旧聞ですが・・・。イラン大統領のイスラエル抹殺発言の真相/アラビア・ニュース

2006-05-28 17:16:40 | 世界
アンネリーゼ・フィケンチャー、アンドレアス・ノイマン
英訳: エリック・アプルビー

04/19/06 「No War!」-
「イランについて言えば、イランに対する脅威は、もちろん -- (拍手) --
イランの脅威は、もちろん、我が強力な同盟国イスラエルを破壊しようという彼らの国家的目標だ。これは脅威だ、深刻な脅威だ。これは世界の平和に対する脅威だ。要するに、強力な同盟国に対する脅威だ。私ははっきり言った、再度はっきり言おう、我々は同盟国イスラエルを守るために軍事力を使うつもりだと、そして-- (拍手)」2006-03-20のク
リーブランド(オハイオ)でのアメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュによるぶっつけ本番の演説(出典: www.whitehouse.gov)だが、なぜブッシュは、イスラエルを破
滅させるというイランの目的について語ったのだろう?

イラン大統領はイスラエルを地図から抹殺する?

イスラエルを破壊しつくし、打ちのめし、破壊し、絶滅し、粛清し、イスラエルを地図から抹消する - これがイラン大統領が要求していることだ。 - 少なくとも、こ
れが我々が2005年10月末に見聞きしたことだ。このニュースの流布はきわめて効果的だった。これは宣戦布告だと連中は言った。明らかに、政府とメディアは、憤慨している点で意見は一致している。それが世界中を駆けめぐっている。

だがイラン大統領マフムード・アフマディネジャドが言った事を仔細に検討してみよう。我々が読めるよう「ニューヨーク・タイムズ」が演説全文を掲載してくれているのは結構なことだ。以下は2005-10-30付け報道の抜粋だ。

「アメリカとシオニズムなしの世界にすることは不可能だと彼らは言っている。しかしご存じのように、これは実現可能な目標であり標語だ。少し昔に戻ってみよう。[[[かつてこの国には敵対的な政権があり、それは非民主的で、SAVAKによって完全武装し、治安機関SAVAK[シャー時代のイラン政府諜報部]が皆を監視していた。恐怖政治の環境が存在していたのだ。]]]親愛なるイマム[アヤトラ・ルホラ・ホメイニ、イラン革命の創始者]が、現体制は打倒せねばならぬといった時、政治的情報に通じていると自称している連中は、それは不可能だと言った。イマム・ホメイニが活動を開始した時に、腐敗した諸政府は、当時の政権を支持していた。[[[[1978]9月7日の虐殺後も、全ての西欧諸国も東欧諸国も政権を支持し]]]政権を追い出すことなど不可能だといっていた。しかしわが国民は抵抗し、以来27年間、アメリカ合衆国に依存する政権なしで我々は存続している。世界に対する東と西の専制政治は終わらせられるべきだが、目前のことしか見えない弱い人々はこれが信じられない。いつの日か東の帝国の崩壊を目の当たりにできるなどと考えられた人がいただろう? だが我々は、生きている間
に、体制崩壊を目撃できた。しかもその崩壊の様は、何の痕跡も残さないので、図書館で調べなければならないほどだ。イマム[ホメイニ]は、サダムは去るべきであり、誰が想像できるよりも、彼はずっと弱体化するだろうと言われた。十年前、あれだけ傲岸に語り、不死身かとも思われていた人物が、[[[自分を支持してくれていると彼が信じた連中によって、そして彼が犯罪を犯すのを支援した連中によって]]]自分の国で手錠、足かせをかけられ、裁判されている。親愛なるイマムは、占領政権は地図から抹殺されるべきであると言われたが、これは極めて賢明な声明だった。パレスチナ問題で妥協することはできない。古い前線の中心部に、新たな前線を作ることは可能なのだろうか。それは敗北であり、この政権[イスラエル]の正当性を認める人は皆、事実上、イスラム世界の敗北を認めているのだ。わが愛すべきイマムは、世界の中心の圧制者を、つまり占領政権を、戦いの敵としていた。パレスチナで始まった新たな波は、イスラム世界において、このはずべきシミがイスラム世界から消滅するのを目の当たりにするだろうと私は確信している。」

