灘といえば日本酒。その灘で「福寿」という日本酒を醸造している神戸酒心館。その中に併設された、地元の野菜や自家製豆腐、蕎麦などと共に、蔵元ならではの無濾過生原酒が楽しめる、「さかばやし」というお店に行ってきました。
酒蔵を模した落ち着いた佇まいです。
酒心館の門をくぐると、まず右手に日本酒の仕込みに使われる大桶が出迎えます。この桶ひとつに32石(6キロリットル)のお酒が入るのだそうです。毎日一合ずつ飲んでも87年かかるという量です。
さて、最初に選んだお酒は「福寿・しぼりたて純米」。絞りたての純米酒を加熱処理を加えず瓶詰したものです。フレッシュな香りとうま味が冷酒にぴったりで、最初の一杯としても最適でした。料理については、いくつかあるコースでお任せという方法もありましたが、好きなものと好きなお酒を楽しみたいということで、あえて一品料理を選択しました。
まず、自家製豆腐とお蕎麦に魅力を感じていたので、「自家製すくい豆腐」から。これを藻塩でいただきます。
「藻塩」というと、子供のころ百人一首にでてきた権中納言定家(藤原定家)の
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
という歌が思い出されます。和歌の中にも登場するくらい、古くから存在した瀬戸内海沿岸の製塩法(古墳時代にはすでにあったといわれています)ですが、その後長くこの技法は失われていたようです。以前、この伝統的製塩法の復刻に取り組む方の番組をテレビで見た記憶があるのですが、簡単に言うと海藻に海水を浸しで乾燥させ、また海水を浸して乾燥させるという工程を繰り返し、最後に煮詰めて塩にします。淡い茶色をしていて、まろやかな塩味にうま味が感じられます。これで豆腐を食べると、大豆の甘みが一層引き立ちます。日本酒と豆腐の相性はいうまでもありません。
(明石産)穴子と(婦木農場の)有機野菜の天麩羅。明石といえば、穴子。地元横浜、本牧も穴子の産地なので、親しみが湧きます。さくっとした衣と穴子のふわっとした食感は、これまた日本酒とよく合います。
(明石産)鱧焼き霜造り。個人的には、日本酒といえば鱧が食べたくなります。
(香美町産おじろ鹿)鹿肉のたたき。脂身が少なく、ヘルシーな赤身の鹿も日本酒にはいいですね。
次のお酒は、「福寿・熟成酒生酛純米」。三年熟成のふくよかな香りとより厚みのあるうま味。さらにこのあと、35度の人肌燗でいただきましたが、ぬるめの燗によく合うお酒です。現存する醸造法の中でも最も古い、灘伝統の「生酛造り」を復元したお酒ということです。「生酛造り」は、非常に手間がかかる一方、日本酒の味をしっかりと引き出せ、熟成させても崩れにくいお酒になるのだそうです。
(福寿大吟醸使用)酒粕ちー寿(チーズ)。酒粕の香りとチーズのコク、まろやかさが絶妙な、まさに酒の肴のためにあるような一品です。酒盗チーズがお好きな方にはぜひおすすめです。
燗の「福寿・熟成酒生酛純米」が映っていますが、「厚切り豚舌の燻製」。これが本当に厚切りで、最後の方に頼むには結構なボリュームでした。しかし、噛むほどにうま味の出る燻製はお酒の肴にぴったり。
(国産)鴨ロース、肴としては似た傾向が続いてしまいました。
少々食べ過ぎの感はありましたが、やはり日本酒の締めにはお蕎麦を。先ほどの藻塩でいただきました。
神戸酒心館 さかばやし
兵庫県神戸市東灘区御影塚町1丁目8-17
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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