Gyaoで「チェルノブイリ・ハート」を無料配信中(~25日)。見る前に読んでほしい事。

2013-04-27 22:06:12 | 世界
5月25日まで配信。

http://gyao.yahoo.co.jp/player/00908/v12264/v1000000000000000644/

事故から25年……まだ終わっていない。2003年度のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞受賞作品。

【あらすじ】
1986年4月26日
チェルノブイリ原発事故発生。大量に撒き散らされた放射能は、当時生まれた子供たちにたくさんの災いを及ぼした。
事故から16年後の2002年、ベラルーシ共和国を取材。放射線の影響で心臓に重度の障害を持った子どもたち、彼らを「チェルノブイリ・ハート」と呼ぶ。
(2003年/アメリカ)

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この映画に関して、以下の批判があることは 忘れないでおきましょう。
市民社会フォーラムML


今中哲二さんのいわき市での講演動画(2012.7.14)

低線量被ばくの健康被害 "科学 "ではっきり言えることと、言えないこと


動画の1:20:05秒あたりから「チェルノブイリハート」という映画に関する今中さんのコメントがあります。そのコメントは以下のようなものでした。

「みなさん、チェルノブイリハートというのを観られた方がいると思いますけれども、心臓病がいっぱい増えているというようなイメージをつくる映画ですけども、実はこれ私去年の夏の前だったと思います。
ある週刊誌が連絡してきて「今中さん。ちょっと公開前にこのチェルノブイリハートのDVDを観て感想をください」と言ったから、それで送ってこられたから、私、しかたがないから2回観て、それでなんとコメントしたかというと「つまらん」、と。
観られた方はあるかと思いますけども、とにかくこれでもか、これでもかという形で障害を持った子どもたちが出てくるんですよね。
それで後で一方でベラルーシで放射能汚染がありますよ、と。
じゃあ、その放射能汚染と子どもたちがどこから来て、どういう被ばくをしてとかそういう話はさっぱりなし。
とにかくイメージとしてチェルノブイリ、それからベラルーシではみんな子どもは病気で生まれてくるよ、と。
それで健康で生まれる子どもは2割もいないんですよ、と。
そんなアホな、と言って、私は「つまらん」と言ったんですけども、その裏に私はある程度データ知っていました。
それで私が知っているデータはベラルーシという国は結構いろいらな部面でチェルノブイリ前から医療制度はある程度整っていて、それで先天性の障害は人口流産胎児を調べて・・・・
(以下、省略。上記の講演動画でご確認ください)」


「チェルノブイリハート」はたしかに第76回アカデミー賞ドキュメンタリー短編賞を受賞した話題作には違いありませんが、この映画を「ベラルーシのホット・ゾーンに住み続ける住民たちの姿をとらえ、16年たっても続く被爆被害の『事実』を追う」科学的映画などとする見方は決定的に誤りだということを今中さんは上記の講演で論証しています。
まして、この映画の決してドキュメントとはいえない「事実」なるものをもって「2016年に日本の子供たちも悲惨な状況になる」などと扇情的に煽るのは「犯罪的」とも言ってよい行為だろうと私は思います。
http://www.bllackz.com/2011/08/2016.html

むしろ「 必見!」であるべきは 「チェルノブイリハート」という映画ではなく(あるいは同映画を観た後の)、今中哲二さんのいわき市での講演動画(1:20:05秒頃~)というべきだろう、とも私は思います。

いまだに 「チェルノブイリハート」を無条件に「事実」として過信している人たちが少なくないのは残念でなりません。

東本高志@大分
higashimoto.takashi@khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/

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Iです。

「チェルノブイリハート」については、Oさん、東本さんのご見解に賛同します。
広河隆一さんも懐疑的な旨、「DAYS JAPAN」の編集後記に書いておられます(何号かは今わかりません)。
先日お会いした鎌田實さんも、「ありふれた心臓病をいかにも被曝のせいにして。困ったものだねえ」と嘆いておられました。
わたし個人としては、脳性マヒの子たちを延々接写したシーンが許せません。
脳性マヒは、さまざまな理由で起こりますが、被曝が、少なくとも直接的な原因では起こりえません。

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OKです

自分は映画を見ていないので控えていましたが、正常児が2割以下しかいないというような「チェルノブイリハート」の主張を裏付けるデータを見た事がありません。

例えば以下の調査は、放射線被曝による影響があるようだという結論を(結構強引に)導いた論文ですが、それでもそんなとんでもない数字は出ていないです。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Lazjuk-J.html