様子がはっきりしてくるではないか。イラン大統領の言明は、メディアによって歪められている。イラン大統領は、イスラエルとアメリカで権力を握っている政権の除去は、将来の目標として可能なものだ、と言明したのだ。これは正しい。だが彼は決してイスラエルの抹殺、消滅を要求してはいない。彼は変化の可能性があることを明らかにしたのだ。彼の国にあって、アメリカにより支援されていたシャー政権は打ち破られた。ソビエト連邦という東の支配は崩壊した。サダム・フセインの支配は終わった。これに言及して、彼はパレスチナにおいても変化は可能だろう、という自分の熱望を声に出したのだ。シャー政権について触れた文脈の中で、政権(つまりシャー政権)は追い出されるべきだと言ったアヤトラ・ホメイニを例証に挙げたのだ。

確かに、アフマディネジャドこの引用部分では、ある政権の変更を、「占領されたパレスチナ」に置き換えて使っている。これは正当なことだ。ある国の政治条件が変更するのを待望することは、世界中で日常茶飯事のことだ。だが「政権」を除去する要求を、国家を除去する要求にすり替えることは、重大なごまかしであり、危険な民衆扇動だ。

これはライプツィッヒ大学哲学教授のゲオルグ・メグルによれば、すでに始められているイランに対する戦争の一つの章だ。おそらく最も重要な段階、プロパガンダ段階だ。

例をあげよう。ドイツのオンライン・マガジンtagesschau.deは、イラン大統領について、2005-10-27にこのように書いている。「疑う余地はない。パレスチナにおける襲撃の新たな波はイスラム世界の恥辱を消し去るだろう。」元の単語「波」を使う代わりに彼らは「襲撃の波」と書いている。元の文章に対するこの置き換えは、我々に言わせれば偽情報だ。正しくはこう言ったのだ。「パレスチナにおける新たな動きが、イスラム世界から恥辱のシミを消し去るだろう。」さらにこの声明は前の文章で言及した占領政権に触れている。

念のためこの演説の別翻訳も検討してみよう。「彼らは[尋ねる。]「我々が、アメリカとシオニズムの無い世界を見ることは可能だろうか?」だが皆さんはよくご存じのように、このスローガンとこの目標は実現可能で、きっと達成できる。[[[...]]]「親愛なるイマム[ホメイニ]が[シャーの]政権は消え去るべきだと言った時、そして我々が従属的な政府無しの世界を要求した時、政治的なり、他の知識を持っていると主張する多くの人々は[尋ねた]、「[シャーの政権を倒すことなど]可能だろうか?」イマム[ホメイニ]が活動を始めた日、あらゆる権力は[シャーの]腐敗した政権[[[...]]]を支持しており、それは不可能だと言った。しかし、我が国民は断固として立ち上がり、今や既に27年間、アメリカに依存しない政府のもとで暮らしている。イマム[ホメイニ]は言われた。「東[ソビエト連邦]と西[米国]の支配は終わらせるべきだ。」だが、身近な狭い世界しか見ない弱い人々はそれを信じなかった。何時の日か東の帝国主義の崩壊[つまりソビエト連邦]を目の当たりにしようととは誰も思わず、それは鉄の体制だと言った。だが我々の短い人生の間に、我々はこの体制が崩壊する様を目の当たりにしたが、我々は図書館で探さねばならないが、それについての文献など何も見つけられない。イマム[ホメイニ]は、サダム[フセイン]は去るべきで、彼は、前例のないようなやりかたで辱められるだろうと言われた。我々が眼にしているものはどうだろう? 十年前に、永遠に生きるかのごとく得意げに離していた人物が、足
を鎖でつながれ、自国で裁判にかけられている[[[...]]]イマム[ホメイニ]は言われた。「Qods[エルサレム]を占領している政権は、歴史という本のページから削除されなければならない」と。この文章はきわめて賢明だ。パレスチナの問題は、我々が妥協するわけにはゆかない問題だ。[イスラムの]前線が、他の前線[つまり国]が、[自分の]心で立ち上がること許すことなどあり得るだろうか? これはつまり敗北を意味し、この政権[つまりイスラエル]の存在
を認める者は、事実上イスラム世界の敗北を認めることになる。この傲慢の世界に対する戦いで、我が親愛なるイマム[ホメイニ]は、Qods[エルサレム]を占領している政権を、戦闘の目的として設定した。親愛なるパレスチナにおいて始まった新しい波は、そして今日私たちがイスラム世界で目の当たりにしているものは、イスラム世界中に広がった道義の波であると私は確信している。間もなく、この恥ずべき汚点[つまりイスラエル]は、イスラム世界の中心から消滅するだろう-そして、それは実現可能なのだ。」

