法律の周辺

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共益費の増額に係る契約条項について

2007-01-26 14:25:28 | Weblog
asahi.com 共益費値上げは「不当」 住民が都市再生機構を提訴へ

 記事によれば,契約条項に「URが変更できる」とあるようだ。増額請求自体に形成力を認める趣旨なのだろう。

 ところで,借地借家法第32条は借賃の増減に係る規定だが,第1項には次のようにある。

 建物の借賃が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし,一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には,その定めに従う。

この規定により,公租公課等の負担の増大等,合理的な理由がある場合は,契約の条件にかかわらず,貸主は借賃の増額請求が可能となる。
ただ,2項に「建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは云々」とあるから,増額請求に形成力を認めたものではないことは明らかである。
また,契約当事者に法定の請求権を認めるものとして,第1項の「その他の負担の増減」,「その他の経済事情の変動」は,それぞれ,「租税」,「土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下」との並びで考える必要があるように思われる。
これらのことからすれば,請求がそのまま形成力を持つといった内容の場合や,そうでない場合でも増額請求可能な事由として明らかに借地借家法を超えるものが盛り込まれている場合は,消費者利益を害するおそれは高いといえる。消費者契約法第10条により無効となる場合はあろう。

記事には随意契約云々とあるが,仮に,赤字の原因がUR側の怠慢・経営努力の不足等にあるとすれば,これを借主の負担に帰せしめるというのは不当のように思える。


民法の関連条文

(基本原則)
第一条  私権は,公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は,信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は,これを許さない。

(賃貸借)
第六百一条  賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。

(賃料の支払時期)
第六百十四条  賃料は,動産,建物及び宅地については毎月末に,その他の土地については毎年末に,支払わなければならない。ただし,収穫の季節があるものについては,その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。

借地借家法の関連条文

(借賃増減請求権)
第三十二条  建物の借賃が,土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により,土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし,一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には,その定めに従う。
2  建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは,その請求を受けた者は,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし,その裁判が確定した場合において,既に支払った額に不足があるときは,その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3  建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは,その請求を受けた者は,減額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし,その裁判が確定した場合において,既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは,その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

消費者契約法の関連条文

(目的) 
第一条  この法律は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ,事業者の一定の行為により消費者が誤認し,又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに,事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより,消費者の利益の擁護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 ,商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。

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