窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

生命力を浴び身体の変化を感じるー慈恩②(上町)

2024年06月11日 | 食べ歩きデータベース


 6月8日、再び上町の慈恩さんへお邪魔してきました。直前まで生きた素材を使い、その鮮度のみならず、調味料を極力使わずに調理のタイミングまではかることで素材の持つ味の奥深さを感じ、かつ身体とも共鳴するお料理の数々。店主である岡野さんの目から鱗のお話しも楽しみの一つです。

 さっそく行きましょう。冒頭の写真右上は、亀の手という本当に亀の前足に似た形の貝とカブのスープ、豆乳仕立て。前回は牡蠣のスープでした。お皿の左下は今が旬のアイナメ。右上の蓮華にのっているのは、岩手県産の青ミズ。クセがなく、水菜と同様、瑞々しい野菜です。そして、右下のレバーのようなものは羊の心臓。韮の先端に丸いものがついていますが、これは蕾です。韮は蕾をつけた頃が生命力が強く、確かに韮とは思えないほど甘いです。



 二皿目。綺麗な飴色の海老が出てきました。天草から生きたまま取り寄せた海老の、店主曰く「飴焼き」です。何とこの飴色のソース、日本酒で有名な「浦霞」の本醸造を煮詰めて作ったのだそうです。日本酒の糖分だけなので、見た目よりはるかに甘さは控えめ、頭から食べられる海老の香ばしさが引き立ちます。



 こちらは水菜を野菜でとった出汁と腐乳で和えたもの。腐乳とは、Wikipediaによると「豆腐に麹をつけ、塩水中で発酵させた中国食品」とあります。台湾で有名な豆腐餻(とうふよう)のルーツだそうです。しかしながら、臭みはなく、むしろ出汁のコクが引き立っています。あんかけと水菜のキャキシャキ感、そして上にまぶしたそば茶のサクッとした食感のコントラストと焙煎された蕎麦が香ばしさを添えています。

 因みに、日本酒はしかりとした甘みのある「豊盃 純米吟醸 モヒカン生娘」でした。



 お待ちかね。前回話題に出てきた鮎の登場です。天然の鮎にフランス産ホワイトアスパラのピューレを合わせています。添えられているのは、アスパラソバージュ。これもWikipediaによれば、オルニトガルム・ピレナイクムというオオアマナ属の植物の若芽のことだそうで、アスパラガスの仲間ではないそうです。本来、鮎とホワイトアスパラは旬がちょうど入れ違いだそうですが、それをギリギリのところでくっつけたのだそうです(この日に開催したというのも意味があります)。俳優の故・緒形拳さんの好物だったそうで、頭から丸ごと食べられます。天然の鮎は元々肉食ですが、春になると川を遡上し、川底の藻を食べるようになるのだそうです。元々鮎の肝は好きですが、これは本当に美味しかったです。身も、僕が知っている鮎のパサパサ感がなく、口の中でほろほろと溶けるように崩れていきました。

 なお、お酒は一転してさっぱりとした、清流のような「春霞 夏純吟 田んぼラベル」に変わりました。



 塩漬けしたオーストラリア産の羊を塩抜きしたもの。マトンに近いそうですが、柔らかく臭みが全くありません。その秘密は、野菜の皮の酵素に漬けこみ、臭みを消しているのです。モンゴルなどで用いられる手法なのだとか。添えられているのは長ネギに見えますが、マコモダケ。名前からするとキノコのようですが、イネ科の植物「マコモ」の茎だそうです。ソースは、やや酸味のあるフォアグラソースのような感じがします。

 お酒は切れの良い、「睡龍 純米 無濾過生酒」。青草のような、日本酒ではあまり出会ったことのない不思議な香り。また、少し時間を置くと米由来の旨味の厚みが増すと共に、軽い塩味を感じます。
 


 小豆島手延べ素麺。スープは、豆乳とグリーンピース。羊肉の後、口の中をさっぱりとさせるのにちょうど良いです。焙煎した玄米との食感のコントラストも良いですね。



 軽く火入れした淡竹(はちく)。驚くほど柔らかく甘みがあり、筋やシュウ酸由来の痺れるような感じが全くありません。

 これには、すっきりとした酸味のない味わいのスペインの白ワインを合わせました。



 台湾産パイナップルに、もちろん砂糖不使用の小豆餡、ビタミン豊富なルバーブ(食用大黄。初めて食べました)、クコの実。疲労回復に良いデザートです。砂糖を使わなくてもここまで十分な甘味が出せるのだなと感心します。果実の酸味との相性も良いです。



 最後に。お話しの中で試食させていただいたのですが、イタリア産のルッコラ。概して土地が瘦せている欧州と日本とでは、土の肥沃さによって苦みや香りにどのような違いが出るのかを体験しました。8年前、今は無き「パクチー ジョーズ」へ行った時、正直パクチーの香りに物足りなさを感じていたのですが、あれは水耕栽培だったからなのかもしれません。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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