6月12日、mass×mass関内フューチャーセンターにて、第35回YMSを開催いたしました。
今回は株式会社iプロデュースの石垣秀之さんと、いつもお世話になっている向展弘さんにお越しいただき、「CSM 社会的意味の創造」と題し、ポジティブ心理学の観点から「意味づけ」することの意義と効用についてお話しいただきました。
ポジティブ心理学というのはアメリカの心理学者、マーティン・セリグマンが唱えた心理学の一分野です。従来の心理学が精神疾患の治療に焦点を当てていた(マイナスをゼロに)のに対し、ポジティブ心理学は健常者とされる圧倒的多数の人がより幸福になるために(ゼロからプラスに)、「幸福」に焦点を当て科学的に研究したものだそうです。
研究によると、金銭による幸福度は年収6万ドルを超えるとほとんど変わらないのだそうです。幸福には快楽、フロー(高度に集中している状態)、意味、の3つの要素があり、快楽<フロー<意味の順番に幸福度は高くなるということです。もちろん、これらの要素が全て揃っているのが最も望ましい状態となります。一般に信じられている努力→成功→幸福という図式は、刹那的あるいは成立しないことさえあり、むしろ幸福度の高い人ほど成功しやすいということが研究の結果、明かとなっています。
さて、幸福になるための重要な要素とされる「意味」ですが、私にとっても、恐らくこれを読んでおられる多くの方にとっても身近な「日常の仕事」に意味が付されることにより幸福度が高まった事例としてこんなお話がありました。
何をやっても長続きしない女性がいました。彼女は「つまらない」、「自分に合わない」と言っては職を転々とする日々を送っていました。あるとき、彼女はレジ打ちの仕事をしていましたが、それもすぐ辞めたくなり、実家に帰郷するため荷物をまとめていました。すると、子供の頃書いた日記が目に留まり、そこには幼いころピアノが好きで毎日練習していたということが書かれていました。そこで彼女は次の日から、ピアノを練習するようにレジを練習するようになりました。すると、いつの間にか店内でNo.1のレジ打ち名人となっていました。レジ打ちの傍らお客さんと会話するゆとりも生まれ、彼女のレジには彼女との会話を楽しみにするお客さんの列ができるようになりました。
ある忙しい日、こんな店内放送が流れました。「お客様空いているレジにお回りください」しかし、彼女のレジだけ行列ができたままです。不思議に思った店長が他のレジに回るようお客に促すと、一人のお客が言いました。「私は、彼女と話がしたくてこの店に来ているの」それを聞いた女性はその場に泣き崩れたそうです。彼女はレジ打ちという仕事に「レジ打ちとはお客さんの心理的ニーズを見つけ、それに合ったサービスを提供する仕事である」という意味を見出し、自身の幸福度ばかりでなく顧客の満足度も上げることができたということです。
人は自分の行っていることに意味を見出すと、はるかに大きなエネルギーを発揮し、活き活きとします。またそうして行われた活動がさらにエネルギーを与え、結果として自分もそして周りの人も幸福になるのです。ここで思い出すのが有名な三人のレンガ職人の話です。
ある人が、建物の壁を作っている3人のレンガ職人に出会いました。彼は3人に近づき、「何をしているのですか?」尋ねました。最初のレンガ職人は、「何をしているかって?私はレンガを積み重ねているのです。一日中、モルタルを塗り、レンガを積み重ねています。」と答えました。二番目のレンガ職人は、「私はこの建物の壁を作るためにレンガを積み重ねているのです。」と答えました。三番目のレンガ職人は興奮した様子で、「私は偉大な神の栄光のために建てられるこの聖堂の壁を作るためレンガを積み重ねているのです。このような仕事ができるなんて光栄なことです!」と答えました。
さて、幸福度を上げるため、人生にどうやってポジティブな側面を見出すか。そのための簡単なワークを行いました。やることは単純で「良かったこと」、「してあげたこと」、「してもらったこと」を思いつく限り挙げるというものです。日常の中にポジティブな意味づけを行う習慣をつける、むしろこうした小さな積み重ねの方が幸福度を増すようです。また、このワークからわかることは、幸福は他者との関係の中で成り立つということです。自分と他者との関係の中に意味を見出し、その結果が自分ばかりでなく他者の幸福も増す、まさに他利自得というわけです。これを個人レベルから企業に、そして社会に応用していくことで全体の幸福度を上げていく、それが石垣さんの提唱するCSM(Creating Social Meaning=社会的意味の創造)だということです。
放課後はいつもの通りですが、今回はよりお酒を飲む意味について考えました。
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繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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