あと、生まれつきの心臓疾患自体は大体100人に1人ぐらいは見られます。
http://www.moon.sannet.ne.jp/naruto2/contents/senntenn.html

鎌田さんの「ありふれた心臓病」というのもそういう意味でしょうね。

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Oさんから

ベラルーシなどでチェルノブイリ支援活動をされて、3.11後は福島支援をされている内科医で、劣化ウラン弾廃絶運動にも取り組まれている、振津かつみさんも「チェルノブイリハート」のウソを指摘されています。

http://togetter.com/li/313194
<「チェルノブイリハート」ベラルーシで25%の赤ちゃんに精神障害などの異常というのはウソ。
現地の医師が「15~20%が健常児」と答えているが、ベラルーシの健常児の基準は5段階に分かれていて、その一番上のレベルが20%。
父母も健康で酒タバコをのまないというのが条件。>

http://blog.zaq.ne.jp/g-kowai-wakayama/article/16/
<過大評価では、映画チェルノブイリ・ハートで語られた「健常児は20%にすぎない」、というのは真実ではない。これは健常の基準が日本と異なっているため。>


ちなみに、広河隆一さんのコメントは以下
http://daysjapanblog.seesaa.net/article/235557323.html
============================
【編集後記(DAYS JAPAN2011年12月号)】「原発は、あらゆる形の差別を引き起こす要因にもなる。それに取り込まれてはならない」(広河)

「チェルノブイリ・ハート」が評判だ。被曝した子どもたちの心臓欠陥多発の映画で、2003年アカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞した。
放射能の恐ろしさを警告する映画だ。

しかし気になるところもある。障害を負った子どもたちが映し出され、「チェルノブイリ事故のせいですか」と取材者が聞き、施設の職員は「そうです」とうなずく。
今から10年以上前、国内外の有力誌がいっせいに、「チェルノブイリで身体障害多発」という大見出しで、子どもたちの写真を掲載した。
衝撃の報告だった。しかし私は驚いた。
ちょうどその時期に、救援のため現地を何回も訪ねていたのだが、そうした話は聞いたことがなかったからだ。
私は障害を負った子どもの写真を多く撮影したが、事故との関連が確信できなかったので発表しなかった。

次に現地を訪れた時、子どもたちの写真が掲載された施設を訪ねた。
そこにはさまざまな障害を負った多くの子どもたちがいた。
私は所長に「この子どもたちはチェルノブイリのせいで病気になったのですか」と尋ねた。
所長は首を振った。
「何人かはそうかもしれないが、ほとんどは関係ないでしょう。
なぜならここには事故前から多くの子どもがいたからです。
事故の後に1割ほど増えたかもしれないけれど」と言う。

雑誌や映画を見た人は、写っているすべての子がチェルノブイリ事故のせいで障害者となったと思ったはずだ。
放射能はあらゆる病気の原因になる。
遺伝子を傷つけるから出産異常も身体障害も引き起こす。
だが、放射能の恐ろしさを訴えるためにこのような強調をしていいのだろうか。
人は皆、健康でありたいと願う。
0親は子どもの健康を望む。
けれども「身体異常の子どもができるから原発に反対だ」という言葉は、障害者に「自分のような人間が生まれないために原発に反対するのか。自分は生まれてはいけなかったのか」と考えさせるだろう。

原発は、あらゆる形の差別を引き起こす要因にもなる。それに取り込まれてはならない。(広河)


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Dさんから

 「ベラルーシでは現在でも、新生児の85%が何らかの障害を持っている」という映画「チェルノブイリハート」のリソースはこれだといわれています。

報告書『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影響』
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf
(英文)

その翻訳版(抄訳)
チェルノブイリ被害実態レポート
http://chernobyl25.blogspot.jp/2011/11/blog-post.html

 該当するのは以下の記述と思われます。
(日本語版)

>2. ベラルーシ保健省のデータによれば、大惨事直前(1985年)には90%の子どもが「健康といえる状態」にあった。
>ところが2000年には、そのようにみなせる子どもは20%以下となり、もっとも汚染のひどいゴメリ州[ベラルーシ語でホメリ州]では、健康な子どもは10%以下になっていた(Nesterenko, 2004)。