メディアが長々と触れている「地図」という用語は現れない。しかるに「ニューヨーク・タイムズ」では書いていた。「我が親愛なるイマムは占領政権は地図から抹殺すると言われた」。MEMRI版では、「イマム[ホメイニ]は言われた。Qods [エルサレム]を占領しているこの政権は、歴史のページから削除され
るべきだ。」

MEMRIは、一種の見出しとして以下の前書き表現を、翻訳に付け加えた。「まもなく、この恥辱のシミ[つまり、イスラエル]は、イスラム世界の中心部から追放されよう-そして、これは実現可能だ」。文脈から切り離して、「つまり、イスラエル」という挿入句を用いることで、意図的に意味を歪曲しているのだ。時間的な段階をしめす「まもなく」は、ニュヨーク・タイムズの翻訳でも消えている。しかも、アメリカが支援したシャー政権を恐怖の政権として描いている部分と、アメリカの政策の真実の性格を現すものだという部分の翻訳の全ての句をMEMRIが削除しているというのは印象的だ。

原文(ISNAによって刊行された版など)を我々が独自に翻訳したものでは、アフマディネジャドは「地図」という単語は使っていない。彼はアヤトラ・ホメイニの、占領政権は世界から、文字通りに翻訳すれば「時間という領域から」、消滅すべきだという主張 を引用した 。従って、この世界に、この時点で、占領政権の居
場所はないのだ。「ニューヨーク・タイムズ」が用いた「地図から抹殺する」というきわめて自由で腹立たしい翻訳は、「徹底的に破壊する」又は「何かを絶滅する」と意味が等しい。原文から最初に翻訳した英語が(「地図から抹殺する」)、次に英語からドイツ語、一字一句文字通りの翻訳は(フォン・デル・ランドカルテ・レーシェン 地図から)原文からますます遠ざかっててしまう。この翻訳で不誠実な点は、「地図」という表現は(意図的に)一義的にしか使えないということだ。国家は地図から消し去ることが可能だが、アフマディネジャドが実際述べている政権は、そうではない。

再び独自翻訳を見てみよう。「親愛なるパレスチナで起きているあらたな動きは精神的な運動で、イスラム世界全体に広がりつつあり、それがまもなく、イスラム世界から、この恥辱のシミを取り去るだろうことに私は確信を持っている。」

一体どうすれば、「精神的運動」が、つまり(MEMRIで翻訳されているような)「道義心の波」が、「襲撃の波」とを等式化し、翻訳することが可能なのかが問われるべきだ(例えば、tagesschau.de等が報道しているように)。

イランの大統領はホロコーストを否定しているのか?

