法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

切迫早産で生まれた赤ちゃんについて

2007-01-12 13:21:11 | Weblog
離婚300日以内:早産の男児も無戸籍に 9日不足 MSN毎日インタラクティブ

 お気の毒なケース。記事の諸事情を時系列に並べると次のようになる。

H01.07 前婚成立
H02.09 別居
H06.03 前婚解消
H06.06 妊娠判明
H06.09 後婚成立
H06.12 帝王切開により出産
(H07.02 出産予定)

ところで,「離婚による婚姻解消後300日以内に出生した子であつても,母とその夫とが,離婚の届出に先だち約2年半以前から事実上の離婚をして別居し,まつたく交渉を絶つて,夫婦の実態が失われていた場合には,民法772条による嫡出の推定を受けないものと解すべきである。」とする最判S44.5.29がある。
本事案,詳細は分からないが,この最判の射程にないか検討の余地はあるように思われる。

 さて,ジュリストNo1325の特別座談会『家族法の改正に向けて(下)-民法改正委員会の議論の現状』の中に,窪田充見教授の手になる実親子法条文素案が掲載されている(P150参照)。3つある基本方針の第1は,「嫡出子という身分を使わず,実親子法を母子関係と父子関係の存否の問題として規定する」というもの。母子関係及び父子関係の存否に係る条文は以下のとおり。

母子関係
K‐1条 子を出産した者を母とする。

父子関係
父子関係決定の基本的なルール
K‐2条 子の出産時にその母の夫であった者を,その子の父とする。
父子関係否認に関するルール
K-3条(甲案)K‐2条の場合において,同条によって父とされる者又は子若しくは親権を行う母は,父子関係を否認することができる。
(乙案)K-2条の場合において,同条によって父とされる者及び子その他の利害関係人は,父子関係を否認することができる。
K-4条 K-2条によって父とされる者の否認権は,子の出生ならびに父子関係を否定する事実を知った時から一年以内に否認の訴を提起しなかったときは消滅する。子の出生を知った時から三年を経過したときも,同様とする。
2 子の否認権は,成年に達した後,父子関係を否定する事実を知った時から一年以内に否認の訴を提起しなかったときは消滅する。
3 (甲案)母の否認権は,子の出生から三年を経過したときは消滅する。
(乙案)母その他の利害関係人の否認権は,子の出生から三年を経過したときは消滅する。
K-5条 妻が第三者の提供による精子を用いて懐胎する生殖補助医療について,夫が同意を与えたときには,K-3条の否認権は認められない。


窪田素案では,本事案,K-2条の適用により,後婚の夫が赤ちゃんの父となる。


民法の関連条文

(嫡出の推定)
第七百七十二条  妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。

(父を定めることを目的とする訴え)
第七百七十三条  第七百三十三条第一項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において,前条の規定によりその子の父を定めることができないときは,裁判所が,これを定める。

(嫡出の否認)
第七百七十四条  第七百七十二条の場合において,夫は,子が嫡出であることを否認することができる。

(嫡出否認の訴え)
第七百七十五条  前条の規定による否認権は,子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは,家庭裁判所は,特別代理人を選任しなければならない。

(嫡出の承認)
第七百七十六条  夫は,子の出生後において,その嫡出であることを承認したときは,その否認権を失う。

(嫡出否認の訴えの出訴期間)
第七百七十七条  嫡出否認の訴えは,夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする