7月10日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第166回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。3月から始まった「比較的若手シリーズ」の最終回、本当の若手、人気Youtuber、TikToker「金持ち一家」の永斗志善様にご登壇いただきました。
テーマは、「発達障害が拓いたYouTube JAPANトップクリエイターへの道 〜生意気小僧を添えて〜」。2024年7月現在、YouTubeチャンネル登録者数215万人、TikTokフォロワー72万人。昨年度8月実績で再生数日本ランキング5位、登録者増加ランキング4位、総視聴数25.7億回(現在30億回に達しているそうです)を誇る5人組Youtuber「金持ち一家」になるまでの生い立ちと、SNS動画クリエイターとして成功するまでの紆余曲折、そしてこれからの展望についてお話しいただきました。
1.クリエイターとしての礎を築いた子供時代
志善さんは東京吉祥寺生まれ。いわゆる発達障害と目される子供で、教室でじっとしていられず、気に入らないことがあるとすぐ癇癪を起す、興味のあることには飛びつくけれども、そうでないことはたとえ必要とされていてもやらない、そんなタイプだったそうです。父親は非常に躾の厳しい方でしたが、とにかく子供の好奇心を満たしてくれました。例えば、家族でキャンプに行っても、皿から匙から全て現地で手作り、食材も捕まえたものがなければ食べられないというような、徹底ぶりでした。その代わり、そこから子供は多くの知恵を吸収したことと思います。
しかし、その父親が小学校6年生の時に他界。荒れた生活を送るようになります。比較的学業成績の良い中学校に通っていましたが、同世代の子供とは話が合わず、学校にも行かなくなり、話し相手は専ら大人に。受験も望めないので、高校は底辺私立校へ進学。絵に描いたような荒れた学校でしたが、ありえないようなことが日々起こる刺激的な環境で、居心地は良かったそうです。そのまま底辺の大学に進学しましたが、12単位しか取れず、卒業は絶望的に。そんな時、母親から舞台演劇をやらないか、という話が来ます。「失敗したら悲惨だけれども、もし成功したら面白い」と考えて受諾。この考え方はその後の人生の選択においても受け継がれているように思います。
2.舞台演劇を経てYoutuberに
舞台演劇の世界では1000人規模の舞台やディナーショーなどに携わり、やがて運営を仕切るようにもなります。しかし、能力が認められ、出世した結果起こりがちなジレンマですが、クリエイティブな仕事からデスクワーク中心に。幼少期のお話から分かるように、刺激をエネルギーに変えるタイプだけに、舞台の世界を離れます。しかし、離れてしまうと自分には再就職の武器になるような学歴も何もない。そこで、歌舞伎町の夜の世界に身を投じますが、嘘と裏切りの世界に人間不信に陥り、その世界からも離れます。しかし、その時に出会った、優秀だがやはりどこかおかしい仲間たちとYoutubeとTicktokを始めました。
3.解散の危機。試行錯誤の末、人気Youtuberへ
とはいえ、最初はズブの素人。言い方は悪いかもしれませんが、いろいろと耳目を惹くような長時間の馬鹿げた動画のために、収益もないのに自腹で出費を重ねる日々が続きます。動画作成は思ったよりも難しく、お金は出ていくけれども再生回数が伸びず。
そんな日々が2年半も続いた結果、ついに仲間内で解散の話が持ち上がります。話し合いの結果、「1月1日から3月15日までの間にTicktokの登録者数が3万人に届かなければ解散」ということになりました。個性が強すぎ、一枚岩とはお世辞にも言い難いグループでしたが、2年半も無収益で続けてこられたのは、Youtuberであることよりも、それが一緒にいる理由になるから、理由が欲しかったと志善さんは言います。
さて、背水の陣となり、2年半の反省から自分たちに長編動画は向かないと判断し、短編のノンバーバル(サイレントではないけれども、台詞より動きで魅せる)動画に切り替えます。動画を幾つか拝見しましたが、舞台の経験も大いに生きているのではないかと拝察します。短編動画を仮投稿として次々にリリース。その中から反応の良かった動画とそこそこに終わった動画を比較し、反応が伸びた要因と思われるものを次の動画に反映させました。しかし、それが必ずしも正解とは限らず、本当に何の変哲もないことが思いがけず成功要因になったりすることがあるということでした。そんな試行錯誤を繰り返し、約束の1月1日から新アカウントで再出発。結果は何と、3日で登録者数2万人達成という快挙でした。その後、100万回再生を超えた動画2回、約束の3月15日には登録者数10万人を突破、1年後には50万人に達していました。
その頃、Youtubeにショート動画の機能が誕生し、TickTokの動画をYoutubeにも展開するようになります。最初は伸び悩みましたが、ある時一つの動画がヒットすると、その他の動画も伸び、トータルで再生回数1億回を超え、YoutubeのJapanランキングに名を連ねるまでに。
4.これから
ノンバーバルの動画は言語に依らないため、年齢、性別、国境の壁を超えます。志善さんらの動画は、日本を越え、すでに東南アジアを中心に多くのファンを獲得しています。先日、第162回YMSで講師を務めていただいた海老名栄人さんとカンボジアに行った際、現地で多くの「動画を見ています」という人がいたそうです。
さらに、培ってきた経験とノウハウを生かし、企業によるSNSを活用したプロモーションのコンサルテーションも行っています。その特徴は、企画から動画作成に至るまで、外部委託せず一気通貫して自ら行うという点です。言われてみればそうなのですが、再生回数という点では、SNSは効果測定がハッキリしていますし、無責任なことをすれば、本業の方が大打撃を被ってしまいます。そうした厳しさを担保に、自分たちを使って欲しいということでした。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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