「アフマディネジャドによる再三の腹立たしい反イスラエル的声明を、ドイツ政府は衝撃的だと糾弾した。このような行動は許容できない、と外務大臣フランク・ワルター・シュテインマイアーは述べた。[...]アフマディネジャド声明を「信じがたい」とアンゲラ・メルケル首相は非難した。(tagesschau.deが2005-12-14に報道。

だかドイツのシュテインマイアー外務大臣とメルケル首相だけがこう言っているのではなく、ビルド-ツアイトゥング、tagesschau.de、一部の平和運動、アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュ、「ドイツと国際政治紙」、CNN、ハインリッヒ・ベール財団等、ほぼ世界中がいっている。イランの大統領アフマディネジャドはホロコーストを否定している、と。

こうした主張は何に基づいているのだろう? それは事実上、2日分の特電-
2005-12-14と2006-02-11のものに基づいている。

「イラン大統領マフムード・アフマディネジャドは、イスラエルや西欧諸国に対する彼の言葉上の攻撃を激化させ、ホロコーストを否定した。パレスチナに対するイスラエルの攻撃を論議の話題にする代わりに、「西欧諸国は、ユダヤ人虐殺というおとぎ話に精力を注いでいる。」、アフマディネジャドは、水曜日、イラン南東の都市ザヘダンでの演説で述べ、それはカバール放送によって直接放送された。あの日彼は、もしも西欧諸国が、本当に第二次世界大戦における六百万人のユダヤ人虐殺を信じているのであれば、ヨーロッパ、アメリカ、カナダあるいはアラスカの土地の一部をイスラエルが自由に使えるように与えるべきだ。」と言ったのだ。- ドイツの通信社DPA、
2005-12-14特電。

ドイツのTV局n24は、2006-12-14に、「イラン大統領はホロコーストを神話だと言った」という見出しをつけて以下の記事を報道した。「イラン大統領マフムード・アフマディネジャドは、イスラエルに対する彼の言葉による攻撃の度合いを強め、ホロコーストを、ヨーロッパ人がユダヤ人国家をイスラム世界の中心に建設するために口実にしている「神話」だと言った。「ホロコーストの名において、彼等は神話をつくり出し、それを神、宗教や預言者よりも大切なものと見なしている」イランという国家の長がそう述べた。」

イランの通信社IRNAは、アフマディネジャド発言を2005-12-14以下のように報道している。「もしもヨーロッパ人が第二次世界大戦中にホロコーストで六百万人のユダヤ人を殺戮したという主張が真実ならば、彼らの主張は正しいもののように思える。反対する人々を逮捕し投獄し、なぜパレスチナ国民がその犯罪を償わねばならないのかと主張しているからだ。なぜ彼等がイスラム世界の中心地にやってきて、パレスチナに対して、爆弾、ロケット、ミサイルや経済制裁によって犯罪を犯している 。」[...]「あなた
がたが罪を犯したのであれば、ヨーロッパやアメリカやカナダやアラスカのあなた方の土地のどこか一部を彼らに与え、彼らが自分たちの国家をそこに作れるように。」 [...]アフマディネジャド
は、ホロコーストについての神話を創り出し、それを宗教や預言者に対する信仰よりも高めた連中がいる [...]大統領はさらに述べた、「もしもあなた方の文明が、侵
略、抑圧された民族を追い払い、正義を求める声を抑圧し、不正と貧困を地球上の大半の人々に広めることであるのなら、我々は声を大にして言おう、我々はあなた方の うつろな文明を軽蔑する
と。」]

ここで再び我々は、n24によってなされた引用に行き当たる。「ホロコーストの名において、彼等は神話をつくりだした。」例えば「ユダヤ人の虐殺はおとぎ話だ」というDPAが報道しているものと、これは全く違っていることがおわりだろう。アフマディネジャドが行ったことは、ホロコーストの否定ではない。断じて違う!批判的な意見を封じる為に、たくらんでいる戦争を正当化するという願いを実現する為に、ホロコーストを利用する、帝国主義的大国の虚言癖に、厳しい叱責を加えたのだ。これはホロコーストを悪用することに対する批判だ。