>6. 1993年には、ゴメリ州コルマ地区[ベラルーシ語でカルマ地区]とチェチェルスク地区 [同チャチェルスク地区]に住む(大惨事当時に0歳から4歳だった)小児の
>うち、健康な者はわずか9.5%だった。

> 当時、この地域の土壌におけるセシウム137[Cs-137]の濃度は1平方キロメートルあたり5キュリー[=1平方メートルあたり18万5,000ベクレル]を超えており、この地域の小児の37%ほどがいまも慢性疾患に苦しんでいる。

 このように、「何らかの障害」とは、健康障がいのことなんですよね。
 「何らかの障がい」には違いないけど。
 しかも健康の定義が、Oさんが書いているように「父母も健康で酒タバコをのまない」だったら、そりゃ不健康児だらけになるわ。

 身体障がいについては、論文にパーセンテージが示されていません。

>4. 重度汚染地域では、身体の発達が阻害されている小児の数が増加した(Sharapov,
> 2001)。

>10. 厳重に管理された移住義務および移住ゾーン(1平方キロメートルあたり15キュリー以上)[訳注2]から避難していた母親のもとに生まれた新生児は、統計的にみて有意に胴が長く、その一方、頭はより小さく、胸囲がより短かかった(Akulich
>and Gerasymovich, 1993)。

 映画「チェルノブイリハート」は、割合は不明だけど身体の「何らかの障がい」が増えている事実と、健康上の「何らかの障がい」が80~90%に及ぶという事実を、「障がい」という言葉で結んでしまったのでしょう。

 また、以下のような記述も下敷きにしていると思われます。
 英語版98ページ目のTable 5.35.に正常分娩が「非汚染地域63.3%」であるのに対して、「汚染地域25.8%」、という表があります。
 この記述はベラルーシではなくて、より汚染されたウクライナのものですが。
 
 資料を読めば分かりますが、これは生まれてきた「赤ちゃん」のことを示しているのではなく、「母親」のことを示しています。
 “1986年に被曝した少女の出産データと被曝に相関関係がある”というのです。
 
 正常でない分娩として表に掲げられているのは「母乳不足」と「カルシウム欠乏症」。

 表にないけれど本文にその他の「非正常」として、母親の貧血とか早産とかが例示されています。
 こういう母胎の異常が被爆少女に顕著に多いというのです。
 貧血や早産、母乳不足も「異常出産」には違いなかろうけど、その語感を「障がい児出産」であるかのように、最大限に誤解させるようにもっていくのはひどい手口です。
 実際のウクライナにおける障がい児についての数字は、「ウクライナでは大惨事後15年目以降18年目までに、認定障害をもつ小児の数がしだいに増加し、(1,000人あたり)1987年の2.8人から2004年には4.57人になった (Stepanova,2006a; 図3.3)。」

 「2005年の初めに、汚染地域において認定障害をもつ小児の割合は、他の地域に住む一般集団中の小児の平均と比べて4倍以上に上っていた(Omelyanets, 2006)。」

 ウクライナ全体で2倍近く、汚染地域では4倍以上が認定障がい児だというのだから、

これは大きな影響といえます。
 汚染地帯では新生児の1%が認定障がい児という計算です。
 元の論文は、政府や研究機関の発表をまとめた真面目な研究論文なので、データ自体は信用できると思います。

 ウクライナもベラルーシも事故時の被曝量がけた外れでした。
 しかも食物管理がまるっきりだから、継続的に多量の汚染食物を食べて、内部被ばくしています。
 被災地における社会的混乱による食糧事情などの影響もあるでしょう。

 それにしても、多いとはいえども1%です。
 映画を見た多くの人が、画面の説明文によって、80%の赤ちゃんが障がいを持って生まれてくるかのように誤導されてます。
 1%を80%に誤解させたらデマでしょう。
 そのように印象づけたいなどという動機でわざと不正確なナレーションをつけたのなら、真面目な研究活動に対する冒涜ではないでしょうか。

 そして、考えたくもないことですが、映画の観客が「障がい者」を出産することへの恐怖を持っていることを期待して、あえてこういうナレーションをつけたのだとすれば、許し難い差別行為だと思います。

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連続勉強会第3回「今中哲二さんを囲んで共に考える」
講演まとめ/市民研通信2012.8
http://archives.shiminkagaku.org/archives/imanaka-20120616-matome.pdf 


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