから、新たな論争を呼ぶのは必
至と指摘している。
なお、米誌ニューズウィークが13日に発表した世論調査によると、NSAがテロ
対策として一般市民の通話を極秘に収集したことについて「プイバシーの侵害に当た
る」と回答したのは53%で、「テロ攻撃防止のために必要な手段」の41%を上回
った。また、米国の現状に「不満」は71%で、ブッシュ大統領就任以来最高、半分
の人がブッシュ氏は「並以下」の大統領とみなされるだろうと答えているという。