CNN(2005-12-15)は以下の様に報道している。「ユダヤ人を焼いたのだから、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ又はアラスカの一部をイスラエルに与えないのか。我々の質問は、あなたがたがこの大罪を犯したのに、なぜパレスチナの無辜の民がその罪を償わねばならないのかということだ。」

ワシントンの"Middle East Media Research Institute"(MEMRI)2005-12-14は、アフマディネジャド声明を以下のように描いている。「...あなたがたに問いたい。あなたがたが、実際にこの大罪を犯したので有れば、なぜパレスチナの抑圧された人々がそのために罰せられなければならないのだろうか? * [...]あなたがたが犯罪を犯したので
あれば、あなた方自身でそれを贖うべきだ。我々の提案はかつても、今も変わらず、以下のようなものだ。:あなた方が犯罪をおかしたのであれば、あなたがたたご自分の土地の一部をヨーロッパ、アメリカの、カナダの、あるいはアラスカの一部を、彼らが建国できるように、彼らが自由に使えるよう提供することしか解はあるまい。あなたがたがそうされれば、イラン国民は決して反対の声を上げまいことは保証する。」

MEMRI版解釈は、和らげる感じの訳「大罪」を使い、 *印をつけた部分で以下の句を抜いてている。「なぜ彼等がイスラム世界の中心部にやってきて、爆弾、ロケット、ミサイルや経済制裁を使って、大切なパレスチナに対して犯罪を犯しているのか。」この文章は意図的に除かれている。この文章は、イスラエル人国家がパレスチナに建国する権利を、なぜ剥奪される可能性があるかを暗示するからだ。攻撃的な拡張主義政策ゆえに、パレスチナの人々に対して、諸国の法律を無視し、すべての国連決議案に従わずにいるためだ。

イラン大統領の言辞の翻訳がいろいろあっても、アフマディネジャドが、ユダヤ人に対してなされた途方もなく巨大な犯罪について語っているのであれば、ホロコーストを否定しているという主張は根拠がなくなることに留意する必要がある。

他のIRNA記事(2005-12-14)で、アラビア人作家ガジ・アブ・ダカはアフマディネジャドについて書いている。:「イラン大統領はユダヤ教信者に対して何も反対しているわけではない[...]アフマディネジャドはシオニズムとその拡張主義者や占領政策に反対なのだ。それが、彼が世界に対し勇気をもって、世界中の開化した共同体にはシオニスト政権の居場所はないと宣言できた理由だ。」

このような意見が、西欧世界権力の中心の思考とそりがあわなくとも不思議はない。だがこの理由ゆえに、それがそのまま間違っていることにはならない。イスラエルもその一員である西欧世界の攻撃的政策を批判することは、反ユダヤ主義とは言えない。我々は、この種の批判にも少なくとも発言の機会は与えるべきだ。たとえそれが我々にとって面倒な分野であっても。

2006-02-11IRNAによれば、アフマディネジャドはこう語った。「[...]本当のホロコーストは、抑圧された人々の血が毎日流されているパレスチナで、無防備のイスラム教徒の人々が毎日殺されているイラクで、こそ見いだされるべきだ。[...]」いくつかの西欧の政府、とりわけ米国は、預言者モハンマド(PBUH)冒涜を認め、一方、シオニストが過去60年間他の国々に圧力をかけつづけ、無辜のパレスチナ人を殺害すことに基づく「ホロコースト神話」の否定を、犯罪と見なす」[...]」

アフマディネジャドがホロコーストを否定しているという主張は、一つ以上の点で誤っている。彼はホロコーストを否定してはおらず、その否定について話しているのだ。彼はホロコーストの否定を言ってはおらず、ホロコースト神話の否定を言ったのだ。これは全く別のことだ。要するに彼はホロコーストの悪用を言っているのだ。ホロコースト神話、アフマディネジャドによって話題にされたように、誰かに圧力をかけるため、ホロコーストと結びつけて作り上げられた神話を。私たちはこうした思考の脈絡に沿って考えることも、そうは考えないことも可能だ。だが、彼の思考をホロコーストの否定と同等視することは不可能だ。

もしアフマディネジャドが、この2006-02-11記事の通りに、ホロコースト神話を調査することが禁じられており、それが犯罪として扱われる事実を非難しているというのであれば、これは一般的に広く流布しているMEMRI翻訳で引用されているようなものとは、ずっと違う意味となる。もしもホロコーストに関する神話が、DPAが報道したように「虐殺というおとぎ話」に変化させられているのであれば、意図的な誤訳として理解すべきだ。

誤訳と改変によって、これは明らかに、イラン大統領の言明を、現在戦われているプロパガンダ戦争のかなめにすることに成功している。これに反撃するのが我々の義務だ。

結論:

ロイター記事は2006-02-21に書いている。「イラン外務大臣マヌーチェフル・モッタキは[...]彼の国がユダヤ人国家イスラエルを「地図から抹殺する」のを望んでいるということを否定した。[...]イラン大統領マフムード・アフマディネジャドは誤解されている。「誰もある国を地図から抹殺することはできない。」アフマディネジャドは、イスラエルという国家のことを考えていたのではなく、政権のことを考えていたのだ[...]。「我々はこの政権が正当であると認めるものではない。」[...]モッタキは、ホロコーストは実際に起きており、600万人のユダヤ人が国家社会主義(ナチス)時代に虐殺されたことも認めている。」

次のステップはイラン大統領をヒトラーと結びつけることだ。2006-02-20フランス・ユダヤ人協議会(Crif)議長はパリでこう語っている。「イラン大統領の主張は、ヒトラーの『我が闘争』にひけをとらない。」ドイツ・ユダヤ人中央評議会議長ポール・シュピーゲルは、2005-12-10に「ヴェルト」は、アフマディネジャドの言明は「この主題について、 A・ヒトラー以来なさ
れたこれまでの言明のなかで最悪のコメントだ。」と評価した。ホワイト・ハウスでは、イラン大統領は、ヒトラーとまで呼ばれている。そしてドイツ首相アンゲラ・メルケルも、イラン大統領をヒトラーと国家社会主義の方に位置づけようとしている。2006-02-04にミュンヘンで彼女は述べている。「既に1930年代初期多くの人々は言っていた。それは言葉のあやにすぎないと。それぞれが行動していれば、防ぐことに間に合っただろう..。ドイツは、初期に抵抗しなかったことに責任があるので、寛容の限界がどこまでかを明らかにするためにどんなことでもする。イランは、状況に対する主導権を握っており、主導権は以前として彼らの手にある。」

これらすべては、戦争の兆しだ。スロボダン・ミロシェヴィッチはヒトラーになった。結果はNatoのユーゴスラビアに対する戦争だった。サダム・フセインはヒトラーになった。そして起きたのが、アメリカ合衆国とそれに唯々諾々と従う同盟諸国が遂行す対イラク戦争だ。今、イラン大統領がヒトラーになっている。

誰かヒトラーのような人物が、核エネルギーは平和的な用途に用いたいだけだと百回請け合ったとしても誰も彼を信じまい。ヒトラーのような人物は、世間の想定の範囲内でしか行動できない。契約に逆らって動いたところで、彼のせいにされるのだ。「事実上、西欧諸国はどの国も、ウラン濃縮を全く合法的なものと認識している。契約あるいは諸国の法規による規制はない。実際、西欧諸国は、不拡散条約に従って、イランのこうした活動を助ける義務がある。ある国家が原子爆弾を放棄している限り、その国は核所有国から技術支援を受ける資格があるのだ。」(イェルク・プフール、ARDラジオ・スタジオ、イスタンブール2006-01-11) だがこうしたすべてのことも、
もしも一国の長がヒトラーのようなものとして焼き印を押されてしまえば、配慮されなくなってしまう。


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